2018
05.19

うにゅほとの生活2357

2018年5月19日(土)

「おっと」
足元に落としたペットボトルの蓋を拾い上げようとしたとき、

──びき!

「はう!」
腰のあたりに一筋の電流が走った。
「わ」
膝の上のうにゅほが、目をまるくして振り返る。
「どしたの?」
「腰が……」
「いたいの?」
「痛いというか……」
「わたし、おりたほういい?」
「乗ってて。寒いし」
「はい」
うにゅほを左手で抱き締めながら、ゆっくりと背筋を伸ばしていく。
「──……んー」
「だいじょぶ……?」
「次は、回してみる」
「うん」
デスクを両手で掴み、チェアを徐々に捻っていく。
まずは、左。
「ぐー……」
次は、右。
「んいー……」
最後に、もう一度左。
「ん゙ッ……」
問題はない。
再度、ペットボトルの蓋を拾う動作をしてみる。
「……んー……?」
「いたい?」
「痛くはない」
「さっき、どしたんだろうね」
「さあー……」
再現性はないが、そこはかとない腰痛の予感がする。
気をつけておこう。

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2018
05.18

うにゅほとの生活2356

2018年5月18日(金)

『──しやー……もー……』

どこか遠くから、ノイズ混じりの声が聞こえてくる。
「あ、いしやきいもだ」
「……五月に?」
さすがに季節外れではあるまいか。

『──いしやー……いもー……』

「本当だ……」
「ね」
うにゅほが小さく胸を張る。
「石焼き芋って、秋と冬しかやってないんだと思ってた」
「わたしも」
「年中やってるのかな。知らないだけで」
「そうかも」
「……でも、真夏に石焼き芋は、さすがに売れないだろうなあ」
「うん……」
SNS隆盛のこの時代、逆に話題になりそうではあるけれど。
「ふと思ったんだけど」
「?」
「焼き芋屋さんって、シーズンオフのときは何やってるんだろうな」
「あー」
「売り上げで一年食っていけるのかな」
「いも、つくってるのかも」
「農家のひとの副業ってこと?」
「うん」
「ありそうだな……」
と言うか、それが答えのような気がする。
「なかなかやるな、××」
「うへー」
うにゅほが得意げに笑う。
「……それにしても、今日は冷えるな。寒いから焼き芋売ってるのかも」
「かも」
「××、こっちゃ来い」
「はーい」
うにゅほを膝に乗せて、暖を取る。
焼き芋も温まるが、やはり人肌がいちばんである。

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2018
05.17

うにゅほとの生活2355

2018年5月17日(木)

「──…………」
「──……」
目を皿のようにして、花壇の周囲をぐるりと回る。
「いた?」
簡潔な俺の質問に対し、うにゅほが首を横に振る。
「……不気味だな」
「うん……」
我が家は、過去に二度、アリの被害に遭っている。
吸蜜性の小さなアリが、屋内に道を作るのだ。
去年は、ダスキンの害虫駆除サービスによって、いちおうの決着を見たのだが──
「……あのあと、また、繁殖してたよな」
「してた……」
プロの手による駆除を経ても、アリは全滅しなかった。
屋内へ再び侵入することこそなかったものの、花壇は相変わらずアリどもの城のままだったのだ。
「そりゃ、いないに越したことないけどさ……」
「もやもやする」
「わかる」
悪魔の証明だ。
アリがいれば、対処すればいい。
そのための道具は既に揃えてある。
だが、アリがいないことを確信するためには、それこそ花壇を掘り返すほどの手間が必要となる。
「……仕方ない、引き上げよう」
「いいの?」
「よくはないけど、どうしようもない」
「そか……」
「まったくいないなら安心してもいいけど、ごくたまに一、二匹だけ見かけるのがな……」
「こわいよね」
たまたま通り掛かった無関係なアリならいいのだが、楽観はできない。
「花壇は定期的に。今後は、家の周囲も捜索範囲に入れよう」
「はい」
今年こそ、アリから家を守るのだ。

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2018
05.16

うにゅほとの生活2354

2018年5月16日(水)

キッチンの冷蔵庫でチューハイを発見した。
銘柄は、既に缶を潰してしまったので、よくわからない。
アルコール度数は高かったように記憶している。
「◯◯、よっぱらった?」
「ほろ酔い」
「ほろよいって、どんなかんじ?」
「××、間違って、俺のお酒飲んだことあったじゃん」※1
「そだっけ……」
覚えていないらしい。
「そうだなあ」
右手をぐーぱーさせながら、全身の感覚を言語化していく。
「まず、頭がすこし重い。ふらふらする」
「ふらふら」
「視覚や聴覚が鈍くなって、世界が遠くなる。現実感が薄くなる感じ」
「げんじつかんが……」
「あとは、若干火照るくらいかな」
「へえー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「なんか、あんましだね」
「そうか?」
「うん」
「酔っ払ったときの××、すげー楽しそうだったけど」
「おぼえてない……」
「覚えてなくていいよ、うん」
あのときのうにゅほ、厄介この上なかったし。
「──…………」
じ。
うにゅほが、飲みかけの缶チューハイを見つめる。
「ダメだぞ」
「うん」
「次の日、二日酔いで死にかけたんだから」
「──あっ」
「思い出した?」
「おもいだした……」
うにゅほの顔が青く染まる。
「おさけはだめだ……」
「そうそう。お酒なんて、飲まないに越したことはない」
そう言いつつ、缶チューハイをあおる。
「◯◯はいいの?」
「一本か二本程度なら、大丈夫」
「そか……」
「ところで××さん」
「はい?」
「嗅がせろー!」
「ひや!」
うにゅほを抱き寄せて、その首筋に鼻を埋める。
笑い上戸、泣き上戸、種々様々な上戸があるが、俺は嗅ぎ上戸なのかもしれない。
ただし、うにゅほの匂いに限る。

※1 2015年4月2日(木)参照

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2018
05.15

うにゅほとの生活2353

2018年5月15日(火)

「あちー……」
「はちーねえ……」
ぐでー。
フローリングの床が、冷たくて気持ちいい。
「いま何度ー……?」
「うと」
隣に寝そべっていたうにゅほが上体を起こし、温湿度計を覗き込んだ。
「にじゅうはってん、ごど……」
「……窓開いてる?」
「あいてる」
「だよなあ」
さっき俺が開けたばかりだもの。
「うーしょ」
「うぐ」
「ほー」
俺の背中に覆いかぶさったうにゅほが、耳元でほっと息を吐く。
くすぐったい。
「××さん、××さん」
「はい」
「暑くない?」
「あついねえ……」
「──…………」
「──……」
下りる気はないらしい。
仕方ない。
体温でぬくまった床に別れを告げ、より涼しい場所を求めてにじにじと匍匐前進を始める。
「おー!」
楽しそうだ。
せっかくなので、更に楽しませてみよう。
「よいしょ、と」
「わ」
うにゅほを背中に乗せたまま、四つん這いになる。
どたどた。
「あはははは! すごい!」
しばし這い回った結果、
「──……あつ……」
「はちーねえ……」
ぐでー。
我ながら、何をやっているのだか。
楽しいからいいけど。

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