FC2ブログ
2018
12.06

うにゅほとの生活2556

2018年12月6日(木)

「──げほッ、えほんッ!」
切った痰をティッシュにくるみ、丸めて捨てる。
「だいじょぶ?」
「風邪、ほとんど治ったけど、痰だけ止まらないなあ……」
「くるしくない?」
「苦しくないよ。ちょっと咳が煩わしいけど、それだけだ」
「そか」
安心したように、うにゅほがほっと息を吐く。
「しかし、一週間か。長引いたなあ」
「そだねえ」
「今年の風邪が長引くタイプなのか、年を取って免疫力が弱まったのか」
後者かもしれない。
「××も気をつけろよ。うがい、手洗い、マスクは必須」
「うん」
俺も、うにゅほも、この一週間、サージカルマスクを着けっぱなしである。
ひとつ屋根の下どころか、四六時中同じ部屋で暮らしているのだから、それくらいは当然だ。
「咳さえ止まれば、マスクもいらないと思うんだけどな……」
いい加減、鬱陶しい。
「さいきん、◯◯のかお、みてないきーする」
「ごはん食べるときは外してるだろ」
「そだけど」
「……でも、言われてみれば、俺も××の顔あんまり見てない気がするな」
「でしょ」
「ちょっと外してみるか」
「うん」
先んじて咳払いをしたのち、サージカルマスクを外し、互いの顔を確認する。
「──…………」
「──……」
なんだか照れる。
「よし、ここまで!」
一方的にマスクを着け直すと、
「えー」
うにゅほが不満げに口を尖らせた。
「もすこしみたい」
「風邪治ったらな」
「はーい」
治るまでに、ちゃんとヒゲを剃っておこうと思った。

Comment:0  Trackback:0
2018
12.05

うにゅほとの生活2555

2018年12月5日(水)

「──…………」
むくりと起き上がる。
「……おはよう」
「おはよー」
「すげえ気持ち悪い花を見つける夢を見た」
「きもちわるいはな……」
「気持ち悪い花」
好奇心を刺激されたのか、うにゅほが小さく身を乗り出した。
「どんなはな?」
「高さが三メートルくらいあって、茎がそこらの樹木よりずっと太く、上に行くに従って細くなっていく」
「うん」
「茎の頂点に、ラフレシアより大きな牡丹に似た花が咲いてるんだ」
「……うん」
「シルエットで言うと、グルグルの"長い声のネコ"みたいな感じ」
「わかりやすい」
「花の色は赤と黒のまだら。中心に当たる部分に、円形に並んで種ができていて、ここがいちばん気持ち悪い」
「──…………」
神妙な顔をして、うにゅほが俺の言葉を待つ。
「種の質感は、剥き身のエビみたいにぷりぷりしてるんだけど、形状が人間の右手なんだよ」
「!」
「右手そっくりの種が、次の右手の手首を掴む形で、ぐるりと円を描いてるんだ」
「うひぇ」
「気持ち悪いだろ」
「きもちわるい……」
「で、夢のなかの俺は、すげえ気持ち悪い花見つけたって超喜んでて、××に見せてあげないとってずっと思ってた」
「みたくないです」
「見せたかったなあ」
「みたくないです……」
「まあ、でも、ちょっと面白い夢だろ」
「うん、おもしろい」
「××は、どんな夢見たんだ?」
「うーと──」
しばし思案したのち、うにゅほが答える。
「わすれた……」
起きた直後でなければ、そんなものだろう。
「おもしろいゆめみたら、◯◯におしえるね」
「頼んだ」
夢の話は、けっこう好きだ。
楽しみにしておこう。

Comment:0  Trackback:0
2018
12.04

うにゅほとの生活2554

2018年12月4日(火)

ふと、かつて読んだ物語が脳裏をよぎった。
「あの小説、なんてタイトルだったっけ……」
「?」
考え事が外に漏れていたらしく、うにゅほが小首をかしげた。
「どんなしょうせつ?」
「ああ、いや、××はわからないと思う」
むうと口を尖らせて、うにゅほが主張する。
「わかんないか、わかんないよ」
「だって、高校の教科書に載ってた小説だぞ」
「わかんない……」
そりゃそうだ。
「おもしろかったの?」
「どうだろう。不思議な小説だったことは覚えてる」
「どんなはなし?」
「主人公が、列車に乗るんだ」
「うん」
「そのまま次の駅を目指すんだけど、着くと予定よりすこし遅れてる」
「うん」
「その遅れは、駅に止まるたびにひどくなって、数日、数ヶ月、数年と折り重なっていく──みたいな話」
「うーん……?」
「よくわからないだろ」
「よくわかんない」
「俺も」
「◯◯もわかんないの?」
「何かの比喩なんだろうけど、ピンとは来ないよな」
「そだねえ」
「でも、妙に記憶に残っててさ。できることなら、また読んでみたい」
「しらべたらわかるかも」
「ネットか。随分前に検索した記憶が──」
言いながらキーボードを叩く。
すると、ヤフー知恵袋に、ほぼ同じ内容の質問が投稿されているのを発見した。
ベストアンサー曰く、
「……ディーノ・ブッツァーティ、急行列車。これっぽい」
「いんたーねっと、すごいね!」
「収録されてる短編集もわかったから、さっそく買ってみよう」
「うん」
「楽しみだ……」
「よかったね」
これほどまでに届くのが待ち遠しい買い物は、久しぶりかもしれない。

Comment:0  Trackback:0
2018
12.03

うにゅほとの生活2553

2018年12月3日(月)

「──えほッ! げほ、げほッ!」
風邪は治りかけているのだが、いまだに痰が絡む。
「はい、ティッシュ」
「あんがと」
うにゅほからティッシュを受け取り、痰をくるんで捨てようと──
「おわ」
「どしたの?」
「いや、痰が緑色でさ」
「!」
うにゅほが目をまるくする。
「一瞬びっくりしたけど、よく考えたら、さっき青汁飲んだからだわ」
「あ、そか」
間抜けな話である。
「たんって、なに?」
「痰か……」
考えたこともなかった。
「奥に流れ落ちた鼻水が、喉に引っ掛かってるのかなあ」
「そなんだ」
「いや、適当言った。たぶん違う」
キーボードを叩き、検索する。
「──喉の粘膜が炎症を起こして出る、分泌液のことなんだって」
「のどからでるんだ」
「色がついてるのは、細菌と白血球の混じったものらしい」
「◯◯の、いろついてる?」
「ついてますねえ」
「じゃあ、かぜ、まだなおってないんだねえ……」
「風邪の匂いはする?」
「んー」
うにゅほが、俺の首筋に鼻先を埋める。
すんすん。
「すこしする」
「痰は喉から出るってわかったけど、風邪の匂いはどこから出てるんだろうなあ」
「わかんない……」
長引く風邪も、そろそろ治りそうだ。
油断せず、暖かくして過ごそう。

Comment:0  Trackback:0
2018
12.02

うにゅほとの生活2552

2018年12月2日(日)

今日は、弟の誕生日である。
「××、母さんと一緒に財布プレゼントしたんだっけ」
「うん」
あとで見せてもらおう。
「俺はどうすっかなあ……」
まったく、すっかり、一切合切、何も考えていなかった。
こんなときは本人に聞くのがいちばんだ。
うにゅほを引き連れて弟の部屋へ赴き、開口一番こう尋ねた。
「ヘイブラザー、欲しいものはなんだい」
「欲しいもの……」
「あ、誕生日おめでとうございます」
「おめでとうございます」
うにゅほとふたり、ぺこりと頭を下げる。
「はいはいどうも。いま欲しいものと言ったら、iPhoneケースくらいだけど」
「まだ注文してなかったのか」
「ふたりはしたの?」
「したよ」
「うん、した」
「どんなのにした?」
「俺は、アルミ製のバンパー。側面だけ覆うやつ」
「××は?」
「なんか、とうめいなやつ」
「適当でいいって言うから、二千円くらいで適当なの選んで買った」
「へえー」
「じゃあ、弟のも俺が買うってことでいいか?」
「ああ、それでいいよ」
「了解」
安く上がりそうでよかった。
「でも、軽く検索したんだけど、欲しいのが見つからなくてさ」
小首をかしげ、うにゅほが尋ねる。
「どんなの、いいの?」
「まず、手帳型ね」
「うん」
「ストラップが付けられるやつがいい」
「フムフム」
「で、ストラップの穴は、下のほうにないと嫌だ」
「……××さん、注文多いと思いませんか」
「おおいですね……」
「前のがそうだから、使用感を変えたくないんだよ」
「わかるけどさ」
「でも、どのケースにストラップの穴があるのかすら、よくわからなくて……」
「Amazonでも楽天でも、検索するときに"ストラップホール"って単語を噛ませると、その商品だけ出てくるぞ」
「……マジで?」
「やってみ」
弟がキーボードを叩く。
「本当だ……」
「そこまで絞れれば、欲しいのも見つかるだろ。決まったら教えてくれ」
「わかった、ありがと」
「あと、財布見せて」
「はいはい」
買ったばかりの革製の長財布は、シンプルで高級感のあるものだった。
なかなかセンスがあるじゃないか。

Comment:0  Trackback:0
back-to-top