2017
08.17

うにゅほとの生活2085

2017年8月17日(木)

ペプシの備蓄が切れたため、買いに出掛けようとしたときのことだった。
「──あっ」
「?」
「ストラップの紐が切れた……」
「ほんとだ……」
愛用の携帯ストラップの松葉紐が、なかばほどで完全に千切れていた。
「えんぎわるいねえ」
「逆に、運がよかったかもしれないぞ」
「……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「外で千切れてたら、本体部分を落としてたかもしれない」
「あ、そか」
「本体さえなくさなければ、松葉紐を交換するだけで済むからな」
「まつばひもっていうの?」
「そうだよ」
「へえー」
玄関で靴を履こうとして、
「靴紐が解けてる」
「──…………」
うにゅほの表情が、目に見えて翳る。
「……縁起が悪いのは、靴紐が切れたときだからな?」
「うん……」
「解けてるのは、普通だから」
靴を履き、玄関を出る。
家の前にある児童公園の向こう側に、小さくカラスの姿があった。
「……きょう、いくのやめよ」
「いや、遠い遠い!」
目の前を横切られたならまだしも、この距離のカラスを縁起が悪いと言うのなら、日本全国どこだって縁起が悪いだろう。
「気にしすぎだって」
「──…………」
俺の上着の裾を握りながら、うにゅほが無言の抵抗を貫く。
「……はあ」
溜め息ひとつつき、
「わかった。行くの、明日にしよう」
「うん……」
ペプシを飲まないと死んでしまうわけでもない。
水でも啜ってやり過ごせばいいだろう。
「××って、けっこう縁起とか気にするよな」
「きにする」
俺はさほど気にならないのに、いったい誰に似たのだろう。
母親だな、うん。

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2017
08.16

うにゅほとの生活2084

2017年8月16日(水)

「夏休みが、終わりました」
「──…………」
「終わってしまいました」
「はい……」
「今日から、また、仕事です」
「がんばって……」
「頑張ります」
「!」
ぴ、と敬礼してみせると、うにゅほも敬礼を返してくれた。
「……でも、正直、夏休み短いよね……」
「うん……」
「一ヶ月とかわがまま言わないから、せめて二週間くらい──」
そこまで口にして、ふと気づく。
「……学生みたいに夏休みって呼ぶから、期待はずれな気分になるんだ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「社会人にあるのは夏休みではない! お盆休みだ!」
「あー」
うんうんと頷く。
「同様に、冬休みは正月休みとなる」
「なるほど」
「夏休みが五日間だと短いけど、お盆休みが五日間なら妥当な感じしない?」
「おぼんって、それくらいだもんね」
「──…………」
「◯◯?」
「夏休みが欲しい……」
「……うん」
「名目はなんだっていいから、二週間くらい休みたいです……」
「がんばって……」
「頑張る」
「うん」
「頑張るので、ごほうびをください」
「なにほしい?」
「膝枕をしてほしい」
「そんなでいいの?」
「生足で」
「なまあし」
「具体的に言うと、ホットパンツで」
「きがえるね」
なんて素直な。
今日の仕事を終えたあと、うにゅほの生足膝枕を堪能した。
うん。
このためならば、頑張れる。

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2017
08.15

うにゅほとの生活2083

2017年8月15日(火)

「──晴れた!」
カンカン照りとは行かないものの、ここ数日の空模様を考えれば、十分過ぎる好天だ。
「××!」
「わ」
うにゅほの手を引き、立ち上がらせる。
「出掛けるぞ」
「どこいくの?」
「小樽」
「おたる……」
「連れて行くって、言っただろ」※1
「!」
うにゅほの瞳が、ぱあっときらめいた。
「いく!」
「よーし、準備だ。まずは着替えだな」
「きがえ?」
「バイクで行くから、ホットパンツはまずい。ジーンズに穿き替えよう」
「はーい」
「あと、日焼け止めはきちんと塗るように」
「わかった!」
しっかりと準備を整えたのち、タンデムシートにうにゅほを乗せて出発する。
「──…………」
ぎゅう。
発進するとき俺の背中に顔を押しつける癖は、いつまで経っても直らない。
日焼け止めクリームがライダースジャケットにべったりくっついていそうで、それはそれで気に掛かるが、まあいいや。
国道5号線を西進し、小樽市へ着くころには、ちょうど昼時になっていた。
「こないだ、◯◯、かいせんどんたべたの?」
「はい、食べました」
「わたしもたべたいな……」
「同じ店でいいか?」
「うん!」
先月、友人たちと辿った道を、うにゅほとふたりで辿り直す。
北一ヴェネツィア美術館に足を運び、ルタオでパフェに舌鼓を打ち、あれやこれやと会話しながら大正硝子館をはしごする。
最後に赴いたのは、小樽オルゴール堂の本館だった。
「わあー……!」
高い天井、広い空間、クラシカルな店内が、無数のオルゴールに彩られている。
数十万点、あるいはそれ以上あるかもしれない。
「床、滑りやすいから気をつけろよ」
「わかっ、──ほあ!」
「ちょ!」
言った傍から滑ったうにゅほを、慌てて胸元に引き寄せた。
「ごめんなさい……」
「気をつけるように」
「はい……」
オルゴール堂の店内を、おっかなびっくり歩いていく。
「これ、ぜんぶ、おるごーる?」
「そう」
「ぬいぐるみも?」
「たぶん……」
「すごいねえ、すごいねえ!」
「せっかくだし、ひとつ買っていくか」
「うん!」
ふたりで三十分ほど迷った結果、小さな12角オルゴールをひとつ購入することにした。
バイクだから、大きすぎると持って帰れないし。
曲目は「虹の彼方に」。
理由は、なんとなく気に入ったからだ。
今日という一日が、うにゅほにとって、素晴らしい夏の思い出となれば幸いである。
美しいオルゴールの音色を聞きながら、そんなことを思うのだった。

※1 2017年7月14日(金)参照

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2017
08.14

うにゅほとの生活2082

2017年8月14日(月)

「んあー……」
チェアの背もたれに体重を預けながら、天井を振り仰ぐ。
夏休み、四日目。
やりたいことはある。
すべきこともある。
だが、
「なーんもやる気起きねえー……」
キーボードを叩くのが億劫だ。
マウスすら重い。
動画をぼけーっと眺めているだけで一日が終わるのは、この上なく自堕落な休日の過ごし方と言えるだろう。
膝の上にちょこなんと腰を据えたうにゅほが、自信満々に口を開く。
「やすみは、やすむひ」
「そうだけどさ」
「やすまなかったら、やすみじゃないよ?」
言い得て妙である。
「でも、夏休みに入ってから、何もしてない気がする……」
「いちにちめと、ふつかめは、はかまいりいった」
「行ったな」
「みっかめは、ひろうかいふく」
「物は言いようだなあ」
確かにそんな感じだったけど。
「よっかめは、ほんとのおやすみ」
「ふむ」
「だから、やすんでいいんだよ」
「──…………」
うにゅほを、ぎゅーと抱き締める。
「……じゃあ、休む」
「うん」
五日目は、どうしようかな。
晴れたらふたりで出掛けるのもいいな。
夏休みに入ってから、ずっと天気が悪い気がする。
一日くらいは、晴れ間を見たいものだ。

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2017
08.13

うにゅほとの生活2081

2017年8月13日(日)

「──……ゔー」
ここ数日の疲れが噴出したのか、寝ては起き、起きては寝てを繰り返す一日だった。
「……眠い……」
「ぶえ」
背後からうにゅほにのしかかる。
「お、も、い゙ー……」
「ごめんごめん」
うにゅほが潰れてしまう前に、離れて、ベッドに腰掛ける。
「◯◯、ねむいの?」
「眠い」
「ねむいとき、ねたほういいよ」
「俺もそう思う」
「ねましょう」
うにゅほが、俺の肩に丹前を掛ける。
「でも、このやり取りも、今日だけで三度目だからな……」
「うん」
「もう五時だし」
「うん」
「……さすがに起きようかと」
「ねむくない?」
「眠いけど、用事があるし」
「──…………」
うにゅほの表情が、見るからに翳る。
「……◯◯、また、やくそくあるの?」
「あー……」
勘違いさせてしまったようだ。
「××も、一緒に行こう」
「?」
「TSUTAYAにDVD返しに」
「いく」
「用事ってのは、それだけだよ」
「そか……」
うにゅほの頭をぽんと撫でる。
「しばらくは、××を置いて出掛けないよ」
「──…………」
「出掛けるときは、一緒に行こうな」
「うん!」
寝癖を整え、普段着に着替えて、ふたりでTSUTAYAへ赴いた。
帰り際に食べた自販機のアイスが、そこそこ美味しかった。

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