2017
10.12

うにゅほとの生活2140

2017年10月12日(木)

「──あ、ガム切れた」
推定200粒は入っているボトルガムだが、噛んでいればいつかはなくなるものだ。
「からっぽ?」
「うん」
「あんなにからいのに……」
「最初の辛さを乗り切れば、あとはけっこう甘かったりするんだよ」
「……ほんと?」
「本当は本当だけど、試さないほうがいいんじゃないかな……」
すぐに吐き出してしまうのがオチである。
「なんかのついでに、また買ってこないと」
「あ」
うにゅほがぴょんと立ち上がる。
「ものおきにね、あたらしいのあったよ」
「マジか」
「もってくる!」
小走りで自室を後にしたうにゅほが、ほんの一分少々で戻ってくる。
「あった!」
右手には、クロレッツのビッグボトルが掲げられていた。
「はい」
「ありがとな」
うにゅほの頭をぽんぽんと撫でて、ボトルを受け取る。
「うへー」
買わずに済んで、嬉しい。
取ってきてくれて、ありがたい。
だが、女の子にガムをもらうと、口くせーんだよおめーという含意が脳裏をよぎるのだ。
もちろん、うにゅほはそんな子ではない。
俺自身も、女性に限らず、人からガムをもらった経験すらあまりない。
では、この被害妄想はどこから来たのだろう。
「……ネットかなあ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「いや、なんでもない」
情報と共に偏見まで取り入れてしまうのは、インターネットの功罪である。
とは言え、こうして不特定多数の方々に日記を閲覧してもらえるのも、ネットがあるからに他ならない。
「──…………」
うにゅほがネットに興味を持ったら、止めるべきか、止めざるべきか。
いまから悩んでも仕方がないけれど。

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2017
10.11

うにゅほとの生活2139

2017年10月11日(水)

「──…………」
PCで作業中、ふと喉が渇いた。
冷蔵庫に近いのはうにゅほだが、読書の邪魔をする気にはなれない。
いつものようにチェアのキャスターを滑らせ、

──ぶつん!

イヤホンから垂れ流していた作業用BGMが、唐突に途切れた。
「あー……」
またやってしまった。
今日だけで、既に三回目である。
「くび、だいじょぶ?」
「首は大丈夫だけど……」
心配なのは、イヤホンジャックのほうだ。
「このイヤホン、修理に出したのよりコード短いんだよなあ」
修理に出したイヤホンのコードの長さが染み付いてしまっているため、たびたびプラグを引っこ抜いてしまうのである。
「◯◯、あれないの?」
「あれ?」
「うーとね、せん、ながくするやつ」
「延長コードか」
「それ」
「あるよ」
全部繋げば部屋のどこへでも行くことができるくらい、ある。
「つかわないの?」
「さすがに使ったほうがいいかもなあ」
「なんか、だめなことあるの?」
「延長コードって、最低でも1mはあるんだ」
「うん」
「今度は長すぎて、キャスターに絡まる」
「あー……」
「まあ、注意して使えばいいんだけどさ」
だが、そんなことを言い出してしまえば、コードが短くても注意して使えばいい、となる。
それができていないから現状があるわけで、恐らく延長コードには、キャスターに絡まる未来が待っているのだろう。
「しゅうり、はやくおわったらいいね」
「まったくだ」
音質だけでなく、コードの長さまでベストだったとは。
失って初めて気づくことは、やはりあるのだなあ。

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2017
10.10

うにゅほとの生活2138

2017年10月10日(火)

「──…………」
頭を右に傾ける。
かぱ。
開く。
「──…………」
頭を左に傾ける。
ぱた。
閉じる。
「……うーん」
かぱ。
ぱた。
かぱ。
ぱた。
「なにみてるの?」
俺の肩越しに、うにゅほがディスプレイを覗き込む。
だが、開いているのは、なんら変哲のないニュースサイトだ。
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「いや、耳掛けイヤホンの右側だけ、開閉が緩くなってるみたいでさ」
右に傾ける。
かぱ。
左に傾ける。
ぱた。
「ほんとだ」
「困ったなあ……」
高かったのに。
「◯◯、のりのりなのかとおもった」
「ノリノリ?」
「あたまふってるから」
「あー……」
後ろからだと、そう見えるかもしれない。
実際は、ノリノリどころかションボリである。
「あ、そうだ」
「?」
「買ってまだ一年経ってないから、保証効くかも」
「おー」
クローゼットからイヤホンの箱を取り出し、レシートと保証書の有無を確かめる。
「──あった!」
「なおる?」
「直る、はず。大丈夫なはず」
煩雑な手順を経て、イヤホンをオーディオテクニカサービスセンターへと送付した。
しばらくは予備で我慢することにしよう。

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2017
10.09

うにゅほとの生活2137

2017年10月9日(月)

外出の準備を終え、立ち上がる。
「──さて、行くかな」
「うん」
「──…………」
一緒に出掛けようとしたうにゅほの肩を押し戻す。
「××は、行かない」
「?」
なに小首かしげてんだ。
「さて、問題です」
「はい」
「俺は、何をしに行くでしょうか」
「わたしの、たんじょうびプレゼント、かいに」
「わかってるじゃないですか」
「うん」
「──…………」
部屋を出ようとするうにゅほの肩を押し戻す。
「言ったろ。一緒に選ぶのもいいけど、今年は当日に驚かせたいって」
「うん……」
「ふたりで出掛けたら、わかっちゃうだろ」
「かうとき、めーとじるとか……」
「無理があるね?」
「はい……」
「買うものは決めてあるから、すぐ帰ってくるよ」
「ほんと?」
「おみやげに、チョコボールも買ってくるから」
「わかった……」
肩に提げていたポシェットを、ようやく下ろす。
「どこいくの?」
「ヨ──」
「よ?」
「……秘密」
危ないところだった。
「じゃあ、行ってくるから」
「いってらっしゃい……」
指でも咥えそうな表情で見送られ、家を出る。
小一時間で帰宅し、プレゼントは階段下の収納スペースに隠しておいた。
あとは当日を待つばかりである。

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2017
10.08

うにゅほとの生活2136

2017年10月8日(日)

「──なんか、今日、暑くない?」
作務衣の共襟をパタパタと動かし、内側に空気を送り込む。
「あついかも……」
「何度?」
「うと、ちょっとまってね」
うにゅほが温湿度計を覗き込む。
「にじゅうななてん、ごど!」
「夜なのに随分暑いな」
「なつみたい」
「窓開けたら、さすがに寒そうだ」
なんだかんだ、もう十月だし。
「弟とか、大丈夫かな。暑さにやられてるんじゃないか」
「◯◯、へやにいないから、だいじょぶとおもう」
「……?」
言ってる意味がよくわからない。
「◯◯いるへや、あったかくなるから」
「……そうなの?」
「そだよ?」
初耳である。
「弟の部屋に行ってみよう」
「うん」
こんこん。
「あーい」
返事を待って、弟の部屋の扉を開ける。
「どうかしたの?」
「……涼しいな」
「うん、すずしい」
「何?」
「この部屋って、温度計ある?」
「あるよ」
弟が、PC本体の上を指す。
「何度?」
「24℃」
「──…………」
「……何?」
「うーとね、◯◯のいるへや、あったかいねって」
「いや、もしかして、俺の部屋は××と俺でふたりいるからでは──」
「昔からそうだよ」
「昔からそうなの……?」
「兄ちゃんのいる部屋、冬でも暑いから」
「……なんかショックなんだけど」
べつに、汗かきでも、平熱が高いわけでもないのに。
「ふゆ、あったかくていいよ」
「夏は?」
「わたし、あついのすき」
「夏は俺の部屋来ないでね」
「うるせー」
なんだろう、そんな体質があるのだろうか。
言われてみれば、俺の部屋は、冬でもストーブなしで20℃弱はある。
普通はもっと寒いのかもしれない。
謎だ。

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