2012
06.22

うにゅほとの生活211

2012年6月22日(金)

俺が車を購入したのは、もう五年も前のことだ。
職場への足を欲し、ただひたすらに格安の中古車を探し求めた。
そうして見つけたのが平成10年式のボロっちいミニカだった。
カーステレオ完備、車検二年付き、冬タイヤまで付属して、支払総額しめて12万円。
もはや格安を超えて激安の域であるが、仕事を辞めた今でもちゃんと走り続けている。
やたらとファンベルトの切れる、財布泣かせの一台だ。
このミニカを、五万円で譲ってほしいという人が現れた。
父親の同僚である。
今乗っている車の車検が切れたため、新車を購入するまでの繋ぎにしたいそうだ。
当然、快諾した。
どうせ半年もすれば、車検が切れて廃車になる予定だったのだ。
それが幾許かの金になるならば、断る理由などありはしない。
降って湧いた臨時収入に軽く興奮していると、
「……ミニカちゃん、うっちゃうの?」
うにゅほが俺の顔と床とに視線を惑わせながら、そう言った。
ああ、そうか。
うにゅほは愛着が強い。
人に対しても、物に対してもだ。
俺は答えた。
「ああ、売るよ」
先方とは既に話がついているし、今日中に取りに来る手筈になっている。
断る理由は、ひとつできた。
しかし、それを認めるわけにはいかない。
認めた先にあるものは、たぶんゴミ屋敷とかそういうのだ。
「だから、最後のドライブに行こう」
そう言って、うにゅほの手を取った。
ドライブと言っても、特別なことはしない。
いつもの道を、どこにも寄らずに、ただ走るだけだ。
カーステレオから流れる聞き覚えのない新曲に乗せて、訥々と会話を交わしながら。
日が沈み、ミニカは引き取られていった。
「いっちゃったね」
「そうだな」
五年分のありがとうを視線に込めて、しばらく街路を眺めていた。
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