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2019
11.30

うにゅほとの生活2912

2019年11月29日(金)

「◯◯……」
うにゅほが、神妙な顔つきで俺の名を呼んだ。
「どうした」
ただならぬものを感じ、思わず背筋を伸ばす。
「きょう、かくじつに、いいにくのひ……」
「──…………」
ぶに。
「う」
うにゅほの鼻を軽く押した。
「何かと思っただろ」
「うへー」
「まったく」
「でも、かくじつに、いいにくのひ」
「たしかに」
「いいひしりーず、さいごのしかく」
「まだ30日があるだろ」
「さんじゅうにち、ごろあるかなあ……」
「竿の日、とか」
「!」
「サンジュウで、三重県の日とか」
「ある……」
「な」
"に(2)っこりいい(1)ニ(2)ラ"が語呂合わせとして成立しているのだから、いくらでもやりようはあるはずだ。※1
「あ、もひとつあった」
うにゅほが、人差し指を立てて言う。
「いいふくのひ」
「あるな」
「あるでしょ」
「あるいは、いいフグの日でもあるかもしれない」
「あるね」
「あるだろ」
「……いいにくきゅうのひ、とか」
「さすがに9が足りないんじゃないか?」
「そかー」
「2月99日は確実に肉球の日だな」
「ないやつ!」
「ないとは限らないぞ。世の中には、8月32日という都市伝説が──」
そんな会話を交わすうち、いつの間にやら日が暮れていくのだった。
ふたりはなかよし。

※1 2019年2月12日(火)参照

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2019
11.28

うにゅほとの生活2911

2019年11月28日(木)

三日ほど安静にした結果、腰痛はそれなりに緩和した。
だが、完治には程遠い。
「そもそもの問題は、右半身にあるんだってさ」
「みぎはんしん?」
「右半身の筋肉が、どこもかしこも凝り固まってるらしい」
「それで、こしいたくなったの?」
「たぶん……」
整骨院の先生の言葉をすべて完璧に理解できたとは言いがたい。
だが、要約すると、概ねそのようになる。
「こしがわるいんじゃないのかな」
「腰が悪いというより、右半身をカバーするための負荷が腰に集中した、みたいな」
「なるほど……」
「あと、仕事中の姿勢も悪いみたい」
「あー」
「わかる?」
「せなか、まがってるもん」
「曲がってるか……」
「うん」
「それもよくないんだろうけど、畳に直接腰を下ろしてるのが不味いって」
「そなの?」
「できれば椅子に座って仕事してくださいって言われた」
「……できる?」
「場所、ないよな」
「うん……」
「まあ、"できれば"だから……」
できないものは仕方がない。
「しごとづくえ、あしながいのかうとか」
「箱椅子か何かと一緒に?」
「うん」
「一考の余地ありだな」
「でも、すぐにはむりだね……」
「すぐにはなあ」
高さを合わせるためには、実際に手を触れる必要があるだろうし。
「あ、そだ。きょうはせいこついんいかないの?」
「あー……」
「?」
俺の反応に、うにゅほが小首をかしげる。
「さっき電話したら、整骨院の先生、インフルだってさ」
「!」
「予防接種受けといてよかったな」
「ほんとだね……」
ギックリ腰の上にインフルエンザとか、本格的に笑えない。
備えあれば憂いなし、である。

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2019
11.28

うにゅほとの生活2910

2019年11月27日(水)

整骨院を受診したところ、ギックリ腰と診断されてしまった。
「そう言われると、痛い気がしてくるなあ……」
我ながら単純である。
「いたいのは、いたいんだよ。きのせいとかないよ」
「そうかな」
「だって、いたいんだもん」
「そうかもしれない……」
プラセボの反対で、悪い影響を与えるものをノセボという。
"気のせい"は、確実に、人体を蝕むのだ。
それはそれとして、
「はい、みず」
「え、ありがとう」
「みず、のみたいとおもって」
「たしかに喉は渇いてたけど、よくわかったなあ……」
「うへー」
うにゅほの甲斐甲斐しさが度を越している気がする。
「ちょっとトイレ──」
「かたかすね」
「ありがとう……」
これでは、いつぞやの介護ごっこそのままである。※1
まさか、こんなに早く現実になるとは思わなかった。
「早いとこ痛みが取れてほしいなあ……」
「ほんとだね」
うにゅほの顔を、そっと覗き込む。
「……ほんとに?」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「いや、介護楽しそうだしさ」
「たのしいけど、なおってほしいよ。◯◯、つらそうだもん」
「──…………」
聖女か?
聖女なのか?
「……なんか、ごめん。邪推したな」
「なんであやまるの?」
「なんとなく……」
「へんなの」
くすりと笑う。
この子には、もう、勝てない気がするのだった。

※1 2019年11月6日(水)参照

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2019
11.26

うにゅほとの生活2909

2019年11月26日(火)

「こし、だいぶよくなったね」
「ああ」
痛むことは痛むが、漫然と日常生活を送るぶんには不自由ない。
足元に落ちたゴミを拾うこともできる。
ただ、
「リングフィットができない……」
せっかく運動する習慣がつきつつあったのに、水を差された気分だ。
「だめだよ」
「やらないよ」
「よろしい」
ここで無理をするほど考えなしではない。
今は、ただただ安静だ。
「代わりに、××が運動するとこ見せて」
「えっ」
「××は腰痛くないんだから、リングフィットできるだろ」
「えー……」
「嫌?」
「リングフィットいやじゃないけど、◯◯よりさきすすみたくない」
「あー」
進行度、揃えてあるもんな。
「じゃあ、一度クリアしたステージをもっかいやるとか」
「できるの?」
「できるできる。レベル上げしときな」
「はーい」
うにゅほがリングフィットアドベンチャーを起動し、ワールド2-1を選択する。
しばしの屈伸運動ののち、敵と遭遇し、
「◯◯、どれー?」
「敵二体だから、範囲攻撃」
「さげてぷっしゅ?」
「そうそう」
「わかった!」
リングコンを下に構え、押し込む。
「うー……しょ、うー……しょ」
「負荷3だから、キープも短いな」
「でも、つか、れる……」
「頑張れー」
気楽に声援を送る俺の心に、ふと芽生える感情があった。
楽しい。
うにゅほが呼吸を乱しながら運動しているさまを後ろから眺めるのが、むしょうに楽しい。
「おわった……」
「はい、もう一ステージ!」
「ひー!」
少年野球の監督って、こんな気分なのだろうか。
一緒にするなと怒られそうだけど。

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2019
11.25

うにゅほとの生活2908

2019年11月25日(月)

「──だっ、いだ、いたたた……」
足元のゴミを拾おうとして、腰が悲鳴を上げた。
「あ、わたしひろう!」
「ありがと……」
朝起きると、すこぶる腰が痛かった。
原因はわからない。
「寝違えたのかなあ……」
「こしって、ねちがえるの?」
「よほど寝相が悪ければ、寝違えることもあるかもしれない」
うにゅほが、ぼんやりと視線を上に向ける。
「よほど……」
うにゅほの脳内で、とんでもない姿勢を取らされている気がする。
「こし、もんでだいじょぶかな」
「ここまで痛めると、もう、素人が手出ししないほうがいいかもしれない……」
「じゃあ、せいこついん?」
「……あんまり運転したくないなあ」
不意に激痛が走ったとき、運転を誤らない自信がない。
「でも、きょう、みんないないし……」
どうしよう、どうしようと、うにゅほが視線をさまよわせる。
「──あ、きゅうきゅうしゃ!」
「勘弁」
「そか……」
救急隊員どころか、電話口で確実に怒られる。
「ごめんね、わたし、めんきょないから……」
「いいよ。整骨院なんて、明日行けばいいんだから」
「でも」
「……免許取る?」
「──…………」
うにゅほが、そっと目を逸らす。
「じしんない……」
「だよなあ」
まあ、わかってた。
「悪いけど、湿布貼ってくれるか」
「わかった!」
湿布が効いたのか、あるいは風呂に入ったからか、午後十一時現在、腰痛は幾分か緩和されている。
このまま治ってくれればいいのだが。

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2019
11.25

うにゅほとの生活2907

2019年11月24日(日)

再発行申請をしていたクレジットカードが、ようやく手元に届いた。※1
「これで、安心して買い物できるな」
「げんきんももたないとだめだよ」
「はーい」
クレジットカードは便利だが、いまだに使えない場所もある。
二、三万円は財布に常備しておきたいものだ。
「ふるいカード、おくりかえすんだっけ」
「ハサミで切ってからな」
「わたし、きっていい?」
「いいけど……」
割れたクレジットカードをうにゅほに渡す。
「きるぞー」
シャキ、シャキ。
軽く素振りをしたあと、うにゅほがカードにハサミを入れる。
「……そんな端っこじゃなくて、もっと真ん中切っていいんだぞ?」
「うん、まんなかもきる」
「真ん中も?」
「ばらばらにする」
「えっと、そこまでしなくても──」
「だめだよ」
うにゅほが眉をひそめる。
「だれかにばんごうみられたら、つかわれちゃうんだよ」
「たしかに……」
「ぜんぶのすうじ、ばらばらにしないと」
うにゅほの言う通りだ。
不慮の事故で誰かの手に渡ったとき、カード番号やセキュリティコードが読み取れる状態であれば、悪用され得る。
だが、細切れにしてしまえば、その心配はないのだ。
「××は頼りになるなあ」
うにゅほの頭を、ぽんと撫でる。
「うへー……」
「俺、そこまで考えてなかったよ」
「クレジットカード、べんりだけど、こわいもん」
「そうだな」
不意に危機意識を問われ、はっとさせられる俺だった。

※1 2019年11月15日(金)参照

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2019
11.24

うにゅほとの生活2906

2019年11月23日(土)

パンケーキで有名な喫茶店に、ふたりで行ってきた。
「……混んでるな」
「こんでるね……」
待合の椅子はすべて埋まり、立ちながら待っている客もいる。
昼食時を避けたにも関わらず、この混雑具合だ。
さすが人気店といったところだろう。
「どうする?」
「パンケーキ、たべたい」
意志の篭もった瞳で俺を見上げ、うにゅほがそう答えた。
「じゃあ、待つか」
「まつ」
五分ほど待つと、待合の椅子が空いた。
思ったよりは回転が早いらしい。
さらに十分ほど待つと、店員が、奥の席へと案内してくれた。
「××、なんにする?」
「パンケーキ!」
聞くまでもなかった。
「じゃあ、俺もパンケーキかな。トッピングはホイップクリームで」
「わたしも」
注文して十五分、ようやくパンケーキが俺たちの元へと運ばれてきた。
「ほら、フォークとナイフ」
「ありがと」
「では、いただきましょう」
「いただきます」
パンケーキにナイフを入れ、その感触のなさに戸惑う。
「……これ、ナイフいらなくない?」
「いらないかも……」
フォークのみで切り分けてみると、するりとフォークの歯が通る。
「──…………」
そのまま口へ運ぶ。
滑らかな舌触りのパンケーキが、口内でとろりと溶けた。
「おいしい!」
「うん」
「ふわふわだねえ……」
ふわとろパンケーキの名に恥じぬ、見事な柔らかさだ。
いっそ、トッピングのホイップクリームのほうが、まだ口の中に残るかもしれない。
「ほんと美味しい、けど」
「?」
パンケーキの味に満足そうなうにゅほが、俺の態度に小首をかしげた。
「ぜんぜん食べた気がしない……」
「あー……」
結局、帰り際に、コンビニでサンドイッチを買ってしまった。
昼食を抜いて食べに行くものではなかったようである。

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2019
11.23

うにゅほとの生活2905

2019年11月22日(金)

「はー……!」
リングフィットアドベンチャーで一汗流したあと、チェアに深く腰掛ける。
「これ、マジで運動になるな……」
「うん、すーごいつかれる」
「××は、負荷3に落としたんだっけ」
「そうそう」
「……負荷最大にしたら、どうなるんだろ」
「!」
うにゅほが目をまるくする。
「やめたほういいよ」
「つっても自重トレーニングだろ。大差ないと思うけど」
「そうかなあ……」
「じゃあ、敵が出る最初のステージだけ」
「うん……」
負荷を最大の30に設定し、ワールド1-2を選択する。
サイレントモードに変更したので、ジョギングは膝を屈伸させるだけで済む。
「よし、敵だ」
「だいじょぶかなあ……」
「大丈夫、大丈夫」
フィットスキルのスクワットを選択し、画面の指示に従って腰を落としていく。
その体勢を数秒キープし、腰を上げれば一回だ。
だが、
「──待って、キープ長い! キープ長い!」
おまけに回数も増えている。
「これヤバい……!」
「やっぱし……」
うにゅほが、心配半分、ほれ見たことか半分の、複雑そうな表情を浮かべる。
なんとかステージをクリアするころには、
「──はッ、は、はあ……っ!」
死ぬほど息が切れていた。
「30は、ダメだ……。21に戻す……」
「そうしよ」
人には、分相応の負荷があるのだ。
わざわざ自動で測定してくれたのだから、それに従うべきだった。
「……××、やってみる?」
「!」
うにゅほが慌てて首を横に振る。
「冗談」
「もー……」
いまの負荷に慣れていけば、いずれ30でも平気になるのだろうか。
ゲーム内のキャラクターのみならず、自らのレベルも上げていくゲーム。
わりと革新的な気がするのだった。

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2019
11.22

うにゅほとの生活2904

2019年11月21日(木)

「──……あー」
だるい。
秋から冬の変わり目は、いつもそうだ。
気温の低下と日照時間の減少に適応しきれていないのだ。
このだるさは、冬という劣悪な環境に体が順応するまで続く。
「◯◯、だいじょぶ……?」
デスクに突っ伏した俺の背中を、うにゅほが優しくさすってくれる。
「大丈夫じゃないけど、大丈夫。一週間くらいで治るから……」
「いまつらいの、かわらないよ」
「……ありがとう。××も、いま、大変なのに」
「わたし、なれてるから」
「慣れてても、つらいのは変わらないだろ」
「うん……」
一時的だろうが、慣れていようが、つらいものはつらい。
「なんか、水風呂を思い出すよ」
「みずぶろ?」
「入る瞬間は冷たくて苦しいけど、慣れてしまえばなんてことないだろ」
「あー」
うんうんと頷くうにゅほを見て、ふと思う。
「××って、水風呂入ったことあるの?」
「あるよ」
「あるのか」
「ふらののおんせん、みずぶろあった」
「あー……」
あった気がする。
「水風呂入ると、ヒッてなるよな」
「なるなる」
「冬場に急に外出ても、ヒッてならないのに……」
「ふしぎ」
うにゅほと言葉を交わす。
それだけで、幾分か気が紛れる。
「◯◯」
「うん?」
「ねなくてだいじょぶ?」
「……寝ると際限なくなりそうだから、いまは××と話してたいな」
「うへー……」
うにゅほが照れ笑いを浮かべる。
小一時間ほど取り留めのない会話を続けるうち、徐々に体調が良くなり始めた。
うにゅほは、下手な薬より効果があるのかもしれない。

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2019
11.21

うにゅほとの生活2903

2019年11月20日(水)

「今日は、いいかんぶつの日らしい」
「かんぶつ?」
「乾物。乾燥させた食べもののことだな」
「しいたけとか?」
「干し椎茸もそうだし、ドライフルーツ全般のことも指す」
「ほしがきとか」
「そうそう」
ドライフルーツと聞いて真っ先に干し柿が出てくる感性のことはひとまず置いておくとして、
「どうして、いいかんぶつの日になったと思う?」
「うーと、"いい"は、じゅういちがつだから」
「定番だな」
「じゅういちがつ、そんなのばっかし」
わかる。
「だけど、今回は一味違うぞ。十一月であることにもちゃんと意味がある」
「お」
「乾物には、干物も含まれる。干物の"干"の字は?」
「じゅういちだ!」
「その通り」
「こんかい、すっきりパターン?」
「どうかな」
軽く肩をすくめ、続ける。
「二十日である理由は、乾物の"乾"の字に含まれている」
「かんのじ……」
「"乾"って字はわかる?」
「かけるとおもうけど、あたまのなかだとよくわからない」
「じゃあ、書いてみな」
メモ帳とペンを手渡す。
「かわく、かわく──あっ」
書いている途中で気が付いたらしい。
「じゅうがふたつで、にじゅうにち!」
「正解」
「うへー」
「今回、なかなかのすっきりパターンだろ」
「あれ、のこりは?」
「──…………」
「?」
小首をかしげたうにゅほに告げる。
「ここまで頑張ったんだから、見なかったことにしてあげよう」
「そか……」
いちおう"11月20日にかんぶつを乞う"としているのだが、明らかに"乞"が蛇足だ。
つくづく惜しい記念日である。

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