FC2ブログ
2019
09.30

うにゅほとの生活2852

2019年9月30日(月)

「んー……」
慣れ親しんだサージカルマスクを外し、深呼吸する。
「さすがに、もう要らないかな」
「せき、あんましでなくなったね」
「完治とは行かないけど、昼間はほとんど出ないし、そもそも風邪はとっくに治ってるからな」
ここ二週間ほど咳が止まらないのは、喘息がぶり返したためである。
痰は既に治まっており、マスクを外したとしても、風邪を伝染す心配はないだろう。
「──…………」
じ。
うにゅほが無言で俺の顔を見つめる。
「どした」
「◯◯のかお、ひさしぶりにみたきーする」
「大袈裟な……」
食事どきや風呂上がりなど、いくらでも見る機会はあっただろうに。
「あまりにイケメンでびっくりしたか」
「びっくりはしない」
「そりゃそうだ」
おまけに言えば、イケメンでもない。
「でも、かおみれたほう、あんしんする……」
「そんなもんかな」
「そんなもん」
「……まあ、でも、そうか。そうだな。俺も、××の顔見れないと、寂しいと思う」
「でしょ」
「××は可愛いからなあ」
「う」
うにゅほの動きが止まる。
「××と一緒にいられる俺は、幸せ者だなあ」
「──…………」
うにゅほが、自分のほっぺたを両手で包む。
照れているときの仕草だ。
「……からかわれてるきーする」
「はい」
「もー!」
「でも、嘘は言ってないぞ。××のこと、可愛いと思ってるもん」
「……うへー」
ちょろい。
だが、そんなところも可愛いのだった。

スポンサーサイト



Comment:0  Trackback:0
2019
09.30

うにゅほとの生活2851

2019年9月29日(日)

友人へ送る荷物を郵便局に預け、帰宅する最中のことだった。
「──あ、あかなった」
ブレーキペダルを踏み込み、停止線の前で停車する。
「ここの赤信号、長いんだよなあ……」
「そなの?」
「向こう優先道路だし、丁字路だからな。二分くらいは待たされるんじゃないか」
「ながい……」
「急いでないし、悠然と構えようではないか」
「ゆーぜん」
「悠然」
「ぜんゆー」
「ぜんゆう?」
「いみはない」
「でしょうね」
中身のない会話を交わしていると、あっという間に二分が経過した。
「しんごう、かわんないねえ……」
「歩行者用の青信号とか、そろそろ点滅してもおかしくないと思うんだけど」
「あ、まえのぱそこん、いつうりにいくの?」
「資格試験終わってからかな」
「いくらになるかなあ」
「五万くらいになってくれると、すこしは助かるんだけど」
「うん」
「買ってから三年半だし、完動品だし、ちょっとは色つけてほしいところだな」
「いいケースだもんね」
「新しいPCも、決して悪いケースじゃないんだぞ。メンテナンス性にも優れてるし」
「ホコリ、たまらない?」
「通気性は悪くなさそうだけど──」
しばしPCの話題に花を咲かせたが、それでも信号は変わらない。
「……五分経ったな」
「しんごう、こわれてるのかも……」
本気で心配になる長さだ。
「あっ」
「?」
「後ろの車、Uターンしてった」
「あー……」
「気持ちはわかる」
信号機の故障だと見切りをつけたのだろう。
だが、その直後、
「しんごう、てんめつしてる!」
「本当だ」
歩行者用の青信号が点滅し、すぐに赤信号へと切り替わった。
「長かったなあ……」
「うん」
「五分は新記録かもしれない」
イライラせずに泰然自若としていられるのは、うにゅほという話し相手がいるからだ。
ふたりでいれば、どんな時間も苦にならない。
待ち望んだ青信号にアクセルペダルを踏み込みながら、心のなかでうにゅほの存在に感謝するのだった。

Comment:0  Trackback:0
2019
09.29

うにゅほとの生活2850

2019年9月28日(土)

行きつけのパスタ専門店へ、久方ぶりに顔を出した。
「前に来たの、いつだっけ」
「うーと……」
しばし思案し、うにゅほが答える。
「たぶん、ねんたんい」
「だよな」
具体的な日数まではわからないが、まずもって一年は確実だ。
下手をすれば二年もありうる。
「××、なに食べる?」
「いかすみ」
「イカスミ好きだなあ」
「◯◯、カルボナーラでしょ」
「正解」
「カルボナーラすきだなあ」
互いの好きなものは、だいたい把握している。
注文しようとメニューを開いたところ、
「あれ、いかすみない……」
「なくなった?」
「うん」
確認すると、本当にない。
「ないな……」
「あ、カルボナーラはある」
「カルボナーラとペペロンチーノはド定番だからな。なくならないだろ」
「いかすみも、ていばんとおもう……」
「たしかに」
だが、ないものはない。
「じゃあ、たらこマヨにしましょう」
「二番目に好きなやつだな」
「うん。にばんめにすきなやつ」
「大盛り?」
「しないよー」
「俺は、大盛りにしよう」
「おおもり、ごじゅうえんたかくなってる」
「本当だ……」
この一、二年で、いろいろ変わったものだ。
だが、
「──うん、美味い」
「おいしいねえ」
味は、変わっていなかった。
「××、小皿取って。すこし分けてあげよう」
「わたしもあげるね」
「あとでいいよ。食べ切れないだろ?」
「さめちゃうよ」
「あー」
たしかに。
そんなこんなでパスタを堪能し、ダイエットの成功がまた一日遠のいたのだった。
仕方ない、仕方ない。

Comment:0  Trackback:0
2019
09.27

うにゅほとの生活2849

2019年9月27日(金)

「◯◯ー……」
昼食をこしらえに行ったうにゅほが、ピザ用チーズの袋を携えて戻ってきた。
「どした」
「これ……」
袋を開き、すんすんと鼻を鳴らす。
「くさい、きーする」
「どれ」
袋を受け取り、嗅ぐ。
「……なんか、微妙に納豆っぽい」
「うん……」
賞味期限を確認する。
「二週間前に切れてる……」
「あー」
「しかも、これ、未開封の状態でって意味だからな」
「もっとだめだ」
「捨てよう。ヤバい発酵の仕方してるよ、絶対」
「チーズオムレツつくろうとおもったのに……」
チーズオムレツに未練はあるが、腹を壊してまで食べたいとは思わない。
「卵あるなら、今日は別のがいいな」
「オムレツいがい?」
「オムレツ、昨日食べたし」
ふわふわのプレーンオムレツ、美味しかったです。
「じゃ、なにがいい?」
「卵焼き」
「あまいの?」
「甘いの」
「いいけど、おひるごはんかなあ」
「甘い卵焼き、おやつ感あるもんな……」
「たまごやきいがいにも、なんかつくる?」
「ゆで卵」
「かんじゅく?」
「完熟」
「◯◯、かんじゅくすきだね」
「完熟のが美味しい」
「わたし、はんじゅくとかんじゅくのあいだくらい、すき」
「それも好き」
「えー」
「正確には、半熟が好きじゃないんだよ。なんか味違うだろ、あれ」
「そかなあ」
そんなわけで、卵づくしの昼食となった。
微妙にコレステロール値が気になるお年頃である。

Comment:0  Trackback:0
2019
09.26

うにゅほとの生活2848

2019年9月26日(木)

「──…………」
真っ黒な画面を見つめながら、しばし呆然とする。
「?」
ディスプレイを覗き込んだうにゅほが、小首をかしげてみせた。
「どしたの?」
「……PCが起動しなくなった」
「えっ」
うにゅほが絶句する。
「しょきふりょう……?」
「いや、WindowsUpdateのせい。再起動の直後にこれだから」
「……また?」
「また」
去年も似たような目に遭っている身としては、心の底から辟易する。※1
「ういんどうず、どうしてそんなことするの……」
「知らない」
「せってい、またやりなおし?」
「やり直し」
「そか……」
データ上の損失が一切ないことだけが不幸中の幸いである。
「おひる、たべたいのある?」
「……ふわふわのオムレツ」
「うん、わかった」
うにゅほ謹製のオムレツを胃袋に収めたあと、PCを工場出荷状態に戻し、昨夜こなした作業をすべてやり直した。
「──疲れたー!」
「おつかれさま」
「肩揉んで、肩」
「はーい」
うにゅほのマッサージを受けながら、見逃しはないか点検を行う。
「まったく、二度とWindowsUpdateなんて──あっ」
「あ?」
「……勝手に更新されてる」
"インストールを完了するには再起動が必要です"の文字が、死の宣告にしか見えない。
「いや、まだだ。再現性のある不具合じゃないかも……」
請われるままに再起動してみたところ、画面が再び真っ黒になった。
「──…………」
「◯◯……」
うにゅほが、気遣わしげに俺の肩を揉む。
「……ちょっと寝る」
「うん」
ふらふらとベッドに倒れ込み、目を閉じる。
何も考えたくなかった。
「──◯◯!」
十分ほど不貞寝を決め込んだところで、うにゅほが俺を揺すり起こした。
「ぱそこん、ついた!」
「マジか」
慌てて飛び起き、PCの前へ駆け寄る。
43インチのディスプレイに、デスクトップ画面が表示されていた。
「……起動にもたついてただけなのか」
「そうなのかな」
「てことは、今朝の作業ぜんぶ無駄じゃん……」
がっくりと肩を落とす。
「で、でも、ほら、ぱそこんなおったし」
「……うん。今日のところは、よしとしよう」
「そうしましょう」
今度こそ自動更新を確実に無効化し、一時の平穏を取り戻したのだった。
殿様商売もいい加減にしてほしい。

※1 2018年10月31日(水)参照

Comment:0  Trackback:0
2019
09.26

うにゅほとの生活2847

2019年9月25日(水)

「××、足元大丈夫ー?」
「だいじょぶー」
互いに声を掛け合いながら、巨大な段ボール箱を自室へと運び込む。
「よし、ゆーっくり下ろすぞ」
「はーい」
増税前にと急いで購入したPCが、とうとう届いたのだった。
「まえのぱそこんより、ちょっとちいちゃいね」
「前のが大き過ぎるんだよ」
「あー」
「正直、ケースだけなら前のほうがいい。あそこまで防塵性能の高いケースなんて、そうはないからな」
「そなの?」
「三年半、一度も掃除してないのに、中にホコリひとつ落ちてないんだぞ」
「すごい……」
「できれば同じケースで組みたかったけど、BTOって、そこまで自由きかないからなあ……」
「なかみ、うつせないの?」
「無理だと思う」
「そか……」
「できないものは仕方ない。だから、新しいPCを大切に使っていきましょう」
「はーい」
「まずは、データの移行から」
「でーたうつすの、たいへんだもんね……」
うにゅほは、幾度となく、新PCへの移行作業を俺の隣で経験してきた。
そう感じるのも当然だ。
だが、
「今回に限っては、まったく手間が要らないんだなあ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「インストールが必要ないデータ全部、最初から外付けHDDに突っ込んであるから」
既定のダウンロードフォルダを外付けHDD内に作る念の入れようだ。
「うと、はずして、つけるだけ?」
「外して、付けるだけ」
「かんたん」
「外付けHDDの劣化も怖いから取り替えるけど、いまじゃなくてもいいし」
「あたまいいねえ……」
「環境が変わることに間違いはないから、完全移行は深夜になると思う」
「むりしないでね」
「たまに肩揉んで」
「うん」
前のPCと遜色ない環境を作れたのは、深夜二時過ぎのことだった。
疲れた。
昨日の日記を書いて、さっさと寝ることにする。

Comment:0  Trackback:0
2019
09.24

うにゅほとの生活2846

2019年9月24日(火)

「──けほッ」
仮眠を取ろうとした俺の口から、無情にも咳が漏れる。
痰を伴わない乾性の咳は、さほど苦しくはない。
だが、
「こほッ、……けほっ」
数呼吸に一度という高頻度では、仮眠と言えど眠れるはずもない。
「ダメだー……」
眠気を持て余しながら、ベッドから下りる。
「せき、とまらないねえ……」
「ごほッ、風邪は、けほ、治ったんだけどな……」
日常生活に支障はないが、横になった途端、咳がぶり返す。
つらい。
「きのう、ねれた?」
「……すこしは眠れたけど、熟睡できた気はしない」
「──…………」
うにゅほが表情を曇らせる。
「大丈夫、大丈夫。先生に言って、シムビコートタービュヘイラーの回数も増やしてもらったし」
「しむび、きいてるのかなあ……」
「効いてるんじゃないかな」
たぶん。
「それにしても、眠い……」
「ねむいのにねれないの、つらいね」
「本当だよ……」
頭が重い。
目蓋が重い。
ついでに、気が重い。
このままでは、資格試験の勉強もおぼつかない。
「……しゃーない。チェアですこし寝る」
「ねれる?」
「目を閉じてるだけでも違うだろ」
「そだね」
チェアに深々と腰を下ろし、背もたれに体重を預ける。
「はい」
「ありがとう」
うにゅほからアイマスクを受け取り、装着すると、徐々に意識が沈んでいった。
起きたとき首が痛かったけれど、眠れないよりましだ。
これ以上心配をかけないためにも、早く治さなければ。

Comment:0  Trackback:0
2019
09.24

うにゅほとの生活2845

2019年9月23日(月)

ふたりで大いに寝過ごした秋分の日の午後、弟が自室の扉をノックした。
「兄ちゃん、ちょっとパソコン見てほしいんだけど」
「どした」
「なんか、変なページ出た……」
重い腰を上げて弟のPCを確認すると、よくある詐欺警告だった。
変なサイトは見ないようにと忠告し、自室へ引き上げる。
「ぱそこん、なおった?」
「壊れてないよ。ちょっと危なかったけど」
「そなんだ」
「知識がないのに海外のサイトを見ようとするから、こうなる」
「◯◯、ぱそこんはかせ」
「俺に限らず、俺の世代のオタクはたいてい詳しいよ」
「そなの?」
「PCがいまより不安定で、トラブルも多かった。それを自力で調べてなんとかしてきた連中だからな」
「(弟)は?」
「(弟)?」
「だって、さんさいちがい」
「(弟)は──うん」
思わず遠い目をする。
「……頼られるがまま、なんでも解決してあげたことが、成長を妨げたんだろうなあ」
「あー……」
「でも、解決法を知ってるのに教えないのも変だし」
「むずかしい」
「まあ、いまさら遅い気がするし、可能な限りは面倒見てやるさ」
「──…………」
しばしの沈黙ののち、うにゅほが口を開く。
「……わたしも、めんどうみてね?」
「なんの?」
「ぜんたいてきに……」
「もしかして、やきもち焼いた?」
「うん」
素直である。
「××の面倒なら、喜んで」
「うへー……」
「××も、俺の面倒見てくれな」
「よろこんで!」
見事な共依存だが、抜け出す気はさらさらない。
一緒に生きていくと決めたのだから。

Comment:0  Trackback:0
2019
09.23

うにゅほとの生活2844

2019年9月22日(日)

岩手の友人が北海道を訪れたため、急遽飲みに行くこととなった。
「……ごめんな、また留守番させて」
「うん」
小さく微笑んで、うにゅほが言う。
「だいじょぶ、なれてるから」
「うっ」
罪悪感が。
「……おみやげ、いる?」
うにゅほが、そっと首を振る。
「いらない。はやくかえってきてほしい」
「ぐッ」
罪悪感、おかわり。
「なるべく早く帰ってきます……」
「はい」
そう言って、逃げるように家を出たのが、午後七時半のことだった。

「──…………」
自室の扉を薄く開く。
明るい。
「ただーいまー……」
小声で呟きながら扉をくぐると、
「おかえり!」
「!」
うにゅほが俺を元気よく出迎えた。
「……××さん」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「いま、二時半なんですけど……」
思いのほか会話が弾んでしまい、帰るに帰れなかったのだ。
「こんな夜更かしして大丈夫か?」
「◯◯でかけたあと、よるねしたからだいじょぶだよ」
「夜寝」
「かえってくるの、おそくなるとおもって」
「がはッ」
とどめの罪悪感が心臓を射抜く。
「ほんと、いつもいつも、有言不実行ですみません……」
深々と頭を下げる。
「──…………」
ぽん。
俺の髪を、うにゅほが優しく撫でた。
「たのしかった?」
「……まあ、うん。楽しかった」
「なら、よかった」
顔を上げる。
うにゅほが微笑んでいた。
「──…………」
心が、じわりと暖かくなる。
「……××、何時間くらい寝たんだ?」
「うーと、さんじかんくらい」
「じゃあ、いつもより四時間は夜更かししよう」
「うん!」
「いま日記書いちゃうから、終わったら遊ぼうな」
「はーい」
明日のことは顧みない。
うにゅほが眠気に負けるまで、一緒に遊ぶことにする。

Comment:0  Trackback:0
2019
09.22

うにゅほとの生活2843

2019年9月21日(土)

何の日シリーズで手軽に日記を済ませようかと、今日の日付で検索してみると、
「今日、宮沢賢治の忌日なのか」
「きじつ?」
「命日のこと」
「ぎんがてつどうのよるのひと?」
「そうそう」
「◯◯、ぎんがてつどうのよる、すきだよね」
「好きだぞ」
「クリスマスのとき、まいとし、ぎんがてつどうのよるみるもんね」
「恒例行事だよなあ」
クリスマスイヴの夜、劇場版・銀河鉄道の夜をふたりで観賞する。
儀式のようなものだ。
「あと三ヶ月でクリスマスか……」
「うん」
「時間が経つのが早すぎて、ちょっと怖いくらいだ」
「そかな」
「××も、俺と同じくらいの年になれば、嫌でもわかるよ」
「◯◯、そのときなんさい?」
「──…………」
「──……」
「考えないことにしよう」
「うん……」
たぶん、そのころには、時の流れはもっと早くなっているのだろう。
「代わりに、楽しいことを考えましょう」
「はい」
「××の誕生日、もうすぐだな」
「うん!」
「誕生日プレゼント、欲しいものある?」
「ない!」
清々しいまでの即答である。
「じゃあ、今年も、当日をお楽しみに」
「はーい」
さて、今年は何をプレゼントしようか。
幾つか候補はあるが、まだ絞りきれてはいない。
とびきりの笑顔を見るために、今年も頑張って選ぶことにしよう。

Comment:0  Trackback:0
back-to-top