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2019
03.31

うにゅほとの生活2671

2019年3月31日(日)

年度末である。
それはそれとして、目を覚ますと午後五時だった。
「──…………」
しばし、呆ける。
「俺の日曜日が……」
独り言を聞きつけたのか、うにゅほが書斎側から顔を出す。
「あ、おきた」
「起きました」
「おそようございます」
「……おそようございます」
「すーごいねてたねえ」
「軽く十二時間以上寝てた……」
「つかれてたのかな」
「そうかも」
のそのそとベッドから抜け出ると、全身の異様な倦怠感に気がついた。
「だっる」
「だいじょぶ?」
「まあ、十二時間も寝れば、こうなるか……」
「きーつけてね」
「うん」
壁に手をつきながら歩き、パソコンチェアに腰を下ろす。
「──あ、そだ。きょう、おじいちゃんのめいにちだって」
「爺ちゃんの?」
「うん」
しばし思案し、
「……あー、そうだった気がする」
完全に忘れてたけど。
「父方の爺ちゃんって、××、会ったことないんじゃないか?」
「うん、ない」
「××がうち来たとき、もう亡くなってたからな」
「どんなひとだったの?」
「うーん……」
腕を組み、天井を見上げる。
「物静かで」
「うん」
「アル中で」
「あるちゅう……」
「酒を飲むたび、くしゃみする人かなあ」
「うと、ほかには?」
「……あんまり思い出せない」
「えー……」
「ほんと、喋らない人だったんだよ」
「そなんだ」
「まあ、あとで線香の一本でも上げておくか」
「うん」
久方ぶりに父方の祖父のことを思い出した。
ずっと一緒に住んでいたはずなのに、こうまで忘れてしまうものなんだな。
時の流れは残酷だ。

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2019
03.30

うにゅほとの生活2670

2019年3月30日(土)

Amazonからキープラーが届いた。
「よし、これでキーボードの掃除ができる」
「ね、ね、すぽんすぽんとっていい?」
「いいぞ」
二本の針金と取っ手のみで構成されたシンプルなキープラーをうにゅほに手渡す。
「やり方、覚えてる?」
「うーと、かどとかどにひっかけて──」
キーボード右下の「→」キーの下に針金を滑り込ませ、
「や!」
すぽん。
至極あっさりとキーキャップを引き抜いた。
「とれた!」
「お見事」
「うへー……」
うにゅほが照れ笑いを浮かべる。
「悪いけど、次々抜いてくれるか。俺はキー拭いてるから」
「はーい」
すぽん、すぽん、すぽん。
コツを掴んだのか、流れるようにキーキャップが引き抜かれていく。
「キーのした、きたないねえ……」
「毛が多いな」
「わたしのけーもある」
見れば、数十センチはある細く長い髪の毛が、キーキャップの下に絡みついていた。
「一本だからいいけど、百本くらいあったらホラーだな」
「こわい」
「自分の髪だろ」
そんな会話を交わしていると、
「◯◯、えんたーぬけない……」
「貸してみ」
「うん」
うにゅほからキープラーを受け取り、エンターキーに引っ掛ける。
ぐい、と力を込めるが、容易には抜けない。
「思いきり引っこ抜くと、壊れそうで嫌だなあ……」
「わかる」
「まあ、やるけど」
すぽん!
「ぬけた」
「真上に力を入れるのがコツだな」
「わかった!」
しばしして、
「はい、おしまい」
スペースキーを最後に嵌め込んで、キーボードの掃除を終える。
「おつかれさま!」
「××も、お疲れさま」
「きれいになった!」
「ああ」
タイピングも、どことなく心地よい。
頻繁にとは言わずとも、年に一度くらいは徹底的に掃除したいものだ。

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2019
03.29

うにゅほとの生活2669

2019年3月29日(金)

「──…………」
うと、うと。
マウスを握り締めながら、不意に意識が遠くなる。
「◯◯?」
「はっ」
「ねてた」
「寝てた……」
「おつかれですね」
「最近、ちょっと」
「ねむいなら、ちゃんとねないとだめだよ」
「でも、出掛ける約束だろ」
今日は仕事が少ないので、うにゅほと遊びに行く約束をしていたのだった。
「むりしないで」
「約束を守るのは、無理じゃない」
「でも、ねむいと、うんてんあぶないとおもう……」
「……あー」
たしかに。
「じゃあ、こうしよう」
「そうしましょう」
「まだ何も言ってないけど……」
「◯◯、まちがったこといわない」
「──…………」
全幅の信頼を寄せられて、嬉しいような、戸惑うような。
「三十分か一時間くらい仮眠を取って、それから出掛けようかなって」
「うん」
「出るのすこし遅れるけど、いい?」
「いいよ」
「じゃあ、失礼して──」
ふらふらと寝室側へ赴き、ベッドで横になる。
「あいますく、おちてたよ」
「ありがと」
うにゅほからアイマスクを受け取り、装着する。
「三十分くらいで起こして……」
「はーい」
ふ、と意識が沈んでいく。
疲れが溜まっていたらしい。
三十分の仮眠を終え、冷水で顔を洗うと、ようやく目が覚めた気がした。
「──よし、ゲーセン行くか!」
「おー!」
荒稼ぎしたチョコボールの中に、エンゼルが隠れていますように。

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2019
03.28

うにゅほとの生活2668

2019年3月28日(木)

「◯◯、サイダーのむ?」
「飲む飲む」
カシュッ!
うにゅほから350ml缶を受け取り、開封する。
ひとくちあおり、
「くあー!」
喉を焼く刺激に、思わず声を漏らした。
「やっぱ、三ツ矢サイダーだな」
「わたしものむー」
「はいはい」
350ml缶を、うにゅほに返す。
ひとくち啜り、
「かー!」
「それ、俺の真似?」
「うん」
「似てないなあ」
「そかな」
少なくとも、俺はそんなに可愛くない。
「それにしても、いきなりどうしたんだ。三ツ矢サイダーの日だから?」
「みつやサイダーのひ?」
「3月28日だから」
「あー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「なんか、れいぞうこにあったから」
「たまたまか」
「うん」
まあ、そういうこともあるだろう。
サイダーを飲み干したあと、自室でくつろいでいると、扉がコンコンとノックされた。
「はーい」
入ってきたのは、弟だった。
「兄ちゃん、××、冷やしてたサイダー知らない?」
「あっ」
思わず、うにゅほと顔を見合わせる。
「飲んだしょ」
「はい……」
「箱で買ってあるから飲みたきゃあげるけど、冷やしてるの勝手に持ってくのはやめてくんない?」
「悪い」
「ごめんなさい……」
しゅん。
真っ当な理由で普通に怒られて、うにゅほが凹んでしまった。
「……あー」
話題をずらそう。
「(弟)、やっぱ、三ツ矢サイダーの日だからサイダー買ってきたのか?」
「三ツ矢サイダーの日?」
「3月28日だから」
「いや、もともと好きだから常備してるだけだけど」
「そうなのか……」
「今後は気をつけて」
「はい、きーつけます……」
弟が、扉を閉める。
「……怒られちゃったな」
「うん……」
「三ツ矢サイダーの日、ぜんぜん関係なかったな」
「うん……」
「膝、乗るか?」
「のる……」
膝の上のうにゅほを慰めてやりながら、こうして日記を書いているのだった。

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2019
03.27

うにゅほとの生活2667

2019年3月27日(水)

「……キープラーが届かない」
「きーぷらー?」
「キーボードのキーをすぽんすぽん取るやつ」
「まえかったきーする」
「前買ったんだけど、見当たらなくてさ」
「ひきだし、ないの?」
「ない」
「ないの……」
「ありそうな場所は全部探したんだけどな」
「なさそうなばしょにあるんだね」
「なさそうな場所だと、範囲が広すぎる」
「たしかに」
「まあ、五百円もしない品だからさ。Amazonで気軽に注文したんだよ」
「いつかったの?」
「一週間くらい前かなあ……」
「おそい」
「普段は二日くらいで届くのにな」
「おそいねえ……」
「カートに入れっぱなしで、注文確定してなかったりして」
「あー」
「──…………」
「?」
ブックマークからAmazonを開き、注文履歴を確かめる。
「……ない」
「ない?」
「注文確定してない!」
「してなかった……」
「たまにやらかすんだよなあ……」
Amazonさん、疑ってごめんなさい。
「──これでよし、と」
「とどく?」
「たぶん、明後日には」
「すぽんすぽんとっていい?」
「徹底的に掃除するつもりだから、全部取っていいぞ」
「もと、もどせる?」
「公式サイトに写真あるから」
「そか」
高いキーボードだ。
しっかりメンテナンスをして、長く使いたいものである。

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2019
03.27

うにゅほとの生活2666

2019年3月26日(火)

「あ」
「?」
「おもちゃのカンヅメ、新しいの出てる」
「!」
うにゅほがディスプレイを覗き込む。
「あたらしいの、どんなの?」
「ふしぎなキョロちゃん缶、だって」
「ふしぎ」
「でんじろう先生監修」
「だれ?」
「えーと」
でんじろう先生について説明しようとして、
「……誰なんだろう」
ほとんど名前しか知らないことに気がついた。
「なんか、よくテレビで面白い科学実験をする人なんだけど……」
「かがくじっけん」
「なんか動画リンク貼ってたから、見てみるか」
「みるみる」
うにゅほが俺の膝に陣取る。
「では、再生」
再生ボタンを押す。
それは、でんじろう先生が、自由自在にシャボン玉を操る動画だった。
「でんじろうせんせい、てじなし?」
「いや、ちゃんと種があるんだよ」
「てじなもたねあるよ」
「そうだけど、こう、科学的な……」
「かがくてき」
「たぶんだけど、この動画の種は、静電気だな」
「せいでんき……」
「静電気で操ってる、はず」
「せいでんき、パチッてなるやつ」
「そうだな」
「なんでシャボンだまうごくの?」
「──…………」
「?」
「わからん!」
なんとなくはわかるが、上手く言葉にできない。
「ふしぎだねえ……」
「不思議だな」
「ぎんのえんぜる、さがそうね」
「またゲーセンで荒稼ぎしてくるか」
「うん」
手持ちの銀のエンゼルは二枚。
あと三枚なら、さほど苦もなく入手できるだろう。

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2019
03.25

うにゅほとの生活2665

2019年3月25日(月)

デスクの上にペットボトルの蓋が転がっていたので、まとめて捨ててしまうことにした。
ゴミ箱までは、すこし距離がある。
適当に狙いをつけ、二個連続で放り投げると、

──コンッ

ペットボトルの蓋がゴミ箱の真上で衝突し、別々の方向へと飛び散った。
「うお」
軽度のミラクルに、思わず声が漏れる。
「どしたの?」
iPadでテレビを見ていたうにゅほが、顔を上げた。
「いや、大したことじゃないんだけど……」
明後日の方向へと転がったペットボトルの蓋を拾い上げながら、いまの出来事を説明する。
「ぽいぽいってして、ぶつかったの?」
「うん」
「くうちゅうで」
「たぶん、一個目は高く、二個目は勢いよく投げたんだろうな」
「みたかった……」
「そう言われましても」
「もっかい」
「狙っては難しいよ」
「えー……」
うにゅほが口を尖らせる。
「……まあ、やるだけやってみるけど、期待はしないように」
「わかった!」
拾い上げたペットボトルの蓋を右手に構え、二個連続で放り投げる。
すると、

──コンッ

ふたつの蓋が、再び、空中で弾けた。
「わ、すごい!」
「できた……」
「◯◯、すごいね!」
「思ったより簡単なのかな、これ」
そう思い、三度ペットボトルの蓋を放り投げる。
だが、以降は成功することなく、偶然が二度重なっただけという結論に落ち着いた。
幸運を無駄に消費した気がしてならない。

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2019
03.24

うにゅほとの生活2664

2019年3月24日(日)

深夜から朝にかけての雪が、露出していたはずのアスファルトを覆い隠している。
これが十一月の出来事であったなら、根雪になるかと騒いでいたことだろう。
「ほんと、季節が巻き戻っちゃったなあ」
「かんのもどり?」
「よく知ってるなあ」
「うへー」
寒の戻りは五月くらいの話だった気がするが、そう大きくは違いあるまい。
「灯油、汲んどいて正解だったな」
「ほんと」
「相互湯たんぽシステムも限界あるし」
「そうごゆたんぽシステム」
「俺が××を温めて、××が俺を温めるシステム」
「そんななまえなんだ」
「いや、適当」
「──…………」
あ、呆れてる。
「でも、わかりやすくない? 相互湯たんぽシステム」
「そかなあ」
「××なら、なんて名付ける?」
「うーと」
しばし思案し、答える。
「ゆたんぽごっこ」
「湯たんぽごっこか」
「うん」
「無難……」
「えー」
「××、なんとかごっこって好きだよな」
「そうかも」
「寝るごっこ、とか」
「ねるごっこ、する?」
「あれ、結局寝るから、ごっこじゃないんだよな」
「ねちゃう……」
「じゃあ、寝ないごっこ」
「ねないごっこ」
「徹夜する」
「ごっこだから、ねないと」
「……なんか、だんだんこんがらがってきた」
「ややこしい」
うにゅほとなら何をやっても面白いから、なんだっていいのだけれど。

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2019
03.23

うにゅほとの生活2663

2019年3月23日(土)

底冷えのする寒さに目を覚ますと、窓の外が白く染まっていた。
「吹雪いてる……」
まるで、季節が巻き戻ったかのような様相だ。
暖かな布団から抜け出し、自室の書斎側へ赴く。
「あ、おはよー」
「おはよう」
「ストーブ、いまつけた」
「そっか」
道理で寒いはずだ。
「最高気温、2℃だっけ」
「たしか」
「……なんか、やたら寒くない?」
うにゅほが、両手を擦り合わせながら答える。
「さむい……」
「寒いよな」
「にど、こんなさむかったっけ」
「どうだろ。週間天気だと2℃になってたけど……」
「しらべてみる」
うにゅほがiPhoneを取り出し、気象アプリを起動する。
「わ」
「何℃?」
「いま、マイナスにど」
「……マジか」
「さいこうきおん、マイナスいちど。さいていきおん、マイナスごどだって」
「納得」
「ふゆ、もどってきた」
「忘れ物かな」
「なにわすれたのかな」
「なんだろ」
「なにかなあ」
のんきな会話を交わしながら、自室の扉に手を掛ける。
「顔洗ってくる」
「うん」
「戻ってきたら、抱っこさせて。部屋があったまるまででいいから」
「あったまるまでー……?」
あからさまに不満げなうにゅほに、思わず苦笑する。
「じゃあ、あったまっても」
「うん!」
寒い日は、そう嫌いではない。
くっつく言い訳が成り立つからだ。
まあ、そんな言い訳などなくても頻繁にくっついているわけだが、それは言わないお約束である。

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2019
03.22

うにゅほとの生活2662

2019年3月22日(金)

すこし時間ができたので、うにゅほと外出することにした。
「くつはくの、ちょっとまっててね」
「はいはい」
上がり框に腰を下ろし、うにゅほがブーツに爪先を入れる。
ジロジロ見つめるのも変なので、周囲に視線を巡らせていると、
「──……げっ」
嫌なものを見つけてしまった。
「どしたの?」
「見ないほうがいいと思う……」
「きになる」
「まあ、気になるよなあ」
「うん」
仕方がない。
玄関扉の付け根を指差す。
「蝶番の上」
「?」
うにゅほが、指で示した先を覗き込み、
「う!」
思わず一歩後じさった。
「見ないほうがよかったろ」
「みないほうがよかった……」
それは、玄関扉の付け根でぺったんこに潰された二体のゲジの死体だった。
カラカラに乾き、ひとつは原型を留めていない。
「……見つけたからには放っておけないよなあ」
「うん……」
「××、靴べら取って」
「はい」
うにゅほが手渡してくれた靴べらを使い、ゲジの死体をこそぎ落とす。
ゴリ、ゴリ。
「うひー……」
「見なくてもいいのに」
「こなごな……」
「たぶん、半年くらい誰にも気付かれなかったんだろうな」
「げじ、ふゆでないもんね……」
まったく、出掛ける前にとんだ目に遭った。
久方ぶりのドライブは楽しかったので、終わりよければすべてよしとする。

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