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2018
10.30

うにゅほとの生活2520

2018年10月30日(火)

「はーさむさむ……」
帰宅し、階段を駆け上がる。
「おかえりー」
物音を聞きつけたのか、うにゅほが部屋の扉を開けて出迎えてくれた。
「は、どうだった?」
「虫歯じゃなかった。銀歯取れただけ」
「よかった」
「ガムの噛みすぎも問題だな……」
ダイエット中なので、ガムの消費が非常に激しい。
「ぎんば、くっつけたばっかだから、きょう、ガムかまないほうがいいかも……」
「そうする」
自室へ入り、作務衣に着替える。
「──って、部屋も寒いじゃん」
「うん、さむい……」
「ストーブ、灯油入ってないしなあ」
「うん……」
見れば、うにゅほも半纏を羽織っている。
「……エアコン、つけちゃう?」
「いいの?」
「必要なとき使わずに、なんのための家電か」
「たしかに……」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「真冬になると使えなくなるんだから、いまのうちに酷使しておかないと」
「でんきだい」
「込み込みで家賃払ってますし……」
「そだった」
「そんなわけで、スイッチオン!」
ぴ。
エアコンが駆動音を響かせる。
しばらくして、
「おー……」
「文明の利器、ばんざい……」
痺れるような温風が頬を撫でていく。
「真冬まではこれで凌ごう」
「うん」
もう、エアコンのない生活には戻れない。
そんなことを思うのだった。

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2018
10.29

うにゅほとの生活2519

2018年10月29日(月)

両手を擦り合わせながら、呟く。
「さあ、末端が寒い季節がやってまいりました」
「そだねえ……」
俺も、うにゅほも、冷え性の気がある。
冬場はなかなかつらいのだ。
「そろそろ初雪が降るかもなあ」
「じゅういちがつだもんね」
「積もるのはずっと後だろうけど、そう考えると憂鬱だ……」
「そかな」
「××は、雪好きだもんな」
「すき」
「俺は嫌い」
「えー」
「正確に言うと、見るのは好き。かくのは嫌い」
「わたし、ゆきかきすき」
「知ってる」
「うへー」
へんなやつである。
うにゅほにとっては、雪遊びの一環なのかもしれない。
「除雪機あるから、だいぶ楽にはなったけどな」
「じょせつき、すごい。ばーって」
「ほんとな」
ジョンバで雪をまとめスノーダンプで雪捨て場へ運ぶのが馬鹿らしくなる効率である。
「でも、究極はあれだよ」
「どれ?」
「ロードヒーティング」
「あー」
雪かきをしたくないなら、そもそも積もらせなければいい。
面倒くさがりの発想である。
「だが、究極に思えるロードヒーティングにも、ひとつ問題がある」
「なに?」
「考えてみよう」
「うーと、たかい……」
「それもある」
「ひとつじゃない」
「気にしない」
しばしの思案ののち、うにゅほが首を横に振った。
「わかんない……」
「では、答えだ」
「うん」
「大雪のとき、雪の積もっていない敷地内と、積もっている道路とのあいだに段差ができる」
「あ」
「北海道の積雪量だと、下手すりゃ雪の壁になるな」
「くるま、でれない……」
「スロープを作るために、結局、雪かきみたいなことをする羽目になるわけだ」
「うまくいかないね」
雪のないところに住めば、今度は大きな虫が出てくる。
ままならないものだ。

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2018
10.28

うにゅほとの生活2518

2018年10月28日(日)

「……うーん」
ディスプレイの前で腕を組む。
「どしたの?」
「今日は、10月28日だ」
「うん」
「さて、何の日でしょう! ──を、やろうと思ったんだけど」
「なんのひしりーずだ」
「何の日だと思う?」
「うーと」
首をひねりながら、うにゅほが思案する。
「じゅう、じゅう、と、にーや、にや、にーはち、とにはち、とにや──」
しばしののち、答える。
「……とつやのひ?」
「とつやって?」
「ちめい……?」
十津谷。
ありそうだけど、存在しない。
「こたえ」
「速記記念日」
「そっき?」
「特殊な記号を使って、人の発言を書き記す手法のことだな」
「とつや……」
「とつやは関係ない」
「ごろあわせ、ないの?」
「語呂合わせ、ないんだよ」
「そか……」
「だから、あんまり面白くないなあって」
「ごろあわせ、したいな」
「すこし遡ってみるか」
「うん」
調べてみると、
「お、10月26日に語呂合わせあった」
「おー」
「これは難しいぞ」
「とにろ、とにむ、じゅにむ、じゅにろく、とつろく、とにむ、とにむ──」
しばしののち、答える。
「……じゅげむのひ?」
「"げ"はどっから出た」
「……うへー」
笑って誤魔化した。
「こたえは?」
「これ、絶対出ないよ。青汁の日、だって」
「あおじる……」
「青汁」
「じ、る、はわかるけど、あお、わかんない」
「"10"を、アルファベットの"I"と"O"に見立てて、青、だって」
「あいと、おー?」
「そう」
「……いおじる?」
「そうなるよなあ」
「むりがあるとおもう……」
「同じく」
アサヒ緑健さん、ゴリ押しが過ぎますよ。
しばらくのあいだ、10月の記念日を遡りながら談笑するのだった。

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2018
10.27

うにゅほとの生活2517

2018年10月27日(土)

──けたたましい音と共に、目を覚ました。
枕元のiPhoneが、緊急速報のアラートをがなり立てたのだ。
「◯◯! ◯◯……!」
うにゅほが駆け寄ってきて、俺の腕に抱き着いた。
血の気が引く。
震災から一ヶ月半、あの地震の恐怖を拭い去るにはまだ時間が必要だ。
「──…………」
うにゅほの肩に手を添えながらしばし固まっていたが、覚悟していた揺れは来なかった。
「……地震、じゃ、ないのか」
「そうなのかな……」
アラートの止まったiPhoneを手に取り、緊急速報の内容を確認する。
「──土砂災害?」
「どしゃ?」
「雨で、どこか土砂崩れを起こしたらしい」
「どこ?」
「……ここから車で一時間くらいのところかな」
「──…………」
うにゅほが、なんとも言えない表情を浮かべた。
「大変だし、大切なことだけど、もうすこし範囲を絞って──」
再びアラート。
「わ!」
「えーと、土砂災害の避難準備、だって」
「──…………」
うにゅほが、また、なんとも言えない表情を浮かべた。
「……もうすこし、範囲絞ってほしいな」
「うん……」
うち、関係ないし。
その後も、幾度も繰り返しアラートが鳴るものだから、すっかり目が冴えてしまった。
「まあ、地震じゃなくてよかったよ」
「そだね」
また地震が来るくらいなら、取り越し苦労のほうが百倍ましだ。

午後六時過ぎ、本日幾度めかのアラートが鳴り響いた。
「……避難の解除、だって」
「えー……」
「解除で音鳴らす必要なくない?」
「わたしもそうおもう……」
心臓に悪い一日だった。

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2018
10.27

うにゅほとの生活2516

2018年10月26日(金)

「……右膝が痛い」
「まえとおなじとこ?」
「同じとこ」
「なおってなかったんだ……」
「そうみたい……」
眉をしかめ、うにゅほが言う。
「……ずっといたかったの?」
「いや、いったん治ったんだ。それは本当」
「そか」
「……実は、心当たりがまったくないわけじゃないんだよな」
「そなの?」
「エアロバイクを漕いだ次の日、痛んでる気がする。たまたまかもしれないけど」
「じゃあ、えあろばいく、だめ」
言うと思った。
「でもさ」
「?」
「エアロバイクって、膝に負担が掛からない運動の代表例みたいなものなんだよ」
「そなんだ……」
「そのエアロバイクで膝を痛めるのもおかしな話だよなって」
「うーん」
うにゅほが、大きく首をかしげる。
「……へんなこぎかた、してる?」
「エアロバイクで変な漕ぎ方って、よほどだと思うけど……」
「ぱそこんみながらこいでる」
「テレビ見ながら漕ぐのと同じだろ。キーボード打ってるならともかく」
「そだねえ……」
「ともあれ、一週間くらいはエアロバイクやめとこうか」
「びょういん」
「もう夜だし、明日土曜だし……」
「……まえもそうだった」
「う」
前回、膝を痛めたときも、同じ理由で病院へ行かなかったのだ。
「びょういんいきたくないから、いわなかったの?」
「そういうわけじゃ──」
すこしある。
「……あんまし、あるかないようにね」
「はい」
「しっぷ、はる?」
「お願いします」
しばらく安静にしていよう。

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2018
10.25

うにゅほとの生活2515

2018年10月25日(木)

落ち込むことがあった。
「──…………」
膝の上のうにゅほを、ギュウと抱き締める。
「どしたの?」
「うん……」
「だいじょぶ?」
「うん……」
「ほんとに?」
「うん……」
「そか」
「うん……」
うにゅほが、俺の右手に手を重ねる。
「よし、よし」
「……子供じゃないって」
「しってる」
苦笑する気配。
「おとなは、よしよししたらだめ?」
「──…………」
しばし思案し、答える。
「……いいけど」
「◯◯、いったんはなして」
「あ、うん」
抱き締める腕を緩めると、うにゅほが立ち上がり、今度は対面するように膝にまたがった。
そして、
「よし、よし」
俺の頭を、優しく撫でた。
「──…………」
「だいじょぶ、だいじょぶ。◯◯、つよいこ」
「子供じゃないんですけど……」
「つよいおとな」
「……強い大人、かなあ」
決してそうとは言い切れない。
むしろ、大人としてはだいぶ弱いほうな気がする。
そんなことを考えていると、うにゅほが俺を抱き締めた。
「ぎゅー」
「──…………」
「つよいこも、つよいおとなも、だめなときあるから」
「……ああ」
その一言で、すこし救われた気がする。
うにゅほが落ち込んだときは、俺が励ましてあげようと思った。

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2018
10.24

うにゅほとの生活2514

2018年10月24日(水)

PCに向かい、キーボードに指を乗せながら、うにゅほに話し掛ける。
「××さん」
「はい」
「なんか話して」
「あ、かくことないやつだ」
「書くことないやつです」
「きょう、なにもなかったっけ」
「特筆すべきことは特に思い浮かばないなあ」
「ばんごはん、ゆどうふだったよ」
「湯豆腐だったな」
「おいしかった」
「美味しかったけど、美味しかったとしか書くことないぞ」
「だめなの?」
「いちおう人が読むことを想定してるから、食べたものを羅列するだけってのもなあ」
「むずかしいねえ……」
「難しいんです」
「あ、ふっきんのころころ、やった?」
「アブローラーか」
「うん」
「あれ、毎日やると逆によくないんだって」
「そなの?」
「らしい」
あいだに超回復を挟むことで、より効果が見込めるのだとか。
「(弟)、まいにちやってる」
「やってるな」
「でも、ふっきん、われてない」
「毎日やってるからかな……」
「そうかも」
なんとなく、刃牙のジャック・ハンマーを思い出す。
「よし、だいぶ書けたぞ」
「よかった」
「××のおかげだな」
「でも、それ、にっきなの?」
「──…………」
痛いところを突く。
俺は、ブラウザを呼び出し、辞書を引いた。
「日記。日々の出来事や感想などを一日ごとに日付を添えて、当日またはそれに近い時点で記した記録」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「日々の出来事や感想には違いないから、なにも問題ないな!」
「そか」
この日記は、"うにゅほとの生活"と題している。
たとえ会話に終始したとしても、それはうにゅほとの生活を描いたものに他ならないのだ。
文句があるなら法廷で会おう。

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2018
10.24

うにゅほとの生活2513

2018年10月23日(火)

病院からの帰り際、古着屋へ立ち寄った。
「なにかかうの?」
「んー……」
特に目当ての品があったわけではない。
「まあ、秋用のジャケットとか」
「さむいもんね」
「××、気になるものある?」
「わたしはないかなあ……」
「そっか」
数着のジャケットを試着してみたものの、いまいちしっくり来ない。
「……帰るか」
「そだね」
駐車場へと足を向けたとき、ふと、古靴のコーナーが気になった。
「靴見てっていい?」
「くつかうの?」
「ひとまず見るだけな」
中古の靴は、現品限りだ。
デザインが好みでも、サイズが合うとは限らない。
だが、
「──このスエードのブーツ、悪くないんじゃないか。28cmだし」
「はける?」
「試してみる」
左足の靴を脱ぎ、靴下を履き直して、ブーツに爪先を差し込んだ。
「お」
「はけた!」
「いいな、これ。履き心地も悪くない」
「かう?」
「買いましょう」
お買い上げである。
ホクホク顔で車に戻ると、心配顔でうにゅほが言った。
「でも、だいじょぶかな」
「うん?」
「みずむし」
「──…………」
たしかに。
「……帰ったら、内側をアルコール消毒しよう」
「そのほういいとおもう」
頼むぞ消毒用エタノール。
白癬菌を駆逐するのだ。

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2018
10.22

うにゅほとの生活2512

2018年10月22日(月)

「ただいまー!」
母親と一緒に出掛けていたうにゅほが、意気揚々と帰宅した。
「おかえり。どこ行ってたんだ?」
「うへー……」
ぴたりと身を寄せて、上目遣いでこちらを覗き込む。
「わたし、なんか、ちがわない?」
「──…………」
じ、とうにゅほを観察する。
言われてみれば、たしかに、普段とはすこし雰囲気が違う気がする。
「美容室──じゃ、ないよな。髪型変わってないし」
「うん、ちがう」
「……もしかして、化粧した?」
なんだか目元がハッキリしたように感じる。
「おしい」
「惜しいのか……」
「わかんない?」
「参った、わからない」
両手を挙げて、降参の意を示す。
「まつげパーマ、してきたの」
「……まつげパーマ?」
聞いたことのない単語だ。
「かお、よこからみて」
「ああ」
うにゅほの横顔を注視して、ようやく理解する。
「──まつげがカールしてる!」
「うん」
もともと長めなうにゅほのまつげが、くるんと上に曲がっていた。
「へえー、けっこう印象変わるもんだな」
「でしょ」
どちらかと言えば素朴な印象を受けるうにゅほの顔が、すこし華やいで見える。
「◯◯も、まつげパーマ、する?」
「俺はいいよ」
どうでも。
「そか……」
「でも、まだまだ弟の域には手が届かないな」
「(弟)、まつげながいもんねえ」
「ラクダみたいだもんな」
「らくだ……」
弟のまつげは、人種が違うんじゃないかってくらいに長い。
「あれにパーマかけたら面白そう」
「おもしろそう!」
「絶対嫌がるけどな」
「そだねえ……」
ひと笑いのためにサロンへ行くほどサービス精神旺盛な性格はしていない。
想像に留めておこう。

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2018
10.21

うにゅほとの生活2511

2018年10月21日(日)

「──…………」
うと、うと。
マウスを握りながら、船を漕ぐ。
「◯◯?」
「!」
はッ、と姿勢を正す。
「ねむいの?」
「寝てない……」
「ねてたの?」
「……ちょっと寝てた」
うたた寝していたことを指摘されると、つい反射的に否定してしまうのは何故なのだろう。
かすかな罪悪感でも覚えているのだろうか。
「ぽかぽか陽気で、あったかくて……」
「ねるなら、ちゃんとねたほう、いいとおもう」
「そうなんだけどな」
うたた寝はうたた寝で心地よいのだ。
あふ、と小さくあくびをして、
「……なーんか、今日、ずっと眠いや」
「ほんとねむそうだね」
「休日はたいてい眠いけど、今日は特に」
「ねるの、おそかったの?」
「そうでもないと思うんだけど……」
「なんじかんねた?」
しばし思案する。
「……合計、六時間くらい?」
「あんましねてない……」
「あんまり寝てなかった」
「ねむいはずだねえ」
「たしかに」
たっぷり寝た気がしていたのは、ただの気のせいだったらしい。
「やっぱし、ちゃんとねたほういいよ」
「そうだな……」
うたた寝では睡眠のうちに入らない。
ベッドでまるくなると、うにゅほが布団を掛けてくれた。
「あとでおこす?」
「とりあえず、三十分で」
「わかった」
結局、あと十分、あと二十分と繰り返し、二時間ほど寝入って気づけば夕方なのだった。
気持ちよかったし、後悔はない。

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