2018
05.24

うにゅほとの生活2362

2018年5月24日(木)

ぱちん、ぱちん。
左手の爪を切る。
「──…………」
「──……」
ぱちん、ぱちん。
うにゅほが、そのさまを、じっと覗き込んでいた。
「××」
「はい」
「危ないぞ。爪が飛んだら、顔に当たるかも」
「あ、そか……」
「珍しくもないだろうに」
手の爪なんて、週に一度は切っているのだし。
「うーとね」
「?」
「◯◯のつめ、わたし、きりたいなって」
「いいけど……」
「やた」
「じゃあ、右手の爪は頼むな」
「うん」
爪切りを渡し、右手を預ける。
「おおきいてですねー」
「××よりはな」
「つめきりますね」
「深爪だけは気をつけて」
「はい」
真剣な瞳で指先を睨みつけ、
「──…………」
ぱちん。
「──…………」
ぱちん。
すこしずつ、丁寧に、爪の先を切り落としていく。
まるで職人のようだ。
しばしして、
「ふー……」
深い溜め息と共に、うにゅほが顔を上げた。
「おしまい!」
「ありがとな」
「うへー」
爪を切ったばかりの俺の手に、うにゅほが指を絡ませる。
「かんぺき」
「次は、俺が××の爪を切ってあげよう」
「まだのびてないよ?」
「じゃあ、爪やすり」
「おねがいします」
「お願いされます」
特に理由もなく、なんとなく、互いに互いの爪の手入れをした。
ちょっと楽しかった。

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2018
05.23

うにゅほとの生活2361

2018年5月23日(水)

「──…………」
むくり。
時計を見ると、午前八時。
珍しく早起きし、階下へ向かう。
「おはよ……」
キッチンで洗い物をしていたうにゅほが、こちらを振り返った。
「あ、おは──」
うにゅほが、目をまるくする。
「どした」
「◯◯、ほっぺた……」
「?」
洗面所へ向かい、鏡を覗き込む。
「うわ」
左の頬が見事に赤くなっていた。
「どしたの、それ……」
「──…………」
ふと、左手を軽く振る。
痺れている。
「たぶん、ほっぺたの下に左手敷いて寝てたんだと思う……」
「あー」
「そーいや、変な夢見たもんなあ……」
「どんなゆめ?」
「──…………」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
自分の頬にナイフを刺して口の端を裂く夢、とは言いにくい。
「まあ、うん。嫌な夢」
「いやなゆめ……」
「グロい夢」
「ぐろ……」
「聞きたい?」
「……やめとく」
「それがいい」
変な姿勢で寝ると、変な夢を見る。
寝相は大事だなあ。

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2018
05.22

うにゅほとの生活2360

2018年5月22日(火)

「──…………」
「──……」
暑い。
クソ暑い。
なかばとろけながら温湿度計に目をやると、30℃の大台に届きそうな勢いだった。
「暑かったり寒かったり、寒かったり暑かったり、体壊すって……」
「うん……」
既に壊れかけている気がしないでもない。
「──…………」
震える手が、エアコンのリモコンへと伸びていく。
「……早いかな」
「はやい、きーする……」
「昨日の夜、暖房つけたばっかだもんな。寒くて」
「うん……」
「──…………」
「──……」
こほん、と咳払いをする。
「時期が早いとか、遅いとか、果たして意味はあるのだろうか」
「……?」
「僕たちは、純粋に、暑いか寒いかのみを判断基準としてエアコンを利用すべきではないでしょうか」
「いちりある」
「よし、××。窓を閉めるぞ!」
「はい!」
窓を閉め切り、扉を塞ぎ、エアコンの電源を入れる。
しばしして、
「ほあー……」
エアコンの真下に陣取った俺たちの頬を、冷涼な風が撫でていった。
「すぶふぃー……」
「嗚呼、人類の叡智……」
ごろんごろん。
「信じられるか、××。これで26℃設定なんだぞ」
「?」
「冷房暖房の違いはあれど、昨夜も26℃設定」
「……そなんだ」
「気候、おかしいって」
「うん……」
本格的に体を壊す前に、気温が安定してくれればいいのだが。

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2018
05.21

うにゅほとの生活2359

2018年5月21日(月)

「犬を撫でたい」
「いきなり……」
「××も、これを見れば、同じ結論に至るはず」
「?」
うにゅほを手招きし、膝に乗せる。
そして、犬のおもしろGIF画像集を開いてみせた。
数分後、
「いぬなでたい……」
「な?」
「うん」
「猫もいいけどなー」
「いぬがいいな」
「柴かな」
「しばすき」
「コーギーもいいよな」
「あしみじかいの?」
「そうそう」
「かわいい」
「柴犬とコーギーのミックスもいるぞ」
「ほう」
「シバーギーというらしい」
「あんちょく……」
「俺もそう思う」
「でも、みてみたいな」
「検索してみるか」
「うん」
Googleを開き、「シバーギー」で画像検索を行う。
「──…………」
「──……」
「かわいい、けど」
「可愛いけど、なんか違う……」
「うん……」
「アップルパイとロールケーキを足して2で割ってみました、みたいな」
「あー」
「美味しいけど、混ぜなくてもよかったよねって感じ」
「わかる」
愛犬を亡くしてから、早五年。
ペットが欲しい今日このごろである。

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2018
05.20

うにゅほとの生活2358

2018年5月20日(日)

──びき!

「ゔッ……」

──びき!

「おフ!」

──びき!

「ぎッ……!」
唐突な痛みに、思わず背筋が反り返る。
「だいじょぶ……?」
「大丈夫、大丈夫……」
日常生活の至るところで、前触れなしに腰が痛む。
痛み自体は大したことないのだが、急に襲い来るのが面倒だ。
「腰に悪いこと、した覚えないんだけどなあ」
「こしにわるいこと……」
「重いもの持ったり」
「あー」
「急に走ったり、急に捻ったり」
「してないよねえ」
「……もしかして、寝過ぎかな」
「ねすぎ?」
低気圧のためか、ここしばらく、ベッドから抜け出せない日々が続いていた。
それで腰を痛めたのかもしれない。
「あんせいにしてたのに、こし、いたくなるの?」
「そういうときもある」
「こしいたいとき、あんせいにするのに?」
「まあ、うん……」
なんと説明してよいやら。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し、と言いましてな」
「はい」
「度が過ぎると、なんでもよくない」
「ねすぎはよくない?」
「そうなりますね」
「そか……」
寒暖差、気圧差が激しいと、睡眠時間がどんどん長くなってしまう。
俺の腰のためにも、さっさと安定してほしいものだ。

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2018
05.19

うにゅほとの生活2357

2018年5月19日(土)

「おっと」
足元に落としたペットボトルの蓋を拾い上げようとしたとき、

──びき!

「はう!」
腰のあたりに一筋の電流が走った。
「わ」
膝の上のうにゅほが、目をまるくして振り返る。
「どしたの?」
「腰が……」
「いたいの?」
「痛いというか……」
「わたし、おりたほういい?」
「乗ってて。寒いし」
「はい」
うにゅほを左手で抱き締めながら、ゆっくりと背筋を伸ばしていく。
「──……んー」
「だいじょぶ……?」
「次は、回してみる」
「うん」
デスクを両手で掴み、チェアを徐々に捻っていく。
まずは、左。
「ぐー……」
次は、右。
「んいー……」
最後に、もう一度左。
「ん゙ッ……」
問題はない。
再度、ペットボトルの蓋を拾う動作をしてみる。
「……んー……?」
「いたい?」
「痛くはない」
「さっき、どしたんだろうね」
「さあー……」
再現性はないが、そこはかとない腰痛の予感がする。
気をつけておこう。

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2018
05.18

うにゅほとの生活2356

2018年5月18日(金)

『──しやー……もー……』

どこか遠くから、ノイズ混じりの声が聞こえてくる。
「あ、いしやきいもだ」
「……五月に?」
さすがに季節外れではあるまいか。

『──いしやー……いもー……』

「本当だ……」
「ね」
うにゅほが小さく胸を張る。
「石焼き芋って、秋と冬しかやってないんだと思ってた」
「わたしも」
「年中やってるのかな。知らないだけで」
「そうかも」
「……でも、真夏に石焼き芋は、さすがに売れないだろうなあ」
「うん……」
SNS隆盛のこの時代、逆に話題になりそうではあるけれど。
「ふと思ったんだけど」
「?」
「焼き芋屋さんって、シーズンオフのときは何やってるんだろうな」
「あー」
「売り上げで一年食っていけるのかな」
「いも、つくってるのかも」
「農家のひとの副業ってこと?」
「うん」
「ありそうだな……」
と言うか、それが答えのような気がする。
「なかなかやるな、××」
「うへー」
うにゅほが得意げに笑う。
「……それにしても、今日は冷えるな。寒いから焼き芋売ってるのかも」
「かも」
「××、こっちゃ来い」
「はーい」
うにゅほを膝に乗せて、暖を取る。
焼き芋も温まるが、やはり人肌がいちばんである。

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2018
05.17

うにゅほとの生活2355

2018年5月17日(木)

「──…………」
「──……」
目を皿のようにして、花壇の周囲をぐるりと回る。
「いた?」
簡潔な俺の質問に対し、うにゅほが首を横に振る。
「……不気味だな」
「うん……」
我が家は、過去に二度、アリの被害に遭っている。
吸蜜性の小さなアリが、屋内に道を作るのだ。
去年は、ダスキンの害虫駆除サービスによって、いちおうの決着を見たのだが──
「……あのあと、また、繁殖してたよな」
「してた……」
プロの手による駆除を経ても、アリは全滅しなかった。
屋内へ再び侵入することこそなかったものの、花壇は相変わらずアリどもの城のままだったのだ。
「そりゃ、いないに越したことないけどさ……」
「もやもやする」
「わかる」
悪魔の証明だ。
アリがいれば、対処すればいい。
そのための道具は既に揃えてある。
だが、アリがいないことを確信するためには、それこそ花壇を掘り返すほどの手間が必要となる。
「……仕方ない、引き上げよう」
「いいの?」
「よくはないけど、どうしようもない」
「そか……」
「まったくいないなら安心してもいいけど、ごくたまに一、二匹だけ見かけるのがな……」
「こわいよね」
たまたま通り掛かった無関係なアリならいいのだが、楽観はできない。
「花壇は定期的に。今後は、家の周囲も捜索範囲に入れよう」
「はい」
今年こそ、アリから家を守るのだ。

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2018
05.16

うにゅほとの生活2354

2018年5月16日(水)

キッチンの冷蔵庫でチューハイを発見した。
銘柄は、既に缶を潰してしまったので、よくわからない。
アルコール度数は高かったように記憶している。
「◯◯、よっぱらった?」
「ほろ酔い」
「ほろよいって、どんなかんじ?」
「××、間違って、俺のお酒飲んだことあったじゃん」※1
「そだっけ……」
覚えていないらしい。
「そうだなあ」
右手をぐーぱーさせながら、全身の感覚を言語化していく。
「まず、頭がすこし重い。ふらふらする」
「ふらふら」
「視覚や聴覚が鈍くなって、世界が遠くなる。現実感が薄くなる感じ」
「げんじつかんが……」
「あとは、若干火照るくらいかな」
「へえー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「なんか、あんましだね」
「そうか?」
「うん」
「酔っ払ったときの××、すげー楽しそうだったけど」
「おぼえてない……」
「覚えてなくていいよ、うん」
あのときのうにゅほ、厄介この上なかったし。
「──…………」
じ。
うにゅほが、飲みかけの缶チューハイを見つめる。
「ダメだぞ」
「うん」
「次の日、二日酔いで死にかけたんだから」
「──あっ」
「思い出した?」
「おもいだした……」
うにゅほの顔が青く染まる。
「おさけはだめだ……」
「そうそう。お酒なんて、飲まないに越したことはない」
そう言いつつ、缶チューハイをあおる。
「◯◯はいいの?」
「一本か二本程度なら、大丈夫」
「そか……」
「ところで××さん」
「はい?」
「嗅がせろー!」
「ひや!」
うにゅほを抱き寄せて、その首筋に鼻を埋める。
笑い上戸、泣き上戸、種々様々な上戸があるが、俺は嗅ぎ上戸なのかもしれない。
ただし、うにゅほの匂いに限る。

※1 2015年4月2日(木)参照

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2018
05.15

うにゅほとの生活2353

2018年5月15日(火)

「あちー……」
「はちーねえ……」
ぐでー。
フローリングの床が、冷たくて気持ちいい。
「いま何度ー……?」
「うと」
隣に寝そべっていたうにゅほが上体を起こし、温湿度計を覗き込んだ。
「にじゅうはってん、ごど……」
「……窓開いてる?」
「あいてる」
「だよなあ」
さっき俺が開けたばかりだもの。
「うーしょ」
「うぐ」
「ほー」
俺の背中に覆いかぶさったうにゅほが、耳元でほっと息を吐く。
くすぐったい。
「××さん、××さん」
「はい」
「暑くない?」
「あついねえ……」
「──…………」
「──……」
下りる気はないらしい。
仕方ない。
体温でぬくまった床に別れを告げ、より涼しい場所を求めてにじにじと匍匐前進を始める。
「おー!」
楽しそうだ。
せっかくなので、更に楽しませてみよう。
「よいしょ、と」
「わ」
うにゅほを背中に乗せたまま、四つん這いになる。
どたどた。
「あはははは! すごい!」
しばし這い回った結果、
「──……あつ……」
「はちーねえ……」
ぐでー。
我ながら、何をやっているのだか。
楽しいからいいけど。

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