2018
04.30

うにゅほとの生活2338

2018年4月30日(月)

昨日、デスクの引き出しからハンドスピナーを見つけた。
今日、デスクの端に貼り付けられている二枚のシールに気がついた。
「──…………」
二層になっているシールをめくる。
「あたり……」
「?」
「××、ごめん。完膚なきまでに忘れてた」
「なにー?」
うにゅほがとてとて歩み寄る。
「これ」
「うーと、めくってあてよう、もすばーがー……」
「──…………」
「──……」
視線が交錯する。
「わすれてたね……」
「うん……」
ペプシとモスバーガーのコラボキャンペーンに当選していたことを、今の今まですっかり忘れていたのだった。※1
「これ、いつまでのやつ?」
「……2月23日」
「きょう、しがつさんじゅうにち……」
「こんな目立つ場所に貼っといて、よく二ヶ月以上も気づかずにいられたよな……」
デスクの端とは言え、手を伸ばさずとも届く位置だ。
常に視界に入っていたはずなのだ。
「そこにあるのがあたりまえすぎて、わすれちゃってたのかなあ」
「──…………」
なんか深いこと言い出した。
だが、刺さる言葉だ。
「……そうだな。当たり前は、当たり前じゃないんだ」
「?」
「感謝を忘れてはいけないよな」
「もすばーがーに?」
「……まあ、うん。モスバーガーに」
そういうことにしておこう。
「わすれてたけど、こんどいきたいな」
「ゴールデンウィーク中は混んでそうだから、そのあとで行こうな」
「たのしみ」
大切な約束だ。
今度こそ忘れないようにしなくては。

※1 2017年12月13日(水)参照

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2018
04.29

うにゅほとの生活2337

2018年4月29日(日)

デスクの引き出しを整理していたところ、ハンドスピナーが幾つか出てきた。
「懐かしいなあ……」
しゅるるるる。
虹色のハンドスピナーを、中指の先で回転させる。
「おー」
「××、一時期取り憑かれたように遊んでたよな」
「そだっけ?」
「放っておいたら一時間でも二時間でもやってるから、さすがに心配になって止めた記憶がある」
「そだっけ……」
記憶にないらしい。
「危険なので、ハンドスピナーは再びボッシュートです」
てれってれってーんと口ずさみながら、ハンドスピナーを引き出しに戻す。
「あー」
「やりたかった?」
「ちょっとだけ」
「……まあ、一回くらいなら」
ハンドスピナーを再度取り出し、うにゅほに手渡した。
「てになじむ」
「あんだけやればなあ……」
しゅるるるる。
回転音が耳朶を打つ。
「──…………」
「──……」
るるる──
数分が経ち、やがてハンドスピナーが静止する。
「……?」
うにゅほが小首をかしげた。
「なにがたのしかったんだろう……」
「それ、こっちの台詞」
「うーん」
一時の流行など、そんなものだ。
ハンドスピナーは、引き出しの奥に押しやられ、再び流行が巡ってくるのを静かに待つことと相成った。
来年くらいにまた取り出して、日記のネタにしようっと。

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2018
04.28

うにゅほとの生活2336

2018年4月28日(土)

「──んがッ!」
羽毛布団を蹴り飛ばし、飛び起きる。
「はあッ、はあ、ふー……」
胸元に手を添えながら呼吸を整えていると、
「──…………」
目をまるくしたまま小動物のように固まっているうにゅほと目が合った。
「……びっくしした」
「ごめん……」
「どしたの?」
「単に、金縛りに遭ってただけ」
「かなしばり!」
うにゅほの背筋がピンと伸びる。
「かなしばりって、ゆうれいのやつ……?」
恐る恐る周囲に目を配るさまが、なんとも言えず微笑ましい。
「いや、金縛りと幽霊は関係ない──と、思う」
「そなの?」
「金縛りというのは、頭は起きているにも関わらず、体が眠ったままの状態のことだ」
「ふんふん」
「意識と肉体の接続が途切れてる、みたいな言い方もするな」
「かなしばり、どんなかんじ?」
「そうだなあ……」
言葉を選び、口を開く。
「まず、苦しい。胸のあたりに圧迫感があって、息ができない感じがする」
「しんじゃう……」
「たぶん、実際には呼吸できてるよ。そんな感じがするだけ」
「ならいいけど……」
「んで、体が動かない。押さえつけられてるとかじゃなくて、そもそも動けって命令が四肢に届いてないんだな」
「むずかしい」
「こればかりは、実際になってみないと」
「なりたくない……」
そりゃそうだ。
「かなしばりになったら、どうしたらいいの?」
「……うーん」
「?」
「俺の方法は、あんまり一般的じゃないかも」
「◯◯、どうするの?」
「気合で動かす」
「きあいで」
「動く動かないじゃなくて、無理矢理動かす。そしたら解ける」
「そなんだ……」
脳筋この上ないが、俺はこの方法で幾度も金縛りを打ち破っている。
「……じしんないな」
「まあ、規則正しい生活をしていれば、金縛りにはなりにくいらしいから」
「がんばる」
うにゅほが金縛りに遭わないことを祈ろう。

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2018
04.27

うにゅほとの生活2335

2018年4月27日(金)

「うう……」
なで、なで。
うにゅほが俺の頭を撫でる。
「みじかくなってしまった……」
「前が長すぎたんだよ」
「そだけど」
実に五ヶ月ぶりの散髪である。
「きったかみ、すごかったねえ」
「あの量が頭から生えてたんだから、そらモサモサになるわな」
「もさもさ……」
なで、なで。
「またすぐ伸びるって」
「うん……」
まさか、そこまで気に入っているとは思わなかった。
すこしばかり良心が痛む。
「いっそ、坊主にしたほうが良かった?」
「ぼうず、する?」
「しないけど」
「えー」
「××は、長いか短いか、どっちかが好きなんだな」
「そうかも」
「……しゃーない、また伸ばすか」
「やた!」
なで、なで。
「──…………」
「──……」
「××さん」
「?」
「それはそれとして、撫でることは撫でるんだな」
「とこやいったあとのかみ、なでごこちいい」
「そう?」
「ちくちくする」
「そう……」
前髪を掻き上げてみる。
うにゅほの言葉通り、梳いた髪の毛がちくちくと手のひらを刺した。
「……俺は、××の髪を撫でてるほうがいいなあ」
「なでる?」
「撫でる」
しばらくのあいだ、互いに互いの髪を撫で合うふたりだった。

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2018
04.26

うにゅほとの生活2334

2018年4月26日(木)

「……んー?」
キーボードに向かいながら、上半身を大きくかしげる。
「にっき、かくことないの?」
「いや、ある。あったと思う。あったはず」
「はず?」
うにゅほが頭上に疑問符を浮かべる。
「えーと……」
手探りで言葉を探しながら、口を開く。
「今日の日記はこれ書こう──と、思った記憶はあるんだ」
「うん」
「その内容が思い出せない」
「そか……」
「年かな」
「まだはやいとおもう」
「今日、何あったっけ」
「うと」
軽く思案し、うにゅほが答える。
「あまぞんきた」
「来たな」
「ありさがした」
「見つからなかったな」
「ちょうないかいひ、はらった」
「──それだ!」
すべてを思い出した。
「町内会の人が来たから、会費を立て替えたんだった」
「それ、にっきかくの?」
「ネタとして弱いかな」
「わからんけど……」
そりゃそうか。
「俺が財布取りに行ってるあいだ、あのおばさんと何か話した?」
「ううん」
うにゅほが首を横に振る。
「でも、あめもらった」
「やっぱり……」
戻ってきたとき、なんかもごもごしてたもんな。
相も変わらず、よく飴を貰う子だ。
「家でならいいけど、外ではあんまり物貰っちゃダメだぞ」
「はい」
いまいち危なっかしいうにゅほである。

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2018
04.25

うにゅほとの生活2333

2018年4月25日(水)

Amazonからアリメツが届いた。
内容成分が糖蜜とホウ酸のみという非常に男らしい殺蟻剤である。
「これを専用容器に注いで、巣の近くに設置する」
「はやいだんかいで、たたく」
「その通り」
花壇の縁石の傍に膝をつき、巣の状態を確認する。
「……?」
「どしたの?」
「蟻が、いない」
「えっ」
うにゅほが隣にしゃがみ込む。
「いない……」
「縁石をどけてみよう」
「う」
「去年ほどじゃないって」
「うん……」
眉をひそめたうにゅほが、小さく頷いた。
気持ちはわかる。
去年、害虫駆除業者がこの縁石をどけたら、数百匹のアリがうようよしていたものな。
「──…………」
「──……」
がた。
ごと、ごと。
二段になっている縁石を、ひとつずつ動かしていく。
だが、
「……妙だな」
数十匹程度のコロニーを覚悟していたにも関わらず、アリが一匹も見当たらないのだ。
「このあいだ、ここらに何匹かいたよな」
「うん、いた」
「巣の位置が変わったのか……?」
それは困る。
巣の位置を特定する前に屋内へ侵入されてしまえば、去年の二の舞となってしまいかねない。
「××、花壇を中心に巣の捜索だ」
「はい!」
目を皿にして十分ほど探したが、アリの巣は見つからなかった。
今年も苦戦を強いられそうである。

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2018
04.24

うにゅほとの生活2332

2018年4月24日(火)

「あー……」
天井を仰ぎ見ながら、呟く。
「お金欲しいなあ……」
「なんか、ほしいのあるの?」
「お金」
「おかねで」
「うーん」
思案する。
「うーん……」
更に思案する。
「ないの?」
「強いて言えば、ヘッドホン、とか……」
「どれ?」
「いや、具体的にどれが欲しいとかはなくて、お金たくさんあったら買うかなあって」
「そなんだ」
「……うーん……」
深く思案する。
「よく考えたら、欲しいものあんまりない、かも」
「ぱそこんとか」
「いまので十分だから、壊れるまでは……」
「くるま?」
「べつにいらない」
「ふく……」
「××、服欲しい?」
「たくさんある」
「俺も」
「くつ」
「靴って、二、三足あればよくない?」
「とけいとか」
「××が誕生日にくれたのあるし」
「うへー」
うにゅほがてれりと笑う。
「本なんかも、欲しいのは即買ってるもんなあ」
「◯◯、おかねほしいの?」
「欲しい」
「そなんだ……」
たぶん、貯金という名の安定と安心が欲しいのだ。
いつまでこの仕事を続けていられるかもわからない。
両親がいなくなれば、うにゅほを養っていくのは俺しかいないのだから。
「……うん、頑張ろ」
決意を新たにする俺なのだった。

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2018
04.23

うにゅほとの生活2331

2018年4月23日(月)

「──ふっふっふっふー、ふふふふふふふふー♪」
見るからに機嫌の良いうにゅほが、鼻歌まじりに本棚を掃除していく。
聞くともなく聞き入っていたところ、その曲名に思い至った。
「……さそり座の女?」
何故。
「さそりざのおんな?」
うにゅほが小首をかしげる。
「その曲。美川憲一の、さそり座の女」
「そなんだ」
「なんでそんな古い曲知ってるんだ」
「なんか、テレビだとおもう」
まあ、他に聞く機会もないよなあ。
「──…………」
「?」
しばし何かを考え込んだのち、うにゅほが口を開いた。
「わたし、なにざのおんなかなあ……」
「あー」
考えたこともなかった。
「◯◯、なにざ?」
「山羊座」
「わたし……」
「ちょい待ち」
キーボードを叩き、十二星座の早見表を開く。
うにゅほの誕生日は10月15日だ。
本当のところはどうか知らないが、そういうことになっている。
「えーと、××は天秤座だな」
「てんびんざのおんな……」
いいえ、私は天秤座の女。
「語呂はよくないな」
「うん」
「◯◯、やぎざのおとこ」
いいえ、私は山羊座の男。
「……語呂はよくないな」
「おそろい」
「母さんは双子座みたい」
「ふたござのおんな」
「語呂いいな」
「いいね」
そんな他愛ない会話を交わす月曜日の午後なのだった。

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2018
04.22

うにゅほとの生活2330

2018年4月22日(日)

「──…………」
「──……」
うにゅほとふたり、目を皿にして、花壇の隅々までを点検する。
春の花を愛でているわけではない。
「××、いたか」
真剣な表情を浮かべ、うにゅほが首を横に振る。
「ひとまず、行動範囲はまだ広がってないみたいだな」
「うん」
事は十分前に遡る。
「──◯◯! ◯◯!」
「んが」
休日の開放感と陽気に負けて昼寝していると、うにゅほに叩き起こされた。
「かだん、ありいた!」
「!」
一瞬で目が冴える。
玄関先の花壇には、吸蜜性のアリの巣がある。
それだけなら構わないのだが、そのアリどもが、毎年毎年家屋内に道を作るのだ。
去年など、何十匹のアリを指先で潰したかわからない。
花壇の調査の結果、
「──縁石付近に数匹か。まだコロニーは小さいみたいだな」
縁石と言えば、去年アリの巣があった場所である。
巣の位置は変わっていないらしい。
「どうしよう……」
「──…………」
しばし思案し、決断する。
「早い段階で叩こう」
「はやいだんかいで……」
「後手後手だと、また家の中に入ってくるかもしれない。それは避けたい」
「うん」
「増えてから潰すより、増える前に潰す」
「なるほど……」
去年、家屋内でアリが見つかったのは、五月の末のことだ。※1
だが、それ以前から縁の下や壁の裏を通り道にしていたことは明白である。
悠長にしている暇はない。
「今年こそ、アリに勝つぞ!」
「おー!」
俺たちの戦いが、今年も始まる。

※1 2017年5月31日(水)参照

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2018
04.21

うにゅほとの生活2329

2018年4月21日(土)

「──…………」
「──……」
暑い。
うだるように暑い。
うにゅほが俺の膝から自主的に下りるくらい、暑い。
「……窓、開いてる?」
「あいてる……」
「だよなあ」
先程、この手で開けたのだ。
開いていなければ、おかしい。
それでも、つい確認したくなるほどの室温なのだった。
「……聞くのが怖いけど、いま何度?」
「うーと」
うにゅほが、本棚最下段の温湿度計を覗き込む。
「……わー」
なにそのリアクション。
「うとね、にじゅうはってんななど……」
「──…………」
28.7℃
窓を全開にして、この室温である。
「夏かな」
「なつ、はやい……」
「春どこ行った」
「かえった?」
「……どこへ?」
「わかんない」
なるほど、面白い捉え方だ。
どこかから来たからには、帰る場所があるに違いない。
誰も知らないところに季節たちの家があって、順繰りにこちらを訪れたり、忘れ物を取りに戻ってきたりする。
そんなメルヘンなことをうだる頭で考えていると、
「◯◯、アイスたべる?」
「あるの?」
「ゆきみだいふく、あるよ」
「食べる、食べます」
「とってくるね」
暑い部屋で食べる雪見だいふくは、また格別である。
ないとは思うが、この暑さが続くようであれば、ガリガリ君を常備しなければなるまい。

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