2018
02.28

うにゅほとの生活2277

2018年2月28日(水)

「あ゙ー……」
凝り固まった背筋を伸ばしながら、呟く。
「今月も、もう終わりかあ」
「え!」
うにゅほが、まるくなった目をカレンダーへと向ける。
「そだ、にがつだ」
「二月だぞ」
「わすれてた……」
うへーと照れ笑いを浮かべながら、誤魔化すように言葉を継ぐ。
「にがつ、なんでみじかいんだろねえ」
「調べたことはあるぞ」
「なんでだった?」
「忘れた」
「えー」
「たしかだけど、かなり歴史に切り込んだ理由だったんだよ。俺、歴史苦手だから」
「あー……」
「××も歴史苦手だしな」
「うん、れきしにがて」
「マルクス・アウレリウス・アントニヌス!」
「ま、え?」
「たぶんローマ皇帝。詳しくは知らない」
「へえー」
「墾田永年私財法!」
「こんでん……」
「新しく開墾した土地は自分のものにしていい、みたいな法令」
「そなの?」
「むかーしのやつ」
「むかーしのやつかー」
「そうそう」
「なんでいまいったの?」
「理由が必要かい」
「……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「アウストラロピテクス!」
「あすとらろ?」
「最古の猿人だか類人猿だか」
「そなんだ」
「なんか語呂のいい単語、他になかったかなー」
「ぴてかんとろぷす……」
「木星に着きそう」
古今東西うろ覚えの歴史用語みたいな会話で、二十分ほど時間を潰すふたりだった。

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2018
02.27

うにゅほとの生活2276

2018年2月27日(火)

家の前の通りにロータリー除雪車が入り、根雪まで削り取っていった。
その結果、道路の端に立ち現れたのは、俺の身長を優に超す雪の壁だ。
「わー……」
うにゅほが壁を振り仰ぐ。
「たかい!」
「今年、雪多かったもんなあ」
「うん」
「登る?」
「のぼらないよー……」
うにゅほが苦笑する。
「何年か前、登りたがってた気がするんだけど」
「そだっけ」
「××も大人になったのかな」
「うへー」
嬉しいような、寂しいような。
「……本当に成長したよなあ」
「そかな」
「母さん、××がなんでも手伝ってくれるから、体がなまって困るって言ってたぞ」
「──…………」
うにゅほが、真剣な顔で言う。
「……かじ、しないほういい?」
「違う違う。嬉しい悲鳴ってやつだよ」
「うれしいひめい……」
「嫌よ嫌よも好きのうち──は、違うか。ぜんぜん違うな」
「うーん?」
「たとえば、こう、すごく美味しいお菓子があるとするだろ」
「うん」
「美味しいから食べ過ぎて、太っちゃった。これがいわゆる嬉しい悲鳴だな」
「わたし、おかし?」
「美味しいお菓子」
「へえー」
うんうんと頷く。
理解していただけたようだ。
「わたし、あれがいいな」
「どれ?」
「チョコまん」
「……それ、××が食べたいだけじゃないか?」
「うへー……」
「ま、いいけど。本屋行く途中で、コンビニ寄ろうか」
「うん!」
中華まんの季節も終わりを告げようとしている。
春は、もうすぐそこだ。

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2018
02.26

うにゅほとの生活2275

2018年2月26日(月)

作務衣の上衣をはだけ、エアロバイクを漕ぎ続ける。
「はい、すいぶん」
「さんきゅー」
うにゅほから十六茶のペットボトルを受け取り、漕ぎながら封を開ける。
ペットボトルに口をつけたところで、
「あ!」
うにゅほが不意に声を上げた。
「?」
ペットボトルを検める。
特におかしな部分はない。
「◯◯、あおたんなってる……」
青たん。
つまるところ、青痣である。
「どこ?」
「ここ!」
うにゅほが指差したのは、二の腕の内側だった。
「本当だ……」
見事に青く染まっている。
我ながら痛々しいほどだ。
「ここ、どしたの?」
「俺が聞きたい」
何をどうすれば、二の腕の内側を痣が出るほど打撲できるのだろう。
「……ラリアットとか?」
「らりあっと……」
当然、誰かにラリアットをかました覚えはない。
「ね、いたくない?」
「痛くはない」
「しっぷ、はる?」
「いらないかな……」
青痣くらい、放っておけば消えるだろう。
そもそも、うにゅほに指摘されなければ、気づかぬうちに治っていた可能性すらある。
「きーつけないとだめだよ」
「はい」
どう気をつければいいかわからないが、頑張って気をつけようと思った。

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2018
02.25

うにゅほとの生活2274

2018年2月25日(日)

「──…………」
無心でゲームパッドを操作していると、うにゅほが自室へ戻ってきた。
「◯◯、こわいゲームしてる……」
「……はァ……」
深い溜め息をつき、ゲームを終了する。
「……あの」
「?」
「こわいゲーム、してていいよ……?」
戸惑いまじりのうにゅほの言葉に、自分の態度を振り返る。
「──あ、違う違う。ごめん。××が帰ってきたからゲームやめたんじゃないよ」
「ちがうの?」
「単に、ゲームの内容がさ……」
再び、溜め息をつく。
「……××、リメイクってわかる?」
「(弟)やってる、せいけんつーみたいの?」
「そうそう」
チェアを回転し、うにゅほへと向き直る。
「たとえば──そうだな。桃太郎で考えてみよう」
「ももたろう」
「犬、猿、キジを仲間にして、鬼退治をする。テーマは、正義が悪を正すとか、そんなとこだろ」
「うん」
「では、現代日本を舞台をにして、犬、猿、キジも、そんな名前の人間にしてみよう。鬼はSFXで、バトルもド派手に演出だ」
「おー」
「これは桃太郎だと思う?」
「ちがうとおもう……」
「人によると思うけど、俺は、このタイプのリメイクは許せるんだ。テーマが一貫して同じだから」
「てーま」
「次に、こんな桃太郎だ。犬、猿、キジは女の子。鬼ももちろん女の子。桃太郎はハーレムで、めでたしめでたし」
「──…………」
うにゅほが眉根を寄せ、難しい顔をする。
「俺、このタイプのリメイクはダメなんだよな……」
「はーれむ?」
「ハーレムは、ただの喩え。問題は、テーマが完全にすり替わってしまっていることでさ」
「てーま……」
「チョコレートをリメイクしてチョコレートケーキを期待してたところに、チョコ味のカレーが出てきたようなもんかな」
「あー」
うにゅほがうんうんと頷く。
「……まあ、厳密には、"リメイク"じゃなくて"リイマジン"だそうだけど」
「?」
言い訳がましいと思うのは、俺だけではあるまい。
悪しざまに言ったのでタイトルは伏せるが、あまりオススメはできません。

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2018
02.24

うにゅほとの生活2273

2018年2月24日(土)

両手を擦り合わせながら、呟く。
「今日も寒いっすなあ……」
「さむいっすねー……」
「──…………」
うにゅほの後輩口調、新しい。
「××、しばらくその口調で話してみて」
「?」
「返事は?」
「はい」
「ではなく?」
「……はいっす?」
無言で親指を立てる。
「やー、そろそろ二月も終わるなあ」
「そうだね、……っす」
「雪が解けたら何をしようか」
「さくらみたい、っす!」
「桜は四月まで待たないとな」
「うんっす」
「××」
「?」
「下手」
「!」
があん、とうにゅほがショックを受ける。
「俺がお手本を見せるっすよ」
「うんっす」
「まず、頷く場合は"はいっす"を使うといいっす。基本的に敬語につける形っすね」
「なるほど、っす」
「やー、そろそろ二月も終わるっすねえ」
「そうです、っすね?」
「"です"の代わりに使う感じっすよ」
「そうっす?」
「そんな感じっす」
「わかったっす!」
「雪が解けたら何をしたいっすか?」
「さくら、みたいっす」
「桜は四月まで待たないとダメっすねー」
「まつっす」
「そうそう、上手いっすね」
「うへー、っす!」
「──…………」
ソファでテレビを見ていた風邪気味の弟が、こちらを振り返って言った。
「すーすーうるさい」
「「ごめんっす」」
リビングでやる遊びではなかったな。
反省反省。

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2018
02.23

うにゅほとの生活2272

2018年2月23日(金)

昨夜のことである。
「──ヨドバシのポイント、また貯まってきたなあ」
「なんぼくらい?」
なんぼて。
「二万ポイントくらいかな」
「にまん!」
「二万あれば、あれが買えるなあ……」
「いやほん?」
「イヤホンではなく」
「なに?」
「……"また?"って言われる気がする」
「いわないよ」
「本当?」
「ほんと」
「キーボードが欲しい」
「──…………」
うにゅほが、いわく言い難い表情を浮かべる。
「"また?"って言わない?」
「いわない」
「言いたい?」
「いいたい……」
「しょうがないじゃないか! REALFORCEが16年ぶりに新モデルを出したんだから!」
「ほしいの?」
「ダメ?」
「いいけど……」
「やった!」
呆れ顔のうにゅほを横目に、ヨドバシドットコムでREALFORCEのR2-JPV-IVを注文した。

今日の午後五時ごろ、玄関のチャイムが鳴った。
「……キーボード届いた」
「はや!」
「Amazonだと二、三日はかかるのになあ」
まさか、注文して二十四時間以内に届くとは思わなかった。
札幌店から発送されたのかもしれない。
「はやくとどいて、よかったね!」
「ああ」
「こんど、どんなきーぼーど?」
「開けてみましょう」
「うん」
本日の日記は、新しいREALFORCEで打っている。
すこぶる快適です。

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2018
02.22

うにゅほとの生活2271

2018年2月22日(木)

ふとディスプレイの右下を見ると、2がみっつ並んでいた。
「2月22日か」
「ねこのひ」
「猫の日だな」
「にゃん、にゃん、にゃん」
あざとい。
でも、嫌いじゃない。
「猫飼いたいなあ」
「ねー」
「弟が猫アレルギーでさえなければなあ……」
「うん」
こればかりは仕方ない。
「でも、子供のとき、一週間だけ猫飼ったことあるんだぜ」
「いっしゅうかんだけ?」
「捨て猫でさ。拾ったときには、もうだいぶ弱ってて」
「……しんじゃった?」
「──…………」
無言で肯定する。
「なまえ、ききたいな」
「……名前か」
「おぼえてない?」
「いや、覚えてる。覚えてるけど……」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「……笑わないように」
「わらわないよ」
しばし天井を見上げたのち、答える。
「──……にゃあ」
「にゃあ……」
「小学生のネーミングセンスなので……」
「かわいい」
どちらのことを言っているのだろう。
まあいいか。
「結局、衰弱して死んじゃって、庭にお墓を作ったのを覚えてる」
「……そか」
「たぶん、いまでも庭土の下に──」
ふと気づく。
「……お墓を作った庭って、いまガレージ……」
「あ」
切ないオチがついてしまった。
生まれ変わって愛されていることを祈ろう。

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2018
02.21

うにゅほとの生活2270

2018年2月21日(水)

「◯◯、◯◯」
「んー?」
振り返ると、プラスチック製の櫛と寝癖直しスプレーを装備したうにゅほが立っていた。
「──…………」
両手で髪型を確かめる。
寝癖なら、ちゃんと直したはずだ。
「まだどっか跳ねてる?」
「はねてないよ」
「そっか」
では、何故そんなものを手にしているのだろう。
不思議に思っていると、うにゅほが口を開いた。
「かみいじっていい?」
「いいけど……」
「やた!」
「いじるって、どういじるんだ?」
「うーと──」
しばし思案し、答える。
「まんなかのけーをね、ひだりにもってくの」
「分け目を変えるってこと?」
「そう」
「ふうん……」
「かみきったらね、できないから」
短髪だと、分け目もクソもないからなあ。
「しゅーってするね」
「はいはい」
シュッ、シュッ。
前髪が濡れて、雫が額を伝う。
「わ」
「自分で拭くから大丈夫」
「ごめんね」
目を閉じ、身を任せる。
うにゅほの手つきは、臆病なほどに優しく、心地よい。
「──できた!」
「似合う?」
「うん、にあう」
卓上鏡を覗き込む。
真ん中分けの男が右分けの男になっただけだが、口にするのも野暮だろう。
「かみきるまで、このままね」
「はいはい」
うにゅほが満足そうだから、なんだっていいや。

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2018
02.20

うにゅほとの生活2269

2018年2月19日(月)
2018年2月20日(火)

葬儀は滞りなく行われた。
伯父の人徳か、家族葬であるにも関わらず、弔問客が後を絶たなかった。
「なんか、夢でも見てる感じ」
「うん……」
伯父は、急死だ。
祖父母が亡くなったときとは異なり、心の準備をする暇がなかった。
苦しむ間すらなかった伯父の死をどう扱っていいか、この日記を書いている今もわからない。
家族葬用の会館が狭かったため、俺とうにゅほは伯父の家に泊まることになった。
伯父の家には、伯父の気配があった。
霊的なものではない。
芸術の素養があった伯父の油絵であるとか、
遊びに来るたびに淹れてくれたコーヒーメーカーであるとか、
伯父の好きだった三国志の本であるとか、
つまりはそういったものだ。
「──…………」
ああ、これはいけない。
この家には、伯父の形の穴がある。
うにゅほの手を強く握り、泊まる予定の和室に引きこもる。
「……さっさと寝ちゃおう。明日もあるし」
「うん」
喪服から作務衣に着替え、トイレへ向かう。
トイレの扉には、手作りらしきカレンダーが飾られており、今月と来月の予定が途切れ途切れに書き込まれていた。
「──…………」
伯父は、今日を生きるつもりだった。
明日を、明後日を、来月を、来年を、生きるつもりだったのだ。
伯父の人生は、ぶつ切りにされた。
やるせない。
怒りを向ける相手もいない。
身内が亡くなるたび、同じことを思う。
何故、もっと言葉を交わさなかったのか、と。
いつか両親が死んだときも、きっと同じ後悔をするのだろう。
「……いつか、なら、いいけどな」
「?」
「なんでもない」
うにゅほを抱きすくめたまま、眠くなるまでテレビを見ていた。
何故、もっと抱き締めなかったのか。
そんなことを思わないように。

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2018
02.18

うにゅほとの生活2268

2018年2月18日(日)

早朝のことである。
「──…………」
つんつん。
「──…………」
つんつん。
「……んー」
ほっぺたをつつかれている。
「◯◯ぃ……」
「どした」
「いきてる?」
「生きてる、生きてる……」
「そか」
簡単な受け答えをして、再び眠りの淵へと落ちていく。
しばしして、
「──…………」
つんつん。
「──…………」
つんつん。
「……どした」
「◯◯、いきてる?」
「生きてる、生きてる……」
「そか……」
伯父の急死が余程ショックだったのだろう。
すこし寝息が静かだと、俺が生きていることを確認せずにはいられないらしい。
このままでは睡眠不足まっしぐらである。
「──…………」
つんつん。
「──…………」
つんつん。
「……××さん」
「はい」
羽毛布団をめくり、うにゅほを引きずり込む。
「わ」
「一緒に寝りゃ、確認せずに済むだろ……」
「……うん」
「寝るの遅かったから、昼まで起こさないように」
「はい」
湯たんぽ代わりにうにゅほを抱き締めて、目を閉じた。
暑くて逆に寝苦しかった。

※ 明日の「うにゅほとの生活」はお休みとなります

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