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2018
01.31

うにゅほとの生活2250

2018年1月31日(水)

「◯◯ー」
うにゅほの声が寝室から届いた。
「ほん、かたづけていーい?」
「本?」
「まくらもとの、ほん」
「あー」
寝る前に読書する習慣のある俺の枕元には、読みさしの本が常に何冊か積まれている。
「読んでる最中なんだけど……」
「でも、たくさんある」
「そんなにあったっけ」
「うーと、いち、にい、さん──」
番町皿屋敷のように、うにゅほが本を数え上げていく。
「──じゅういち、じゅうに、じゅうさんさつ!」
「そんなに……」
積みすぎである。
「しゃーない、片付けるか」
重い腰を上げ、寝室へと足を運ぶ。
「これ」
うにゅほが枕元を指差す。
「……言われてみれば、たしかに」
文庫、コミック、新書、ハードカバー、和書、翻訳書、小説、学術書──
ジャンルも大きさもバラバラの書物が、枕の周囲に散らばっている。
「正直、何冊かは、どこまで読んだかも覚えてない」
「それかたづけよ」
「……二冊くらいは残していい?」
「うん」
許可が出たので、二冊を残してあとは綺麗に片付けることにした。
「──あ、そうだ」
「?」
「今日、皆既月食なんだってさ」
「おー」
「たぶん、いまくらいから──」
本を抱えたまま、窓の外を見上げる。
「あ、欠けてる」
「ほんと?」
うにゅほが俺の隣に並ぶ。
「ほんとだ!」
自室の窓から見えてよかった。
寒い思いをせずに済む。
「十時くらいに、月がすっぽり地球の陰に隠れるみたい」
「いろ、かわる?」
「変わる変わる」
そう言えば、何年か前にも一緒に見たっけ。※1
数年に一度の天体ショーだ。
「次もまた、一緒に見ような」
「うん」
ふたり小指を繋ぎながら、赤銅色の月を見上げるのだった。

※1 2014年10月8日(水)参照

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2018
01.30

うにゅほとの生活2249

2018年1月30日(火)

「──暑い!」
「!」
うにゅほが温湿度計を覗き込む。
「じゅうはちど……」
「18℃か」
体感的にもそのくらいだ。
「……あつい?」
「いや、肌寒い」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「最近、事あるごとに寒い寒い言ってたじゃん」
「さむいもん」
「寒いよな」
「うん」
「でも、寒い寒い言ってたら、余計に寒くなる気がして」
「あー」
「××も一緒に暑い暑い言ってみようぜ」
「うと、あつい……」
「暑いなー」
「あついねえ」
「ふー、暑い暑い」
作務衣の共襟をパタパタさせてみる。
「あついー」
うにゅほが俺の真似をして、服のなかへと空気を送り込む。
「──…………」
「──……」
「寒いな」
「さむい」
「ああ、我に返っちゃダメだ。いまの室温は28℃、いまの室温は28℃!」
「むりがあるのでは……」
「……まあ、うん」
冷静に指摘されてしまった。
「ストーブつけるね」
「お願いします」
見る間に上がる室温を肌で感じながら、人類史上初めて火を手にした人間に思いを馳せる俺だった。

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2018
01.29

うにゅほとの生活2248

2018年1月29日(月)

吐息で温めた両手を擦り合わせ、暖を取る。
「冬将軍は今日も元気だな」
「うん……」
一月の下旬は、一年で最も寒い時期と言われている。
ここを乗り切ることができれば、あとはゆるやかに春を待つばかりだ。
「──というわけで、頑張るぞ!」
「おー」
「ヘイカモン」
ぽぽんぽんぽん。
リズムよく膝を叩く。
「はーい」
うにゅほが俺の膝に腰を下ろす。
ふにふにとしたおしりの重みが心地よい。
「あ、ストーブ」
「ストーブはいいや」
「つけないの?」
「つけない」
「そか」
「灯油の消費がな……」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「とうゆなくなったら、とうゆいれる……」
「……玄関には、ポリタンクがある。灯油の入ったポリタンクだ」
「うん」
「ポリタンクの容量は、18L。みっつで?」
「ごじゅうよんりっとる」
「半分ちょっと使ったから、残りはだいたい25Lだな」
「そだね」
「××、ストーブの灯油タンクってどのくらい入るか知ってる?」
「うと、さんりっとるくらい?」
「7Lです」
「そなんだ」
「つまるところ、灯油を汲めるのは、あと三回半だけなんだ」
「!」
うにゅほが目をまるくする。
まあ、なくなってもガソリンスタンドまで買いに行けばいいのだが、それはそれでめんどい。
冬場のガソリンスタンドって、めっちゃ寒いし。
「というわけで、ゆたんぽ××さんに頑張ってもらおうかと」
「がんばる」
うにゅほが、鼻息も荒く頷いた。
やる気だ。
「よし、手をあっためてくれ」
「はーい」
小さな手のひらが、俺の右手を包み込む。
「あったかい?」
「あったかい」
温かいし、和む。
うにゅほは、ゆたんぽ界のお姫さまであろう。

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2018
01.28

うにゅほとの生活2247

2018年1月28日(日)

ぐわん、ぐわん。
左右に大きく振れながら、呟く。
「……あまりにも眠い」
「ねむいの……」
「眠い」
「◯◯、きょう、ねてばっかしだね」
「うん……」
既に三度寝、累計睡眠時間は十時間に達そうとしている。
「ぐあいわるい?」
「そういうわけでもないんだけど……」
うにゅほが俺の額に触れる。
「ねつない」
「なんだろうなあ」
ぐわん、ぐわん。
「風邪でもないし、寝過ぎて眠いって感じでもないし……」
感覚としては健康的な眠気に近いのだが、客観的に見ると明らかに異常である。
「ねたほう、いいのかなあ」
「わからない、けど、眠い……」
ぐてー。
チェアの背もたれに体重を預け、天井を仰ぎ見る。
「かぜひくよ」
「……まだ寝てない」
「じかんのもんだいとおもう……」
「──…………」
自重に負けた目蓋が、徐々に閉じていく。
「◯◯、◯◯」
「んー……」
「ねるならベッドいこ」
うにゅほが俺の手を引く。
記憶しているのは、ここまでだ。

「……ん」
懐に熱を感じて目を覚ますと、
「──……すう……」
うにゅほの寝顔が、眼前にあった。
知らぬ間に同衾していたらしい。
まあ、いいか。
羽毛布団をめくって熱気を逃がし、そのまま流れるように五度寝に入る俺だった。
日記を書いているいまも、まだ眠い。
このところの寒さに、体が冬眠を求めているのだろうか。

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2018
01.27

うにゅほとの生活2246

2018年1月27日(土)

メーラーを起動し、新着メールを確認する。
「あー、また来てる」
「?」
俺の呟きに、買ってきたばかりの漫画を読みふけっていたうにゅほが顔を上げた。
「なにきたの?」
「迷惑メール」
「ふうん……」
「Facebookの招待メールだと思うんだけど、何語かわからん」
「ふぇいすぶっくって、おかあさんやってるやつ?」
「そうそう」
「えすえぬえすだ」
「意味わかってる?」
「……うへー」
だろうなあ。
「簡単に言うと、友達とネットでなんやかやするやつだな」
「わたし、ともだちいない」
「……うん」
たしかに、可愛がってくれる年上の知り合いはいても、友達はひとりもいないよな。
「友達、欲しい?」
「んー」
しばし思案し、
「ふつう……」
「普通」
「あんましかんがえたことない」
「そっか」
そんなものかもしれない。
「なにごかわからんって、どんなメールきたの?」
「見るか?」
「うん」
うにゅほがディスプレイを覗き込む。
「──…………」
「──……」
「なにご?」
「わからんって」
「……ほんとにもじ?」
そこから疑っていくのか。
「何語か調べてみるか」
「わかるの?」
「調べればな」
Google翻訳を開き、入力欄にメールの冒頭をコピペする。
「あ、タイ語だ」
「たいご」
「意味は、ハローだって」
「たいご、へんなじーだね」
「タイ人に怒られるぞ」
何故Facebookからタイ語でメールが来るのかわからないが、触らぬ神に祟りなしである。
放置放置。

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2018
01.26

うにゅほとの生活2245

2018年1月26日(金)

「はー……」
夕刻、風呂上がり。
湯冷めしないように半纏を羽織り、自室へ戻る。
「いいゆだった?」
「いい湯だった」
「そか」
うにゅほが満足げに微笑む。
「今日は1月26日だから、いい風呂の日──じゃ、ないか。違うな」
「ちがうの?」
「いい風呂の日は、11月26日だと思う」
「あー」
うにゅほがうんうんと頷く。
「じゃあ、なんのひかな」
「何の日だと思う?」
「うと、いふろ……いにろ……、いちにむ……」
「語呂合わせは厳しいんじゃないか」
「……そだね」
「調べてみよう」
「うん」
Googleを開き、「1月26日」で検索する。
一年三百六十六日、毎日が何かしらの記念日だ。
さて、今日は何の日だろうか。
「──文化財防火デー、だって」
「ぶんかざいぼうかでー」
「よくわからんな」
「わからん……」
ふたり揃って小首をかしげる。
「ほかある?」
「有料駐車場の日……」
「……どんなひ?」
「日本の公共駐車場初のパーキングメーターが設置された日、と書いてある」
「そなんだ」
「なんか、いまいちパッとしないな」
「うん……」
でも、まあ、そんなものかもしれない。
毎日が特別な日と嘯いたところで、本当に大切な日は別に取ってあるものだ。
バレンタインデー楽しみです。

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2018
01.26

うにゅほとの生活2244

2018年1月25日(木)

「──……寒い!」
「さむいー……」
両手を擦り合わせながら、呟く。
「昨日も大概寒かったけど、今日はその倍は寒いな」
「うん……」
「いま何度?」
「うーと、じゅうななど」
室温こそ昨日と大差ないものの、壁から伝わる冷気の質が明らかに違う。
ファンヒーターの熱風が、まるで頼りない灯火のようだ。
「ゆたんぽ、きょうもする?」
「する」
「はい」
「あ、ちょっと待って」
「?」
立ち上がりかけたうにゅほを制し、言葉を継ぐ。
「まず、この寒波に真っ向から挑んでみようと思う」
「……そとさむいよ?」
「外には出ない」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「己の肉体ひとつで、寒波に打ち勝ってみせる!」
「ぐたいてきには?」
「エアロバイクを漕ぐ」
「……?」
「エアロバイクを思い切り漕いで、発する熱気で部屋を暖めてみようかと」
「あー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「◯◯なら、できるかも」
「伊達に、いるだけで部屋が暑くなるとか言われてないからな」
初めてそう言われたときは、ちょっとショックだったけど。※1
冷え切った廊下からエアロバイクを運び込み、意気揚々と跨る。
「いざ!」

──三十分後、

「……寒い」
「さむいねえ……」
完全敗北である。
「ストーブ消すのはやり過ぎだったな……」
「つけていい?」
「つけてくれ」
大寒波ってスゴイ。
僕は改めてそう思った。

※1 2017年10月8日(日)参照

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2018
01.25

うにゅほとの生活2243

2018年1月24日(水)

「──寒い」
「さむいねえ……」
「いま何度?」
「んー」
うにゅほが温湿度計を覗き込む。
「じゅうななど、だって」
「──…………」
思わずファンヒーターに視線を向ける。
「……ついてるよな」
「ついてる」
ファンヒーターの暖房能力が、寒波に完全に押し負けている。
「外、どんだけ寒いんだ……」
知りたいような、知りたくないような。
「××」
ぽん、ぽん。
自分の膝を、軽く叩いてみせる。
すると、
「!」
即座に立ち上がったうにゅほが、読みさしの漫画を手に、俺の膝に腰を下ろした。
阿吽の呼吸である。
「……はー」
温かく、抱き締めやすい。
「××は最高の湯たんぽだなあ」
「うへー」
てれりと笑う。
素直に喜んでしまうのが、うにゅほのうにゅほたる所以である。
「◯◯も、ゆたんぽ」
「俺は湯たんぽじゃないぞ」
「なに?」
「俺は、半纏かな。××の半纏。ほら、後ろから抱き締めてるし」
「あー」
うにゅほがうんうんと頷く。
「つまり、いまの状況は、湯たんぽが半纏にくるまれている……」
「あったかそう」
「実際、暖かいしな」
「うん」
互いが互いの暖房器具。
冬場限りの幸せだ。
まあ、夏場は夏場でくっついてるけども。

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2018
01.23

うにゅほとの生活2242

2018年1月23日(火)

「××、届いたぞー」
「?」
「じゃん」
片手で抱えていたダンボール箱を、うにゅほの眼前に差し出した。
「あ!」
うにゅほが目を輝かせる。
「おもちゃのかんづめだ!」
「イエース」
「あけていい?」
「いいよ」
うにゅほ待望の、金のキョロちゃん缶である。
丁寧に包装を解いたうにゅほが、箱から金色のキョロちゃんを取り出した。
「おー……」
「思ったより大きいな」
「うん」
「撫でたら喋るんだっけ」
「しゃべるよ」
うにゅほが、キョロちゃんの頭を撫でる。
「──…………」
「──……」
「喋らないな」
「しゃべらない……」
「貸してみ」
「うん」
キョロちゃんを受け取り、いじり回してみる。
「あ、開いた」
「!」
あっさりと首が外れ、中身が覗いた。
「おもちゃのカンヅメだけに、ちゃんとおもちゃも入ってるんだな」
「ほんとだ……」
「中身、全部機械かと思ってた」
「わたしも」
考えてみれば、喋るだけの人形に、それほど大仰な機構は必要ない。
「あ、わかった。くちばしの裏だ」
「うら?」
「ここに電池ボックスがある」
「でんち、いる?」
「いや、だぶん──」
電池ボックスから飛び出ていた絶縁シートを抜き取る。
すると、
『クエックション!』
「わ」
キョロちゃんの生首が、くしゃみをした。
「くびだけでも、しゃべるんだ」
「頭じゃなくて、くちばしがボタンになってるみたい」
うにゅほが、恐る恐るくちばしを撫でる。
『チャンキュー!』
「おー……」
「とりあえず、首を嵌めとくか」
「うん」
それから、しばらくのあいだ、キョロちゃんの甲高い声が自室に響き渡っていた。
「♪」
どうやら気に入ったらしい。
ちょっとうるさいけど、楽しそうだからいいか。

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2018
01.22

うにゅほとの生活2241

2018年1月22日(月)

「はー、さぶさぶ……」
午前九時に起床し、暖房の効いていないリビングで朝食をとる。
朝食は、ベーコンエッグだった。
うにゅほは、俺の好みの焼き加減を熟知している。
多くの人は焼き過ぎと感じるだろうが、完熟好きの俺にとっては最高のベーコンエッグだ。
「ごちそうさま」
と、手を合わせる。
「おそまつさまです」
「美味しかった」
「うへー」
うにゅほの頭をぽんと撫で、食器を片付ける。
「あ、わたしあらう」
「いいよ、悪いし」
「でも」
「フライパンも洗えばいいのか?」
「うと、フライパンは、キッチンペーパーでふく……」
「じゃあ、そっちは頼むな」
蛇口をひねり、水を出す。
流水で大まかな汚れを落とそうとして、
「──!」
まだなかばほど寝ぼけていた脳が、一気に覚醒した。
痛い。
痛い。
冷たいという感覚を通り越したのだと、経験が教えてくれる。
このところ、寒さが厳しいものなあ。
「……ふう」
だが、洗わないわけにも行くまい
痩せ我慢して食器を洗い、両手を擦り合わせる。
「はー、つめたつめた!」
「ごくろうさまです」
「××も、母さんも、あかぎれたりしないのか?」
「あかぎれ?」
「……しもやけ?」
「しもやけ……」
「水が冷たすぎて、手が荒れたりしないのかなって」
「うん。おゆであらうから、だいじょぶ」
「あー……」
お湯を出せばよかったのか。
「……えい」
「ひや!」
冷え切った両手で、うにゅほのほっぺたをこねる。
「ふめはい……」
「あっためて」
「ふん」
もちもち。
しばらくほっぺたで温めてもらうと、ようやく指先の感覚が戻ってきた。
真冬の水場にご注意を。

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