2017
12.30

うにゅほとの生活2218

2017年12月30日(土)

「あつ……」
チェアに座ったまま爪先を伸ばし、ファンヒーターの電源を落とす。
「あついねえ……」
「いま何度?」
うにゅほが温湿度計を覗き込む。
「うーと、にじゅうろくてんごど、だって」
「そりゃ暑いわ」
ファンヒーターは細かな温度調節が苦手である。
設定温度など、言わば飾りのようなものだ。
「でも、消したら消したですぐ寒くなるんだよな……」
「エアコンだめなの?」
「真冬に使える代物じゃないみたい」
「そなんだ……」
「そもそも、室外機にカバー付けちゃったしな」
「そか」
もぞ。
座椅子に腰を下ろしたうにゅほが、両のふくらはぎを擦り合わせる。
スカートから伸びる両足を覆うのは、デニール数の概念すら危ういくらいモコモコの黒タイツだ。
「それ、蒸れそうだなあ」
「むれる……」
「母さんからもらったんだっけ」
「うん」
「──…………」
「?」
「引っ張って脱がしてみていい?」
「んー……」
しばし思案し、うにゅほが答える。
「のびちゃう」
「伸びちゃうか」
「あと、ぬげないとおもう」
「脱げないか……」
「うん」
言われてみれば、たしかにそうだ。
おしりまですっぽり包んでいるタイツが、引っ張っただけで簡単に脱げるはずはない。
「……膝まで下ろした状態なら?」
我ながら諦めが悪い。
「ぬげるとおもう」
「やっていい?」
「うしょ」
ずり、ずり。
座ったままのうにゅほが、目の前でタイツを下ろしていき──
「やっぱやめよう」
「?」
「なんか、思ってたより不健全な気がしてきた」
「そかな」
このタイツ分厚いからパンツも透けないし、もっとバラエティ的な面白さになると予想していたのだ。
「でも、あついからぬぐね」
ずり、ずり。
「──…………」
それはそれでガン見せざるを得ないのが、男の性である。
年の瀬に何をやっているのだか。

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2017
12.29

うにゅほとの生活2217

2017年12月29日(金)

「んー……」
キーボードを前に、腕を組む。
「書くことが、ない!」
「にっき?」
「日記」
「こまったねえ……」
俺の真似をしてか、うにゅほが小さく腕を組んだ。
「──…………」
左手を右肘に添え、顎の下を撫でる。
「──……」
うにゅほが、同じように顎を撫でた。
「──…………」
「──……」
にまり。
遊びの始まりだ。
「どうしようかなあ」
俺が、右手を上げる。
「どうしようねえ」
うにゅほも、右手を上げる。
「だらだらしてると、書くことなくて、なあ」
俺が、首を大きく回す。
「ことし、ずっとだらだら、するの?」
うにゅほが、首を大きく回す。
「今年はずっとタスクに追われてたから、最後くらいはのんびりしたくてさ」
チェアから腰を上げ、軽く屈伸運動をする。
「そかー」
うにゅほも、同じように屈伸運動をする。
「来年もまた忙しいだろう──、し!」
その勢いで前屈し、床に手のひらをぺたりとつける。
「う」
「どうかした?」
「なんでも、な、いー……!」
床に伸ばした中指の先が、くるぶしのあたりで止まっている。
うにゅほは前屈限定で体が固い。
他の部分は猫のように柔らかいのに、面白いものである。
「よし、ストレッチするか」
「うん……」
ふたりで背中を押し合いへし合い、凝り固まった筋肉を伸ばすのだった。

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2017
12.28

うにゅほとの生活2216

2017年12月28日(木)

「あ゙ー……」
チェアの上でとろけながら、濁音じみたうめき声を上げる。
「なんか、疲れてきた」
「つかれ……」
「……××の言いたいことはわかる」
俺が今日したことと言えば、
昼過ぎに起きて、
溜まっていたアニメを消化し、
積んでいた漫画の新刊を読み漁り、
チェアの上から動くことなくだらだらしていただけである。
「何もしないのは何もしないので、意外と体力を使うと言いますか」
「そなんだ……」
「呆れてる?」
「……うーん」
うにゅほが苦笑する。
あ、これは呆れてますね。
「なにかしましょう」
「そうだな。正直、すこし動きたい気分だ」
日がな一日だらだらしていたことで、血流が滞っている気がする。
それが疲労感に繋がっているのだろう。
「おおそうじ、する?」
「──…………」
「しない」
顔に出ていたらしい。
「……大掃除は大晦日でお願いします」
「はい」
「とりあえず、エアロバイクでも漕ぐかな」
「ひさしぶりだ」
「一昨日漕がなかった?」
「こいだけど、ひさしぶりなかんじする」
「その前、しばらく漕いでなかったからなあ……」
「そだね」
「そのあとは、ストレッチだな」
「うん」
「やるなら××も一緒だぞ。最近、前屈ぜんぜんやってないだろ」
「うへー……」
あ、誤魔化した。
2017年も、残すところあと四日だ。
だらだらと新年を迎えるのも良いが、体は適度に動かしておかねば。

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2017
12.27

うにゅほとの生活2215

2017年12月27日(水)

「──あれ?」
きょろきょろと周囲を見渡す。
デスクの上。
丸椅子の上。
ベッドの枕元。
無意識に置きがちな場所を見て回るが、目的のものは見当たらない。
「◯◯、どしたの?」
「イヤホンどっか行った……」
「どのやつ?」
「仕事のときiPhoneで音楽聴く用のやつ」
「わたしもさがすね」
「頼む」
いまから仕事だ。
音楽があるのとないのとでは、時間の感じ方が違う。
「ないねえ……」
「ないんだよ」
「べつのいやほん、だめなの?」
「iPhone7だからなあ……」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「えーと、7になって、普通にイヤホン使えなくなったのは覚えてる?」
「あな、なくなったんだっけ」
「そうそう。それを使えるようにするアダプタが、あのイヤホンに付けっぱなしでさ」
「あー」
うんうんと頷く。
「ちいちゃい、しろいのだ」
「あったろ」
「あった」
「……しゃーない、今日は音楽ナシか」
階下の仕事部屋へ足を向けたとき、
「まっててね」
「うん?」
「◯◯がしごとしてるあいだ、わたしさがすから」
「……頼んだ」
「はい!」
うにゅほなら、きっと見つけてくれる。
確信と共に階段を下り、
「──あった!」
はや。
「◯◯、いやほんあった!」
「えーと、どこにあった?」
「なんかね、つくえのうえにあった」
まさかの。
「……そこ、何度も探したと思うんだけどなあ」
「うん、わたしもさがしたとおもう……」
意識の死角にでも入っていたのだろうか。
「とにかく、ありがとうな」
「うへー」
やはり、音楽があると仕事が捗る。
今回のようなことがあると困るので、予備のアダプタを注文しておこうかな。

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2017
12.26

うにゅほとの生活2214

2017年12月26日(火)

「──…………」
ぼけー。
PCで動画を再生したまま、ぼんやりと天井を見上げる。
「つん」
「うひ」
「つんつん」
「うひひ」
「◯◯、げんきない?」
「元気はあるけど、やる気がない……」
「やるきが」
「ほら、年末じゃん」
「うん」
「クリスマス終わって大晦日までって、イベントとイベントのあいだの隙間だろ」
「そだねえ」
「なーんか持て余すんだよなあ……」
ぐりんぐりんとかぶりを振る。
「おおそうじ、する?」
「──…………」
「しないかー」
顔に出ていたらしい。
「……大掃除は、ほら。大晦日にやるものだし」
「うん」
うにゅほが苦笑する。
「だらだらしたくてしてるから、心配しなくても大丈夫だよ」
「そか」
「××もだらだらしよーぜー」
でろん。
アームレストにしなだれかかる。
「うん、だらだらする」
「カモン」
「♪」
うにゅほを膝に招き、軟体動物になったかのように思いきり力を抜く。
「だらー」
「××、もっと力を抜くのだー……」
「こう?」
ぐでー。
「そうそう」
「だらー……」
「だらだらー……」
こうして、一時間ほど究極のだらだらを追い求めたのだった。
首が痛い。

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2017
12.25

うにゅほとの生活2213

2017年12月25日(月)

「──……くァ」
昨夜はすこし飲み過ぎた。
正午前に起床し、あくびを噛み殺しながら書斎へ向かう。
「おはよー」
「めりーッス」
「……めりーす?」
うにゅほが小首をかしげる。
「メリークリスマスの略」
「そなんだ」
「外では使わないように」
「めりーす!」
「めりーッス」
「うへー」
うにゅほが楽しそうで何よりである。
「それでは、俺サンタからクリスマスプレゼントだぞ」
「わあ!」
作務衣の合わせに手を突っ込んで脇腹をボリボリ掻きむしりながら、引き出しに隠してあった紙袋を取り出す。
「んー……」
すこし考え、
「××さん」
「はい」
「目を閉じて、両手を前に出してください」
「わかった」
言われるがままに目蓋を閉じ、うにゅほが両手を差し出した。
「──…………」
疑問も躊躇もないあたり、全幅の信頼を置かれていると感じる。
裏切れないよなあ。
裏切るつもりなど毛頭ないけれど。
ガサゴソと紙袋を開き、中身を取り出す。
そっとうにゅほの左手を取り、
「あ」
クリスマスプレゼントの手袋をはめた。
「てぶくろだ」
「手袋です」
「めーあけていい?」
「右手がまだです」
「はい」
右の手にも手袋をはめたあと、
「めーあけていい?」
「いいよ」
うにゅほが目蓋を開いた。
「あ、かわいい」
ファー付きのムートン手袋。
オシャレめな一品だ。
「これ、ゆきかきしていいやつ?」
「ダメなやつ」
「だいじにつかうね」
「ああ」
「ありがと!」
クリスマスプレゼントのお返しに、ほっぺにちゅーをしてもらい、幸せな気分で一日を過ごした。
読者諸兄も、メリークリスマス。

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2017
12.25

うにゅほとの生活2212

2017年12月24日(日)

「はー、食った食った……」
「くったー、くったー」
ぽん!
ふたり並んでおなかを叩く。
うにゅほと母親の握った寿司をたらふく食べて、不二家のクリスマスケーキを胃袋の隙間に詰め込んで、満腹満足である。
「二日連続でこれは、さすがに太ってしまうな……」
「そだねえ」
「××さん、余裕そうじゃないですか」
「そかな」
「最近、体重計乗ってる?」
「のってない……」
「乗ってみようか」
「やです」
「そう言わずに」
「◯◯ものるなら、いいよ」
「嫌です」
「そういわずに」
「──さ、それはさておき」
誤魔化しがてら、飾り棚からDVDを取る。
「クリスマスイヴと言えば?」
「ぎんがてつどうのよる!」
クリスマスイヴの夜、劇場版・銀河鉄道の夜をふたりで一緒に観る。
毎年の恒例行事だ。
夏の終わりの物語なのだが、キリスト教の要素も強いので、的外れではあるまい。
「飲み物作るから、トレイにDVD入れといて」
「はーい」
ペプシストロングゼロと鏡月のライム味を冷蔵庫から出し、適当な割合で混ぜ合わせる。
「××は普通のペプシな」
「うん」
「間違ったふりして俺の飲んじゃダメだぞ」
「はーい」
飲み物を手にチェアに腰掛け、うにゅほを膝の上に乗せる。
耳掛けイヤホンを片方ずつ装着し、準備は万端だ。
「眠くなったら、寝ていいぞ」
「ねないよー」
「毎年寝てる気がするけど」
「ねてないよ」
「そうだっけ」
「うん」
などと言いつつ、今年もなかばほどで寝落ちするうにゅほだった。
「──……すう」
ぽかぽかと暖かいうにゅほの矮躯を抱き締めながら、今年も無事にクリスマスイヴを迎えられたことを感謝する。
神に、だろうか。
そこまで信心深くはない。
だが、年に一度くらいなら、気まぐれを起こしてもいいだろう。
そんなことを思うクリスマスイヴなのだった。

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2017
12.23

うにゅほとの生活2211

2017年12月23日(土)

「──肉が食べたい!」
「にくが」
「がっつり食べたい……」
「あした、クリスマスだよ」
「ああ」
「おすしだよ」
「ごちそうだな」
「うん」
「それはそれとして、肉が食べたい」
「そか……」
「こないだチラッと見かけたんだけど、川向こうにアメリカンなステーキハウスができてたんだよ」
「そなの?」
「もうすぐ昼だし、行ってみない?」
「いく!」
相変わらずの即断即決である。
愛車を法定速度で飛ばすと、十分ほどで件のステーキハウスへと辿り着いた。
「祝日の昼時なのに、わりと空いてるなあ……」
「そだねえ」
少々不安だが、今日の俺は肉食である。
「よし、600g行ってみよう!」
「ろっぴゃく」
「頼みすぎかな」
うにゅほが小首をかしげる。
「ろっぴゃくって、どのくらい?」
「……えーと」
どのくらいなのだろう。
「いちばんちいさいの、にひゃくごじゅうだから、ばいくらい?」
「そうだな」
最低でも250gからとは、サイズまでアメリカンな店である。
注文することしばし、
「ご注文の品、お持ちしましたー」
どん!
目の前に、巨大な鉄板が置かれる。
「──…………」
「──……」
単行本ほどはあろうかという大きさの分厚いステーキが、二枚。
「これが、600gの世界……」
「……たべれる?」
「食べる」
むしろ、夢にまで見た量である。
「250gでもかなり大きいけど、××は大丈夫?」
「たべる」
「そっか」
不敵に笑みを浮かべながら、ふたり揃って手を合わせる。

「「いただきます!」」

帰途の車中、うにゅほが呟いた。
「……わたし、にくだけでおなかいっぱいになったの、はじめて」
「でも、食べ切れたな」
「おいしかったー……」
そう言って、満足げにおなかを撫でる。
「今度は、みんなも連れてこよう」
「うん」
いい店を見つけた。
もうすこし流行ってくれれば、潰れる心配をしなくて済むのだが。

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2017
12.22

うにゅほとの生活2210

2017年12月22日(金)

「また当たってしまった……」
小さく「あたり」の文字が印字されたシールを手に、そう呟く。
「?」
うにゅほが顔を上げ、俺が手にしているものに気がついた。
「もすばーがー、あたったの?」
「当たりました」
「よくあたるねえ……」
当たったのは、モスバーガー&ペプシコーラ(S)。
これで二枚目である。※1
「わたしと、◯◯、ふたりとも、ただでたべれるね」
「……ペプシとモスの思惑にまんまと乗るようで、ちょっと複雑なんだけどさ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「無料のものだけ食べて追加注文せずに帰るのって、なんか抵抗ある」
「そかな」
「××は、抵抗ない?」
「だって、あたったんだもん」
「そうなんだけどさ……」
単に、気にしすぎなのだろうか。
「ポテト、ちゅうもんする?」
「あと、テリヤキバーガーでも追加注文するか」
モスバーガーひとつでは足りないだろうし。
「ひとくちたべたいな」
「いいぞ」
「やた」
これは、これでいい。
ひとまずは解決だ。
問題があるとすれば──
「この調子だと、また当たりそうで怖いな」
ペプシストロングゼロ1.5Lの詰まったダンボール箱に視線を向ける。
「もすばーがー、みっつ?」
「みっつ」
「みっつかあ……」
「まあ、二回に分けて行けばいいんだけどさ」
「そだね」
嬉しいことは嬉しいのだが、素直に喜びきれないのが実情だ。
サイドメニューも当たればいいのになあ。

※1 2017年12月13日(水)参照

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2017
12.21

うにゅほとの生活2209

2017年12月21日(木)

ふとしたことで、気がついた。
「今日、12月21日か」
「そだよ」
「2017年も、あと十日しかないんだなあ……」
しみじみ。
「それ、まいにちいってるきーする」
「言ってるかもしれない」
「あと、まいとしいってるきーする」
「言ってるかもしれない……」
「わたし、クリスマスのほうたのしみだなあ」
「クリスマスイヴまで、あと三日か」
「あした、あさって、しあさって!」
「さて問題です」
「はい」
「その次は?」
「つぎ……」
うにゅほが小首をかしげる。
「やのあさって、と言うらしい」
「やの?」
「やの」
得意げに言ったあとで、ふと不安に駆られた。
「あれ、これって方言だったかな……」
「どうなのかな」
「あしたは、明日」
「みょうにち」
「あさっては、明後日」
「みょうごにち」
「しあさっては、明々後日」
「みょうみょうごにち」
「やのあさっては?」
指折り数えながら、うにゅほが答える。
「みょう、みょう、みょう、ごにち……」
「そんな言葉、あるのかな」
「ないの?」
「四日後でいいじゃん、という気がしないでもない」
「うん……」
「聞いた記憶はたしかにあるんだけど、いつ聞いたかも、誰から聞いたかも、ぜんぜん覚えてないんだよなあ」
「やの、ってなんだろね」
「調べてみよう」
調べてみた。
「──まず、弥の明後日という言葉はある。意味も正しい」
「おー」
「でも、"弥の"の語源は出てこないなあ」
「なぞ?」
「謎」
「なんだろねえ……」
そもそも、しあさっての"し"がどこから来たかさえわからないのだ。
普段なにげなく使っている言葉でも、深く考えると謎が多いものだなあ。

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