2017
11.30

うにゅほとの生活2189

2017年11月30日(木)

今日は、愛犬の命日だった。
庭にある墓石を軽く撫で、口を開く。
「雪、解けてよかったなあ」
「そだね」
「去年、墓石埋まってたもんな」
「さむそうだった……」
「雪の下って、意外とあったかいらしいぞ」
「そなの?」
「真冬の外気温に比べれば、だけどな」
「ふうん……」
「さ、お供えお供え」
戸棚からくすねてきた父親のビーフジャーキーを取り出し、墓前に供える。
そうして、ぱん、と手を合わせた。
「──…………」
「──……」
愛犬が死んでから、今年で何年になるだろう。
実を言うと、それすらおぼろげだ。
かつて、一日は、午後六時でくびられていた。
愛犬の散歩を中心にして、生活が組み立てられていた。
朝は、うにゅほが。
夕方は、ふたりで。
愛犬を連れて、毎日、町内をぐるりと巡ったものだった。
「コロの墓参り、するとさ」
「うん」
「散歩したくなるよな」
「……うん」
「セイコーマートに、ポッキー買いに行くか」
「いく!」
「××、ポッキー好き?」
「すき」
「プリッツとどっち好き?」
「プリッツって、ポッキーのチョコないやつ?」
あ、やっぱりそんな認識なんだ。
「わたし、チョコあるほうがいいなあ……」
「じゃあ、財布取ってくるか」
「うん」
墓石に背を向ける。
その瞬間、
「──またね」
と、うにゅほが愛犬に告げた。
墓石は、ただ無言で立ち続けるだけだった。

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2017
11.29

うにゅほとの生活2188

2017年11月29日(水)

「はー、食った食った……」
「くったー、くったー」
俺の真似をして、うにゅほが自分のおなかを撫でる。
「ステーキ、美味しかったな」
「うん」
俺としては、量が少々物足りなかったけれど。
「それにしても、語呂合わせに乗っかるなんて、なんか珍しい気がする」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「ほら、今年はポッキーの日もスルーしたし」
「あ、わすれてた……」
「やっぱり」
「おしえてよー」
「俺も、次の日気づいた」
「そか……」
「……今度出掛けたとき、ポッキー買っとく?」
「かう」
あまり意識したことがないけれど、うにゅほはポッキーが好きなのかもしれない。
「しかし、これなら毎年でもやってほしいな」
「ポッキー?」
「ステーキ」
「……?」
あれ、話が噛み合ってないぞ。
「今日、いい肉の日だからステーキにしたんじゃないの?」
「いいにくのひ……」
「11月29日」
「あ」
ようやく気がついたらしい。
「……特に関係なくステーキだったの?」
「おかあさん、なにもいってなかった」
「てことは、たまたまか」
「たぶん……」
珍しいこともあるものだ、と思っていたら、もっと珍しい偶然が起きていた。
「まあ、なんでもいいや。美味しかったし」
「うん、おいしかった」
12月2日は、弟の誕生日である。
どっか行くのかな。

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2017
11.28

うにゅほとの生活2187

2017年11月28日(火)

「◯◯ぃ……」
チェアで読書をしていると、うにゅほがか細い声で俺を呼んだ。
顔を上げると、
「いやほん、あらっちゃった……」
心なしか、しなっとした赤いコードが、うにゅほの両手から垂れ下がっていた。
「あ、やべ」
そう言えば、ポケットにイヤホンを入れたまま、作務衣を洗濯に出してしまった気がする。
「ごめんなさい……」
「いや、俺が悪い俺が。××はひとつも悪くない」
「こわれてないかな……」
「試してみよう」
DACからヘッドホンのプラグを抜き、イヤホンに挿し換える。
「きこえる?」
「まだイヤホンつけてない」
「あ、そか……」
左耳にカナル型イヤホンを装着する。
「きこえる?」
「まだ何も流してない」
「そか……」
マイミュージックを開き、適当なwavファイルを再生する。
「──あ、おとする!」
「うん、聞こえる。問題ないよ」
「よかったー……」
「まあ、もともと半分壊れてるしな。トドメになっても、それはそれで」
「こわれてるの?」
「うん」
うにゅほにイヤホンの右側を渡す。
「つけてみ」
「はい」
いそいそ。
「……きこえる、けど、おとちいちゃい?」
「買い替えようか迷ったんだけど、聞こえるのは聞こえるし……」
「そだねえ」
「もったいない、もったいない」
「うん。もったいない、もったいない」
完全に聞こえなくなったら、買い替えることにしよう。
洗濯にも耐えたのだ。
もうしばらく頑張ってほしい。

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2017
11.27

うにゅほとの生活2186

2017年11月27日(月)

「……あー」
パソコンチェアの肘掛けを撫でる。
「やっぱ、安い合皮使ってるよなあ……」
「どしたの?」
「見ればわかる」
そう言って、肘掛けを指差す。
「?」
膝立ちのうにゅほが、肘掛けを覗き込んだ。
「わ」
「合皮、ひび割れちゃってさ」
「ぱりぱりなってる……」
つんつん。
「はがれそう」
「剥がさないでおくれ」
「はがさないよ」
「まだ、買って一年くらいなんだけど」
「そだねえ」
ふう、と溜め息ひとつ。
「座り心地はいいんだ、座り心地は」
「うん」
「チェア変えてから、腰痛なくなったし」
「すーごいリクライニングするし」
「そうだな」
実のところ、その機能はあまり使っていないけれど。
「くろいテープ、はる?」
「肘掛けは、それでもいいんだけど……」
「?」
両足を、大きく開く。
「座面も割れ始めてるんだよ」
「あー……」
肘掛けも、座面も、同じ素材でできている。
同じように劣化するのは当然と言えるだろう。
「座り心地に不満はないから、安物買いの銭失いとは言いたくないけどさ」
「いくらだっけ」
「たしか、一万七千円」
「やすもの……?」
「高いチェアは、ほんと高いから」
アーロンチェアとか。
「まあ、しばらくは、補修してなんとか」
「そだね」
ほんと、安い合皮でさえなければなあ。

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2017
11.26

うにゅほとの生活2185

2017年11月26日(日)

ヨドバシカメラのトイレの前で、スマホをいじりながらうにゅほを待つ。
しばしして、
「ごめん、ごめん」
ハンカチをポシェットに仕舞いながら、うにゅほがトイレから出てきた。
「行くか」
「なにみるの?」
「……考えてなかったなあ」
単に、暇だったから来てみただけである。
「ね」
「うん?」
「といれっとぺーぱー、おってあるの、なんでだろねえ」
「あー……」
三角折りのことか。
「理由はいろいろ聞くけど、実際どれが正解なのかはよくわからんな」
「いろいろ?」
「次の人が引き出しやすくするためのマナーだとか、トイレ掃除しましたよっていうサインだとか」
「へえー」
うにゅほがうんうんと頷く。
「マナーとしての三角折りは、衛生的に間違いらしいけど」
「そなの?」
「想像してみよう」
「はい」
うにゅほが目を閉じる。
「トイレットペーパーを三角折りにするのは、個室を出る前だよな」
「うん」
「てことは、手を洗う前なわけだ」
「あ」
「衛生的には?」
「きたない……」
「そういうこと」
「そか」
「ノロウイルスの感染源になるって話も聞くから、やらないように」
「わかった」
「テレビ見よう、テレビ」
「かうの?」
「買わないけど、4Kの画質ってちょっと気になるし」
「あ、きになる」
しばしウィンドウショッピングに興じるふたりなのだった。
ヨドバシカメラ、楽しいです。

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2017
11.25

うにゅほとの生活2184

2017年11月25日(土)

「あ」
「?」
「甘いものが食べたい」
「あまいもの……」
「あったっけ」
「ろいずのおいしいやつ、たべちゃったもんねえ」
「てことは、もうないか」
「たぶん……」
「あれ、どうしたっけ。赤福」
「あかふく」
「随分前に貰ったけど、そのときダイエット中でさ」
「あー」
「俺以外食べないから、冷凍するとかしないとか言ってなかったっけ」
「うん、ある。しゃこのれいぞうこ」
「食べていい?」
「いいよ」
「うし」
小さくガッツポーズをし、意気揚々と車庫へ向かう。
そして、
「──ガッチガチだな」
「かたい」
箱一面の凍ったあんこを、うにゅほが指でつんつんつつく。
「常温で解凍したほうがいいのかな」
「そのほういいとおもう」
「しばらく我慢か……」
「がまん、がまん」

──三時間後、

「お、溶けてる溶けてる」
「あんこ、やわくなったね」
「試しに食べてみよう」
赤福をへらでこそげ取り、まるまるひとつ口に放り込む。
「──…………」
むぐむぐ。
「おいしい?」
「……もちが、硬い」
「とけてなかった?」
「いや、溶けてる。これたぶん、劣化して硬いんだ」
「そか……」
「しゃーない、電子レンジ先生の出番だな」
「やわくなるかな」
「わからんけど」

──三分後、

「……えらいことになった」
「でろでろだ」
溶けに溶けた赤福が一体化して、もはやなんだかわからない。
「味は……、まあ、美味いんだろうけど……」
「はい」
手渡されたへらで、半液状化した赤福をすくい取る。
そして、ひとくち。
「──あッ、づ!」
「わ」
見事、上顎をやけどしたのだった。

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2017
11.24

うにゅほとの生活2183

2017年11月24日(金)

「──…………」
愛用の座椅子で読書中のうにゅほに、ちらちらと視線を送る。
そろそろ言わねば。
さすがに言わねば。
そう思い始めて、既に十日が経過している。
「?」
と、うにゅほが視線を上げる。
そして、にこーと微笑んだ。
「う」
言いにくい。
言いにくいが、言わねばなるまい。
言うと約束したのだから。
「……××さん」
「なにー?」
「12月9日、俺いないんで……」
「!」
うにゅほが目をまるくする。
「……なんで?」
「ちょっと、友達に会いに……」
「とうきょう?」
「横浜」
「さらいしゅう……」
「再来週ですね、はい」
「わたし、いけない?」
「オールで飲む話になってるので、未成年はちょっと……」
「そか……」
「──…………」
「──……」
沈黙。
そして──
「わかった」
うにゅほが鷹揚に頷く。
「……いいの?」
「よくない、けど、ちゃんといってくれたから……」
「……FRENZの際は申し訳ありませんでした」
あのときは、五日前まで言い出せずにいたからなあ。※1
今回も、航空券を取ってから十日は言い淀んでいたのだけれど。
「でも、いつか、りょこうつれてってね」
「泊まり?」
「とまり」
「……わかった、約束する」
「うん」
でも、うにゅほが成人するまでは、ちょっと難しいかな。

※1 2017年9月12日(火)参照

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2017
11.23

うにゅほとの生活2182

2017年11月23日(木)

コンビニへ立ち寄る機会があったので、ついでにチョコボールを購入した。
俺は、定番のピーナッツ。
うにゅほは、
「きんのきなこもち、だって」
「美味しそうだな」
「きんのえんぜる、いまだけにばい、だって」
「ピーナッツは二倍じゃないのかな」
「かいてないねえ……」
「俺も、きなこもちにすればよかったかも」
うにゅほに貰えばいいやと思って、いつも通りのセレクトにしてしまった。
「ぎんも、にばいかなあ」
「銀のエンゼル、あと一枚だったっけ」
「うん」
「金が当たったら、どうする?」
「──…………」
うにゅほがぴたりと動きを止める。
「おもちゃのカンヅメと交換する?」
「うー……、んー……」
しばしかくかくと頭を左右に振ったのち、
「……とっとく?」
「取っとくか」
「うん」
世にも珍しい金のエンゼルを交換したくないというのもあるし、既に四枚揃っている銀のエンゼルをどうするかという問題もある。
「──って、皮算用にも程があるな」
「そだね」
「開けてみよう」
「うん」
うにゅほがチョコボールを開封する。
「きいろ」
「黄色かあ」
「だめだったねえ……」
「きなこもち、一粒ちょうだい」
「あーん」
「あー」
ぱく。
「……なんか、ぐにぐにしてる」
「ぐにぐに?」
「グミかなこれ」
「たべてみる」
ぱく。
「ぐにぐにふる」
「まあ、美味しいけど」
「うん」
「でも、ピーナッツのほうが好きかな。俺は」
そう言って、自分のチョコボールを開封する。
「──あっ」
「?」
「銀のエンゼル……」
「わ!」
五枚揃ってしまった。
「おもちゃのかんづめ、もらえるね!」
「よかったよかった」
うにゅほ、金のキョロちゃん缶欲しがってたからな。
さっそく森永に送りつけることにしよう。

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2017
11.22

うにゅほとの生活2181

2017年11月22日(水)

「ぶえ」
さけるチーズを食べながら、思わず小さく舌を出す。
「どしたの」
「舌がいはい」
「いたいの……?」
うにゅほが、俺の舌を覗き込む。
「そこじゃなくて、奥のほうが痛い」
「おく?」
「舌の付け根なんだけど、そこ噛んじゃってさ」
「みして」
「……えーと、めっちゃ奥なんだけど」
「うん」
見せないと納得してくれなそうだ。
「──んべ」
舌を、思いきり前に出す。
「んー……」
うにゅほが小首をかしげる。
「どこ?」
「いひ」
「みぎ?」
こくりと頷いてみせる。
「みぎの、つけね……」
「!」
うにゅほが躊躇いなく俺の舌をつまみ、左へ寄せる。
「あ、あった」
「あっは?」
「しろくなってる」
「てほほは、ほーはいへんになってるっぽいは」
「こうないえん、いたそう……」
「びはいんはいあるはら、ほりはえず、ほれほんどく」
「こうないえんは、ビタミンびーつーだもんね」
「ほうほう」
俺の言ってること、よくわかるなあ。
うにゅほが俺の舌を離したので、ティッシュをドローして差し出す。
「指、拭きな」
「ありがと」
しばらくのあいだ、ものを食べるたび痛みに苛まれそうである。

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2017
11.21

うにゅほとの生活2180

2017年11月21日(火)

足を怪我した母親に、買い物を頼まれた。
「──コーヒー確保。モカだっけ?」
「うん、もか」
「キリマンジャロとは味が違うのかな」
「たぶん……」
「いちご味とかチョコ味とかなら、違いがわかりやすいのにな」
「そだねえ」
うにゅほが苦笑する。
「次は?」
「うーと、ふりかけ」
「味道楽?」
「◯◯、あじどうらく、すきだねえ」
「××は?」
「すきやきのふりかけ、すき」
「俺も好き」
「すきやき、おいしいよね」
「最悪、ごはんとふりかけがあれば、おかずがなくてもいい」
「おかず、つくるよ」
「おかずがあれば、そのほうがいい」
「きょう、なにしようかなあ……」
「決まってないの?」
「うん」
「いまならリクエストし放題というわけだ」
「にく?」
「何故わかった」
「◯◯、にく、すきだもん」
見透かされている。
「からあげは、おとといやったから、ちがうのにしましょう」
「そうだな」
「ピーマンのにくづめ……」
「──…………」
「は、やめて」
「うん」
「にくやさいいため、かなあ」
「いいと思う」
「ぶたにくと、たまねぎと、キャベツと、もやしもいれましょう」
「関係ないけど、さけるチーズ買っていい?」
「いいよ」
乳製品コーナーへ赴き、さけるチーズ全種を買い物カゴに入れる。
「たくさんだ」
「せっかくなので……」
人の財布で買い物をすると、心が軽い。
プリンも買ってしまったが、これくらいならば母親も許してくれるだろう。

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