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2017
11.20

うにゅほとの生活2179

2017年11月20日(月)

慌ただしい物音で目を覚まし、階下へ赴くと、母親が松葉杖をついていた。
「どうしたの」
「やっちゃった……」
母親が、自嘲気味に笑みを浮かべる。
「おかあさん、すべって、ころんじゃったんだって……」
「またか……」
「またっていわないの」
「あ、ごめん」
今年の夏頃にも、脚立から落ちて怪我をしていたものだから。※1
「骨は?」
「膝のお皿に、ヒビがちょっとね」
「あちゃー……」
「全治一ヶ月だって」
母親が、大きく溜め息をつく。
「……まあ、でも、××がいてよかった。また頼むね」
「うん!」
うにゅほが背筋をピンと伸ばし、口元を引き結ぶ。
やる気満々だ。
「とりあえず、お昼を──」
母親がそう言い掛けたとき、車庫のほうから異音がした。
「?」
「なんだろ」
うにゅほと顔を見合わせる。
しばしして、
「やっちまった……」
玄関から、表情を曇らせた父親が姿を現した。
「どうしたの」
「いや、シャッター半開きのままバックしちまってよ」
「ガリッ、て?」
「ベコッ、と」
「あー……」
間違いない。
今日は、我が家にとっての厄日だ。
「……××、今日は大人しくしてような」
「うん……」
巡り合わせが悪い日というものは、まれにあるものだ。
階段の昇り降りにすら気をつける一日だった。

※1 2017年7月11日(火)参照

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2017
11.19

うにゅほとの生活2178

2017年11月19日(日)

ふと、目を覚ます。
起きた理由は探すまでもない。
「さむ……」
落ちかけていた羽毛布団を肩まで引き上げたとき、ふと視線を感じた。
「──…………」
「──……」
眼鏡を掛ける。
うにゅほが物陰からこちらを覗き込んでいた。
「えーと……」
「◯◯、おきた?」
「起きたけど」
「おはようございます」
「……おはようございます」
ちょいちょい。
うにゅほが俺を手招きする。
「?」
ベッドから下りる。
床が、やけに冷たい。
「こっち!」
手を引かれるままに両親の寝室を訪れると、
「──……うわ」
窓から覗く公園が、一面、白い絵の具で塗り潰されていた。
積雪は見るからに厚く、一晩で季節を跨ぎ越したかのようだ。
「寒いはずだ……」
「ね」
「××、足冷たくない?」
「くつしたはいた」
「……本当だ」
靴下嫌いのうにゅほが自主的に靴下を履くのだから、どれほど寒いかおわかりだろう。
「こりゃ、根雪になるかもなあ」
「なるかな」
「初雪は根雪にならないのが常だけど、ここまで降ると……」
「なるかも!」
「嬉しそうだな」
「うへー……」
「ともあれ、朝飯食べたら雪かきだ」
「うん!」
「雪かき終わったら、俺は寝る」
「まだはちじだもんね」
「あと二時間は寝たい……」
暖かい格好をして、外へ繰り出す。
初雪は、水を吸って重く、今がまだ11月であることを思い知らせてくれた。
うにゅほは、終始楽しそうだった。
うにゅほが楽しいと俺も楽しいので、ふたりでする雪かきは嫌いじゃない。
さすがに好きとまでは言い切れないけれど。

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2017
11.18

うにゅほとの生活2177

2017年11月18日(土)

──ケン、ケン。
目を覚まし、上体を起こした途端、空咳が俺の喉を震わせた。
「!」
ひょこ。
その咳を聞きつけてか、うにゅほが顔を覗かせる。
「いま、やなせきした」
「おはよう」
「おはよ」
「聞こえましたか」
「きこえました」
「風邪ってほどではないんだけど……」
「ほんと?」
ぽす。
うにゅほが俺の胸元に顔をうずめ、すんすんと鼻を鳴らす。
「風邪の匂い、する?」
「んー」
すんすん。
「しない?」
「んー……」
すんすん。
「◯◯のにおいする」
「風邪の匂いは?」
「わかんない」
「わからないってことは、しないのかな」
「……んー?」
すんすん。
「やっぱし、わかんない……」
「そっか」
しないのなら、しないと言うだろう。
言葉では言い表せない程度の微妙な差異があるのだろうか。
「わかんないけど、ねたほういいとおもう」
「起きたばっかりなんですが」
「ねれない?」
「──…………」
ゆっくりと目蓋を閉じる。
目蓋の重さで、眠気がわかる。
「……眠れる、かな」
「ねよ」
「わかった」
俺の健康に対し、うにゅほは妥協を許さない。
この六年で、体が弱いところを散々見せてしまったからなあ。
ありがたいやら、申し訳ないやらである。

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2017
11.17

うにゅほとの生活2176

2017年11月17日(金)

──ぴー!

久方ぶりの電子音が、自室の端で鳴り響く。
電源を入れて早々にファンヒーターの灯油が切れたのだ。
「!」
期待に満ち満ちた瞳で、うにゅほがこちらを振り返る。
「とうゆ」
「はいはい」
重い腰を上げ、ファンヒーターの灯油タンクを取り出す。
「うへー……」
うにゅほは、俺の手についた灯油の匂いが大好きである。
あくまで"俺の"手についた匂いが好きなのであって、自分の手だと物足りないらしい。
「××も行こう、道連れだ」
「うん!」
ふたりで玄関へ向かい、電動の灯油ポンプを起動する。
「そんなに良い匂いかなあ……」
「うん、いいにおい」
「──…………」
嗅ぎ過ぎて体調悪くするとか、ないかな。
手に付着した程度なら大丈夫か。
給油を終え、灯油タンクの蓋を閉じた瞬間、うにゅほに手を取られた。
「♪」
ふんすふんす、
はー。
ふんすふんす、
ほー。
「××さん」
「?」
「寒い」
「あ、ごめん……」
「部屋に戻ってからにしましょう」
「はい」
階段を上がりながら、右手の匂いを確かめる。
「……よくわからん」
灯油くさいとしか思えない。
ただ、灯油を直接嗅ぐよりかは、かなりマイルドだ。
「ストーブつけたときの匂いとは、違うの?」
「ぜんぜんちがうよ」
「そうなんだ……」
ますますもって、よくわからん。
まあ、うにゅほが満足そうなので、なんの文句もないけれど。

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2017
11.16

うにゅほとの生活2175

2017年11月16日(木)

台所で、朝食代わりのヨーグルトを食べていたときのことである。
「──…………」
ういーん。
駆動音と共に、ロボットクリーナーがリビングを斜めに駆け抜けていく。
そして、
がつん、がつん。
「××さん」
「あらー」
「こいつ、俺のかかとに頭突きしてくるんですけど」
「どかすね」
「頼む」
うにゅほがロボットクリーナーを抱きかかえ、リビングの端に放す。
ういーん。
ロボットクリーナーは、先程と同じルートを辿り、
がつん、がつん。
「……××さん」
「あー」
「俺、ゴミだと思われてるのかな」
「たまたまとおもう……」
「台所でなんか食うたびに寄ってくる」
「どかす?」
「いいや、食べ終わったし」
ヨーグルトの容器を軽く水洗いし、ゴミ箱に捨てる。
「◯◯になついてるのかも」
「嬉しくないなあ……」
「そかな」
ソファに側臥し、うにゅほの膝に頭を乗せる。
ういーん。
「あ、こっちきた」
「……やっぱ、俺のことゴミだと思ってるんじゃ」
「そんなことないよ」
ロボットクリーナーは、俺たちのいるソファの下に滑り込み、ごつんと壁にぶつかった。
そして、
「……あれ、止まった?」
「とまった……」
しばらく待っても動き出さないので、ソファをどかして救出する羽目になった。
いまいちポンコツな我が家のお掃除ロボットである。

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2017
11.15

うにゅほとの生活2174

2017年11月15日(水)

「──あ!」
うにゅほが窓に走り寄る。
「ゆきだ!」
「おー」
ふわりと大きな牡丹雪が、空から無数に舞い落ちている。
「はつゆき、じゃないけど、はつゆき!」
「××にとっては初雪だな」
「うん!」
「道理で寒いと思ったよ……」
半纏を羽織っても、なお寒い。
体の芯から冷えるようだ。
「××、寒くない?」
「さむい!」
「……嬉しそうだな」
「うへー」
本当に雪の好きな子だ。
「えい」
「わ!」
背後からうにゅほを抱きすくめる。
「二人羽織しようぜ」
「するする」
半纏の紐を解き、うにゅほに覆い被せる。
袖口から伸びたうにゅほの手が、軽く中空をさまよった。
「てーにぎっていい?」
「ああ」
小さな手のひらと、指を絡ませる。
「◯◯のてー、あつい」
「平熱は同じくらいだと思ったけどな」
「わたし、ひえしょうかも……」
「あー」
わりと冷え性の気があるんだよな、うにゅほ。
「靴下、ちゃんと履かないとな」
「──…………」
「──……」
「……うへー」
誤魔化した。
「まあ、そのうち言ってられなくなるし」
「そだねえ……」
北海道の冬は、厳しい。
床暖房があればなあ。

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2017
11.14

うにゅほとの生活2173

2017年11月14日(火)

趣味のお絵かきのために、デッサンフィギュアを購入した。
しかし、
「……思ったより小さいな」
「ちいちゃいねえ」
可動域はすごいのだが、せいぜい15cmほどしかない。
手のひらの上に、すっぽりだ。
「うーん……」
ポーズを取らせてみる。
だが、どうにも上手く行かない。
「けっこう難しい」
「わたしもやってみていい?」
「いいぞ」
デッサンフィギュアをうにゅほに手渡す。
「おー……」
ぐりぐり。
「からだ、かたいね」
「そうか?」
「ゆかにてーつかない」
「……××、ついたっけ?」
「ついたことあるよ」
「最近は?」
「……うへー」
あ、笑って誤魔化した。
「またも、わたしのほうひらくよ」
「前屈以外は柔らかいもんな」
「うん」
「──…………」
「──……」
「もしかして、自分をモデルにしろって言ってる?」
「や」
うにゅほがふるふると首を横に振る。
「はずかしい……」
恥ずかしいんかい。
デッサンフィギュアに対抗意識はあれど、実際にモデルにされるのは面映いらしい。
複雑な乙女心である。
「まあ、写真に撮って使うんだから、サイズはそれほど気にならないかな」
「そなんだ」
文句ばかり言っていないで、しばらく使ってみよう。

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2017
11.13

うにゅほとの生活2172

2017年11月13日(月)

所用で外出したときのことである。
「──あ、やべ!」
慌ててアクセルを踏み込むが、間に合わない。
早々に諦めて、赤信号で停止する。
「この道通ると、たいていここで引っ掛かる……」
「そんなきーするね」
「ここの信号、長いんだよなあ」
「うん、ながいきーする」
「実際長いんだよ。こっちが生活道路、向こうが幹線道路だから」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「向こうの道路のほうが、太いし、車通りも多いだろ」
「うん」
「だから、向こうの道路が優先されて、そのぶんこっちは待ち時間が長くなる」
「なんか、ずるい」
「ずるいかどうかは知らんけど……」
苦笑し、ハンドルから手を離す。
「それにしたって、ここは長いよな。知ってる道でいちばん長い」
「そだねえ」
実際は二、三分なのだろうが、五分くらいに感じる。
「いつも、なかみちとおるよね」
「いつもはな」
「きょうは?」
「ほら、下校時間だからさ。子供がいたら危ないし」
「あー……」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「こうえん、あるもんね」
「公園の傍は、できれば通りたくないな」
「うちのまえは?」
「うちの前の公園は、通らないと帰れないだろ」
「そか」
「気をつけてます」
「あぶないもんね」
などと幾許かの会話を交わしても、眼前の信号は、いまだに赤い光を灯らせたままだ。
「……ながいねえ」
「長い」
理由はわかるのだが、もうすこしなんとかならないものか。
一度測ってみたいものだ。

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2017
11.12

うにゅほとの生活2171

2017年11月12日(日)

葉の落ちた公園の木々を窓から眺めながら、呟く。
「11月、か……」
「ゆき、ふるかな」
「昨夜、××が寝たあと、霰降ってたぞ」
「あられ?」
「霙かも」
「みぞれ……」
うにゅほが小首をかしげる。
「どうちがうの?」
「氷の粒が霰で、雨混じりの雪が霙」
「そなんだ」
「そうなのだ」
「はつゆき?」
「このあたりだと、初雪かも」
「みたかったなあ……」
「風は強いわ雨は混じるわで、びちゃびちゃだったぞ」
「……んー」
うにゅほが苦笑する。
思っていた初雪の光景とは、少々趣が異なっていたらしい。
「◯◯、なにかんがえてたの?」
「アイス食べたいなあと」
「アイス……」
「ほら、もう11月だろ。いつものジェラート屋、まだやってるのかなって」
「あー」
うにゅほがうんうんと頷く。
「せんもんてん、だもんね」
「冬は経営が厳しそうだ」
「いく?」
「無駄足になるかも……」
「そしたら、ドライブしたいな」
「……そっか」
雪が積もったら、そうそう出歩けないものな。
「んじゃ、行くか」
「うん!」
ドライブがてらジェラート屋へと赴いたところ、正月以外は営業しているとのことだった。
「冬にアイスって、なんか贅沢な感じするよな」
「そんなきーする」
「黒糖ひとくち」
「はい」
ジェラートは、相変わらず美味だった。

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2017
11.11

うにゅほとの生活2170

2017年11月11日(土)

今日は、うにゅほとふたりでカラオケに行った。
「あー、歌った歌った!」
「うたったー!」
「××も、レパートリー増えてきたな」
「うへー」
基本はやはりデュエットだが、ひとりで一曲歌いきることも珍しくなくなってきた。
「あ、プライズ見てこうぜ」
「うん」
併設されているゲームコーナーへと足を向ける。
ぐるりと一周したところ、東方Projectのぬいぐるみが気になった。
「フランとこいしは持ってるけど、アリスとパチュリーは取ってなかったなあ」
「とる?」
「アームの強さを試してみよう」
財布から百円玉を取り出し、筐体に投入する。
操作すること、しばし。
「……弱いな」
「だめ?」
「一発で取るのは無理だけど、横向きにすれば鷲掴みできると思う」
「そなんだ」
「試しに、千円いい?」
「うん」
千円札を両替し、百円玉を五枚投入する。
アームの操作に集中していると、
「──兄ちゃん、頑張っとるか」
唐突に、見知らぬお爺さんに話し掛けられた。
「!」
うにゅほがぺこりと頭を下げる。
「んー、なかなか難しいですね……」
「ほうか、ほうか」
お爺さんは、好々爺然とした笑みを浮かべると、
「彼女にちゃあんと取ってやれよ!」
と、俺の尻を軽く叩いて、その場を後にした。
「かのじょ、だって」
「そう見えたんだな」
珍しい。
普段はだいたい兄妹に見られるからなあ。
「……うへえー」
ばんばん!
うにゅほが俺の背中を叩く。
照れているらしい。
アリスとパチュリーは、二千円ちょっとで取れた。
フラン、こいしと、並べて飾ることにする。

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