2017
10.31

うにゅほとの生活2159

2017年10月31日(火)

ハロウィンである。
「──トリック・オア・トリート!」
「わ」
「お菓子くれなきゃ、生卵ぶつけるぞ!」
「それ、ほんばのやつ……」
ハロウィンの本場がどこかは知らないが、調べた限りではそうらしい。
「うん、生卵はやめよう」
「やめよう」
「改めて、お菓子くれなきゃイタズラするぞ!」
「おかしない」
「では、イタズラですね」
じり。
一歩、うにゅほに近づく。
「──…………」
じり。
一歩、うにゅほが下がる。
「くくく……」
じり。
一歩、うにゅほに近づく。
「!」
じり。
うにゅほが、本棚に追い詰められる。
「イタズラじゃー!」
「わあ!」
うにゅほの横っ腹に手を伸ばし、
「こちょこちょこちょこちょ!」
「ま、うひ、うしし、ひゃひふ、ふふひー!」
しばしうにゅほをくすぐり倒す。
「成敗」
「ひー……」
くて。
うにゅほが力なくその場に横たわる。
満足してチェアに戻ろうとしたとき、うにゅほが小さく口を開いた。
「……とりっく、おあ、とりーと……」
「!」
「……◯◯、おかしもってる?」
「ガムなら──」
「もんどうむよう!」
「ちょ、ま、ぐ、うひひひゃははははは!」
なべて世は事もなし。

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2017
10.30

うにゅほとの生活2158

2017年10月30日(月)

「わー……」
窓に貼りついたうにゅほが、外の様子に見入っている。
「あめ、すごいねえ」
「台風かな」
「たいふう、おんたいてきあつになったって」
「そうなんだ」
「うん」
「××は詳しいな」
「あさ、てんきよほうでみたの」
「俺、天気予報あんま見ないからなあ。関係ないし」
在宅勤務の特権である。
「ううん」
うにゅほが首を横に振る。
「かんけいあるよ」
「そうかな」
「◯◯、ていきあつだと、ぐあいわるいから」
「あー……」
たしかに。
事実、今日も体調が芳しくない。
「ねむい?」
「ちょっとだけ」
「ねたほういいよ」
「うーん……」
やることあるしなあ。
「あれしよ」
「あれ?」
「かみん」
「……それなら、まあ」
「ひざまくらと、リクライニング、どっちする?」
二択なんだ。
「じゃあ、今日は膝枕で」
「うへー……」
うにゅほが嬉しそうに微笑む。
当たりを引いたらしい。
「じゃ、こっち!」
「はいはい」
うにゅほに手を取られ、ベッドへ向かう。
三十分の幸せだ。
体調が悪くても、まあいいかと思えるのは、とても恵まれているのだろう。

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2017
10.29

うにゅほとの生活2157

2017年10月29日(日)

Steamを開くと、セールが行われていた。
「あー、ハロウィンが近いのか」
「そだよ」
「トリック・オア・トリート!」
「まだはやい」
「まだ早いか」
「うーと、たしか、さんじゅういちにち」
「あんま関係ないけどな」
「そだね」
仮装をする気もなければ、騒ぐつもりもない。
近所を練り歩いて菓子をねだるには、あまりに歳を重ね過ぎている。
「──…………」
じー。
うにゅほを見つめる。
「?」
小首をかしげる。
「……××は、うん。ギリギリ……、いや、ギリギリ無理か……」
「なにが?」
「なんでもない」
「……?」
「お菓子なら、俺が山ほど買ってあげるから」
うにゅほが苦笑する。
「そんなにはいらない……」
そりゃそうだ。
「──お菓子をくれなきゃイタズラするぞ、か」
「とりっく、おあ、とりーと」
「イタズラって、具体的に何をされるんだろうな」
「さあー……」
「調べてみよう」
「うん」
調べてみた。
「……玄関に生卵を投げる」
「えー!」
思った以上にガチだった。
「他にも、ホイップクリームを車に投げつけたり、水鉄砲を浴びせたりするらしい」
「くるまよごしたら、おとうさんおこるよ……」
「素直にお菓子をあげましょう」
「うん……」
ハロウィン、思った以上に恐ろしい祭りだった。
ここが日本でよかった。

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2017
10.28

うにゅほとの生活2156

2017年10月28日(土)

「──あ、ダメだ」
クロレッツのボトルに手を伸ばしかけ、慌てて引っ込める。
「ガム、だめなの?」
「銀歯ができるまで、仮の詰め物をしてるんだよ」
「あー……」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「ガムかんだら、とれちゃうね」
「そうかも」
ガムは、案外大丈夫かもしれない。
だが、キャラメルを食べたら確実に取れるだろう。
食べないけど。
「みぎでかむとか」
「顎痛くなりそう」
「そだねえ……」
「ガム食べなきゃ死ぬわけでもないし、しばらく我慢するよ」
「ダイエット、だいじょぶ?」
「うん……」
もともと、小腹が空いたときのために用意したものだ。
「まあ、気休め程度だし」
噛めば噛むほど満腹中枢が刺激されるらしいが、どうあっても100にはできまい。
「でも、◯◯、やせたねえ」
「わかるか」
「うん、しゅってした」
目に見えて痩せたのなら、ダイエットをした甲斐があったというものだ。
「これでも、一時期よりはまだ体重あるんだけどな」
「むかし、すーごいほそかったもんね」
「そんなに?」
「かおとか、げそってしてた」
「二年くらい前の写真とか見ると、たしかに……」
「ね」
「××はあんま変わらないよな」
「まえより、すこし、ふとったきーする」
「そうかあ?」
ぜんぜんわからん。
「わたしも、ダイエットしようかなあ……」
「やめときなさい。不要なダイエットは、逆に太るぞ」
「そなの?」
「1kg痩せて2kgリバウンドするとか、ざらにあるからな」
「それはやだな……」
痩せるのは簡単だが、維持するのは難しい。
ダイエットとは、かくも面倒なものなのである。

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2017
10.27

うにゅほとの生活2155

2017年10月27日(金)

「ただいまー」
玄関の扉を開くと、ぱたぱたという足音と共に、うにゅほが俺を出迎えた。
「おかえり!」
ぽんと頭を撫で、靴を脱ぐ。
「はーなおった?」
「銀歯を作り直すから、一日じゃ無理だなあ」
「むしば、なかった?」
「やはりと言うか、軽く虫歯になってたみたい」
「そか……」
「もう削っちゃったけどな」
左の口角を指で引き、奥歯を見せる。
「はーない」
「銀歯ができたら、かぶせて終わり」
「あ」
すんすん。
うにゅほが鼻を鳴らす。
「どした?」
「◯◯のくち、はいしゃのにおいする」
「あー……」
口元に手を当て、口臭を確認する。
「うん、する。歯医者の匂い」
喩えられない、あの匂い。
「──…………」
すんすん。
「嗅ぐな嗅ぐな」
「えー」
「あんまりいい匂いじゃないだろ」
「いいにおいじゃないけど、いやなにおいじゃないよ」
「そうかな……」
俺にとっては、嫌な記憶を想起させられる嫌な匂いなのだけど。
「××、虫歯になったことないもんな」
「ないよ」
いー。
先程の俺の真似をして、両の口角を指で引いてみせる。
「……一度でもなれば、嫌な匂いになるよ」
「そなの……?」
「そうならないために、ちゃんと歯を磨きましょう」
「はい」
ちゃんと磨くべきは、むしろ俺なのだけど。

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2017
10.26

うにゅほとの生活2154

2017年10月26日(木)

「──…………」
舌先で、左奥歯の裏をつつく。
気になる。
とても気になる。
「◯◯、また、もごもごしてる」
「……そんなにしてる?」
「さいきんしてる」
「そうか……」
そうかもしれない。
「もしかして、はーいたいの?」
「痛くはない」
「しみる?」
「しみる、というほどでもないけど……」
「けど?」
「歯の裏側に、穴が開いてる」
「!」
うにゅほが目をまるくする。
「なんか、銀歯の下あたりが欠けたみたい」
「だいじょぶ……?」
「いまのところは、食べカスが詰まるくらいかなあ」
「あ、だから、つまようじ」
「そういうこと」
さすがうにゅほ、よく見ている。
最近、食後に爪楊枝を使うことが増えたのは、そういう理由からだった。
「はいしゃ」
「……まあ、うん。行かないととは思ってたんだ」
「あしたいこ」
「明日かあ……」
「ようじある?」
「ないけど」
「いこ」
「でも、まだ、痛くないし……」
「いたくなるよ」
「痛く、なるよなあ……」
いくら食べカスを除去しても、歯ブラシの毛先は届かない。
その場所だけは、磨いていないのと変わらないのだ。
「……うん。明日、予約入れる」
「そうしましょう」
こういうとき、うにゅほがいてよかったとつくづく思う。
自分だけだと、痛くなるまで行かないもんなあ。

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2017
10.25

うにゅほとの生活2153

2017年10月25日(水)

天井に届かんばかりに腕を伸ばし、伸びをする。
「──復、活!」
「わー」
ぱちぱち。
「うむ、快調である」
「よかった」
「看病してくれて、ありがとうな」
うにゅほの頭を撫でる。
「うへー……」
「まあ、でも、出掛けるのもなんだし、今日はお部屋で遊びましょう」
「はーい」
「ちと面白そうなものを手に入れたのだ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「ちょい待ち」
カバンを開き、それを取り出す。
「あいぱっど?」
「デザインは明らかにパクってるけど、iPadにしちゃ安っぽいだろ」
「そだねえ……」
「えーと、電子メモ帳だか、電子メモパッドだか、そんな名前のやつなんだけど」
「……?」
「つまり、だ」
メモパッドの背後からペンを取り出す。
「これで、メモが書ける。ボタンを押すと、消せる」
「おー!」
「単純だけど、ちょっと楽しそうだろ」
「やってみたい!」
「待て待て、電池を入れないと」
「あ、そか」
「単三──、単四? いや、乾電池じゃないな。ボタン電池か」
「でんち、ある?」
「あるある」
引き出しから新しいボタン電池を取り出し、メモパッドに入れる。
「うと、もうかけるの?」
「書いてみ」
「うん……」
うにゅほが、パッドの上でペンを動かす。
「あ、かけた!」
画面には、「メモ」と書かれていた。
「ボタン押してみ」
「うん」
ぽち。
「あ、きえた!」
「一瞬で消えるんだな」
「ふしぎ……」
「絵も描けるぞ」
メモパッドを受け取り、さらさらとドラえもんを描く。
「わたしもかいていい?」
「いくらでも」
実用的かどうかはさて置くとして、小一時間ほど遊べたので満足である。

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2017
10.24

うにゅほとの生活2152

2017年10月24日(火)

「──…………」
すんすん。
「うん。かぜのにおい、もうしない」
「とりあえずは一安心かな」
「ゆだんしたらだめだよ」
釘を刺されてしまった。
「大丈夫大丈夫」
「ほんとかな」
「ほら、靴下履いてるし」
「ほんとだ」
「半纏も羽織ってる」
「うん」
「マスク外しちゃダメ?」
「うーん……」
うにゅほがしばし思案する。
「……ますくは、うん、いいかな。いきぐるしいもんね」
「やった」
サージカルマスクを外し、ゴミ箱に捨てる。
「伝染らないとは思うけど、××が風邪引いたら、ちゃんと看病するから」
「おねがいします」
ぺこり。
「お願いされます」
ぺこり。
「わたしもがんばるね」
うにゅほが、ぐ、と気合いを入れる。
「はい、ねてねて」
「さっきまで寝てたんですが……」
「ねれない?」
「さすがに」
「ねれないかー……」
うにゅほの頭を撫でながら、告げる。
「看病を頑張るのは、俺がつらいときだけでいいから」
「◯◯、つらくない?」
「いまは特に……」
「なら、よかった」
うへーと笑う。
「××も、つらくなったら言ってくれな」
「──…………」
うにゅほがインナーの裾をめくる。
腹巻き。
「あー……」
「おなか、なでてほしいな」
「了解しました」
自分がつらいのに、人の心配ばかりして。
まったくもう。

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2017
10.23

うにゅほとの生活2151

2017年10月23日(月)

表現しにくい感覚──というものは、存在する。
痛い、ではない。
苦しい、とも違う。
もちろん、快くは決してなく、かと言って耐えがたいほどでもない。
総合的に"気配"とでも呼ぶしかないその感覚は、言わば風邪の前触れだ。
ひとつでも不摂生をすれば、いますぐ風邪を引いてやる。
そんな、体からの最終警告である。
「──…………」
「あ、おはよー」
「おはよう」
起床し、真っ先に靴下を履く。
「……?」
うにゅほが不思議そうな顔をする。
俺も、うにゅほも、靴下嫌いだ。
外出時以外は冬でも履きたくない。
「どっかいくの?」
「行かない」
「あし、つめたいの?」
「そうでもないかな」
「──…………」
うにゅほが正面から俺に抱きつき、すんすんと鼻を鳴らす。
「……かぜのにおいする」
「もうするか……」
風邪の匂い。
うにゅほ曰く、ラムネと何かが混じったような匂いらしい。
「ますくもってくるから、ねてて」
「起きたばかりなんですが……」
「ねれない?」
「頑張れば」
「がんばって」
「はい……」
相変わらずの甲斐甲斐しさに、申し訳なくなってくる。
だが、その思考自体が風邪特有の弱気であるように思えて、慌ててかぶりを振った。
看病してくれる相手がいて、幸福だと思わなければ。
お返しは、うにゅほが風邪を引いたときにしてやればいい。
そんなことを考えながら安静にしていたら、夕刻には復調していた。
だが、まだ油断はならない。
数日は様子を見るべきだろう。

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2017
10.22

うにゅほとの生活2150

2017年10月22日(日)

風呂上がりのことである。
「あれー……」
濡れ髪を左手で撫でつけながら、引き出しを順々に開いていく。
「なにさがしてるの?」
「化粧水切れたから、新しいやつ」
「ふた、あかいやつ?」
「そうそう」
「あけてないの、あったきーする」
「一気に三本買った記憶があるから、どっかにあるはずなんだけど……」
心当たりのある場所は、すべて探した。
心当たりのない場所まで探した。
けれど、
「──ない!」
短髪が乾きかけるまで探し回ったのだから、もうないということにしてしまおう。
「うん、新しいの買ってこよ」
「いま?」
「やだよ寒い」
「だねえ」
「一日二日化粧水つけなかったくらいで、どうにかなるものでなし」
そもそも、つけたらどうなるかすら、実はよくわかっていない。
習慣だから、そうしているだけだ。
「わたしのつかう?」
「××の、高そうだし……」
「そかな」
母親に貰ったものらしいが、俺の使っていた数百円の化粧水とは容器からして違う。
「化粧水だけじゃなくて、乳液とかも別にあるんだろ」
「うん。けしょうすいのあとに、にゅうえきつけるんだよ」
「……化粧水だけ借りようかな」
「えー」
「乳液って、なんかベタベタしない?」
「ちょっとする」
「苦手」
「そか……」
結局、化粧水だけ借りた。
数百円の化粧水と、違いはよくわからなかった。

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