2017
09.30

うにゅほとの生活2128

2017年9月30日(土)

「──…………」
俺は悩んでいた。
行動、言動、言葉の端々。
僅かな情報から推理できるほどの洞察力は、俺にはない。
そんなものは探偵にでもまかせてしまえばいい。
問題は、うにゅほの物欲が極めて薄いということである。
「……どうするべきか」
「?」
ソファの隣に腰を下ろしたうにゅほが、軽く小首をかしげてみせた。
「かんがえごと?」
「考えごと」
「なにかんがえてるの?」
「──…………」
いっそ、直接尋ねてしまおうか。
「××のこと」
「!」
うにゅほが、ピンと背筋を伸ばす。
そして、
「うへえー……」
両手でほっぺたを包み、こちらから顔を背けた。
照れているらしい。
「正確に言うと、××の誕生日プレゼントのこと」
うにゅほの誕生日は10月15日である。
あと二週間ほどしかない。
「欲しいもの、ない?」
「うと、ほしいもの……」
うにゅほが思案する。
「──…………」
「──……」
「……ない……」
やはりか。
「じゃあ、プレゼントは当日のお楽しみだ」
「うん!」
とは言ってみたものの、アイディアひとつ出てこない。
なんとしても、当日までに間に合わせなければ。

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2017
09.29

うにゅほとの生活2127

2017年9月29日(金)

両腕を手のひらで交互にさすりながら、呟く。
「……寒い」
秋が深まり、気温も下がってきたが、過度に低いということはない。
ならば、何故寒いのか。
それは──
「じんべ、きてるからとおもう……」
「まあ、そうなんですけどね」
甚平とは、言わば夏用の部屋着だ。
麻で織られた生地は薄く、袖も裾も相応に短い。
「そろそろ作務衣の季節かなあ……」
「うん」
「でも、着替えるのめんどい」
「めんどいの……」
「××が膝の上に来てくれれば、万事解決だし」
「でも、てとかあしとか、さむいとおもう」
「あー……」
言われてみれば。
「……ストーブつける?」
「おとうさん、こないだ、ふるいとうゆ、すててたよ」
「──…………」
「きがえよ」
「着替えたら負けのような気がする」
「だれに?」
「わからん」
「わからんの……」
うにゅほが、呆れたような、困ったような、どちらともつかない笑みを浮かべる。
「じゃあ、ちょっとまってね」
ごそごそ。
「せめて、これだけ」
うにゅほが取り出したのは、愛用の半纏だった。
「おー」
「これきて、わたしのって、あしちょっとつめたいけど……」
「我慢する、我慢する」
しばらくぶりに羽織った半纏は、いささか樟脳臭いものの、その着心地は素晴らしかった。
「ふー……」
「あったかい?」
「あったかい」
膝の上のうにゅほを抱き締めながら、冬の気配を感じるのだった。

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2017
09.28

うにゅほとの生活2126

2017年9月28日(木)

「──◯◯、きのうのよる、しょくパンたべた?」
「!」
ぎくり。
「すこしだけ……」
「なんまい?」
「……三枚」
「すこし……?」
「××が寝たあと、どうしても腹が減って……」
「たべるのいいけど、たべるなら、ごはんのときにちゃんとたべたほういいよ」
「はい……」
言葉もない。
「でも、おかしとかあるのに……」
「お菓子は、まあ、我慢できる。でも、食パンは食べちゃうんだよな……」
「◯◯、そんなしょくパンすきだっけ」
「好きだけど、大好物ではない」
「そだよね」
「パンはパンでも菓子パンとか、ケーキとか、見るからにカロリーが高いのは我慢できるんだ」
「あー……」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「しょくパン、カロリーなさそうだもんね」
「……実は、そうでもないんだよなあ」
「そなの?」
「パンは、基本カロリー高い。食パンでも、一枚150kcalくらいあったと思う」
「さんまい……」
「そう、三枚食べちゃったんだよなあ……」
しかも深夜に。
「カロリー高いってわかってるのに、見た目と味に騙されて食べてしまう……」
「マーガリン、ぬった?」
「……塗った」
「あさ、いっしょにたべよ」
「徹夜かな」
「はやくねよう」
「無理です」
「むりかー……」
いまさら生活サイクルを変えるのは難しい。
でも、まあ、一時間程度なら、早く寝てみようかな。

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2017
09.27

うにゅほとの生活2125

2017年9月27日(水)

「──……!」
は、と気づく。
「九月、終わるじゃん!」
「にじゅしち、にじゅはち、にじゅく、さんじゅう──あとよっかあるよ」
「27日、あと数時間しかないんですが……」
「あとみっかあるよ」
「あと三日しかない」
ふと、グラスに半分だけ入った水の逸話を思い出す。
半分しか入っていないと考えるか、半分も入っていると考えるか。
俺は前者で、うにゅほは後者なのだ。
「……やっぱり、あと三日もあると考えることにする」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「つまり、だ」
「うん」
「この三日間で、どれだけの事を成せるか。それが重要なのではあるまいか」
「なるほど……」
うんうんと頷く。
「うーと、なにするの?」
「作業は溜まってるし、見たいDVDもあるし、積ん読も消化しないとだし、運動もしないとだし」
「たくさんあるねえ」
「秋だからな」
「あきだと、やることあるの?」
「言うじゃん。スポーツの秋とか、読書の秋とか」
「あー」
「個人的には、ひとつに決めてもらいたいけどね」
「◯◯、どれがいい?」
「決めるとしたら?」
「うん」
「──…………」
しばし思案し、
「……食欲の秋、かな」
「おなかすいたの?」
「我慢する」
「ダイエット、むりしないでね」
「はい」
スポーツの秋で、カロリーを消費しようかな。

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2017
09.26

うにゅほとの生活2124

2017年9月26日(火)

月に一度の定期受診の帰り、普段は行かないゲームセンターへと立ち寄った。
「へえー、けっこうプライズ充実してるな」
「あ、けものフレンズのシャツある」
ハシビロコウとアルパカ・スリを意匠したTシャツだ。
「……意外とオシャレだな」
「きる?」
「着ないけど」
これ、許可取ってんのかな。
まあいいか。
「きーぼーどとか、まうすもある」
「キーボード……」
気になる。
たかだかゲーセンの景品風情が、いま使っているHHKB Professional JP Type-Sより使いやすいはずはない。
しかし、プライズコーナーに並ぶキーボードがいかほどのクオリティなのか、微妙に好奇心を煽られる。
「これ、やってみていい?」
「きーぼーど、たくさんあるのに……?」
「千円で取るから」
「せんえんなら……」
しぶしぶながら許可をもらい、筐体に百円玉を投入していく。
「これは、箱の端を押していけば──」
「おー」
宣言通り千円でゲットし、ほくほく顔で帰宅する。
「まず、このキーボードの相場を調べようか」
「そうば?」
「買ったらいくらになるのか、みたいな」
「あー」
うにゅほがうんうんと頷く。
「メーカーは、BLGK? 聞いたことないな。とりあえず型番を──」
キーボードの箱を、くまなく調べる。
「……型番がない」
「ないの?」
「大雑把に"ゲーミングキーボード"としか書いてない」
嫌な予感がする。
封を開け、キーボードを取り出す。
メンブレンなのは予想していたが、
「──無駄に英語配列! 見た目だけRazer! ゲーミング要素なし! 軽くて異常に滑る!」
「つかいにくい?」
「使いにくいです」
「そか……」
こうして、俺たちの部屋に無駄に物が増えていくのだった。

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2017
09.25

うにゅほとの生活2123

2017年9月25日(月)

「ケツが痛い」
「けつ」
「……おしりが痛い」
「ぢ?」
「いや、尾てい骨のあたり」
「おしりのほね?」
「そうそう」
「おしり、うったのかな」
「そういう痛みではなくてだな」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「尾てい骨のあたりの、皮膚が痛い」
「ひふが……」
「なんか、擦れたみたい」
「あー」
うんうんと頷く。
通じたらしい。
「びていこつ、でっぱってるもんね」
「しっぽが退化した名残りらしいぞ」
「そなんだ」
「座り方が悪いのかな……」
「うん」
うにゅほが、あっけらかんと頷く。
「……そんなに悪い?」
「こし、いたくなんないのかなって」
「まあ、それはそれとして」
「うん」
「座り方は同じなのに、なんで急に擦れるようになったのかなって」
「やせたからとおもう」
「たしかに痩せてきてるけど、見た目でわかる?」
「うん、しゅってした」
「──…………」
ちょっと嬉しい。
「おしりもね、ちいさくなったよ」
「それでか……」
いままで尻の肉に守られていた尾てい骨が、チェアの座面と擦れるようになったのだろう。
「おろないんぬるから、おしりだして」
「嫌です」
「えー……」
さすがに恥ずかしい。
ともあれ、ダイエットの成果が目に見えて現れるのは喜ばしいことだ。
ケツ痛いけど。

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2017
09.24

うにゅほとの生活2122

2017年9月24日(日)

外出の準備を整え、リビングを覗き込む。
「──家族は、みんないる」
「いる」
玄関を確認する。
「車の鍵は、ある」
「ある」
外に出て、空を見上げる。
「晴れてる」
「うん、はれてる」
「絶好の外出日和である」
「である」
「では、出掛けましょう」
「はい」
コンテカスタムに乗り込み、エンジンを掛ける。
「どこいくの?」
「行きたいところ、ある?」
「うと……」
「ないならゲーセン巡り」
「うん、ゲーセンいきたい」
「ダイエット中だから、チョコボールは少なめで」
「はーい」
「あると食べちゃうからね……」
「わかる」
いつものゲームセンターでチョコボールを三箱ゲットし、大回りして帰途につく。
「ほしいの、あんましなかったね」
「カービィのぬいぐるみは可愛かったけど、あの筐体は苦手なんだよなあ」
「うで、さんぼんのやつ」
「取れるときは一発なんだけど」
「むずかしいねえ……」
「あ、TSUTAYA寄っていい?」
「みたいのあるの?」
「ないけど、まあ、適当に」
結局、特に目的のないドライブになってしまった。
「……やっぱ、どこ行くかくらい決めてから出掛けないとなあ」
「そかな」
「楽しかった?」
「うん、たのしかった」
「ならいいけど……」
「◯◯、たのしくなかった?」
「いや、楽しかったよ」
「ね」
ふたりとも楽しかったのなら、いいか。

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2017
09.23

うにゅほとの生活2121

2017年9月23日(土)

昨夜の約束のとおり、ふたりでどこかへ遊びに出掛け──ようとしたのだが、
「……車が」
「ないねえ……」
我が家が現在所有している自家用車は、
コンテカスタム、
ライフ、
ランドクルーザーの三台である。
ミラジーノは父親の友人に貸出中だ。
その三台が、すべて出払っていた。
「……誰もいないと思ったら、三人が三人別々に出掛けてるのか」
「そうみたい……」
「なんというか、……間が悪い」
「うん」
「バイクでもいいけど、雨が降りそうなんだよな……」
「うん……」
「──…………」
「──……」
「……明日でいい?」
「うん、いいよ」
健気なうにゅほの頭を撫でながら、リビングへ戻る。
「誰もいないし、テレビでも見るか」
「うん」
ソファに腰を下ろすと、うにゅほが自前の細いふとももを叩いた。
「はい」
「サービスいいなあ」
ごろんと横になり、膝枕をしてもらう。
「わたし、ひざまくらすき」
「足、痺れない?」
「しびれるまでは、すき」
「痺れたら言うんだぞ」
「うん」
「俺が寝てても、トイレに行きたくなったら起こすこと」
「うん」
「──…………」
本当かなあ。
あんまり起こされた記憶がないのだけど。
「──ま、いいや。テレビテレビ」
特に見たいものがあるわけではない。
強いて言えば、ふたりでいることが目的だ。
テレビをぼんやりと眺めながら、明日こそは出掛けようと決意を新たにするのだった。

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2017
09.22

うにゅほとの生活2120

2017年9月22日(金)

「やー、すー、みー、だー!」
「わ」
仕事を終えた解放感で、うにゅほを背後から抱きすくめる。
「あした、しゅうぶんのひ、だもんね」
「祝日に限らず土曜は休みにしてほしい……」
完全週休二日制、なんと甘美な響きであることか。
「でも、たまに、どようびやすみある」
「うちは週休二日制だからな」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「このあたり、なんか詐欺くさいよなあ」
「どのあたり?」
「週休二日制と、完全週休二日制。これらは別物です」
「……?」
あ、混乱してる。
「完全週休二日制は、毎週二日の休みが約束されてる」
「うん」
「週休二日制は、月に一度、二日休める週がある」
「ほかのしゅうは?」
「たいてい一日しか休めない」
「ふつかやすみより、いちにちやすみのが、おおいの?」
「そうなります」
「しゅうきゅうふつかなのに、しゅうきゅうふつかじゃない……」
「俺もそう思う」
誰だこんな用語作ったの。
「毎週土曜も休みなら、いろんなことができるなあ」
「そだねえ」
「たとえば──」
うにゅほを抱っこしたままソファに腰を下ろし、思案を巡らせる。
「──…………」
「たとえば?」
「……昼寝、とか」
「ふんふん」
「あ、××と遊びに行ったり」
「いきたい」
「明日、どっか行くか」
「うん!」
約束したからには、ふたりでどこかへ行こう。
どこへ行くかは明日決めればいいや。

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2017
09.21

うにゅほとの生活2119

2017年9月21日(木)

「──……ふあ……、う」
「おっきなあくび」
「……××の手くらいなら、入るかもなあ」
「はいるかも」
「試してみる?」
「て、たべたらだめだよ」
「食べない食べない」
「うん」
「よだれでべとべとにするだけ」
「ちょっと、や」
そりゃそうだ。
「ある朝、ぬめっとした不快感で起きると、××の右手が俺の口のなかに!」
「やー!」
うにゅほがくつくつと笑う。
「いき、くるしそう」
「鼻が詰まってたら、やばいな」
「はなしゅーしないと」
「したら、食べていいのか」
「だめ」
「駄目かー」
「てー、おいしくないよ」
「美味しそうだぞ」
「そかな」
「きっと甘い」
「しょっぱいとおもう……」
「生クリームでデコレーションして食べよう」
「それ、たぶん、わたしのてでなまクリームなめてるだけ……」
「バレたか」
「わかるよー」
「甘いものが食べたくてな……」
ダイエット中である。
「◯◯、すこしやせた?」
「少しずつな」
目標体重までは、遠い道のりだ。
「生クリーム食べたいなあ……」
「わたしのてーで?」
「食べさせてくれる?」
「うーん……」
真剣に検討してくれるあたり、優しい子である。
まあ、冗談なんだけど。

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