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2017
09.20

うにゅほとの生活2118

2017年9月20日(水)

「──あれ?」
仕事机の前に腰を据えたところ、愛用の定規がないことに気がついた。
「××、定規知らない?」
「とうめいなやつ?」
「そう」
うにゅほが首を横に振る。
「しらない……」
「昨日も使ったんだから、ないはずないんだけど……」
机の上の書類をひっくり返し、引っ掻き回し、アクリル製の定規を探す。
透明とは言え30cmの長物だ。
一見して気づかないはずがない。
「……わたし、おひる、ここそうじした」
「そのとき見なかった?」
「おぼえてない、けど……」
畳の上に敷かれた夏用のラグを、うにゅほがめくる。
「もしかしたら、おとして、けって、したにはいったかも……」
「あり得なくはない、か」
だが、見つからない。
思いつく限りすべての場所を探し終えたあと、俺は小さく頭を抱えた。
「……困った」
どんな定規でもいいのなら、そこらにある。
だが、透明でなければ、作業効率が目に見えて落ちてしまう。
不要なストレスを仕事に持ち込みたくない。
「仕方ない、買ってくるか……」
「うん」
仕事部屋に放り出した書類や筆入れ、定規などを、机の上にまとめて乗せる。
「──…………」
ん?
書類や、筆入れ、定規などを──
「……あった」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「定規、あった」
「え、どこにあったの?」
「わからん。片付けてたら、いつの間にか手に持ってた……」
「よかったー……」
「なんか、騒がせてごめんな」
「ううん、しごとがんばってね」
「頑張る」
それにしても、あれだけ探したというのに、いったいどこにあったのだろう。
謎である。

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2017
09.19

うにゅほとの生活2117

2017年9月19日(火)

「あー……」
ぐわんぐわんと首を回す。
肩が痛い。
頭が重い。
総じてだるい。
「疲れが、まだ、抜け切ってないなあ……」
「だいじょぶ……?」
膝の上のうにゅほが、心配そうにこちらを見上げる。
「大丈夫、大丈夫。単に睡眠時間が足りなかっただけ」
「どことまったの?」
「泊まってない」
「……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「イベントが朝の六時に終わったから、泊まる時間がそもそもない」
「はー……」
「本当なら、朝の便で、昼には帰宅して、夜まで仮眠を取るつもりだったんだけどさ」
「ひこうき、おくれたもんね」
「しゃーないから、ネカフェで雑魚寝。布団はないし寒いしで散々だよ」
「たいへんだったね……」
なでなで。
うにゅほが俺の頭を撫でる。
「……やっぱり、家がいちばんだな」
「うん」
「××もいるしな」
「うへー……」
連れて行ければいいのだが、倫理的にはなかなか難しい。
FRENZの会場って、新宿歌舞伎町だし。
「──そういえば、イベント中にどうしても腹が痛くなってなあ」
「え!」
「会場全体は熱気がすごくて暑いのに、俺の席だけエアコン直でさ」
「だいじょぶだったの?」
「ダメだったから、正露丸買って飲んだ」
「あ、にもつにあった」
「会場近くのドラッグストアで買ったんだけど、中国人ばっかで──」
俺の土産話を、うにゅほが楽しそうに聞いてくれる。
いつかは、誰かに、ふたりで土産話ができるようになりたいものだ。

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2017
09.18

うにゅほとの生活2116

2017年9月17日(日)
2017年9月18日(月)

折からの台風で、帰りの飛行機が欠航となった。
幸い、数時間後の便で帰ってくることはできたのだが──
「──…………」
「××さん」
「──…………」
「××さん?」
うにゅほが背中にぴたりと貼り付き、離れようとしない。
チェアに腰掛けようとすれば、背中と背もたれとの隙間にするりと入り込むのだから、徹底している。
「……しんぱいした」
「ごめんな」
ふるふると首を振る感触。
「◯◯、わるくない……」
「でも、心配を掛けたのは事実だ」
「──…………」
「俺、二度と、台風シーズンに飛行機乗ったりしないから」
「?」
小首をかしげる気配。
「いや、帰りの飛行機めっちゃ揺れたんだよ……」
「そなの?」
「いちばん揺れたときで機体が三十度くらい傾いて、一度は死を覚悟したから」
「──…………」
ぎゅー。
「……ひこうき、もう、のったらだめ」
「あー……」
怯えさせてしまった。
「ほら、飛行機事故で死ぬ確率は、自動車事故で死ぬ確率より遥かに低いし……」
「──…………」
ぎゅー。
こうなってしまうと、しばらくは話が通じない。
「××さん」
「──…………」
「そこに入り込まれると姿勢がつらいから、前から抱き着いてくれますか」
「──…………」
無言で膝の上に移動したうにゅほが、俺の胸にぎゅうと抱き着く。
ぽん、ぽん、と背中を叩いてやりながら、うにゅほが落ち着くのを待つのだった。

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2017
09.16

うにゅほとの生活2115

2017年9月16日(土)

「──……はー」
うにゅほが小さく溜め息をつく。
「あしたのいま、◯◯、いない……」
「まあ、うん」
「いないのかあ……」
そして、また溜め息。
「××さん」
「……?」
「ちょっと、トイレに行きたくて……」
膝の上のうにゅほに正面から抱きすくめられているため、身動きが取れない。
「まって」
ぎゅー。
「──…………」
「──……」
しばしののち、
「はい」
うにゅほが膝から下りる。
なにかをチャージしていたらしい。
「では、行ってきます」
「はい」
自室を出て、トイレへと向かう。
「──…………」
「──……」
当然のように、ついてくる。
さっきのチャージはなんだったのか。
「……中まではダメだぞ」
「まってる」
「ならいいけど……」
トイレに入って小用を済ますが、落ち着かない。
可愛い。
可愛いがゆえに、厄介である。
何故なら、俺の頬も緩んでしまっているからだ。
ここまで求められたら、嬉しいに決まってる。
「──よし」
水を流し、トイレから出る。
「!」
タックル気味に抱き着くうにゅほを引きずりながら手を洗い、抱き上げた。
「わ」
「俺も、××分を補給しとかなきゃな」
「うん、して」
うにゅほが、うへーと笑う。
たった一日いないだけで、この騒ぎだ。
二泊三泊は無理だろうなあ。

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2017
09.15

うにゅほとの生活2114

2017年9月15日(金)

「たいふう、だいじょぶかなあ……」
リビングのテレビで気象情報を見ながら、うにゅほがそう呟いた。
「大丈夫だと思うぞ」
グラスに牛乳を注ぎながら答える。
「北海道に来るころには、とっくに温帯低気圧だよ」
「ちがくて」
「?」
「ひこうき……」
「あ」
完全に考慮の外だった。
iPhoneを取り出し、台風の進路を調べる。
「17日、東京──直撃じゃないか……」
「ね?」
「……これは、飛ばないかもしれないなあ」
「むりしないほういいよ……」
それは航空会社に言ってくれ。
「当日、新千歳で様子を見るしかないか」
「いくの……?」
「飛ぶかもしれないし」
「あぶない……」
「飛ぶときは、大丈夫なときだよ。ダメなときは飛ばない」
「でも」
「それに、行くって約束だし」
「──…………」
「俺は、約束は破りたくない」
「──…………」
「どうしてものときは仕方ないけど、行ける前提で動かなきゃ」
「……わかった」
「心配してくれて、ありがとう。ごめんな」
「うん……」
「牛乳飲む?」
「のむ……」
グラスをうにゅほに手渡し、自分のぶんを再度注ぐ。
いまからでも逸れてくれないかなあ。
……無理か。

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2017
09.14

うにゅほとの生活2113

2017年9月14日(木)

「最近、読書をしてない気がする」
「……?」
うにゅほが俺の手元を指差す。
「ギャグマンガ日和は読書に入るのだろうか……」
「はいんない?」
「入らないと思われる」
「そなんだ……」
「文字だけの本を読んでないな、って」
「あー」
うにゅほがうんうんと頷く。
「◯◯、さいきん、まんがしかよんでないね」
「うッ」
「?」
改めて人から指摘されると、応える。
「……こう、サイクルがあってな」
「さいくる」
「漫画を読む時期は漫画しか読まないし、小説を読む時期は小説しか読まない。専門書も然り」
「へえー」
「××は、そういうのない?」
「うーと……」
しばし思案し、
「ふく、かなあ……」
「服か」
「うん」
「そのコーディネート、たしかに最近よく見るな」
「うん、これ」
数年前に購入した、セーラー風のカットソーと黒いミニスカートだ。
「にあう?」
「似合う」
「うへー……」
うにゅほが両手でほっぺたを包む。
照れているのだ。
「でも、もう秋だからな。そろそろ見納めか」
「そだねえ」
「また来年も着てくれる?」
「うん!」
このミニスカートだと、けっこう──おっと。
来年も楽しみだなあ。

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2017
09.13

うにゅほとの生活2112

2017年9月13日(水)

「──…………」
むくり。
「あ、おきた」
ぐー。
「おなかなった」
「……ケンタッキーフライドチキンを山ほど食べる夢を見た」
「おいしかった?」
「美味しかった」
「そか」
「最近、何かを食べる夢ばっか見る」
「おなかへってるからでは……」
鋭い指摘である。
「……たとえば、大金を拾った夢を見たとする」
「うん」
「起きたとき虚しいのは、何故だろう」
「うーと、ほんとはひろってないから……」
「そう。目が覚めたとき手元にお金がないから、虚しいんだ」
「ふんふん」
「俺はいま、ケンタッキーを食べた夢を見たけれど、実はさほど虚しくない」
「そなの?」
「××は、人間がものを食べるのは何故だと思う?」
「……たべないとしぬから?」
「空腹を満たす。それは確かにそうなんだが、味わうのも理由のひとつだろ」
「あ、そか」
「夢は、"満腹"という結果は残してくれないが、"味わう"という経験はさせてくれる」
「……うーん?」
うにゅほが小首をかしげる。
いまいち納得が行かないらしい。
「いや、すげーリアルな夢だったんだよ。匂いも思い出せるくらい」
「そなんだ」
「そのせいか、なんか微妙に満腹感が──」
ぐー。
「まんぷくかんが」
「……さすがに気のせいでした」
「あさごはん、たべる?」
「少なめに」
「はい」
胃袋は小さくなったが、基礎代謝は変わらない。
すぐに腹が減るのはなんとかならないものか。

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2017
09.12

うにゅほとの生活2111

2017年9月12日(火)

「──…………」
うにゅほが、部屋の隅に向かって体育座りをしている。
「××さん」
「──…………」
「ごめんて」
「──…………」
ああ、完全にぶーたれてしまった。
「17日に東京へ行く件について、黙っていたことは、本当に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる。
見えないだろうが、けじめはけじめだ。
「……なんで、いってくれなかったの」
「その、言いにくくて……」
「いってほしかった」
「すみません……」
「──…………」
「──……」
しばしの沈黙ののち、
「……わたしもいきたい」
そう来るよなあ。
「ごめん、それは無理なんだ」
「──…………」
「飛行機のチケットが取れないのは、まあ、言わなかった俺のせいだとしてもさ」
「──…………」
「今回の目的であるFRENZってイベントは、そもそも、18歳未満は入場できないんだよ」
「……えっちなの?」
「違います。深夜のイベントだからです」
正確に言うと、夜の部までは18歳未満でも入れるが、深夜の部はNGだ。
東京都条例に基づくものらしい。
「けものフレンズ……」
「そっちも関係ない」
うにゅほが、小さく振り返る。
「……じゃー、どんなの?」
「新進気鋭の映像クリエイターたちの新作お披露目会、みたいな」
「ふうん……」
「俺たちの曲のMVが流れるから、どうしても行きたいんだよ」
「……いつかえってくる?」
「18日の昼。実質、一晩いないだけ」
「わかった……」
うにゅほが立ち上がり、俺の手を取る。
「きーつけてね」
「ああ」
うにゅほの頭を撫でてやる。
説明すればわかってくれるのだから、東京行きが決まったときに素直に伝えておけばよかった。
猛省である。

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2017
09.11

うにゅほとの生活2110

2017年9月11日(月)

ミント味のボトルガムを口の中へと放り込み、噛み潰す。
途端、
「──ひッ、きし!」
くしゃみが暴発した。
「ミント味のガムを食べるとくしゃみが出るの、なんでなんだろうなあ……」
うにゅほが、目をぱちくりさせる。
「そなの?」
「××、出ないのか?」
「うーとね、みんとあじすきくないから、わかんない」
そうだった。
初めて食べたときなど、反射的に吐き出してしまったくらいだ。
「なんか知らんが、出る」
「すーすーするからかな」
「そうかもしれない」
もっち、もっち、もっち、もっち。
「でも、いざ噛み始めたら、もう出ないんだよなあ」
「ふしぎ」
「ミントに慣れるのかも」
「なるほど」
もっち、もっち、もっち、もっち。
「××も試してみる?」
「?」
「くしゃみが出るか、出ないのか」
ボトルからガムをひとつぶ取り出し、うにゅほの眼前に差し出した。
「……からくない?」
「辛い」
「すーすーしない?」
「まあ、ひとつぶなら大したことはないかな」
「……じゃー、ひとつだけ」
「あーん」
「あー」
うにゅほの舌に、ガムを置く。
恐る恐るひと噛みしたあと、
「──……ッ!」
思い切り顔をしかめた。
「はらい……」
「出しちゃえ出しちゃえ」
うにゅほの口の前に手を差し出す。
「んべ」
吐き出されたのは、ほとんど元の形を残したミントガムだった。
「──…………」
しばし逡巡したのち、ティッシュにくるんで捨てる。
「くしゃみ、でなかったね」
「出る前に吐き出しちゃったのかも」
「あー……」
ミント味のガムでくしゃみが出るのは、よくある現象なのだろうか。
アレルギーとかではありませんように。

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2017
09.10

うにゅほとの生活2109

2017年9月10日(日)

ぐー。
胃袋が唸りを上げる。
「──…………」
チョコボールを食べていたうにゅほの手が、止まった。
「……たべる?」
ぐー。
「食べない」
「ほんとに?」
「食べません」
ぐー。
「……いっこだけ、たべる?」
「──…………」
うにゅほの親指と人差し指とに挟まれた、ピンク色の芳しい球体。
さっくりパフ入りいちご味。
「……いただ、き、ま」
ふらふらと、意識がチョコボールに吸い込まれていく。
だが、いいのか?
蟻の穴から堤も崩れる。
たったひとつぶとは言え、その油断が惨事を招く可能性だってあるのだ。
「いや、でも──」
「はい」
「うぶ」
うにゅほが、俺の口にチョコボールをねじ込んだ。
「──…………」
ころころ。
口のなかで、甘いものが踊る。
「おいしい?」
「美味しい……」
チョコボールを噛み潰し、飲み下す。
「もいっこ、たべる?」
「……やめとく」
「そか」
ぐー。
「やっぱし、たべる?」
「我慢します」
「そか」
ダイエット、継続中であります。

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