2017
08.22

うにゅほとの生活2090

2017年8月22日(火)

「──お、銀のエンゼル」
「おー!」
「××は?」
「きいろ」
うにゅほが、チョコボールのくちばしを開いてみせる。
「黄色だな、うん」
銀のエンゼルも、金のエンゼルも、九割方は黄色だけれども。
「ともあれ、これで四枚目か」
「うん」
「あと一枚だな」
「──あ!」
うにゅほが立ち上がり、寝室へと向かう。
「どした?」
そして、うにゅ箱から何かを取り出した。
「これ……」
「……銀のエンゼル?」
「はじめてね、あたったやつ……」
「──…………」
思い出した。
三年ほど前、たまたまおやつに食べたチョコボールで、銀のエンゼルを一枚だけ手に入れていたのだ。※1
「いいのか?」
うにゅほが大切に仕舞っておいたものだ。
交換してしまうのは、気が引ける。
「……いいの」
うにゅほが、困ったような笑顔を作る。
「だって、あたらしいおもちゃのかんづめ、なでたらしゃべるもん……」
そこなんだ。
「──…………」
受け取ったエンゼルを、うにゅほの手にそっと握らせる。
「?」
「頑張って、あと一枚当てよう」
「でも──」
「おもちゃのカンヅメはどのエンゼルでも交換できるけど、初めて当てた銀のエンゼルはそれ一枚だから」
「──…………」
「それに、おもちゃのカンヅメは一年くらい変わらない。このペースでチョコボールを食べていれば、すぐだよ」
「……うん」
うにゅほが、エンゼルを握った手を胸元に寄せる。
「ありがと、ね」
「ああ」
会話の内容がおもちゃのカンヅメについてでなければ、もうすこし感動的だったかもしれない。
ともあれ、あと一枚だ。
頑張ろう。

※1 2014年10月10日(金)参照

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2017
08.21

うにゅほとの生活2089

2017年8月21日(月)

行きつけのゲームセンターで、ルートビアなる清涼飲料水を手に入れた。
「──…………」
「──……」
「のむ?」
「飲む、けど……」
尻込みするのには、理由がある。
「……てんいんさん、しっぷのあじするって」
「言ってたな」
「しっぷって、しっぷかな……」
「聞き間違いでなければ……」
湿布の味がする飲み物とは、いったい。
「……まあ、飲んでみるか。ぬるくなっちゃうし」
「そだね」
プシュ!
A&Wと大きく書かれた茶色い缶のプルタブを引き開ける。
「行きます」
「……!」
うにゅほが見守るなか、ルートビアをひとくち啜る。
「──…………」
「どう?」
「感想聞いてから飲む? 聞かないで飲む?」
「……きいてから」
「砂糖を大量にぶち込んで甘く煮た湿布の煮汁に炭酸を入れて冷やしたものの味がする」
「──…………」
「──……」
「おいしい?」
「不味い」
「……やめとこかな」
「まあまあ」
うにゅほの手に、ルートビアの缶を握らせる。
「ひとくち、ひとくち」
「うー……」
「あとは俺がなんとか処理するから」
「わかった……」
うにゅほが恐る恐る缶を傾けていく。
くぴ。
「……うべえ」
「どうだった?」
「しっぷのあじする……」
「な?」
残りのルートビアは、俺がなんとか飲み干した。
不味いは不味いが、話の種にはなる味だ。

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2017
08.20

うにゅほとの生活2088

2017年8月20日(日)

自室の小型冷蔵庫を覗き込みながら、呟く。
「……これは、まずい」
「うん……」
「これはまずいと思い始めてから、何ヶ月経ったっけ」
「……さんかげつくらい?」
「たぶん、もっとかな」
「もっとかー……」
何がまずいのかと言えば、ズバリ、冷蔵庫の霜である。
幾度も解けて固まって、もはや巨大な氷塊に近い。
「まえ、しもとりしたとき、ちいちゃいバケツつかったけど……」
「駄目だ。ぜんぜん容量が足りない」
「うん……」
ですよねー、という表情を浮かべ、うにゅほが頷く。
「これは、日向に放置しておくしかないですね」
「そと?」
「ベランダでいいか」
「きょう、あつーいもんね」
「俺が運ぶから、物とかどけてくれるか」
「はーい」
冷蔵庫をベランダへと運び出し、太陽の方角に向けて扉を開ける。

がたん!
がらん、ごろ、──どざッ!

「──…………」
「いま、なんのおと?」
「入れっぱなしだったペプシのペットボトルが地面に落ちる音……」
「わあ!」
どうして確認しなかったのか。
「破裂してないかな……」
「みてくる!」
しばしして、うにゅほがペットボトルを持って戻ってきた。
「だいじょぶだった」
「貸してみて」
「はい」
ペットボトルを受け取り、腹のあたりを押してみる。
「……固い」
炭酸ガスでパンパンになっているらしい。
「これ、家の中では絶対に開けないように」
「ぶしゅーってなる?」
「天井まで飛び散る」
「わー……」
冷蔵庫の霜は、幾度かマイナスドライバーで掘削することで、夕刻までにはすべて除去することができた。
面倒がらず、次は早めに霜取りしよう。

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2017
08.19

うにゅほとの生活2087

2017年8月19日(土)

「──たー、べたー……」
ぼす。
自室のベッドに背中から倒れ込む。
「たべた、たべた」
うにゅほが、自分のおなかをぽんと叩いてみせる。
家族で焼肉を食べに行ったのだった。
「新しい焼肉屋さん、美味しかったな……」
「おいしかったー」
「××、おなかぽんぽん?」
「ぽんぽん」
「どれ」
両手をわきわき動かしながら、うにゅほに向かってにじり寄る。
「はい」
ぺろん。
うにゅほが、シャツの裾を自らめくり上げた。
なんと無防備な。
「ふむ……」
なでなで。
「おなか、まるい?」
「そうでもない」
「そか」
「──…………」
「──……」
「ぶす」
「うひ!」
「へそじゃへそじゃ!」
「へそだめー!」
うにゅほがこちらに背中を向ける。
「ぐへへ、へそを寄越すがよろしいのだ……」
「……かみなりさま?」
「そうです、雷様です」
「うそだー」
「嘘です」
「うそかー」
「へそをいじらせろー!」
「だめ」
「おなか痛くなっちゃうもんな」
「うん」
「あと、へそってけっこう臭──」
「あらってます!」
「確認させろー!」
「だめ」
「ぐへへー」
「わー!」
酒が入っていると、だいたいこんなテンションである。
うにゅほはへそを守りきったので、ご安心を。

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2017
08.18

うにゅほとの生活2086

2017年8月18日(金)

「──…………」
ホームセンターで備蓄用のペプシを購入したあと、自室のベッドに突っ伏した。
「ねむみがある……」
「ねむみ」
「ねむみ」
「ねむみ、かわいいねえ」
「響きが?」
「うん」
文法としてはガッツリ間違っているのだが、それでもなんとなく通じてしまうのは、日本語の奥深さである。
「ねずみ」
「ねずみ?」
うにゅほが小首をかしげる。
「ねむみのある、ねずみ」
「ねずみ」
「うとうとしてる」
「かわいい……」
「次は、××の番」
「うーと」
しばしの思案ののち、
「……みみず?」
「みみず、可愛いかなあ」
「ねずみと、みみず」
「……なんか、急に絵本っぽくなったな」
「うん」
「ねむみのある、ねずみと、みみず」
「とうみん」
「冬眠だな」
「つぎ、◯◯のばん」
「あー……」
ルールのない言葉遊び。
意味などないが、それでも楽しい。
「じゃあ、寝耳に水」
「ねみみにみず」
「ねむみのある、ねずみとみみず、寝耳に水」
「おきちゃうかな」
「寝耳に水だからな」
なんだか、絵本が一冊描けそうな勢いだ。
絵の上手い方、三人で一山当ててみませんか。

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2017
08.17

うにゅほとの生活2085

2017年8月17日(木)

ペプシの備蓄が切れたため、買いに出掛けようとしたときのことだった。
「──あっ」
「?」
「ストラップの紐が切れた……」
「ほんとだ……」
愛用の携帯ストラップの松葉紐が、なかばほどで完全に千切れていた。
「えんぎわるいねえ」
「逆に、運がよかったかもしれないぞ」
「……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「外で千切れてたら、本体部分を落としてたかもしれない」
「あ、そか」
「本体さえなくさなければ、松葉紐を交換するだけで済むからな」
「まつばひもっていうの?」
「そうだよ」
「へえー」
玄関で靴を履こうとして、
「靴紐が解けてる」
「──…………」
うにゅほの表情が、目に見えて翳る。
「……縁起が悪いのは、靴紐が切れたときだからな?」
「うん……」
「解けてるのは、普通だから」
靴を履き、玄関を出る。
家の前にある児童公園の向こう側に、小さくカラスの姿があった。
「……きょう、いくのやめよ」
「いや、遠い遠い!」
目の前を横切られたならまだしも、この距離のカラスを縁起が悪いと言うのなら、日本全国どこだって縁起が悪いだろう。
「気にしすぎだって」
「──…………」
俺の上着の裾を握りながら、うにゅほが無言の抵抗を貫く。
「……はあ」
溜め息ひとつつき、
「わかった。行くの、明日にしよう」
「うん……」
ペプシを飲まないと死んでしまうわけでもない。
水でも啜ってやり過ごせばいいだろう。
「××って、けっこう縁起とか気にするよな」
「きにする」
俺はさほど気にならないのに、いったい誰に似たのだろう。
母親だな、うん。

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2017
08.16

うにゅほとの生活2084

2017年8月16日(水)

「夏休みが、終わりました」
「──…………」
「終わってしまいました」
「はい……」
「今日から、また、仕事です」
「がんばって……」
「頑張ります」
「!」
ぴ、と敬礼してみせると、うにゅほも敬礼を返してくれた。
「……でも、正直、夏休み短いよね……」
「うん……」
「一ヶ月とかわがまま言わないから、せめて二週間くらい──」
そこまで口にして、ふと気づく。
「……学生みたいに夏休みって呼ぶから、期待はずれな気分になるんだ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「社会人にあるのは夏休みではない! お盆休みだ!」
「あー」
うんうんと頷く。
「同様に、冬休みは正月休みとなる」
「なるほど」
「夏休みが五日間だと短いけど、お盆休みが五日間なら妥当な感じしない?」
「おぼんって、それくらいだもんね」
「──…………」
「◯◯?」
「夏休みが欲しい……」
「……うん」
「名目はなんだっていいから、二週間くらい休みたいです……」
「がんばって……」
「頑張る」
「うん」
「頑張るので、ごほうびをください」
「なにほしい?」
「膝枕をしてほしい」
「そんなでいいの?」
「生足で」
「なまあし」
「具体的に言うと、ホットパンツで」
「きがえるね」
なんて素直な。
今日の仕事を終えたあと、うにゅほの生足膝枕を堪能した。
うん。
このためならば、頑張れる。

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2017
08.15

うにゅほとの生活2083

2017年8月15日(火)

「──晴れた!」
カンカン照りとは行かないものの、ここ数日の空模様を考えれば、十分過ぎる好天だ。
「××!」
「わ」
うにゅほの手を引き、立ち上がらせる。
「出掛けるぞ」
「どこいくの?」
「小樽」
「おたる……」
「連れて行くって、言っただろ」※1
「!」
うにゅほの瞳が、ぱあっときらめいた。
「いく!」
「よーし、準備だ。まずは着替えだな」
「きがえ?」
「バイクで行くから、ホットパンツはまずい。ジーンズに穿き替えよう」
「はーい」
「あと、日焼け止めはきちんと塗るように」
「わかった!」
しっかりと準備を整えたのち、タンデムシートにうにゅほを乗せて出発する。
「──…………」
ぎゅう。
発進するとき俺の背中に顔を押しつける癖は、いつまで経っても直らない。
日焼け止めクリームがライダースジャケットにべったりくっついていそうで、それはそれで気に掛かるが、まあいいや。
国道5号線を西進し、小樽市へ着くころには、ちょうど昼時になっていた。
「こないだ、◯◯、かいせんどんたべたの?」
「はい、食べました」
「わたしもたべたいな……」
「同じ店でいいか?」
「うん!」
先月、友人たちと辿った道を、うにゅほとふたりで辿り直す。
北一ヴェネツィア美術館に足を運び、ルタオでパフェに舌鼓を打ち、あれやこれやと会話しながら大正硝子館をはしごする。
最後に赴いたのは、小樽オルゴール堂の本館だった。
「わあー……!」
高い天井、広い空間、クラシカルな店内が、無数のオルゴールに彩られている。
数十万点、あるいはそれ以上あるかもしれない。
「床、滑りやすいから気をつけろよ」
「わかっ、──ほあ!」
「ちょ!」
言った傍から滑ったうにゅほを、慌てて胸元に引き寄せた。
「ごめんなさい……」
「気をつけるように」
「はい……」
オルゴール堂の店内を、おっかなびっくり歩いていく。
「これ、ぜんぶ、おるごーる?」
「そう」
「ぬいぐるみも?」
「たぶん……」
「すごいねえ、すごいねえ!」
「せっかくだし、ひとつ買っていくか」
「うん!」
ふたりで三十分ほど迷った結果、小さな12角オルゴールをひとつ購入することにした。
バイクだから、大きすぎると持って帰れないし。
曲目は「虹の彼方に」。
理由は、なんとなく気に入ったからだ。
今日という一日が、うにゅほにとって、素晴らしい夏の思い出となれば幸いである。
美しいオルゴールの音色を聞きながら、そんなことを思うのだった。

※1 2017年7月14日(金)参照

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2017
08.14

うにゅほとの生活2082

2017年8月14日(月)

「んあー……」
チェアの背もたれに体重を預けながら、天井を振り仰ぐ。
夏休み、四日目。
やりたいことはある。
すべきこともある。
だが、
「なーんもやる気起きねえー……」
キーボードを叩くのが億劫だ。
マウスすら重い。
動画をぼけーっと眺めているだけで一日が終わるのは、この上なく自堕落な休日の過ごし方と言えるだろう。
膝の上にちょこなんと腰を据えたうにゅほが、自信満々に口を開く。
「やすみは、やすむひ」
「そうだけどさ」
「やすまなかったら、やすみじゃないよ?」
言い得て妙である。
「でも、夏休みに入ってから、何もしてない気がする……」
「いちにちめと、ふつかめは、はかまいりいった」
「行ったな」
「みっかめは、ひろうかいふく」
「物は言いようだなあ」
確かにそんな感じだったけど。
「よっかめは、ほんとのおやすみ」
「ふむ」
「だから、やすんでいいんだよ」
「──…………」
うにゅほを、ぎゅーと抱き締める。
「……じゃあ、休む」
「うん」
五日目は、どうしようかな。
晴れたらふたりで出掛けるのもいいな。
夏休みに入ってから、ずっと天気が悪い気がする。
一日くらいは、晴れ間を見たいものだ。

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2017
08.13

うにゅほとの生活2081

2017年8月13日(日)

「──……ゔー」
ここ数日の疲れが噴出したのか、寝ては起き、起きては寝てを繰り返す一日だった。
「……眠い……」
「ぶえ」
背後からうにゅほにのしかかる。
「お、も、い゙ー……」
「ごめんごめん」
うにゅほが潰れてしまう前に、離れて、ベッドに腰掛ける。
「◯◯、ねむいの?」
「眠い」
「ねむいとき、ねたほういいよ」
「俺もそう思う」
「ねましょう」
うにゅほが、俺の肩に丹前を掛ける。
「でも、このやり取りも、今日だけで三度目だからな……」
「うん」
「もう五時だし」
「うん」
「……さすがに起きようかと」
「ねむくない?」
「眠いけど、用事があるし」
「──…………」
うにゅほの表情が、見るからに翳る。
「……◯◯、また、やくそくあるの?」
「あー……」
勘違いさせてしまったようだ。
「××も、一緒に行こう」
「?」
「TSUTAYAにDVD返しに」
「いく」
「用事ってのは、それだけだよ」
「そか……」
うにゅほの頭をぽんと撫でる。
「しばらくは、××を置いて出掛けないよ」
「──…………」
「出掛けるときは、一緒に行こうな」
「うん!」
寝癖を整え、普段着に着替えて、ふたりでTSUTAYAへ赴いた。
帰り際に食べた自販機のアイスが、そこそこ美味しかった。

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