2017
07.21

うにゅほとの生活2058

2017年7月21日(金)

休憩時間中、YouTubeで音楽を聞いていると、うにゅほが膝の上に乗ってきた。
「なにみてるの?」
イヤホンを片方外し、答える。
「十年くらい前に流行った曲のPV」
「ぴーぶい」
「先週、友達がこっち遊びに来たとき、カラオケも行ったんだけどさ」
「うん」
「あまりに久し振りだったもんだからレパートリーすら忘れてて、これ歌えばよかったなーって」
「へえー」
「聞いてみる?」
「うん」
外したイヤホンをうにゅほに手渡す。
「これ、なんてきょく?」
「SOUL'd OUTのTOKYO通信だな」
「はやくちことば……」
早口言葉と言われてしまっては、ヒップホップも形無しである。
「◯◯、これうたえるの?」
「なんとか」
「すごいねえ」
合コンで女性ウケするために覚えたことは秘密である。
「ラップとかってあんま好きじゃないけど、歌えると気持ちいいんだよな」
「そなの?」
「難しいことって、できると達成感があるだろ」
「あー」
うんうんと頷くうにゅほを抱き締めるようにして、キーボードを叩く。
「この曲なんかも歌えるぞ」
「みもざのさくころ?」
「そう」
しばし聞き入ったのち、
「……これ、うたえるの?」
「歌える」
「◯◯、した、すごいねえ……」
「わはは」
上機嫌に笑いながら、うにゅほの頭を撫でくり回す。
「ね」
「うん?」
「きいてみたいな」
「試験終わったら、ふたりでカラオケ行こうか」
「うん!」
「××も歌うんだぞ」
「えー……」
「歌わないなら、行かない」
「うたう、うたいます」
「よろしい」
うにゅほとカラオケなんて、久し振りだなあ。
楽しみだ。

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2017
07.20

うにゅほとの生活2057

2017年7月20日(木)

うにゅほの小さな手のひらが、俺の額に添えられる。
「ねつないね」
「うん」
「あたま、いたくない?」
「痛くないよ」
「きのう、なんだったんだろうねえ……」
「わからん」
だが、不意の体調不良はままあるものだ。
それが試験当日でなくて良かったと考えるべきだろう。
「きょうも、べんきょうする?」
「もちろん」
二次試験は三日後に迫っている。
のんびりしてはいられない。
「がんばってね」
「はい、頑張ります」
「でもね、あたまいたくなったらね、がんばらないでね……」
「はい、頑張りません」
無理して倒れてしまっては、元も子もあったものではない。
「一時間集中したら、十五分休憩することにしよう」
「じゅうごふんで、だいじょぶ?」
「じゃあ、二十分くらい?」
「さんじっぷん……」
「──…………」
うにゅほが甘やかしてくる。
ああ、でも、昨日は心配を掛けたしなあ。
「……わかりました。一時間勉強するたびに、三十分の休憩を取ることにしましょう」
「そうしましょう」
「じゃあ、勉強始めるな」
「うん」
「一時間経ったら教えてくれ」
「はい!」
シャープペンシルを手に、参考書とノートを開く。
試験まで、あと三日。
頑張れるのは、あと三日だけだ。
悔いだけは残さぬよう、頑張ろう。

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2017
07.19

うにゅほとの生活2056

2017年7月19日(水)

チェアの背もたれに体重を預け、天井を仰ぎ見る。
「──あったま、いてェ……」
そう呟いた瞬間、
「!」
うにゅほが弾かれたように立ち上がり、俺の額に手を当てた。
「ねつは、ない……」
「風邪ではないと思う」
「ちゃんとねれた?」
「飛び飛びだけど、八時間は……」
「あっちむいて」
「はい」
うにゅほに背中を向けると、小さな手のひらが肩にぽんと乗せられた。
もみ、もみ。
「かたい」
「凝ってる?」
「こってますねえ……」
もみ、もみ。
握力はないが、心地いい。
「肩もそうだけど、目の奥が痛いんだよな……」
「めのおく、もめない……」
揉めたら怖いがな。
溜め息をひとつつき、
「……日曜が二次試験だから、今日も勉強しないと」
「そだけど……」
描写は省いていたが、試験勉強はちゃんと毎日やっている。
あまり自信はないけれど。
「──…………」
もみ、もみ。
俺の肩を揉みながら、うにゅほがか細い声で言う。
「むりしないで……」
資格を取れば、給料が上がる。
自分ひとりなら決して無理をしないのに、うにゅほにこう言われると頑張りたくなるのは、皮肉である。
「薬飲んで、大丈夫そうなら、勉強しようかな」
「……そか」
ロキソニンを一粒飲み下す。
痛み止めでも、薬は薬だ。
気合を入れて、頑張ろう。

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2017
07.18

うにゅほとの生活2055

2017年7月18日(火)

「マジか……」
ニュースサイトの記事に、思わず息を呑んだ。
「?」
うにゅほが俺の肩越しにディスプレイを覗き込む。
「うーと、とうきょう、いけぶくろをちゅうしんに──これなんてよむの?」
「雹」
「ひょう」
「東京で、雹が降ったんだってさ」
「いつ?」
「今日」
「……なつなのに?」
「夏なのに」
「にわかにはしんじがたいですね……」
なんだその口調。
「信じがたいけど、降ったらしい。動画も上がってるな」
「みたい」
「見てみようか」
イヤホンを片方うにゅほに渡し、スマホで撮影された動画を再生する。
次の瞬間、
「──わ!」
「うるさッ!」
慌てて音量を絞る。
「──…………」
「──……」
「……しろいの、ひょう?」
「たぶん」
うにゅほが、人差し指と親指でマルを作る。
「これくらいありそう……」
「大きいのは、たぶん、それくらいあるな」
「くるま、べこべこなるね……」
「実際、なっただろうなあ……」
こちらで降ったら、車好きの父親が発狂しそうだ。
「ね」
うにゅほが俺の腕を取る。
「せかい、だいじょぶかな……」
気持ちはわかる。
世界の終わりみたいな光景だもんな。
「まあ、世界は大丈夫だろ」
「……ほんと?」
「本当」
建造物の窓ガラスやら車のボンネットやらは大丈夫じゃないと思うけど。
うにゅほの頭を撫でてやりながら、札幌近郊で降らないことを切に願う俺だった。

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2017
07.17

うにゅほとの生活2054

2017年7月17日(月)

重い頭をゆっくりと左右に振りながら、呟く。
「……だるい」
「◯◯、だいじょぶ……?」
「大丈夫、大丈夫」
起きたばかりには、よくあることだ。
「エアコン、つけたままねたからかなあ……」
「××、体調は?」
「ふつう」
「なら、関係ないんじゃないかな」
「でも、エアコンつけたままねたら、よくないって」
「よく聞くけど、俺はあんまり納得行ってないんだよな」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「エアコンは、26℃設定だ。室温はどうなる?」
「……にじゅうろくどなる?」
「室温26℃の部屋で寝て体調が悪くなるなら、冬なんて越せないだろ」
「あ」
「むしろ、熱帯夜で寝付けないほうが体に悪いと思う」
「そだねえ」
うんうんと頷く。
「俺のベッドはエアコンの真下にあるから、風も直接当たらない」
「うん」
「丹前を掛けて寝てるから、冷え過ぎということもないだろう」
「なんでだるいのかな……」
「俺なんて、年中だるいだるい言ってるだろ」
「あ、そか」
自慢できることではないが、今更と言えば今更である。
「しかし、エアコンをつけっぱなしで寝て、体調を崩す人が、一定数いることは確かだ」
「きのせい?」
「全部が全部気のせいではないだろうな」
「じゃあ、なんで?」
「専門家じゃないから、あまり自信はないんだけど──」
そう前置きし、言葉を継ぐ。
「屋外は暑くて、屋内は涼しい。それを繰り返すと、自律神経がおかしくなる」
「じりつしんけい……」
「起きているあいだの負担が、寝ているあいだに症状として表れるんだと思う」
「そうなのかな」
「室温が一定の部屋で24時間過ごしても、恐らく体調は悪くならないだろ」
「そんなきーする」
「まあ、実際はどうかわからないけどな」
「じゃあ、エアコンわるくない?」
「悪くありません」
「そか」
もちろん、冷え過ぎはよくない。
だが、節度を持って正しく使うぶんには、体調管理の手段として用いることも十分可能だと思うのだ。
これからまだまだ暑くなる。
快適に夏を楽しもう。

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2017
07.16

うにゅほとの生活2053

2017年7月16日(日)

「あめだー……」
「雨だな」
窓の外が、雨滴に煙っている。
雷様が雲の上でバケツをひっくり返したような天気だった。
「きょう、ずっとあめ?」
「天気予報だと、夕方には上がるみたい」
「どこにもいけないねえ……」
「どこか行きたかった?」
「……んー」
肯定とも否定ともつかない返答だが、うにゅほ歴の長い俺にはわかる。
行きたい場所はある。
だが、どうしてもと言うほどではないのだろう。
「晴れたら出掛ける?」
「はれるかなあ」
「晴れなかったら、のんびりしよう」
「うん」
休日を思い思いに過ごし、午後四時を回ったころのことだった。
「──あ、はれた!」
うにゅほが窓の外を指し示す。
「お、本当だ」
雨が上がり、雲のあいだから晴れ間が覗いていた。
「せっかくだし、出掛けようか」
「うん!」
「行きたい場所、ある?」
「うーとね、ゲームセンター……」
「珍しいな」
普段は俺が付き合ってもらう立場なのに。
「あのね」
「うん」
「おもちゃのかんづめね、あたらしくなったんだって」
なるほど。
「じゃあ、ゲーセン行ってチョコボール荒稼ぎしてくるか」
「うん!」
本日の釣果は、五百円で十六個。
銀のエンゼルが揃うまで、しばらくおやつはチョコボールである。

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2017
07.16

うにゅほとの生活2052

2017年7月15日(土)

森永から、おもちゃのカンヅメが届いた。
「わあ……!」
「ダマされちゃうカンヅメ、だって」
金属製の箱に、五つの鍵穴。
同梱されていたキーホルダーには、プラスチック製の鍵が三つと、細長いプレートが括られている。
「このかぎであけるのかな」
「どうだろう」
カンヅメの名前からして、一筋縄では行かない気がする。
「うーと……」
うにゅほが、鍵穴と鍵の総当たりを始める。
しばしして、
「──あ、まわった!」
「開く?」
ぐいぐい。
「あかない……」
たぶん、騙されてるんだろうなあ。
「◯◯、あけてー」
「はいはい」
カンヅメを受け取り、観察する。
「……あー」
「わかった?」
「たぶん、これをここに差し込んで──」
カチッ。
「あいた!」
「開いたな」
中身は、知恵の輪とジグソーパズル、おまけにスーパーボールだった。
「大したものじゃないな……」
「そだね」
謎解きは面白かったけど。
「これなんだろ」
うにゅほが、カンヅメの底から小冊子を取り出す。
「きみは、まだ、だまされてる、だって」
「まだ……?」
カンヅメを調べる。
「あ、蓋が二重になってる」
「ほんとだ!」
「どうやって開けるんだ……?」
今度は、謎を解くまで数分ほど掛かってしまった。
森永、なかなかやりおる。
何が入っていたかは、秘密である。

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2017
07.14

うにゅほとの生活2051

2017年7月14日(金)

午後九時ごろ帰宅し、静かに玄関を開く。
「ただいまー……」
「!」
物音を聞きつけたのか、うにゅほがリビングから顔を出した。
「おかえりなさい!」
「うん、ただいま」
本州から友人が遊びに来たので、観光案内がてら遊びに出掛けていたのだった。
「きょう、どこいったの?」
「小樽」
「おたる……」
「映画館があるところ」
「あ、わかった」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「うみのほう」
「そうそう」
「なにしてあそんだの?」
「海鮮丼食べたり、喫茶店でだべったり、ガラスの工芸品を見たりもしたな」
「たのしそう……」
「あと、オルゴール堂にも行った」
「おるごーるどー?」
「オルゴールの専門店。明治に建てられた古い建物で、雰囲気あったなあ」
「──…………」
「××?」
「うー……」
あ、ぶーたれてる。
当然か。
「……おみやげ」
「お土産は、ありません。買おうか迷ったんだけどな」
「──…………」
うにゅほが、ますますぶーたれる。
だが、土産を買わなかったことには、ちゃんとした理由がある。
「オルゴール堂も、大正硝子館も、いいところでさ」
「──…………」
「だから、××と一緒に来たいなって、思ったんだよ」
「……えっ」
「夏のあいだに、バイクで行こう。ふたりでさ」
「──…………」
うにゅほが無言で俺に抱き着く。
「……ごめんなさい」
「なんで謝る」
「なんとなく……」
「じゃあ、俺もごめん」
「なんで?」
「なんとなく」
「……うへー」
うにゅほが照れ笑いを浮かべる。
俺は、その笑顔を、ずっと見ていたいのだ。

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2017
07.13

うにゅほとの生活2050

2017年7月13日(木)

内視鏡を慎重に引き抜いたあと、医師が告げた。
「今回ですが、大腸内にポリープは見つかりませんでした」
「マジですか」
「ええ」
「では、入院は……」
「しなくて結構ですよ」
心の中でガッツポーズを決める。
検査料金を支払い、病院を後にした。
「暑い……」
札幌は、今日も晴れ。
日陰に逃げ込み、母親に電話を掛ける。
呼び出し音、しばし。
「──◯◯!」
受話口から響いたのは、うにゅほの声だった。
「おー、××」
「どうだった……?」
「なんと!」
「なんと……」
「ポリープ、ありませんでした!」
「……!」
はっと息を呑む音がして、
「よかったー……」
「これで、入院せずに済むな」
「うん!」
「母さんに、迎えに来てって伝えてくれるか」※1
「わたしもいくね」
車で十分の距離なのに?
いいけど。
「ついでだし、そこの牧場でソフトクリーム食べたいな」
「◯◯、おなかぺこぺこだもんね」
そう言って、うにゅほがくすりと笑いをこぼす。
「じゃあ、切るな」
「あ」
「どした?」
「◯◯、おつかれさま」
「……うん、ありがとうな」
「うへー」
帰り際、三人で食べたソフトクリームは、身震いするほど美味しかった。
空腹は最高の調味料とは、よく言ったものである。

※1 右手首を負傷したばかりの母親だが、運転に支障はないらしい。

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2017
07.13

うにゅほとの生活2049

2017年7月12日(水)

「……暑い」
「あちーねえ……」
大きく開いた窓から夜風が入り込み、静かに頬を撫でていく。
エアコンは快適だが、たまにはこうして自然の空気に触れるのも良いものだ。
「それにしても、暑い……」
「うん」
「──…………」
「──……」
「さて、問題です」
「はい」
「夜風は涼しいのに、どうして暑いのでしょうか」
「くっついてるから」
「正解!」
「うへー……」
「うへーではなく」
それも、尋常なくっつき方ではない。
ダッコちゃん人形の如く、俺の左半身にべったりと抱き着いているのだ。
役得な位置にある左腕だが、だんだん感覚が麻痺してきた。
「暑い……」
「あちーねえ」
「××さん」
「はい」
「せめて、膝の上に来ませんか。腕が痺れてきた」
「うん」
うにゅほが、俺の膝に腰を下ろす。
こちらを向いて。
「××さん」
「はい」
ぎゅー。
正面から抱き締められる。
嬉しいが、暑い。
「今日は、随分と甘えっ子だなあ……」
「だって」
「だって?」
「あした、◯◯、だいちょうないしゅちょう……」
言えてない。
「あー、ポリープ見つかったら一泊二日の入院だからか」
「うん……」
それが寂しくて仕方がないらしい。
「大丈夫──と、言いたいんだけどなあ」
断言したいのだが、ポリープがある気がしてならないのだった。
「あした、がんばってね……」
「頑張る」
ポリープが見つかった場合、明日の日記はお休みとなります。
御了承をば。

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