2017
05.31

うにゅほとの生活2008

2017年5月31日(水)

やつらが再び現れた。
「──◯◯!」
「わ、と」
試験勉強をしている俺の背中に、うにゅほが勢いよく抱きついた。
「どした」
「きて……」
手を引かれるまま、一階へと赴く。
そこで見たものは、
「──……うわ」
数十のアリの圧死体と、それに近い数の生きたアリたちの姿だった。
「また湧いたのか……」
「うん」
「潰したのは、××?」
「さいしょ、にひきだったの」
「ああ」
「つぶしたらね、たくさんでてきたの……」
「そっか」
「おこったのかなあ……」
「関係ないと思うぞ」
アリは社会性昆虫だが、復讐をするという話は聞いたことがない。
「とにかく、侵入口を特定して、そこを塞ごう」
「わかる?」
「ちょっと、可能な限り潰しててくれるか」
「はい!」
手のひらでアリをまとめて圧殺するうにゅほを尻目に、台所から砂糖の容器を取ってくる。
「生きてるの、あと何匹くらいいる?」
「いっぴき!」
大虐殺である。
「そいつに、ちょこっと砂糖をまぶす」
「あり、きちゃうよ?」
「もちろん、すぐに片付ける」
最後のアリが砂糖をひとつぶ担ぐのを確認したのち、ハンドクリーナーで清掃する。
「よし」
「どうするの?」
「このアリを追跡する。エサを確保したら、巣へ戻るはずだから」
「そしたら、いりぐち、わかるんだ」
「その通り」
追跡の結果、部屋の隅の壁紙が数ミリ浮いていて、そこから入り込んできていることがわかった。
「──侵入口を見つけたら、戻る前に殺す」
ぷち。
指先に、嫌な感触。
「あとは、ダクトテープで目張りして様子を見よう」
「おー……」
幾度も襲撃を受けているので、対処は慣れたものである。
あとは、アリの巣コロリ的なもので、巣ごと全滅させればいい。
アリどもよ、此度は完勝させてもらうぞ。

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2017
05.30

うにゅほとの生活2007

2017年5月30日(火)

行きつけのマックハウスで、ふたりぶんのジーンズを購入した。
「おそろい……」
うにゅほがにまりと笑みを浮かべる。
「二本目半額、ラッキーだったな」
「うん」
「裾上げ終わるまで、適当に走ってくるか」
「うん」
タンデム用のヘルメットをうにゅほに渡し、自分のヘルメットに手を掛ける。
シールドに触れた指先が、不自然にざらついた。
「……?」
ヘルメットの内側を覗き込む。
「うわ」
「どしたの?」
「インナーパッドが朽ちてる……」
「みして」
「はい」
見せる。
「──……!」
うにゅほが息を呑んだ。
「ヘルメットって、古くなると、ここまでボロボロになるんだなあ」
もちろん、急に朽ちたわけではない。
気づかないようにしていた、というのが、本当のところである。
「かみ、よごれてない?」
「払えば大丈夫」
「へるめっと、いつかったの?」
「従兄から貰ったんだ」
「そなんだ」
「それが、十年ちょっと前かなあ」
「ふうん……」
「でも、たしか、ヘルメットの寿命って五年くらい──」
そこまで言ったところで、
「あたらしいの、かいます」
うにゅほがきっぱりそう告げた。
「あ、はい……」
「へるめっとかうまで、バイクのっちゃだめだよ」
「帰りは?」
「かえったら!」
「はい!」
そんなわけで、裾上げが終わるまで店の前でおとなしく待つことになった。
出費がかさむが、こればかりは仕方ない。
安全第一である。

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2017
05.29

うにゅほとの生活2006

2017年5月29日(月)

平成18年度の過去問を解き、採点する。
「──よし、合格圏内!」
「おー」
ぺちぺち。
不器用に拍手をしながら、うにゅほが尋ねる。
「なんてんだったの?」
「82点」
「なんてんとったら、ごうかく?」
「60点」
「よゆう!」
「そう言ってあぐらをかいてたら、受かるものも受からないんです」
「そなんだ……」
「落ちたらまた来年だから、油断できない」
「むりしたらだめだよ」
「大丈夫」
「たおれるひと、いるんだって」
「そこまで真面目じゃないよ」
「そかな」
「いったん休憩です」
「はーい」
うにゅほが、冷蔵庫からチョコボールを取り出す。
「あまいもの、あたまにいいんだって」
「ありがとな」
「うん」
フィルムを剥がし、くちばしを立てる。
「あ」
「?」
「銀のエンゼル……」
「あたった?」
「当たりました」
「やた!」
「いえー」
「いえー」
ハイタッチを交わす。
「五枚揃ったな」
「うん!」
「おもちゃのカンヅメ、もらえるな」
「うん!」
うにゅほが満面の笑みで頷く。
ハガキか封書で送れとあるが、ハガキの場合はくちばしをセロテープか何かで貼り付ければいいのだろうか。
「……うーん」
それもどうだろう。
素直に封書で送ることにしよう。

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2017
05.28

うにゅほとの生活2005

2017年5月28日(日)

「ぶべー……」
力尽き、折りたたみテーブルに突っ伏す。
「べんきょう、おわり?」
「終わりじゃない……」
終わりじゃないが、もうしたくない。
土日を潰して計十四時間の猛勉強、三十路の身にはあまりにつらい。
「……遊びに行きたい。ゲーセン行きたい」
「いこ」
「でも、あと一週間切ってるし」
「べんきょう、するの?」
「したくない……」
「ねる?」
「眠くはない」
「いこ」
「……試験前なのに、遊んでていいのかなあ」
「だめ?」
「良いか悪いかで言えば、悪いのでは」
「そかな」
うにゅほが小首をかしげる。
「べんきょう、まだする?」
「今日はやめとく……」
根を詰めすぎても効率が悪い。
「しないとき、あそんじゃだめなの?」
「──…………」
試験期間は自粛するのが当然だと思っていたが、四六時中勉強をしているわけにもいかない。
ならば、余った時間を気晴らしに費やすのも悪くはないのではないか。
「よし」
立ち上がり、うにゅほの頭を撫でる。
「ゲーセン行くか」
「うん!」
近所のゲームセンターへと赴き、大量のチョコボールと魔理沙のフィギュアをゲットした。
おもちゃのカンヅメまで、銀のエンゼルあと一枚。
果たしてこの中に含まれているのだろうか。
乞うご期待。

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2017
05.27

うにゅほとの生活2004

2017年5月27日(土)

「グエー……」
折りたたみテーブルに突っ伏し、うだうだする。
「おつかれさまでした」
とん。
「?」
芳しい香りに目を開くと、テーブルの上にマグカップが置かれていた。
「コーンスープ?」
「うん」
「ありがとな」
「うん」
プラスチックスプーンで濃いめのコーンスープを混ぜ、そっと口をつける。
「……美味い」
「◯◯、ごはんたべてなかったから」
「そういえば」
来週に迫った資格試験の勉強をしていたら、三食がすっかり抜け落ちていた。
「べんきょう、すごいしてたねえ」
「こんなに勉強したの、久しぶりだよ」
「なんじかん?」
「えーと、一時半くらいから今までだから──」
壁掛け時計を見上げる。
「休憩込みで、八時間ちょっとかな」
「すごい」
「俺なりには頑張ったほうだけど、受験生とか起きてるあいだずっと勉強してるんだぞ」
「うひー……」
うにゅほが苦笑を浮かべる。
「××、勉強嫌い?」
「すきくない……」
だろうなあ。
「◯◯は、べんきょうすき?」
「好きではない……」
「おんなじ」
「そうだな」
「あんましむりしないでね」
「無理しない程度に頑張るよ」
「うん」
無理はしないが、合格しなければならない。
両立せねばならないのが、つらいところである。

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2017
05.26

うにゅほとの生活2003

2017年5月26日(金)

パジャマの襟元をパタパタさせながら、うにゅほが呟く。
「ぽかぽかするう……」
「赤肉たくさん食べると、こうなるんだよ」
「◯◯、こないだ、かぜじゃなかったんだね」
「たぶんな」
母親の誕生日ということで、家族で先日の店へシュラスコを食べに行ってきたのだった。※1
「しゅらすこ、おいしかったけど、おなかいっぱい……」
「二時間食べ放題はちょっと長いよな」
「おとうさん、すごいたべてた」
「肉食系って感じ」
見た目もわりとそんな感じ。
「おかあさん、ピアスよろこんでたね」
「お金出したのはこっちだけど、選んだのは自分だしな」
「にあってた」
「似合ってたな」
「──…………」
うにゅほが遠い目をする。
「××も、ピアス欲しいのか?」
「!」
ふるふると、慌てて首を横に振る。
「こわい」
そんなに。
「でも、可愛いなーとか、おしゃれだなーとか、それくらいは思ったんだろ」
「うん……」
なるほど。
「たとえば、俺がピアス穴を開けるって言ったら、どうする?」
「う」
「──…………」
「──……」
「か、かんがえさせてください……」
よほど怖いらしい。
気持ちはわかる。
「大丈夫、いまのところ予定はないから」
「……そか」
うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
ピアス穴か。
開ける日は来るのだろうか。

※1 2017年5月21日(日)参照

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2017
05.25

うにゅほとの生活2002

2017年5月25日(木)

「──…………」
視力の悪さに目を細めながら、眼鏡のつるを睨む。
「右側が、かなり開いている……」
「?」
「ヘルメットのかぶり方が悪かったせいで、眼鏡のフレームが歪んだみたい」
「だいじょぶ?」
眼鏡を掛ける。
右側のつるが、浮いているように感じられた。
「大丈夫と言えば大丈夫だけど、掛け心地が悪いなあ……」
「めがねやさん」
「調整か」
「うん」
「これ買った眼鏡屋さん、潰れちゃったんだよな」
「あー……」
「チェーン店はあるけど、最寄りが厚別みたいだし」
以前、検索してみたことがあったのだ。
「あつべつって、どこ?」
「北区の向こうが東区で、東区の向こうが白石区で、白石区の向こうが厚別区」
「──…………」
うにゅほが絶句する。
「遠いだろ」
「とおい……」
「ちなみに、××がよく行く美容院は、白石区」
「びよういん、とおい」
「うん」
「めがねやさん、もっととおい……」
「さすがに面倒でさ」
「めがね、じぶんでなおせないの?」
「自分でか……」
「ねじのやつ、あったきーする」
眼鏡用の精密ドライバーのことだろうか。
「あるにはあるけど、フレームの歪みはどうしようもないかな」
「そか……」
「まあ、こうして──」
親指と人差し指でつるの根本をつまみ、内側に力を込める。
「自分で、だましだまし調整していくしかない」
「こわれない?」
「加減はしてるけど、どうかな」
眼鏡を買い換える時期が来ているのかもしれない。

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2017
05.24

うにゅほとの生活2001

2017年5月24日(水)

ビラーゴ250の整備が終わったので、試運転がてら喫茶店へと赴くことにした。
タンデム用のヘルメットをかぶりながら、うにゅほが口を開く。
「バイク、ひさしぶりだねえ」
「自賠責取る取る言いながら、去年は結局取らなかったからな……」
「うん」
「乗り方、覚えてるか?」
「おぼえてる」
タンデムシートに跨ったうにゅほが、俺の腰に抱き着きながら背中に顔をぎゅうと押しつけた。
「ふぁい」
「……そんな乗り方だったっけ?」
「こわい」
「久しぶりだもんな」
「うん」
「まあ、そのうち慣れるだろ」
十分後、
「──きもちいね!」
慣れた。
赤信号の隙に会話する。
「晴れてたら、もっと気持ちよかったんだけどな」
「くもり」
「空気が湿ってるから、雨降るかも」
「てんきよほう、あめじゃなかったよ」
「なら大丈夫か」
「うん」
片道三十分かけて喫茶店へと辿り着き、コーヒーとソイラテ、フレンチトーストを注文した。
「さて、俺は勉強しようかな」
「しかく?」
「試験日まで、もう二週間切ったからな……」
「がんばってね」
「頑張ります」
「わたし、あいふぉんみてていい?」
「動画?」
「うん」
うにゅほにiPhoneを手渡す。
「イヤホンも、ほら」
「ありがと」
その後、一時間半ほど効率的に勉強を行うことができた。
喫茶店の雰囲気は、すごい。

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2017
05.23

うにゅほとの生活2000

2017年5月23日(火)

「──あっ」
普段通りに日記を書こうとして、ふとあることに気がついた。
「?」
不意に漏れ出た声を訝しんでか、うにゅほが顔を上げる。
「どしたの?」
「今日、2000回目じゃん」
「にせんかいめ?」
小首をかしげる。
「日記を書き始めてから、ちょうど2000回目」
「こないだせんかいめだった」
「それ、三年近く前だぞ」
「そだっけ」
「月日が経つのは早いものだ」
「そだねえ……」
うにゅほと出会ってから五年半、それは矢の如き日々だった。
「──…………」
うにゅほの顔を、間近で覗き込む。
「うへー……」
あ、照れた。
「……君、五歳は確実に年を取ったはずですよね」
「はい」
「──…………」
「──……」
「なんと言いますか、こう、あんまし変わってない気が……」
「◯◯も、かわってないとおもう……」
出会ったころから大人だった俺とは、事情がまた違うと思うけれど。
「ま、いいや」
変わらず可愛いままでいることに何の問題があろうか。
「それはそれとして、2000回に到達したら、やろうと思ってたことがあるんだよ」
「なに?」
「ふっふっふー……」
Google検索から、あるサイトを開く。
「文字数カウントー!」
「にっきの、ぜんぶの、もじすうわかるの?」
「その通り」
読者諸兄の中にも、気になっている方がおられるかもしれない。
この五年半に渡る長大な日記が、文庫本に換算して何冊程度になるものか。
半年ごとに区切られている日記をテキストボックスに次々とコピペして行き、
「──いざ!」
カウントボタンをクリックした。
結果が一瞬で表示される。
「うーと、ひゃくさんじゅうよんまん、はちじゅうもじ……」
「百万字超えたか」
「すごいの?」
「平均的な文庫本が、一冊十三万字くらい」
「……じゅっさつぶん?」
「十冊ぶん」
「すごい!」
「書いた俺も俺だけど、最初から今まで読んでる人も読んでる人だよ」
「そんなにいるの?」
「けっこういるみたい」
「すごいねえ……」
お付き合いありがとうございます。
「とりあえず、日記書くのをやめるつもりはないから、まだまだ溜まると思う」
「そか」
「××、ちょっと、これからもよろしくお願いしますって言って」
「これからも?」
「これからも、よろしくお願いします」
「これからも、よろしくおねがいします……」
ぺこり。
「よし」
「どしたの?」
「いや、日記に書くから」
「ふうん」
よくわかっていないようだが、まあいい。
ともあれ、今後も続けられるだけ続けていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
あらあらかしこ。

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2017
05.22

うにゅほとの生活1999

2017年5月22日(月)

起きては寝てを繰り返し、最終的に午後一時に起床した。
「あー、あー、ん゙ー」
「のどいたい?」
「すこし」
「ねつあるかな」
「ないと思う」
「おでこかしてね」
マスクを着けたうにゅほが、俺の前髪を掻き上げ、額にそっと手を当てる。
「うん、ねつない」
「そっか」
「(弟)、さんじゅうきゅうどあったの……」
「……大丈夫なのか?」
「びょういんいって、こうせいぶっしつもらってきたって」
「いまは?」
「ねてる」
「寝てなきゃ寝かせてるか」
「うん」
「それで、××マスクしてるんだな」
「はい、◯◯も」
「ありがとう」
手渡されたサージカルマスクを装着し、立ち上がる。
「おひる、たべる?」
「食べる」
「ますく、たべてからにしたらよかったね」
「下げて食べるから大丈夫」
「そか」
「弟は、食べた?」
「おかゆたべたよ」
「おかゆ余ってるなら、それでいいや」
「わかった」
「それにしても、39℃か……」
「しんぱい?」
「そりゃ心配だよ」
「うん」
「インフルエンザとかかな」
「ちがうみたい」
「とにかく、伝染らないようにしなくちゃな」
「ほんとね」
うがい、手洗い、マスクの着用。
冬ではないけど、徹底しなければ。

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