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2017
02.18

うにゅほとの生活1906

2017年2月18日(土)

愛車のコンテカスタムを運転しながら、助手席のうにゅほに話しかける。
「春が近いなあ」
午後五時を過ぎているというのに、夕闇はまだ遠い。
幹線道路は既に雪解けを迎え、長らく姿を見ていなかったアスファルトが露出していた。
「さくら、いつさくかな」
「二月は梅だろ」
「うめ?」
「一月は松、二月は梅、三月は桜」
「はなふだだ」
「まあ、北海道の桜は五月だけどな」
「ごがつは、あやめ」
「よく覚えてるなあ」
「ぜんぶいえるよ」
「本当か?」
「ほんとだよ」
「じゃあ、言ってみて」
「いちがつ、まつ。にがつ、うめ。さんがつ、さくら」
「うん」
「しがつ、ふじ。ごがつ、あやめ、ろくがつ、ぼたん」
「合ってる」
「しちがつ、ふじの、あかとくろのやつ」
「萩な」
「はぎ」
「続きは?」
「はちがつ、ぼうず。くがつ、きく。じゅうがつ、もみじ」
「うん」
「じゅういちがつ──」
「十一月は?」
「なんか、だらんてちくちくしたやつ……」
「十二月」
「むらさきのやつ!」
「全部言えませんでしたね」
「はい……」
「オイチョカブで覚えると、柳と桐が抜けるよな」
「じゅういちがつ、やなぎ?」
「十二月が、桐」
「へえー」
うんうんと頷く。
「おいちょ、もみじまでだもんね」
「最近やってないなあ」
「やる?」
「やるとしたら、来年のお正月かな」
「そか……」
うにゅほがすこし残念そうな顔をする。
花札、どこにやったかな。
来年までに探しておかねば。

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2017
02.18

うにゅほとの生活1905

2017年2月17日(金)

件の和菓子屋の前を通る機会があったので、立ち寄ることにした。
「──と、先客がいるな」
「ほんとだ」
小さな店舗であるため、店の前に二台停車する余裕はない。
「仕方ない、ぐるっと回ってくるか」
「うん」
数分ほど時間を潰して戻ってくると、店の前にまた車があった。
「……あれ、さっきと別の車だよな」
「さっきのくるま、しろかった」
「タイミング悪いなあ」
「うん……」
同じルートを周回し、三度戻ってくる。
ワゴン車から降りた男性が、和菓子屋に入るところだった。
「──…………」
「──……」
互いに顔を見合わせる。
「……大繁盛だな」
「まめだいふく、うりきれてないかなあ」
「まだ昼過ぎだし、大丈夫だと思うけど……」
そのまま三周目に入る。
四度戻ってきて、
「──…………」
「──……」
無言で四周目に入った。
ここまで途切れなく客が入るとは、恐るべし和菓子屋。
単に俺たちの運が悪いだけのような気もするけれど。
五度戻ってきてようやく入店し、無事、念願の豆大福とおはぎを手に入れることができた。
近場のセブンイレブンでミルクティーを購入し、ふたり同時に豆大福にかぶりつく。
「……普通だなあ」
「うん……」
言ってしまえば、コンビニの豆大福のほうがずっと美味い。
「でも、おはぎは超美味しい」
「うん、おいしい」
「おはぎが食べたいときはあの和菓子屋に行って、豆大福が食べたいときはコンビニへ行こう」
「そうしましょう」
コンビニはすごい。
俺は改めてそう思った。

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2017
02.16

うにゅほとの生活1904

2017年2月16日(木)

「……落ち着かない」
「?」
「ベッドの頭側って、やっぱこっちだって」
抱えていた枕をエアコンの真下に置く。
「あぶないよ……」
「言い出しておいてなんだけど、考え過ぎだと思う」
「でも、がたっていったって」
「寝入り端だったから、正直それも怪しいと思う」
「でも、おちたら……」
うにゅほが目を伏せる。
「要は、落ちないという確信があればいいわけだ」
「……うん」
「そこで、エアコン室内機の落下事故について調べてみました」
「はい」
「エアコンの落下事故には、二通りあります」
「はい」
「まず、取付工事が雑だった場合。これは、ちゃんとしたところに頼んだので、うちには当てはまりません」
「そかな……」
「触ればわかるけど、かなり頑丈に取り付けられています」
「さわっていい?」
「いいぞ」
うにゅほがベッドに上がり、エアコンの室内機に手を触れる。
「ガタガタする?」
「ううん」
ふるふると首を横に振る。
「このパターンは、ないと考えていいですね?」
「……はい」
あんまり納得してない感じだけど、続ける。
「もうひとつは、取付強度以上の地震が来た場合」
「!」
「この場合、壁自体が倒壊するので、エアコンとかもう関係ありません」
「こわいね……」
「怖いけど、こればっかりはな」
「うん」
「あと、エアコンが外れた場合でも、真下に落ちることってまずないんだって」
「そなの?」
「外に配管が繋がってるから、ホースでぶらんぶらんする」
「あ、そか」
「というわけで、エアコンの真下で寝ても大丈夫です」
「……うー」
「大丈夫です!」
「わかりました……」
心配してくれるのは嬉しいのだが、それは杞憂というものだ。
安心して床につこう。

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2017
02.15

うにゅほとの生活1903

2017年2月15日(水)

「──……?」
起床した瞬間、違和感に気がついた。
ベッドに対し、頭の位置が普段と逆だったのである。
前髪を掻き上げながら上体を起こすと、うにゅほと目が合った。
「おきた?」
「起きた」
「おはようございます」
「おはようございます……」
ぺこりと頭を下げ合う。
「◯◯、なんで、はんたいなの?」
「なんでだっけ……」
いまいち思い出せない。
脳が覚醒しきっていないらしい。
「きぶんてんかん?」
「いや、なんか、そうしなきゃいけなくて──」
呟きながら、眼鏡を掛ける。
その瞬間、あるものが視界に入り、すべてを思い出した。
「……そう、エアコンだ」
「エアコン?」
「昨夜、寝ようとしたときに、エアコンがガタッと音を立ててさ」
「うん」
「いつも通りに寝たら、エアコン、頭の真上にあるじゃん」
「ある」
「これが寝てるあいだに落ちてきたらと思って、怖くなったんだよ」
「あぶない……」
重さ15kgの物体が1.5mの高さから顔面に落ちてきたら、当たりどころによっては死にかねない。
「◯◯、これから、はんたいのままねたほういいよ」
「そうかもなあ……」
「ぜったい、そのほういいよ」
落ちるとしても、何らかの前兆があってから落ちるとは思うのだが、気をつけるに越したことはない。
うにゅほを安心させる意味でも、今後はこのまま寝ることにしようかな。

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2017
02.14

うにゅほとの生活1902

2017年2月14日(火)

2月14日である。
つまるところ、バレンタインのデーである。
「──…………」
そわそわと早めに目を覚ました俺がベッドから這い出ると、平たい小箱を持ったうにゅほと目が合った。
「わあ!」
うにゅほが小箱を背中に隠す。
「えーと、おはよう」
「おはよ……」
「……もしかして、宝探しするつもりだった?」
「──…………」
目を逸らす。
図星だったらしい。
「えーと、ごめん……」
「ううん」
ふるふると首を横に振り、うにゅほが両手を前に出す。
「バレンタイン、おめでと」
「ありがとうございます」
バレンタインは特におめでたくないと思うが、そんなことはどうだっていい。
「開けていいですか?」
「はい、どうぞ」
拙いラッピングを解くと、見知らぬブランドのチョコアソートの容器が出てきた。
箱だけ再利用したらしい。
「──…………」
どきどきしながら、蓋を開く。
ふわり。
チョコレートが香る。
「おお……」
そこにあったのは、九個並んだトリュフチョコ。
ココアパウダーのまぶされたそれは、売り物と比べても遜色ない。
「これ、作ったの?」
「うん」
「すごいなあ」
うにゅほの頭を撫でる。
「うへー……」
照れた笑顔が、普段の三割増しで可愛く見える。
「いっこ食べるな」
「うん」
トリュフチョコをひとつ手に取り、半分だけ齧る。
カリッ。
「?」
生チョコレートの柔らかい食感と共に、軽い歯ごたえが口内に響いた。
「くるみだ……」
「それは、くるみ」
「くるみ以外のやつもあるの?」
「ひみつ」
食べてみないと、中身がわからないのか。
これは、楽しい。
俺の好みを知り尽くしているうにゅほだから、俺の嫌いなドライフルーツなんかは絶対に入れないし。
「ナッツ類だと、マカダミアナッツとか、カシューナッツとかありそうだな」
「ひみつー」
うにゅほが、うへーと笑う。
「チョコ、美味しいよ。ありがとうな」
「うん」
おかげで、ホワイトデーのハードルが上がってしまった。
何をお返しすればいいのやら。

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2017
02.13

うにゅほとの生活1901

2017年2月13日(月)

うにゅほに、
「だいどころ、みないでね!」
と言われてから三十分後、俺は一階の廊下から台所の様子を窺っていた。
突き当たりの引き戸をかすかに開き、右目を光らせる。
気分はスパイである。
「──…………」
「──……」
うにゅほと母親が仲睦まじく作業を行っているが、会話の内容までは聞き取れない。
だが、何をしているかは知っている。
チョコだ。
バレンタインのチョコを作っているのだ。
去年は出来合いのチョコアソートだったが、今年は手作りらしい。
しばし観察していると、
「あ!」
うにゅほと目が合ってしまった。
「みたらだめ!」
「いや、ほら、トイレトイレ」
「うえのといれ」
「弟が入っててさ」
実を言うと、嘘ではない。
一階のトイレに行くついでに、様子を窺っていたのだった。
「……だいどころ、みたらだめだよ?」
「わかってるって」
「ひみつだから」
「えらい甘い匂いしますけど」
「ひみつ!」
背中をぐいぐい押され、トイレに押し込められてしまった。
「──…………」
にやにやと自然に口角の上がる頬を、円を描くようにしてマッサージする。
うにゅほが俺のためにチョコを作ってくれているという事実に、心が暖かくなる。
まあ、母親も一緒だし、そもそも俺だけのために作っているわけではないのだけれど。
どんなチョコをくれるのか、今から楽しみである。

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2017
02.12

うにゅほとの生活1900

2017年2月12日(日)

「♪~」
膝枕した俺のヒゲを、うにゅほがぷちぷち抜いていく。
「楽しい?」
「あ」
「?」
「しゃべったら、あごうごく……」
「すいません……」
「──あ、ちがくて。しゃべっていい、しゃべっていいの」
あわあわ。
「ごめんな、集中してたんだろ」
「うー……」
うにゅほが唸る。
「ちがくて」
「……?」
「◯◯、しゃべっていいの」
「邪魔にならない?」
「いいの……」
「じゃあ、喋る」
「うん」
「でも、喋ってたらヒゲ抜けないだろ」
「きゅうけい……」
そう言って、フローリングの床に毛抜きを置く。
「──…………」
「──……」
話したいことがあって口を開いたわけではないので、話題がない。
「あ」
「?」
「◯◯、くちびるかさかさ」
舌で確認する。
「……本当だ」
随分と荒れているようだ。
「にべあのくちびるのやつ、どこだっけ」
「引き出しのいちばん上かなあ」
「ちょっとまっててね」
ニベアのリップバームを探し出したうにゅほが、俺の頭を再び膝へと招く。
リップバームとは、指に取って塗るリップクリームのようなものだ。
「ぬるね」
「……××が塗るのか」
「うん」
リップバームをすくった指先が、俺の唇に触れる。
以前にもやってもらったことはあるのだが、やはり、ちょっと照れる。
「──…………」
ぬーり、ぬーり。
「はい、おしまい」
「ありがとな」
「ヒゲぬくの、つづきね」
「お願いします」
フェイシャルエステでも受けてるような気分だった。

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2017
02.11

うにゅほとの生活1899

2017年2月11日(土)

ずーり、ずーり。
ずーり、ずーり。
丹前を羽織ったうにゅほが、室内を右往左往していた。
「どした」
「ろっかん、ろっかん」
「なんの?」
「グルグル2……」
「あ、悪い。六巻ならたしか──」
小説側の棚に平積みされた未読の漫画のいちばん下から、魔法陣グルグル2の六巻を抜き取る。
「はい、これ」
「ありがと」
「読んだら片付ける癖、つけないとな……」
「そだね」
ずーり、ずーり。
ずーり、ずーり。
丹前を羽織ったまま、座椅子に座る。
「丹前、気に入ったの?」
「あったかい」
温湿度計を覗き込む。
「ちょっと暑くない?」
「ちょっとあつい……」
うへーと笑う。
「せっかくだから、腰のあたり縛ってみようか」
「うん、しばる」
「紐なかったっけ……」
「どうだっけ」
自室を軽く探してみたが、帯代わりになりそうな紐は見当たらなかった。
「二択です」
「はい」
「俺のベルトか、俺のシャツか」
「シャツ、のびちゃう」
「なら、ベルトかな」
「うん」
というわけで、丹前にベルトを締めるという革新的なファッションが誕生した。
「──…………」
ずーり、ずーり。
ずーり、ずーり。
「♪」
気に入ったようなので、よしとする。

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2017
02.10

うにゅほとの生活1898

2017年2月10日(金)

用を済ませて自室に戻ると、うにゅほが座椅子の上で丹前にくるまっていた。
「寒いん?」
「ううん」
ふるふると首を横に振る。
「ふとんのひ!」
「布団の──」
軽く思案し、
「ああ、2月10日か」
「うん」
「だから、丹前にくるまってるのか」
「うん」
「丹前って、布団?」
「──…………」
丹前とは、掻巻とも言い、着物状の寝具である。
布団ではないような気がする。
「うもうぶとんは、ふとん?」
「羽毛布団だからな」
「じゃあ、うもうぶとんにする」
「いいけど……」
何故、頑なに、くるまろうとするのか。
「♪」
羽毛布団にくるまってごきげんなうにゅほに尋ねる。
「テレビか何かで見たの?」
「ううん」
ふるふると首を横に振る。
「きょう、にがつとおかだから、ふとんのひだねって、おかあさんいってたの」
「だからって、くるまれとは──言ってないよな、たぶん」
「うん」
「なんでくるまってるの?」
「ふとんのひだから」
いや、いいけども。
「布団の日って、本来、何をする日なんだろうな」
「くるまるひ」
「違うと思う……」
チェアに腰を下ろし、「布団の日」で検索をかける。
「あ」
「?」
「布団の日って、今日じゃなくて、10月10日だって」
「えっ」
「2月10日だったのは、2009年までらしい」
「えー!」
そういうことってあるんだ。
「──…………」
うにゅほがのそのそと羽毛布団を片付ける。
せっかくごきげんだったのに、悪いことをしてしまった。
「えーと、××さん」
「はい……」
「膝の上、来る?」
「いく……」
「灯油節約のために、一緒に丹前にくるまろう」
「うん」
ふたりでくるまると、ひとりよりずっと暖かい。

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2017
02.09

うにゅほとの生活1897

2017年2月9日(木)

排雪が入ったのか、以前和菓子屋の前にあった雪の壁がなくなっていた。
「──××」
「うん」
視線を交わし、頷き合う。
「豆大福だ!」
「まめだいふくだ!」
Uターンし、和菓子屋の前に停車する。
意気揚々と店内に入り、

「すいません、豆大福ぜんぶ売れちゃったんですよお」

意気消沈して店を後にした。
「まめだいふく……」
「今度こそはと期待したぶん、ダメージが……」
「でも、ふつうのだいふくかえた」
「おはぎもな」
負け戦ではなかったのだ。
「コンビニで飲み物買って、食べようか」
「うん」
近場のセブンイレブンに立ち寄り、豆乳を買って車に戻る。
どでか豆大福が売っていたが、今回は見送った。
「いただきましょう」
「いただきます」
手を合わせ、おはぎを半分口に含む。
「!」
粗く潰されたもち米が口のなかでほぐれ、甘さ控えめの粒あんに包まれていく。
「美味い……」
「おいしいねえ!」
「さすが本業の和菓子屋」
「うん、うん」
うにゅほが何度も頷く。
「これは、大福のほうも期待が持てますな」
「うん」
おはぎを完食したあと、白大福にかぶりつく。
「──…………」
「──……」
「ふつうだね」
「普通だな」
普通だった。
次こそは豆大福を手に入れたいが、白大福が普通だったので、ちょっと期待値が下がっている。
おはぎは次も買おっと。

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