2017
01.31

うにゅほとの生活1888

2017年1月31日(火)

図書館の駐車場に入った時点で、嫌な予感はしていたのだ。
何故なら、車がほとんどなかったから。
「──…………」
「──……」
開かないガラス扉の向こうの立て看板を、ふたりで読み上げる。
「としょ、とくべつせいりのため──」
「1月31日から2月2日まで、休館となります」
「やすみ?」
「休み……」
「──…………」
「……なんか、前もこんなことあったな」
「うん……」
どうにも図書館運のない俺たちである。
肩を落として駐車場へ戻る最中、まっさらな新雪を掴んで意味もなく思いきり圧縮してみた。
「ふンッ!」
「?」
「ほら、固い雪玉」
「ほんとだ」
「──そりゃッ!」
意味もなく遠くへ投擲する。
「わたしもやる」
「雪合戦するか?」
「ゆきがっせんはしない……」
雪まみれになるもんな、あれ。
ぎゅっぎゅとおにぎりのように雪玉を握るうにゅほを尻目に、親指の爪ほどの小さな雪片を形作る。
「××、これ」
「?」
「これを、親指と人差し指のあいだに挟んで──」
ぐ、と力を込める。

ぴッ!

潰れた雪片が、指のあいだから射出された。
「!」
「指弾」
「しだん!」
「やってみる?」
「やりたい!」
そんなわけで、誰もいない駐車場でしばらく雪遊びをする俺たちなのだった。

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2017
01.30

うにゅほとの生活1887

2017年1月30日(月)

ぺらりとページをめくりながら、呟く。
「最近、読書してないなあ」
「──…………」
うにゅほがこちらの手元を指差す。
「あ」
「よんでる……」
完全に素だった。
しかも、読んでいたのは漫画ではなく、筒井康隆の短編だった。
「いや、違うんだ」
「うん」
「最近、読み返すばっかで、新しい小説を読んでないなあって……」
「こないだ、じっさつくらいかってた」
「あれ、小説じゃなくて、TRPGのリプレイ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「まあ、小説みたいなもんだけど……」
説明しづらい。
「どくしょ」
「……してますね、はい」
だが、一時期より遥かに読書量が減ったのは確かだ。
「ほら、図書館行ってないし」
「そだね」
「半年くらい行ってないんじゃないか?」
「そうかも……」
「行こうか?」
「いく!」
立ち上がりかけたところで、
「あ」
「?」
「今日、月曜だ」
「きゅうかんびだ……」
「なら、明日かな」
「うん」
久し振りの図書館だ。
何を借りようかな。

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2017
01.29

うにゅほとの生活1886

2017年1月29日(日)

「日曜だ!」
「にちようだ」
「休みだ!」
「やすみだ」
「いぇー!」
「いぇー」
こつんと拳を合わせる。
「おやすみ、どうするの?」
「休む!」
「ねるの?」
「寝る!」
「おやすみなさい」
「おやすみ!」
アイマスクを下ろし、床に就く。
しばしして、
「なんか、眠れない」
「ねれないの……」
「うん」
「まだ、あさのはちじなのにねえ」
「うん……」
平日なら余裕で寝こけている時間帯である。
「日曜ってことで、テンション上がり過ぎたみたい」
「そかー」
子供か俺は。
「にちようび、いっしゅうかんぶりだもんね」
「当たり前っちゃ当たり前だけどな」
「こんげつ、どようび、やすみないもんね」
「そうなんだよなあ……」
「なにかしてあそぶ?」
「遊ぶかー」
「あそぼ」
「したいことある?」
「うーと……」
すこし考え込んだあと、うにゅほが小さく手を合わせた。
何か思いついたらしい。
「◯◯、あいますくして」
「アイマスク?」
「うん」
「わかった」
眼鏡を外し、アイマスクを再び装着する。
「うへー、これなーんだ!」
何か手渡された。
丸い。
ギザギザしている。
恐らくプラスチック製だろう。
「ペットボトルの蓋」
「せーかい!」
「なるほど、あてっこゲームか」
「うん」
これは楽しそうだ。
「じゃ、次は俺が出題な」
「はーい」
イヤホン、ぬいぐるみ、靴下、温湿度計──単純なゲームなのだが、これがなかなか面白い。
一時間後、
「──…………」
「ねむい?」
「ちょっと」
「そろそろねる?」
「寝る……」
「そか」
「……楽しかったな」
「うん!」
満足感と共に布団に入ると、次に起きたのは正午だった。
充実した一日だった。

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2017
01.28

うにゅほとの生活1885

2017年1月28日(土)

正午ごろ目を覚ますと、うにゅほの姿がなかった。
「……××ー?」
うにゅほの名を呼びながら、自宅内を徘徊する。
両親の寝室。
リビング。
トイレ。
探せども、探せども、いない。
いい加減、心配になってきたときのことだった。

──ばたん。

「!」
玄関から音がした。
慌てて向かうと、コートを着込んだうにゅほがいた。
「××」
「あ、おはよー」
「どこ行ってたんだ?」
「ゆきかき」
「雪かき……」
朝方に起きたときは降っていなかったから、二度寝の最中に積もったらしい。
「起こしてくれればよかったのに」
「すこしだけだったから……」
「どのくらい」
「このくらい」
うにゅほが親指と人差し指を広げて示す。
「うっすら?」
「うっすら」
「なら、まあ……」
しぶしぶ納得する。
「……雪かきするなら、本当に、起こしてくれていいんだからな?」
「うん」
「むしろ、起こしてくれ」
「わかってるよ」
うにゅほが苦笑を浮かべる。
「本当かなあ……」
「ほんと」
気づいていないだけで、今日のような出来事は何度もあったのではないだろうか。
問い詰めるわけにも行かず、悶々とするのだった。

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2017
01.27

うにゅほとの生活1884

2017年1月27日(金)

「──……!」
は、と目を覚ます。
「やば……」
慌てて布団を跳ねのけて、フローリングに足をつく。
「──…………」
「あ、おきた」
「──…………」
「おはよー」
「……××」
「はい」
「今日、何日だっけ……」
「うーと、にじゅうななにち」
「一月の」
「うん」
「そうか……」
頷いて、ベッドに腰を下ろした。
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「なんか、夢のなかで、今日は大晦日な気がしててさ」
「あー」
「寝ぼけて混乱してしまった」
「ある」
「××もあるか」
「うん」
「どんな感じだった?」
「うーとね」
しばし思案し、うにゅほが答える。
「こないだね、おひるだとおもっておきたらね、あさだった」
「……うーん」
それは、ちょっと違うような。
「俺、逆ならあるな」
「ぎゃく?」
「朝かと思ったら、夕方だった」
「ねすぎ?」
「昼寝」
「ひるねかー」
「××、あんまり昼寝しないもんな」
「うん」
単に俺がし過ぎなだけの気もする。
冬場は昼も眠くなる。
はやく春にならないかな。

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2017
01.26

うにゅほとの生活1883

2017年1月26日(木)

「あー……」
卓上鏡を覗き込みながら、前髪を掻き上げる。
「そろそろ髪切らないとなあ」
「かみ、のびたねえ」
なでなで。
うにゅほが俺の頭を撫でる。
極めて硬い髪質のため、伸びるとすぐに爆発してしまうのだ。
「まさに、ボンバヘッて感じだな」
「ぼんばへ?」
うにゅほが小首をかしげる。
「……知らない?」
「しらない」
「ジェネレーションギャップ!」
調べてみると、m.c.A・Tの「Bomb A Head!」は、1993年発表の曲らしい。
うにゅほが生まれる前のことだから、知らなくて当然である。
「一緒に暮らしてて、あんまり感じることないんだけどな」
「じぇれねーしょんぎゃっぷ?」
「ジェネレーションギャップ」
「じぇれ、れーしょん、ぎゃっぷ」
「ジェネレーション」
「じぇれねーしょん」
「ジェネ」
「じぇね」
「ジェネレーション」
「じぇれねーしょん」
「──…………」
諦めた。
「××」
「はい」
「パフェ」
「ぱへ」
「相変わらず言えないんだなあ」
「いえてるよ」
「パフェ」
「ぱへ」
「言えてないからな」
「うー……」
これ、あんまり言い過ぎると、怒るんだよな。
やめとこ。

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2017
01.25

うにゅほとの生活1882

2017年1月25日(水)

「つん」
「──…………」
L字デスクの下にすっぽり収まったうにゅほが、俺の足をつついてくる。
「つんつん」
「──…………」
「──……」
「──…………」
「がぶ」
膝を噛まれた。
「構ってほしいのか」
「はまってほひい」
噛んだまま喋るものだから、膝があたたかい。
「そうかー……」
無視してこのまま読書を続けるという選択肢は、俺にはない。
「つん」
「う」
「つんつん」
「ひひゃ」
左足の爪先で、うにゅほの横っ腹につんつん返しを行う。
「わるいあしめ!」
「はっはっは」
「がぶー」
今日は甘噛みしてくるなあ。
「右足がフリーだぞ」
つんつん。
「うひ」
ぐりぐり。
「いひゃ、ひひひ」
両足で脇腹をくすぐっていると、反撃を受けた。
「がぶ!」
「効かんわ!」
「ふー……」
「あっつ!」
作務衣越しに息を送り込まれた。
「やったなー」
「うへへ」
そんな感じで、しばらくじゃれ合っていた。
楽しかった。

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2017
01.24

うにゅほとの生活1881

2017年1月24日(火)

今日は、祖母の一周忌だった。
とは言え、去年のうちに繰り上げ法要を執り行っているので、仏壇に手を合わせるだけの質素なものであるが。
「──…………」
小さな声でなむなむ言っていたうにゅほが、顔を上げて微笑んだ。
「いちねんたったんだねえ……」
「あっという間だったな」
「うん」
「……大丈夫か?」
「うん」
うにゅほが頷く。
その首肯は、かすかながら力強く、彼女が祖母の死を乗り越えたことを物語っていた。
「◯◯は──」
すこし躊躇ったあと、うにゅほが尋ねた。
「◯◯は、もうだいじょぶ?」
苦笑する。
「俺は大丈夫だよ」
そう。
俺はいつだって大丈夫だ。
「……でも、おばあちゃんしんだとき、◯◯、すごいかおしてた」
「そうだっけ」
「うん」
よく覚えていない。
「どんな顔してた?」
「うと……」
しばしの思案ののち、うにゅほが答える。
「われそうな、かお」
「悪そう?」
「ちがう」
うにゅほの言語感覚は独特で、たまにニュアンスが読み取れないときがある。
なんとなくは、わかるのだが。
「だからね、わたし、◯◯のとなりにいないとっておもったの」
「……そっか」
うにゅほの頭をぐりぐり撫でる。
「ありがとうな」
「うへー……」
うにゅほがいてくれて、よかった。
本当に。

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2017
01.23

うにゅほとの生活1880

2017年1月23日(月)

「月曜かー……」
「うん」
「仕事かー……」
「そだね」
「今月、土曜休みが一日もないんだよな……」
「そうなんだ……」
「連休が欲しい」
「うん」
「欲しいったら欲しい」
「よしよし」
うにゅほが俺の頭を撫でる。
「在宅だから通勤時間ないし、実働時間も短いから、仕事に文句はないんだ」
「うん」
「給料安いけど……」
「うん」
「平日に病院行けるし」
「うん」
「昼まで寝ていられるし」
「うん」
「××と一緒にいられるし」
「うんうん」
「だから、わがままなのはわかってるんだけど、連休欲しい……」
「うん……」
「……あー、資格試験の勉強もしないとなあ」
「しかくとったら、どうなるの?」
「たぶん、給料が上がる」
「──…………」
しばし思案したのち、うにゅほが俺の手を取った。
「がんばって!」
「頑張るけど……」
なんだか複雑な気分である。
「でも、むりしないでね」
「大丈夫、無理はしないよ」
「そか」
大切なものがあるから、いまを失いかねないような無理はしない。
「──…………」
そんな大切なもののひとつが、微笑みを浮かべながら、俺の頭を再び撫でた。

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2017
01.22

うにゅほとの生活1879

2017年1月22日(日)

「んー……」
卓上鏡を覗き込みながら、顎の下を撫でる。
「最近、ヒゲがなあ」
「のびた?」
「伸びるのが早くなったような……」
「◯◯、前も言ってた」
「そうだっけ」
「うん」
日記を調べてみたところ、半年前にもまったく同じことを書いていた。※1
「あー……」
「ね?」
「てことは、半年前より更に濃くなってる可能性が」
自分の言葉に思わず戦慄する。
「そかなあ……」
「そうでもない?」
「えい」
「!」
うにゅほが俺に抱きつき、頬ずりをする。
「どした、いきなり」
「うん、ちくちくしない」
濃くなったとは言え、産毛だからなあ。
「おとうさん、すーごいちくちくするよ」
「……そんな日常的に頬ずりされてるのか、君は」
「にかいくらい」
「ならよし」
「◯◯、ひげそったの、いつ?」
「──…………」
しばし思案し、答える。
「誕生日には、剃った気がする」
「とおかまえ……」
「いや待て。そのあとも、一回くらい剃ったはず」
「いつ?」
「……思い出せない」
「◯◯、ひげこくないよ。だいじょぶ」
「そうかな」
「ひげこくても、だいじょぶ」
「そっか」
「だから、くろいのぬいていい?」
「──…………」
うにゅほの右手に、毛抜きがあった。
濃くても大丈夫って、単に抜き甲斐があるからではあるまいな。
「……まあ、いいけど」
「やた!」
されるがまま、うにゅほにヒゲを抜かれる俺だった。

※1 2016年7月20日(水)参照

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