2016
12.30

うにゅほとの生活1856

2016年12月30日(金)

「××隊員、現在の湿度を報告せよ」
「はい!」
うにゅほがデジタル温湿度計を覗き込む。
「さんじゅうろくパーセントです!」
「低いなあ」
「ひくいねえ」
「……加湿器が機能してない気がするんだよな」
「うん……」
「壊れたのかなあ」
「がんばれー……」
加湿空気清浄機を撫でながら、うにゅほがそう呟いた。
購入して、まだ二年である。
故障されても困る。
「分解掃除してみるか」
「だいじょぶ?」
「取扱説明書見ながらなら、大丈夫だろ」
電源を落とし、前面パネルを外す。
「わ」
「……うわー」
ホコリが舞う。
プレフィルターがホコリまみれだった。
「これ最後に外したのっていつだっけ……」
「うと、ゆきふるまえ」
「てことは、二ヶ月くらいか」
「そうじき、そうじき」
プレフィルターの清掃をうにゅほにまかせ、集塵フィルターに手を掛ける。
取扱説明書によると、集塵フィルターの奥にある黒い板が脱臭フィルターである。
「ん?」
よく見ると、脱臭フィルターが上手くはまっていなかった。
まさか、こんな些細なことが原因ではあるまいな。

──三十分後、
「原因だった……」
あっという間に湿度が上がり、現在45%である。
「なおってよかったね」
「……まあ、うん。そうだな」
すこしだけ複雑だが、直ったことは素直に喜ばしい。
俺の乾燥肌も、すこしはよくなることだろう。

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2016
12.29

うにゅほとの生活1855

2016年12月29日(木)

「──…………」
うと、うと。
「!」
はっ。
「ねてない、ねてないです」
「何も言ってないぞ」
しばしして、
「──…………」
うと、うと。
「!」
はっ。
「ねてない」
「眠いなら、ちゃんと寝たほうがいいぞ」
昨夜は夜更かししたのだし。
「ねむくない」
「本当は?」
「ねむい……」
だろうなあ。
目蓋、ぴくぴくしてるし。
「××さん、お昼寝しましょうね」
「でも……」
「でも?」
「いまねたら、よるねれなくなる……」
「いいじゃん」
「いいの?」
「大晦日の夜、初詣行くだろ」
「いく」
「なら、いまのうちに、夜更かしに慣れておかないと」
「あ、そか」
うにゅほが、うんうんと頷く。
何年経っても素直である。
「では、おひるねします」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
ついに、うにゅほ悪い子計画※1を実行に移すときが来た。
夜更かし朝寝坊の快感を知るがいい。

※1 そんな計画はありません

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2016
12.29

うにゅほとの生活1854

2016年12月28日(水)

タクシーが到着したので、ストールを首に巻き、コートを着込んだ。
「それじゃ、行ってくるから」
「うん」
「たぶん、帰るのはすこし遅くなると思う」
「うん……」
うにゅほが不安げに口を開く。
「おんなのひと、いない?」
「──…………」
嗚呼。
嗚呼。
うにゅほにこんな心配をされる日が来るとは、本当に感慨深い。
「いません。男三人、むっさむさ忘年会です」
「……そか」
うにゅほの表情が安堵に晴れる。
「先に寝てていい──って言ってもどうせ起きてるだろうから、ちゃんとあったかくして待ってるんだぞ」
「はーい」
「ココアとコーンスープ、どっちがいい?」
「ココアがいいな」
「じゃあ、帰りに買ってくから」
「うん」
「行ってきます」
「いってらっしゃい!」
うにゅほの声を背に受けて、俺は自宅を後にした。

「……ただいま……」
帰宅したのは、午前二時だった。
「あ、おはえりなさい……」
半分寝ながら出迎えてくれたうにゅほを、思いきり抱き締める。
「わ」
「さぶい……」
「◯◯、からだつめたい!」
「タクシー捕まえるのに三十分以上かかった……」
外は-10℃、極寒の世界。
死ぬかと思った。
「××、あっためてくれー……」
「おふろはいったほういいよ」
「あ、うん」
「わかしなおすね」
「頼むー」
風呂で芯から温まり、いまに至る。
今日はうにゅほが夜更かしに付き合ってくれるそうなので、もうしばらく遊んでから寝ようと思う。

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2016
12.27

うにゅほとの生活1853

2016年12月27日(火)

「……?」
メモ帳を前にして、うにゅほが小首をかしげていた。
「なんかちがう……」
肩越しに覗き込むと、ドラえもんと思しきキャラクターが小さく描かれていた。
「うん、いろいろ違うな」
「◯◯、ドラえもんかける?」
「描けるぞ」
ボールペンを受け取り、うにゅほのイラストの下にさらさらとドラえもんを描く。
「あ、うまい」
「××は、ありがちな間違いをみっつ犯している」
「みっつも……」
「まず、青と白との境界線だな」
ペン先で問題点を指し示す。
「境界線は、目の上ではなく、目の真ん中を通っている」
「ほんとだ」
「ここを間違うと、一発で偽ドラになるから注意が必要だ」
「はい」
うにゅほが頷く。
素直である。
「次に、ヒゲの数。左右四本ずつではなく、三本ずつだな」
「そうなんだ」
「そうなのだ」
「さいごは?」
「最後は、黒目の位置」
「くろめ……」
「ドラえもんは、基本寄り目がちだ。白目の中央に黒目を描くと、死んだ目になる」
先の二点を修正し、黒目を白目の中央に置いたドラえもんを描いてみせる。
「……め、しんでるね」
「だろ」
「ドラえもん、もっかいかいてみていい?」
「ああ、描いてみたまえ」
うにゅほにボールペンを返す。
「くろめは、よりめ」
「ああ」
「きょうかいせんは、めのまんなか……」
「そうそう」
「ひげ、さんぼん」
「そう」
「──できた!」
うにゅほが描き上げたのは、少々いびつなことを除けば、立派なドラえもんの顔だった。
「よくできました」
「うへー」
「ちなみに、ドラえもんの応用でコロ助も描ける」
「かいて!」
そして、チキチキお絵かき大会が始まるのだった。

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2016
12.26

うにゅほとの生活1852

2016年12月26日(月)

「……うへー」
座椅子に腰掛けたうにゅほが、自分の足先を見つめてニコニコしている。
クリスマスプレゼントの靴下が余程嬉しかったらしい。
「──…………」
対して、俺は、いささか複雑な気分だった。
うにゅほの誕生日にコートをプレゼントしたときより、明らかにごきげんな様子だからである。
理由はわかっている。
俺の財政を管理しているのは、うにゅほだ。
自分へのプレゼントも支出の一部であると考えると、素直に喜べないのだろう。
「あ、そだ」
「んー」
「プレゼントのおかね、どうしたの?」
「あー、それか」
「かりたの?」
「借りてない」
「くれじっとかーど?」
「使ってないよ」
「……?」
うにゅほが首をかしげる。
種を明かせば、なんてことはない。
つい先日、普段使いのものとは別の銀行口座の存在を思い出しただけである。
「そうだなあ……」
しばし思案し、答える。
「……秘密」
「えー」
うにゅほが不満げに口を尖らせる。
「すこしくらい、いいだろ。無駄遣いしないからさ」
「うー……」
どうせ、うにゅほへのプレゼントを買うときくらいしか使わないし。
「……わかった」
うにゅほがしぶしぶ頷く。
プレゼントは、値段が見えないほうがいい。
経験上、そう思うのだ。

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2016
12.25

うにゅほとの生活1851

2016年12月25日(日)

「あ」
いつものように漫画を読んでいたうにゅほが、不意に声を上げた。
「◯◯、メリークリスマス!」
「唐突だな」
「わすれてた……」
うへーと苦笑する。
「××、メリークリスマス」
「うん」
「それで思い出したけど、布団のなかにプレゼントが忍ばせてあるぞ」
「!」
うにゅほが目を丸くする。
「大したものじゃ──」
言い切る前に、うにゅほが自分のベッドへと駆け寄った。
ごそごそ。
「あった!」
取り出したるは、チョコレート色の紙袋。
「あけていい?」
「いいよ」
包装を慎重に解き、ゆっくりと中身を取り出す。
「くつしただ!」
「家用の、毛糸の靴下」
「もこもこだ!」
「あったかいぞ」
うにゅほは靴下が嫌いなので、プレゼントしたら履いてくれるのではないか、という算段である。
「うへえー……」
靴下を抱き締めながら、うにゅほがほにゃりと笑みを浮かべる。
「ね、はいていい?」
「俺も、履いてるところ見たいな」
「うん!」
小さなぼんぼりのついたクリスマス仕様の靴下だ。
「……にあう?」
「思った通りだ。よく似合う」
「◯◯、ありがと」
「どういたしまして」
「……でも、わたし、おかえしない」
「ほっぺにちゅーでいいぞ」
「いいの?」
「むしろ、それがいい」
「じゃあ──」
描写は割愛する。
読者諸兄も、メリークリスマス。

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2016
12.25

うにゅほとの生活1850

2016年12月24日(土)

「──…………」
「──……」
つん。
「いひ」
つんつん。
「うぎぎ……」
チェアの上でまるくなっていたうにゅほが、痛いんだかくすぐったいんだかわからん声を上げる。
未曾有の大雪に果敢に立ち向かった結果、未曾有の筋肉痛に見舞われているふたりだった。
「夜のぶんの痛み止め、飲むか?」
「のむー……」
ロキソニンは胃によくないが、それどころではないこともある。
「──さ、気を取り直してだ」
「ぎんがてつどうのよる」
「ああ、見ようか」
「うん!」
クリスマスイヴの夜、劇場版・銀河鉄道の夜をふたりで観賞する。
毎年の恒例行事だ。
チェアに腰を掛け、うにゅほを膝の上に乗せる。
「ぐ」
同時に、太腿が軋みを上げた。
「……◯◯、だいじょぶ?」
「大丈夫」
「おりる……?」
「下りなくていいから、動かないで」
「はい」
「DVD、トレイに入れて……」
「うん」
うにゅほがPCに手を伸ばす。
「み゙!」
うにゅほの爪先が、ピンと伸びた。
どこかの筋肉が悲鳴を上げたらしい。
「と、とにかく、見よう。見てるうちに、薬が効いてくるはず」
「うん……」
うにゅほを軽く抱き締めて、ディスプレイに向き直る。
「電灯、消そうか」
「うん」
周囲が闇に没する。
「今年は途中で寝るなよ」
「ねないよー」
自信満々に答えたうにゅほだったが、案の定、途中で寝落ちしてしまった。
何度も観た映画だものな。
だが、それでいいのだ。
一緒に観たという事実があれば、それでいい。
これは、ふたりの儀式なのだから。

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2016
12.23

うにゅほとの生活1849

2016年12月23日(金)

「ふー……」
「──…………」
上がり框に腰を掛け、無言で爪先を見つめる。
「ゆきかき、おわり!」
「はい……」
「つかれたねえ……」
「はい……」
「──…………」
「──……」
「……◯◯、だいじょぶ?」
「大丈夫じゃない……」
記録的な豪雪である。
「……むしろ、××は大丈夫なのか?」
「つかれた……」
うにゅほが苦笑を浮かべる。
だが、その表情には、幾許かの余裕が感じられた。
雪かきが好きだという言葉は、伊達ではない。
「──…………」
読者諸兄は、疲れ切った俺のことを、情けないと思うかもしれない。
だが、すこし待ってほしい。
本日の日記は、三度目の雪かきを終えた直後から描写しているのだ。
「……雪、止まないな」
「うん……」
「あとは、もう、父さんに任せよう」
「うん」
「俺は、もう無理だ。死ぬ」
「しなないで……」
「……言っとくけど、××も道連れだぞ」
「?」
小首をかしげたうにゅほに、残酷な事実を告げる。
「筋肉痛」
「あ」
うにゅほの顔が一瞬で青ざめる。
「……痛み止め、飲もうな」
「うん……」
日記を書いているいまも、雪は、一向に止む気配がない。
いっそ、このまますべて雪に沈んでしまえばいい。
そんなことすら考えてしまうのだった。

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2016
12.22

うにゅほとの生活1848

2016年12月22日(木)

USBサウンドカードを、すこし良いものに買い替えた。
「──…………」
ヘッドホンを外し、独り言つ。
「うん、だいぶ違うな」
「おと、いい?」
「かなりいいぞ」
「ききたい」
「ああ、ちょっと待ってな」
サウンドカードからイヤホンプラグを抜き、PC本体に直接繋げる。
「まず、普通に聞いてみよう」
「はい」
「曲、リクエストある?」
「うーと……」
「特になければスガシカオになります」
「いいよ」
ヘッドホンのサイズを調整し、うにゅほの両耳に装着する。
再生。
「──…………」
「──……」
「これ、ふつう?」
「これが普通」
「ふつうだねえ」
「普通だからな」
イヤホンプラグをサウンドカードに繋ぎ直す。
「行くぞー」
「はい」
再生。
「──わ!」
うにゅほの背筋が伸びる。
「ちかい!」
「さっきはのっぺりしてたけど、今度は音に奥行きがあるだろ」
「わかんないけど、いろんなおときこえる……」
「それが、音質がいいってことだよ」
「そうなんだ……」
音にさほどのこだわりはないが、良いものは良い。
しばらく音楽鑑賞を楽しもう。

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2016
12.21

うにゅほとの生活1847

2016年12月21日(水)

「あ」
ファンヒーターの給油の際、灯油で思いきり手を濡らしてしまった。
慌ててティッシュで拭い取り、匂いを嗅ぐ。
「……うへえ」
臭い。
普段の五割増しで臭い。
滴るほどに濡らしてしまったのだから、当然と言える。
灯油タンクを片手に自室へ戻ると、
「♪」
うにゅほが、しっぽを振って待っていた。
「嗅ぎますか」
「かぎます」
タンクをファンヒーターに収め、右手を差し出す。
「──…………」
ふんすふんす。
「……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「とうゆくさい……」
「そりゃなあ」
「ちがくて」
「灯油ばしゃーってやっちゃったから、匂いきつすぎるかもな」
「うーと、ちょっとちがくて」
「違うのか」
「うん」
必死に言葉を選びながら、うにゅほが説明する。
「とうゆのにおいだけど、いいにおいじゃないの」
「?」
「とうゆいれたあと、◯◯のて、いつもはいいにおいする」
「今日は違うと」
「とうゆのにおいと、◯◯のてのにおい、ぜんぜんちがうにおい」
「そうなんだ……」
まあ、単純に灯油の匂いが好きなだけならば、直接嗅ぐわな。
体に悪そうだけど。
「……皮脂か何かと結合して、匂いが変わるのかなあ」
「そうかも」
醤油味は好きでも醤油を直接飲むやつはいないってことなのだろう、たぶん。
しばらくのち、余分な灯油が揮発すると、うにゅほ好みの匂いになったらしく、また数分ほど嗅がれていた。
鼻息がくすぐったいのだけ、なんとかしてほしいものだが。

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