2016
10.31

うにゅほとの生活1796

2016年10月31日(月)

六角レンチを放り出し、大きく伸びをする。
「──でーきたッ!」
「かんせい?」
「完成!」
「いぇー!」
「いぇー」
こつんと拳を合わせる。
数日前に注文したパソコンチェアがようやく届き、いままさに組み立てが終わったところなのだった。
「りっぱないすだねえ」
「コンセプトが違うからな」
「こんせぷと?」
「前のチェアは、普通のオフィスチェア。こっちは──」
レバーを引き、背もたれを後方へと押し倒す。
「170度リクライニングして、横にもなれるチェアだ」
「おー……」
「フットレストもあるから、足も伸ばせる」
「おー!」
「どうよ、これ」
「すごいねえ、すごいねえ!」
うにゅほの瞳がきらきらと輝いている。
「ねてみて、ねてみて!」
「では、失礼して」
チェアに腰を下ろし、ゆっくりと上体を横たえる。
「──……おー」
「ねごこち、いい?」
「ソファとまでは行かないけど、ちょっと休みたいときには十分かな」
「わたしものっていい?」
「ああ、いま──」
チェアから下りる前に、うにゅほが俺に跨がった。
「わー……」
そして、俺の上にぴたりと横たわる。
「あったかい」
「そりゃな」
「ねごこち、いいねえ」
「……それ、椅子の寝心地じゃなくて、俺の寝心地だろ」
「うへー……」
いたずらっ子の笑みを浮かべて、うにゅほが俺に抱きついた。
それにしても、丈夫なチェアだ。
長く使えそうだと思った。

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2016
10.30

うにゅほとの生活1795

2016年10月30日(日)

「──…………」
眠い。
映画の内容が、ちっとも頭に入ってこない。
「ちょっと顔洗ってくる……」
「はーい」
洗面所へ向かい、蛇口をひねる。
両手ですくった冷水で顔を洗おうとして、
「──危なッ!」
眼鏡を外していないことに気がついた。

「と、いうことがありました」
笑い話のつもりで話すと、うにゅほが眉をひそめた。
「きのう、なんじにねたの?」
「──…………」
「なんじ?」
「五時です……」
「はやくねないと、だめだよ」
「えーと、その、映画を見始めてしまって……」
「えいが?」
「うん」
「おもしろかった?」
「いや、全然」
「おもしろくなかったの……」
「クソ映画でした」
「おもしろくなかったのに、みたの?」
「面白くなるかなーと」
「そか……」
「正直、俺も、時間無駄にしたなーと思ってます」
「いまみてたえいが、おもしろい?」
「──…………」
無言で首を振る。
面白かったら、そもそも眠くならない。
「きょう、おやすみだし、ねたほういいとおもう」
「そうします……」
ベッドに横になると、うにゅほが肩まで布団を掛けてくれた。
睡眠は大切である。

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2016
10.29

うにゅほとの生活1794

2016年10月29日(土)

「──お」
ばき。
「××、これ見てみ」
ばき、べき。
「どれー?」
「これ」
「しばいぬだ」
「犬用ケーキを食べた柴犬の顔がさあ──」
ばきッ!
「──…………」
「?」
「……椅子、めっちゃうるさいな」
「まえからだよ?」
「マジか……」
新しいパソコンチェアを注文したことで、ようやく、いまのチェアのポンコツさに気がついた。
「座り心地はいいんだけど」
ぼき、べき。
「足を浮かせると、何故か右に回転するし」
「なんでだろうねえ」
「分解したらわかるのかな……」
床から足を離す。
無音でチェアが左に回転する。
「……逆回転になった」
「ほんとだ」
意味がわからない。
「買い換え、いいタイミングだったかもしれないな」
「そだね」
床を蹴り、チェアの向きを元に戻す。
ばきばきばきばき、ぼき。
「──…………」
「──……」
「……なんか、いままでごめんな。うるさかったろ」
「ううん」
うにゅほが、ふるふると首を横に振る。
「なれた」
あ、やっぱりうるさかったんだ。
新しいチェアが届いたら、大事に使おうと思った。

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2016
10.28

うにゅほとの生活1793

2016年10月28日(金)

ふんすふんす、
はー。
ふんすふんす、
ほー。
「♪」
灯油の付着した指先をいつものように嗅がれていると、うにゅほが言った。
「ちょっと、チョコみたいにおいする」
「チョコ?」
「うん」
「──…………」
しばし思案し、
「あ、食べたわ。チョコ。朝方に起きたとき」
「やっぱし」
「でも、食べたのって、半日くらい前だぞ」
すんすんと手の匂いを嗅ぐ。
灯油くささしか感じない。
当然だ。
この半日のあいだに幾度も手を洗っているし、食器を洗った覚えだってある。
「……××、鼻いいんだな」
「うへー」
「××わんこ」
「わん!」
「お手」
「わん」
「おかわり」
「わん」
「よーしよしよし」
「わふー」
「××、犬ごっこ好きだよな」
「わん」
好き、と言っている。
「猫ごっこは?」
「わふー……」
あまり興味がないらしい。
「××、もともと犬っぽいもんな」
「わん!」
見えないしっぽが振れている。
嬉しいらしい。
「──…………」
「わふ?」
犬と言われて喜ぶのはどうなんだろう。
「××、服従のポーズ!」
「わん!」
うにゅほが仰向けに寝転び、ぺろんとおなかを出す。
「撫でろと」
「わん」
ほんと、犬だなあ。
しばらくのあいだ、うにゅほと犬ごっこをして遊んでいた。

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2016
10.27

うにゅほとの生活1792

2016年10月27日(木)

「◯◯ー!」
軽やかに階段を駆け上がる音と共に、うにゅほが俺を呼ぶ声がした。
「どした」
「おかあさんにいったら、パソコンのいす、はんぶんだしてくれるって!」
「え、なんで?」
思いがけない事態である。
「あのね、◯◯が、いすほしいっていってたっていったらね」
「うん」
「いすのばきばき、したにすごいひびくんだって」
「……マジか」
まったく意識していなかった。
「そんでね、うるさくないいすかっていいっていったらね、いいっていったからね」
「うん」
「はんぶんだしてくれるっていったら、だしてくれるって、おかあさんいったの」
「よくやった!」
うにゅほの頭をぐりぐり撫でる。
「うへー……」
たぶん、俺が直接言っても、出してくれなかっただろうなあ。
「よし、さっそく注文しよう」
「うん!」
タブに出しっぱなしになっていた商品ページから注文を確定し、互いに顔を見合わせる。
「たのしみだねえ」
「楽しみだな」
「わたしもすわっていい?」
「当然」
「ねてもいい?」
「いいよ」
「あ、いまのいす、どうしよう」
「あー……」
考えていなかった。
「ハードオフに売るとか」
「うれるかな」
「五百円くらいにはなるんじゃないか」
「かったとき、おいくらだったっけ」
「たしか、一万五千円くらい」
「……うーん」
「捨てるにも金がかかるから、値段がつくならマシじゃないかな」
「そか……」
中古の家具なんて、そんなものである。
ともあれ、届くのが楽しみな俺たちなのだった。

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2016
10.26

うにゅほとの生活1791

2016年10月26日(水)

マウスホイールをカリカリと回しながら、無意識に呟く。
「めっちゃ欲しい……」
「?」
座椅子でくつろいでいたうにゅほが膝立ちになり、ディスプレイを覗き込んだ。
「なにほしいの?」
「あ、いや、どうしても欲しいってわけじゃなくてだな」
「……?」
「できれば欲しいけど、買い換えるにはまだ早いかなって」
「なにー?」
「……その、パソコンチェア」
うにゅほが小首をかしげる。
「まえ、かったのに」※1
「そう言われると思ったから言い淀んでたのに……」
「あ、ごめん」
ひとつ息を吐き、ディスプレイを指し示す。
「これを見てくれ」
「はい」
「これが」
「うん」
「こうなって」
「うん」
「170度リクライニングする」
「おー!」
「足も伸ばせる」
「すごい」
「超欲しい……」
「おいくら?」
「一万七千円」
「かえな、く、は、ないけど……」
「いまのチェア、まだ一年半くらいしか使ってないんだよなあ」
「うん……」
壊れてもいないのに、買い換えるのは早すぎる。
「ちょっと身じろぎしただけでバキバキ音鳴るけど……」
「うん」
「足浮かせたら、何故か右に回転するけど……」
「うん」
「……わりとポンコツだな」
「うん……」
買い換えようかどうしようか、しばらく悩むことにする。

※1 2015年3月11日(水)参照

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2016
10.25

うにゅほとの生活1790

2016年10月25日(火)

「××」
「?」
「じゃーんけーん」
「わ」
「しょ!」
「しょ!」
「勝った」
「じゃんけん、いきなり……」
「なにしてもらおうかなー」
「もっかい」
「いいぞ」
「やた」
「じゃーんけーん」
「じゃーんけーん」
「しょ!」
「しょ!」
「勝った……」
「まけたー……」
「ははは、わしに勝てると思うたか!」
「うー、なにしたらいい?」
「特に考えてない」
「かんがえてないの……」
「理由なきじゃんけんだった」
「そうなの」
「せっかく勝ったんだから、なにかしてもらいたいな」
「いいよ」
「でも、××って、勝敗とは無関係にだいたいなんでもしてくれるよな」
「するよ」
「普段しないことをしてほしい」
「しないこと?」
「よし、腹筋百回だ」
「えー!」
「嘘です」
「◯◯、もしかして、きげんいい?」
「うん」
「そか」
「じゃーんけーん」
「わ」
そんな感じで、しばらくうにゅほで遊んでいた。

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2016
10.24

うにゅほとの生活1789

2016年10月24日(月)

「××、いま何度?」
「うーと、にじゅうにーてん、にど」
「んー……」
すくなくとも、ファンヒーターの電源を入れるほどの室温ではない。
「さむいの?」
「寒いってほどでも」
「はだざむい?」
「そうだな、それくらい」
「エアコンつける?」
「室外機にカバー掛けちゃったんだよな……」
「あ、そか」
気が早すぎたかもしれない。
「どうしようかなあ」
我慢しようと思えば我慢できるが、しなくていい我慢ならしたくない。
「……うへー」
「お」
うにゅほが俺の膝に腰掛ける。
「あったかい?」
「うん、××はあったかいなあ」
人肌は、極めて優れた暖房器具である。
あったかいし、やわらかいし、いい匂いがするからだ。
「よし、半纏で二人羽織するか」
「する!」
半纏の紐を解き、うにゅほに覆い被せる。
「……?」
袖に腕を通そうとしたうにゅほが、不思議そうな顔でこちらを振り返った。
「なんか、いきどまり……」
「行き止まり?」
確認する。
「──あ、この半纏、内ポケットあるじゃん!」
「ほんとだ」
長年愛用してきたのに、初めて気がついた。
「べんりだねえ」
「携帯とか入れるのにちょうどいいな、これ」
「うん」
ふと、うにゅほにも、俺の知らない一面があるのかな、と思った。
知りたいような、知りたくないような。

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2016
10.23

うにゅほとの生活1788

2016年10月23日(日)

「──…………」
蓬髪を掻きむしりながら上体を起こすと、既に日が沈んでいた。
「マジか……」
眠っているうちに休日が過ぎ去ってしまったらしい。
「あ、◯◯おきた」
「起きた……」
「おはようございます」
「おはようございます」
「かぜ、だいじょぶですか?」
「風邪……」
ああ、そうだ。
飲み会の帰りに雨に降られて、熱がぶり返したのだった。
「あー、あー、んー」
喉の調子を確かめる。
痛くはない。
「声、ちゃんと出てる?」
「うん、でてる」
「喉は大丈夫か……」
「◯◯、あたまこっち」
「はい」
うにゅほが俺の額に手を当てる。
「ねつは、ないかな」
「うん、熱っぽい感じはしない」
「はなは?」
「ちょっと詰まってるけど、もともと鼻炎だからな……」
「はなしゅーする?」
「あとで」
「こんどこそ、なおったかなあ」
「治ってたらいいな」
「むりしたらだめだよ」
「はい……」
「くつしたはいて」
「はい」
「はんてんきて」
「はい」
「ストーブつける、かしつきついてる、やさいジュースいまからつくる」
「お願いします」
「おねがいされました」
互いに頭を下げ合う。
今度こそ、ぶり返さないように気をつけよう。

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2016
10.23

うにゅほとの生活1787

2016年10月22日(土)

「──……?」
昼食後、羽毛布団にくるまりながら安静にしていると、ふとあることに気がついた。
眠気がないのである。
髪の毛を掻きむしりながら、上体を起こす。
「……なんか、眠れないぞ」
このところしばし、一日に十二時間は眠りに眠り果てていたのに。
「ねれないの?」
「うん」
「ねるの、へたになった?」
「なんだそれ」
苦笑し、ベッドから下りる。
「んー……」
肩を回し、
首を回し、
目を見開き、
咳払いをする。
「……もしかしてだ、風邪、治ったんじゃないか?」
「のど、いたくない?」
「痛くない」
「たん、でない?」
「今日は出てないかな」
「あー、っていってみて」
「あー……」
「こえ、かすれてない」
「治った?」
「なおったかも」
「やっとかー、もー!」
ぼすん。
ベッドの上に倒れ込む。
「ながかったねえ……」
「半月くらい引きっぱなしだった気がする」
「つらかったね」
うにゅほがよしよしと俺の頭を撫でる。
「いや、別につらいことはなかったけど……」
「あんしんして、のみかい、いけるね」
「もはや後顧の憂いはない!」
「でも、のみすぎたらだめだよ」
「はい」
釘を刺されてしまった。
「遅くなったら、先に寝てていいから」
「うん」
うにゅほはこうして頷くけれど、たぶん起きて待っているんだろうなあ。
なるべく早く帰宅することにしよう。

「……ただいまー」
「おかえり!」
帰宅すると、案の定起きていたうにゅほが出迎えてくれた。
「たのしかった?」
「ああ、すごく楽しかった」
「──……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「……ぐあい、わるい?」
「頭重い……」
「やっぱり」
十月の冷たい雨のなかを駆け足で通り抜けたのが悪かったらしい。
「ほら、ふとんはいって」
「待って、日記書いてから……」
「はやくね」
「はい」
というわけで、書き終わり次第布団に放り込まれます。
お疲れさまでした。

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