2016
09.30

うにゅほとの生活1765

2016年9月30日(金)

「◯◯、あまぞんからなんかとどいたー」
「お、来たか」
うにゅほから小さな包みを受け取る。
「ほんじゃない?」
「本じゃない」
「なに?」
「まあ待て、いま開けるから」
包みを開封し、中身を取り出す。
「じゃーん」
「……?」
貧乏な家の泡立て器のようなそれを見て、うにゅほが小首をかしげる。
「これ、なに?」
「キープラー」
「……うーと」
「説明するより、見せたほうが早いかな」
PCからキーボードを外し、Jキーをターゲッティングする。
そして、キートップの角に引っ掛かるように針金を滑り込ませ、
「えい」
すぽん!
一気に引き抜いた。
「え!」
「ほら、取れた」
「え、え、それ、とっていいの?」
「取るための道具なんだってば」
「あ、そか……」
「たまには掃除しないとなあ」
そう言いながら、すぽんすぽんとキートップを引き抜いていく。
「……あの」
「うん?」
「やってみたい……」
「いいぞ」
うにゅほにキープラーを手渡し、軽く指導する。
「──ここでひねって、角に引っ掛ける」
「はい」
「んで、あとは引っ張るだけ」
「……いきます」
すうはあと呼吸を整えて、
「ん!」
引っ張る。
「──…………」
抜けない。
「もっと力入れていいぞ」
「こわれない?」
「壊れないって」
「──んっ!」
すぽん!
「ぬけた!」
「抜けたな」
「やった!」
「おめでとう」
「うへー……」
引き抜いたSキーを天井にかざしてご満悦である。
「でも、キーのした、きたないね」
「……俺も、ここまで汚いと思わなかった」
キーボードの掃除は、こまめに行いましょう。

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2016
09.29

うにゅほとの生活1764

2016年9月29日(木)

「うう……」
ストレッチをしていて、内腿の筋を思いきり痛めてしまった。
「足、開きすぎた……」
「むりしないで」
「はい……」
無理したつもりはなかったのだが、思った以上に体が硬くなっていたらしい。
「前屈はできるんだけどなあ」
「ぜんくつ、できない……」
「逆だな」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「××は前屈できないけど、それ以外はだいたい柔らかいだろ」
「◯◯は、ぜんくつできるけど」
「それ以外、だいたい硬くなっちゃったみたいだなあ……」
子供のころは、体が柔らかいことが自慢だったのに。
「しっぷ、はる?」
「いや、いいよ。場所が場所だし」
「えー……」
どうして残念そうなんだ。
「貼るなら肩に貼ってほしい」
「かたこり?」
「こりこり」
「こりこりー」
うにゅほが俺の肩を揉む。
「ほんとだ、こりこりだ」
「最近、肩がすこし重くて」
「こりこりだもん」
「……こりこりって言い方、気に入ったのか?」
「うん」
背後でこくりと頷く気配。
「こりこり、こりこり」
やわやわと肩を揉む手を心地よく感じながら、軽く首を回す。
「くびも、こりこり?」
「首は、そこまででもないかな」
うにゅほが首筋を揉む。
「くびも、すこしこりこり」
「こりこりかあ」
「うん」
そんなことを言い合いながら、しばしマッサージを受けていた。

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2016
09.28

うにゅほとの生活1763

2016年9月28日(水)

「──……雨だ」
寝起きに頭が重いと感じていたら、案の定雨が降っていた。
どうにも気圧の変化に敏感過ぎる体質である。
「あめ、ひさしぶりだね」
「そうだな」
台風も、結局こちらへは一度も来なかったし。
「……◯◯、だいじょぶ?」
「××こそ大丈夫か?」
「わたしは、だいじょぶ」
「なら、俺も大丈夫」
「ならじゃなくて……」
うにゅほが心配そうな顔でこちらを見上げる。
真面目に答えよう。
「……まあ、すこしだるいくらいだよ。本当に大丈夫だから」
「そか」
「それにしても、今日は蒸すなあ」
「うん」
「何度ある?」
「みてくる」
うにゅほが、本棚の隅に飾ってある温湿度計を覗き込み、文字盤を読み上げる。
「にじゅうななど、ろくじゅうごぱーせんと」
「なるほど……」
作務衣の共襟をパタパタと動かし、汗ばんだ肌に風を送る。
「ちょっと湿度が高めだな」
「うん」
「エアコンの除湿機能、試してみるか」
「しつど、さがるかな」
「下がらなかったら困るぞ」
「エアコンのいみないもんね」
「高い金出したんだもの、除湿くらいしてもらわないと」
俺が出したわけじゃないけど。

一時間後──
「うお、48%になってる!」
「すごい!」
「一時間で17%も吸ったのか……」
「すごいねえ」
エアコンの除湿機能、侮れない。

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2016
09.27

うにゅほとの生活1762

2016年9月27日(火)

「……ゔー……」
座椅子に背中で腰掛けたうにゅほが、苦しげにうめき声を上げる。
「大丈夫か?」
「だい、じょ、ぶー……」
あまり大丈夫そうには見えない。
「おなか撫でるか?」
「うん……」
うにゅほの隣に膝をつき、腹巻きの上からおなかに触れる。
「ちょくせつなでて……」
「はいはい」
腹巻きの下に手を入れると、かなり蒸れていた。
なで、なで。
円を描くように、おなかを撫でる。
「ほー……」
「どうよ」
「とてもいいです……」
なで、なで。
「──…………」
「ふー……」
しばらく撫でていると、空いた左手が手持ち無沙汰になってくる。
読みさしの小説を手に取り、片手で読み進めていると、
「……だめ」
うにゅほに奪い取られてしまった。
「しゅうちゅうしてください……」
「ごめん、ごめん」
「……しおりのとこ?」
「?」
「よんでたの」
「まあ、うん」
「わかった」
こほん、とうにゅほが咳払いをする。
「よん、のうさぎをおって。きゅうかはにしゅうかんよりながかった。マイク・ドノヴァンも──」
ああ、朗読してくれるのか。
「つらくなったら、途中で止めていいからな」
こくりと頷き、続ける。
「ゆーえすロボットしゃは、ふくごうロボットからけっかんを──」
ちいさな朗読会は、うにゅほが疲れるまで続いた。
贅沢な小説の楽しみ方だと思った。

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2016
09.26

うにゅほとの生活1761

2016年9月26日(月)

廊下を歩いているとき、うにゅほがふと口を開いた。
「◯◯、こしいたい?」
「腰?」
上体を軽くねじってみると、わずかに違和感があった。
「痛いってほどじゃないけど、すこし……」
「やっぱし」
「よくわかったなあ」
本人ですら自覚していなかったのに。
「うしろからみたら、すぐわかるよ」
「後ろから……」
「くのじになってね、ひょこひょこしてるから」
「マジか」
無意識に、患部をかばうような歩き方になっているのだろう。
「まっさーじ、する?」
「する」
「わかった」
「あ、今日は踏んでくれるか」
「ふみふみ?」
「ふみふみ」
「わかった」
自室へ戻り、床の上にうつ伏せる。
「頼むう」
「はい」
ふみ。
ふみふみ。
「あ゙ー……」
「きもちいい?」
「爪先、爪先、そーそーそこそこ!」
小柄で痩せっぽちなうにゅほと言えど、体重はそれなりにある。
「……はー、極楽じゃあ」
「ふみふみ、すき?」
「大好き」
「ふつうのまっさーじは……?」
「大好き」
「ふみふみおわったら、ふつうのまっさーじしていい?」
「頼むう」
うにゅほのふわふわマッサージは、効きこそしないが極上の心地よさを誇る。
「あ、普通のマッサージするなら、ベッドの上でいいか」
「うん」
たぶん寝落ちする。
案の定寝落ちした。
睡眠障害に効果があるのではないか。

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2016
09.25

うにゅほとの生活1760

2016年9月25日(日)

残暑が死ぬほど厳しかったので、さっそくエアコンを活用してみることにした。
「はー……」
「すずしいねえ……」
エアコンの真下に位置取り、吹き出す風を一身に浴びる。
「扇風機も悪くないけど、やっぱ質が違うな」
「せんぷうきは、すずしい」
「エアコンは?」
「つめたい」
「わかる」
どちらも一長一短あるが、今年のような猛暑にはエアコンのほうが適しているだろう。
「九月も終わるし、冷房つけるのは今年最後になるかもしれないなあ」
「だんぼうは?」
「昨日も話したけど、雪が降るまでは使ってみようかと」
「ストーブ、つかうよね?」
「ちゃんと使うってば」
苦笑し、うにゅほの頭を撫でる。
「半端に寒いときにストーブつけると、室温上がり過ぎちゃって、すぐに消して、またつけてってなるからな」
「うん」
「逆に、すごく寒いときには、エアコンは力不足だ」
「ストーブだ」
「そう。要するに、使い分けだな」
エアコンの取扱説明書をぱらぱらとめくりながら、呟く。
「……今年の冬は、どうなるかなあ」
「なつあつかったから、ふゆさむくなるとおもう」
「寒いのはいいけど、雪がな」
「たくさんふるとおもう」
「希望?」
「うん」
「俺は、ちょっとでいいんだけど……」
「たくさんのほうが、きれいだよ」
「その感覚はわかるけどな」
世界が白く塗り込められる風景は、滅びの美学をも内包している。
好きか嫌いかで言えば好きだが、実生活に影響を与えるとなると、話はすこし違ってくる。
「……まあ、なるようになるか」
「うん、なる」
逆に言えば、なるようにしかならない。
祈っても無駄なので、祈ることもしない。
降ったら降ったで、愚痴を言おう。
降らなかったら、慰めよう。
うにゅほがいれば、だいたい楽しい。

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2016
09.24

うにゅほとの生活1759

2016年9月24日(土)

図書館から帰宅し、自室の扉を開けたときのことだ。
「──……?」
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
「さむい!」
うにゅほが自分の両腕をさする。
そう、寒いのだ。
外は汗ばむほどの陽気であるにも関わらず、室内だけが冬のように寒い。
数秒ほど考え込んで、ようやく思い至る。
「──あ、エアコンか!」
「うん」
「試運転してたのかな」
「そかも」
風邪気味であるにも関わらず外出していたのは、そもそも、エアコンの据付工事の邪魔にならないようにという配慮からである。
忘れていたわけではないのだが、意識にのぼっていなかった。
「わ」
ベッドの枕側に据え付けられた室内機を見て、うにゅほが感嘆の声を上げる。
「おっきいねえ……」
「圧迫感あるなあ」
「きりがみね、だって」
「リビングのエアコンと同じやつだ」
ベッドの上に置いてあった取扱説明書をパラパラとめくる。
「冷房、暖房、除湿、送風」
「だんぼう!」
「暖房機能はあるけど、真冬は使わないほうがいいって聞いたな」
「そなんだ」
「でも、××はストーブのほうがいいだろ」
「……うへー」
うにゅほが肯定の笑みをこぼす。
手についた灯油の匂い、大好きだもんなあ。
「──…………」
今年もふがふが嗅がれるのだろうな、などと思っていると、自然と笑みが浮かんできた。
「秋まではエアコンで、冬になったらストーブかな」
「そうしましょう」
「冬、楽しみだ?」
「うん」
うにゅほが楽しみにしているのなら、俺も楽しみにしておこう。
……豪雪でなければいいなあ。

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2016
09.23

うにゅほとの生活1758

2016年9月23日(金)

「──けほ、ごほッ!」
喉の痛みを追い出すかのように、空咳を繰り返す。
風邪だろうか。
そうかもしれない。
「ゔー……」
「はい、ますく」
「むぐ」
〈だーれだ!〉を思わせる体勢で、うにゅほが俺にサージカルマスクをつけてくれる。
背後からだと言うのに器用なものだ。
「ひきはじめが、かんじん」
まったくその通りである。
「あし、つめたくない?」
「冷たい……」
「くつしたはかないと、だめだよ」
そう言って、靴下を履かせてくれる。
「さむけ、しない?」
「する……」
「まっててね」
そう言って、半纏を出してくれる。
至れり尽くせりである。
「かぜぐすり、のんだ?」
「まだ……」
「うーろんちゃ、いる?」
「いる……」
「さむけ、まだする?」
「する……」
「あったかく、する?」
「する……」
「わかった」
パソコンチェアを反転させると、うにゅほが俺の膝に腰を下ろした。
「ぎゅーして」
「ぎゅー」
「あったかい?」
「あったかい……」
本当に、至れり尽くせりである。
いつまでもうにゅほに甘えていたい気持ちもあるが、心配をかけてはいけない。
ひき始めのうちに、さっさと治してしまおう。

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2016
09.22

うにゅほとの生活1757

2016年9月22日(木)

「──…………」
クレジットカードの利用明細を開き、絶句する。
「マジで……」
リフォームをして本棚が増えたのをいいことに、Amazonでポチりまくったことは確かだ。
だが、正直、ここまで行くとは思っていなかった。
「◯◯、めいさいみして」
「……見せなきゃ駄目?」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「みないと、かけいぼつけれない」
「……そうだな。そうだよな」
うにゅほの左手のiPhoneには、既に、家計簿アプリが表示されている。
あとは金額の入力を待つばかりだ。
「──…………」
そっ、と。
開いたままの利用明細を、うにゅほの眼前に差し出した。
「──ろ!」
うにゅほが目をまるくする。
「ろくまん、さんぜん、ごひゃくごじゅうななえん……」
「はい……」
「すごい……」
「使いすぎてしまいました」
「……はー」
とす。
うにゅほがチェアに腰を下ろす。
「ほん、かいすぎたねえ……」
「うん……」
「たくさんかったもんねえ」
「塵も積もれば山となる、ってやつだな……」
「せっせいしないと」
「はい……」
読者諸兄も、クレジットカードの使い過ぎにはご注意を。

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2016
09.21

うにゅほとの生活1756

2016年9月21日(水)

キッチンへ赴くと、うにゅほが野菜ジュースを作っていた。
「あ、◯◯」
「プルーン、ある?」
「あるよ」
うにゅほが指差した先に、巨大なぶどうの実のような紫色の果実が鎮座していた。
「あじみ、する?」
「うん」
うにゅほがプルーンを手に取り、包丁で手際よく四等分にする。
「はい」
「おー……」
カットされたプルーンをつまみ上げ、観察する。
「……なんか、ナスの古漬けみたい」
「そかな」
「この、微妙な茶色が……」
「おいしいよ」
あまり美味しそうには見えない。
しかし、味見したいと言ったのは俺だし、気になることも確かだ。
果実の内側に吸い付くように、プルーンを口へと運ぶ。
「──…………」
甘い。
さほど酸っぱくはない。
見た目から予想していたような、ぶどうに似た風味は感じられない。
「おいしい?」
「んー……」
しばらく味わったあと、飲み下す。
「……普通?」
「ふつうかー」
「なんかに似てるのかなって思ってたけど、なんにも似てないな」
「プルーンあじ」
「うん、プルーン味」
うにゅほがプルーンの皮を剥き、ミキサーに入れる。
「おいしいジュース、つくるからね」
「期待してる」
「うん」
うにゅほの作る野菜ジュースは、やはり絶品である。

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