2016
06.30

うにゅほとの生活1674

2016年6月30日(木)

「あぢー……」
「あついねえ……」
「……窓、開いてる?」
「あいてる……」
「あぢー……」
「あついねえ……」
「……プール行くか?」
「いく!」
見えないしっぽを千切れんばかりに振りながら、うにゅほが箪笥の引き出しを開く。
「みずぎ、みずぎ……」
「水着、持ってきてたっけ」
「うん」
「用意がいいなあ」
「こんなこともあろうかと」
「……俺が言い出すの待たなくても、行きたいなら行きたいって言っていいんだぞ?」
「?」
「我慢しなくてもさ」
きょとんとした表情を浮かべながら、うにゅほが答える。
「がまん、してないよ?」
「プール行きたかったから、わざわざ水着の準備までしてたんだろ」
「たしか……」
「たしか?」
「みずぎいれてたの、いまおもいだした」
「──…………」
肩から力が抜ける。
「どしたの?」
「なんでもない……」
「プール、ひさしぶりだねえ」
「ほんとな」
「たのしみだねえ」
「とにかく、水に浸かりたい……」
そんなこんなで市民プールへと赴いた。
調子に乗って200mほど泳いだら、まともに歩けなくなってしまい、車までうにゅほに肩を貸してもらう羽目に陥った。
体力が欲しい。

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2016
06.29

うにゅほとの生活1673

2016年6月29日(水)

汗ばむほどの陽射しに彩られた初夏の午後のことである。
「暇だなー……」
「ひまだねえ」
「本当は、ぜんぜん暇じゃないんだけどな……」
「そなの?」
「そうなの」
やるべきことが多過ぎるとき、一時的に暇に似た状態に陥ることがある。
それが今だ。
「えーと、いち、にー、さん──」
タスクを指折り数えていく。
「よん、ごー、たくさん」
諦めた。
「たくさんあるんだ」
「たくさんあるんだよ」
「ひましてて、いいの?」
「駄目」
「だめなの……」
「……こう見えて、なにもしてないわけじゃーないんですぞ」
「なにしてるの?」
布団の上で、ごろんと寝返りを打つ。
「なにからしようか、考えてる」
「そうなんだ」
「──…………」
「──……」
「……ツッコミとか、ないんでしょうか」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「なにもしてないやないかー、みたいな」
「かんがえてるって」
「まあ、うん」
嘘ではない。
「かんがえるの、◯◯のしごと」
「仕事のひとつではあるなあ」
「◯◯、しごとちゅう」
「──…………」
背筋を伸ばし、PCへ向かう。
「なにからするか、きまったの?」
「ああ」
無条件の信頼に、だらけているのが恥ずかしくなった。
すこしずつ手をつけていこう。
終わらないタスクはないのだから。
それに、
「……減らしていかないと、増えていく一方だからな」
「むりしないでね」
「しない、しない」
うにゅほに心配をかけるようなことは、したくない。
うにゅほの笑顔を守るのが、俺の責務だと思うからだ。

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2016
06.28

うにゅほとの生活1672

2016年6月28日(火)

「──…………」
「……だいじょぶ?」
フローリングの上で潰れたヒキガエルのように倒れ伏していると、うにゅほが心配してくれた。
「痛い」
「うん」
「足と、腕と、腹筋が痛い」
「きんにくつうですか」
「はい……」
「いっきにやるから……」
腕立てと、腹筋と、スクワット。
たかだか二百回ずつこなしただけで、この体たらくである。
「やると決めたら、ついやっちゃうんだよなあ……」
「ぜろか、ひゃく」
「そんな感じ」
「にじゅうくらいがいいとおもう……」
「俺もそう思う」
「でも、やっちゃうの」
「やっちゃうんです」
「もー……」
うにゅほが俺のふくらはぎに手を添える。
もみもみ。
やわやわ。
「きもちい?」
「気持ちいいです」
「まっさーじするから、いたかったいってね」
「はい」
もみもみ。
やわやわ。
もみもみ。
やわやわ。
「いたくない?」
「痛くない」
ふくらはぎ、太もも、尻、腰、背中、腕、肩、首──
二十分ほどかけて全身をマッサージしてもらい、立ち上がる。
「うん」
痛いものは痛いままだし、凝りもまったくほぐれていない。
しかし、
「すごい気持ちよかった」
「そか」
「もうすこしで寝るところだった」
「うへー……」
この言葉は、嘘ではない。
気持ちいいんだ、うにゅほのマッサージって。
効く効かないなんて二の次である。
今日は一日、筋肉痛に苦しめられたが、それはそれ。
自業自得というものだ。

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2016
06.27

うにゅほとの生活1671

2016年6月27日(月)

「──きゅーじゅはち、きゅーじゅきゅ、……ひゃーく!」
「はッ、は、ふー……」
自室のフローリングの上に、大の字になって寝転がる。
「おつかれさま」
「……腹筋、攣りそう……」
「だいじょぶ?」
「ギリ……」
「いっきにやるから……」
「……や、ほんと、なまってる……」
腹筋百回くらい、以前は労せずこなせたものを。
「……よく考えたら、さ」
「?」
「仮住まいだから運動不足になったんじゃなくて、ずっと運動してなかったような……」
「そんなきーする」
道理で錆び付きまくっているわけだ。
「去年はウォーキングとかしてたよな」
「してた」
「いつの間にかしなくなったけど」
「うん……」
「散歩でも行く?」
「いく」
「セコマでアイス買う?」
「か──……、わ、ない!」
「よく言った」
のそりと上体を起こし、うにゅほの頭に手を伸ばす。
なでなで。
「うへー」
「せっかく運動するんだから、消費カロリーも気にしていかないとなー」
「うん」
「……まあ、××はダイエットの必要ないんだし、アイス食べてもいいんだけどさ」
「◯◯たべないなら、わたしもたべない」
そう言ってくれるだろうと思っていた。
「んじゃま、財布は置いていきましょう」
「はい」
「せっかくだから、家の様子でも見に行こうか」
「みたい!」
仮住まいから本宅までは、往復で2km少々といったところだ。
リハビリがてらの散歩としては、ちょうどいい距離だろう。
そんなわけで、久し振りに体を動かした一日だった。

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2016
06.26

うにゅほとの生活1670

2016年6月26日(日)

休日の午後。
「──…………」
うつらうつらしながらPCで動画を見ていると、うにゅほにたしなめられた。
「ねむいなら、ちゃんとねたほういいよ?」
「んー……」
「ねるの、おそかったんだから」
「……そうします」
愛用のアイマスクを装着し、寝床に潜り込む。
燦々と降り注ぐ陽光が額を頬をほのかに温もらせるが、テンピュール製のアイマスクの遮光性は抜群だ
「──…………」
だからと言って、すぐさま眠れるとは限らないけれど。
半覚醒状態のまま幽明の境を彷徨っていると、うにゅほが小声で話し掛けてきた。
「……◯◯、ねた?」
寝てません。
「おきない?」
起きてます。
「いたずらするよー……」
するらしい。
どきどきしながら待っていると、唇に何かが触れた。
「あひる」
唇をつままれて、あひる口にされていた。
「うしし……」
楽しそうだ。
昼寝しているとき、いつもこんなことをされていたのだろうか。
「なでなで」
「──…………」
「かみ、のびてきた……」
「──…………」
「……てーつなご」
きゅ。
「うへー……」
可愛いなあ。
しばらく手を繋いでいると、徐々に意識が遠のいていくのを感じた。
幸せな眠りだ、と思った。

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2016
06.25

うにゅほとの生活1669

2016年6月25日(土)

「──……?」
ATMの順番待ちをしている最中、ふと思い立って、全身のポケットをまさぐってみた。
ない。
どこにもない。
「……預金通帳、忘れた……」
通帳記入をしに来たのに、間抜けにも程がある。
「あー、あそこだ。いったん冷蔵庫の上に置いたから……」
「あるよ」
「……ある?」
去年の誕生日にプレゼントした赤いバッグを開き、うにゅほが通帳を取り出す。
「◯◯、わすれたから、もってきた」
「おおー!」
うにゅほの頭をうりうり撫でる。
「××できる子、気がきく子!」
「うへー……」
撫でられるがまま左右に頭を揺らしながら、うにゅほがてれりと笑う。
「……あれ? でも、どうしてそのときに言わなかったんだ?」
「うーとね」
うにゅほの笑顔がいたずらっ子のものへと変わり、
「◯◯、いつきづくかなーって」
上目遣いにそう言った。
「このやろう!」
「うあー」
さらに激しく頭を撫でていると、順番が回ってきた。
「つうちょうきちょう、すき」
「そう……」
変なものが好きだなあ。
「つうちょう、いれていい?」
「いいよ」
「ががー」
特有の機械音がしばらく響き、預金通帳が出てくる。
「ふえてる」
「家計簿で全財産把握してるじゃん」
「それはそれ」
会計士うにゅほがいる限り、収支がマイナスになることは滅多になさそうである。

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2016
06.24

うにゅほとの生活1668

2016年6月24日(金)

「んー……」
左腕を目一杯折り曲げ、力こぶを作る。
「さわっていい?」
「ああ」
なでなで。
「ちいちゃくなってる」
「やっぱりかー……」
わかりきっていたことだが、すこし落ち込む。
「この部屋狭くて筋トレしにくいんだもんなあ……」
一ヶ月も腕立て伏せをサボっていれば、そりゃ衰えもするってもんである。
「ふとんたたんだら、できるよ」
「そうなんだけどさ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「筋トレって、ふと思い立ったときにやるものじゃん」
「そなの?」
「俺はそうなの」
「そうなんだ」
「そのときに一手間あると、面倒になるというか」
「──…………」
あ、うにゅほの視線が冷たい。
「……それくらい、って思ってる?」
「うん」
「××だってストレッチサボってるだろ!」
「う」
「おらおら、前屈してみろよー」
「やー」
けらけらと笑いながらじゃれ合ったあと、話を戻す。
「──ともあれ、一手間だ二手間だ言ってられないよな」
「そだね」
「俺は筋トレ」
「わたし、すとれっちやる」
「腹筋するとき、足押さえてくれな」
「うん」
「ストレッチするとき、背中押してあげるから」
「ありがと」
健康的な肉体を維持したいものである。

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2016
06.23

うにゅほとの生活1667

2016年6月23日(木)

「……本が足りない」
「うん……」
持ってきた本も、買ってきた本も、すべて読んでしまった。
「分厚いの選んできたんだけどなあ……」
住み心地のよい仮住まいだが、本棚を置くスペースがないことだけがネックである。
「みつどもえの新刊、読むの何回目?」
「さんかいめ……」
うにゅほが、苦笑しながらそう答えた。
「ガレージ行って、一箱くらい適当に持ってこようか」
「んー……」
小首をかしげる。
「ほんのはこ、すごいおくのほうだったきーする」
「……実は、俺もそんな気がしてる」
自宅にあった荷物は、箱詰めし、ガレージに保管してある。
だいぶ整理はしたけれど、それでもダンボール箱の数は優に百を下らない。
「──…………」
「──……」
互いに目配せを交わし、頷き合う。
「諦めよう」
「うん」
「とりあえず、一緒に動画でも見ようか」
「みる」
うにゅほを膝の上に乗せ、Amazonのプライム・ビデオを開く。
「あ、うちむらさまーずある」
「本当だ」
「むかしのもある……」
「TSUTAYA泣かせだよなあ」
画質を気にしないのであれば、いくらでも暇を潰すことができる。
「……まあ、回線に難はあるけど」
「わいまっくす?」
「WiMAX」
「すぐきれる」
「無線だから仕方ないのかなあ……」
住み心地のよい仮住まいだが、光回線が引かれていないことだけがネックである。
意外とネックだらけだった。
結局のところ、早く元の家に戻りたいのだった。

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2016
06.22

うにゅほとの生活1666

2016年6月22日(水)

母親が、吸水性と速乾性に富む珪藻土バスマットを買ってきた。
「──…………」
シュッシュッ
霧吹きがバスマットを濡らす。
そして、一瞬で乾いていく。
「おー!」
シュッシュッ
「おー……」
シュッシュッ
「ふしぎだねえ、ふしぎだねえ」
「満足したか?」
「もっかい」
シュッシュッ
「ふしぎだねえ……」
科学の実験とか好きそうだよな、うにゅほって。
「けいそうど、なんですぐかわくの?」
「マイクロメートル単位のちいさい穴が無数に空いてて、そこに水を蓄えるんだってさ」
「かわくのは?」
「厳密に言うと、乾いてないんだよ」
「……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「あっと言う間に水を吸うから、表面が乾いて見えるだけ」
「みず、どうなるの?」
「あとからゆっくり放出するんだって」
「へえー」
「箱に書いてあるんだから、自分で読めばいいのに」
「……うへー」
うにゅほが笑って誤魔化した。
「これで、バスマットびちょびちょにしてもだいじょぶだね」
「そうだな」
「◯◯、びちょびちょにするから……」
「……最近は気をつけてましたよ?」
「えらい、えらい」
「今日から気をつけなくなるけど」
「えらくない」
「そのためのバスマットだろ」
「そだけど……」
「はっはっは」
うにゅほの頭をうりうり撫でる。
珪藻土バスマット、なかなか便利な一品だ。

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2016
06.21

うにゅほとの生活1665

2016年6月21日(火)

リフォーム中の仮住まいはアパートの二階で、玄関を開けるとすぐに階段がある。
この階段がいやに狭く、また天井も低いため、
「──あでッ!」
「◯◯!」
「大丈夫、大丈夫……」
こうして、よく、頭をぶつけてしまうのだった。
「みして」
「はい」
数段ほど下り、うにゅほに額を見せる。
「……んー、たんこぶはできてない」
「よかった」
「おりるとき、きーつけてね」
「はい……」
「◯◯、せーおっきいんだから」
「そんなに大きくないって」
「いちばんおっきい……」
「家族のなかではそうかもしれないけど」
「あたまぶつけるのは、おっきいとおもう」
「いや、どう考えても、たかだか175cm程度でぶつかる天井のほうが低いんだよ」
欠陥住宅とまでは言わずとも、このアパートについて幾つか思うところはある。
トイレやバスタブが狭いし、
電波の通りが悪いし、
壁紙がたわんでいるし、
フローリングも妙にふかふかしているし。
「仮住まいだから、べつにいいんだけどさ」
「あと、いっかげつちょっと」
「そうだな」
「……でも、わたし、このいえすきだよ」
「狭いから?」
「せまいから」
うにゅほが、うへーと笑う。
「狭いのはいいけど、荷物が入らないのはなあ……」
「ほんだな、ないもんね」
「××も、読むものなくなってきたろ」
「うん……」
「図書館でも行くかー」
「うん!」
コンビニへ行くつもりが、目的地が図書館になってしまった。
特になにも借りなかったが、涼しくて居心地がよかった。

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