2016
03.31

うにゅほとの生活1583

2016年3月31日(木)

ミラジーノのタイヤ交換を済ませ、久し振りに外出した。
「雪、解けたなあ」
「とけたねえ……」
「春だなあ」
「はるだねえ……」
「春、好きか?」
「すき」
「冬は?」
「すき」
「夏は?」
「すき」
「秋も?」
「すき」
「いちばん好きなのは?」
「うと──」
うにゅほが、しばし思案し、答える。
「なつ、かなあ……」
「冬かと思った」
「ふゆ、ゆきかきすきだけど、なつ、◯◯げんきだから」
「……そんなに違う?」
「ちがう」
うんうんと頷く。
うにゅほが断言するからには、冬場の俺は、本当に元気がないらしい。
「まあ、自覚はある」
「◯◯、いつがすき?」
「……夏、かなあ。虫は出るけど、暑いの嫌いじゃないし」
「おそろいだ!」
「お揃いだな」
「うへー」
些細なことで喜ぶうにゅほを見ていると、心がほっこりする。
出会えてよかったなあ、と思う。
「──さて、これからどこ行こうか」
「きめてないの?」
「適当に走ってるだけだよ。タイヤの調子、見たかっただけだから」
「きめていいの?」
「いいよ」
「やた!」
「ゆっくり考えな。いつものコース、ぐるっと回るから」
「うん」
たっぷり五分ほど考えた結果、
「まかろんたべたい」
と、うにゅほが言ったので、最寄りの不二家に立ち寄った。
すっかりマカロン好きになってからに。
スポンサーサイト
Comment:0  Trackback:0
2016
03.30

うにゅほとの生活1582

2016年3月30日(水)

「──…………」
自分の二の腕を撫でる。
硬い。
「──…………」
二の腕の裏側に触れる。
ふにふに。
「……筋肉が落ちた気がする」
「そなの?」
「このあたり揉んでみ」
「うん」
ふにふに。
「あ、やわらかい」
ふにふに。
ふにふに。
ふにふに。
「揉みすぎ」
「はい」
「腕立て、してるんだけどなあ……」
「ダイエットのせいかも」
「かもしれない」
食事制限をすると、筋力が低下する。
しかし、食事制限をせずして体重を落とすことはできない。
「××、二の腕揉ませて」
「いいよ」
うにゅほの細い二の腕に手を伸ばす。
「──…………」
ぷにぷに。
「俺の腕より弾力がある」
「そなの?」
ぷにぷに。
ぷにぷに。
ぷにぷに。
「まだもむの?」
「触り心地がよかったから、つい……」
「◯◯のにのうでも、さわりごこちいい」
「じゃあ、俺の腕揉んでいいから、××の腕触らせて」
「いいよ」
ぷにぷに。
ふにふに。
ぷにぷに。
ふにふに。
ぷにぷに。
ふにふに。
しばらくのあいだ、そうして互いの二の腕を揉み合っていた。
なにやってんだ。
Comment:0  Trackback:0
2016
03.29

うにゅほとの生活1581

2016年3月29日(火)

「あ゙ー……」
喉元を押さえながら、声を引き絞る。
「◯◯、こえひくい」
「やっぱ風邪だったか……」
数日前のうにゅほと同じ症状だ。
「のど、いたい?」
「すこし」
「うにうにする?」
「たぶん……」
〈うにうに〉というのがどういう感覚なのか、いまいちわからないのだが、現状を鑑みるにそう遠くはあるまい。
「うがいしないとねえ」
「そうだな……」
イソジンでうがいを済ませ、自室へ戻る。
「……!」
ぽすぽす。
うにゅほが、鼻息荒く枕を叩いてみせる。
早く寝ろということらしい。
「待って、喉にスプレーしてから寝る」
「へんなあじするやつ?」
「そう」
「あれ、へんなあじするよ?」
「上手くやれば、喉の粘膜に直接当てられるんだよ」
「そなんだ……」
デスクの引き出しから喉スプレーを取り出し、口を開けて、シュッとひと吹き。
「ほらな」
「へんなあじ、しない?」
「多少する」
「するの……」
「でも、すこしだけだよ。気にならない程度」
「──…………」
しばし思案し、うにゅほが口を開く。
「……やってみていい?」
「喉痛いのか?」
「もういたくないけど……」
「……まあ、練習しておくのもいいか」
うにゅほに喉スプレーを手渡す。
「やってみな」
「うん」
「あーって言いながらな」
「あー」
シュッ!
「うべ!」
「もっと口を大きく開けて」
シュッ!
「うぶぃー……」
「もうすこし上に傾けて」
シュッ!
「──けへッ! えほ、けほん!」
「当たった?」
「へんなあじするし、のど、すーしゅーしゅるう……」
「上手くできたみたいだな」
「……これでいいの?」
「喉が痛いときは、楽になるよ」
「そなんだ……」
痛くないときは、すーすーするだけだけど。
夕暮れまで横になっていると、体調もだいぶマシになった。
明日にはよくなるだろう、たぶん。
Comment:0  Trackback:0
2016
03.28

うにゅほとの生活1580

2016年3月28日(月)

「──……あふ」
生あくびを噛み殺し、指の腹で目元をこする。
「ねむいなら、ねたほういいよ?」
「そうは言ってもなあ……」
iPhoneで時刻を確認する。
午後三時半。
「かれこれ十二時間は寝てるんだが……」
寝ても寝ても眠気が取れない。
「ぐあい、わるくない?」
「特には」
「ねつとかない?」
「眠いだけ」
「はるだからかなあ……」
「春眠暁を覚えず、か」
案外的を射ているかもしれない。
「去年の今頃はどうだったかな」
日記を遡ってみる。
「……あ」
「どう?」
「去年の今日も、あくび噛み殺してる」※1
「やっぱし……」
うにゅほがうんうんと頷く。
「あったかくなってきたもんね」
「そうだな」
羽毛布団に半纏では、いささか暑すぎるくらいだ。
「──……は、ふぅ……」
幾度めかもわからない生あくびが、口の端から漏れる。
「ねたほういいよ」
「うん……」
やるべきことは多いが、このままでは効率が悪い。
コンディションのいいときを狙って、一気に進めてしまうべきだろう。
「××、アイマスク取って」
「はい」
「耳栓そのへんに落ちてない?」
「あるよ」
完全防備で布団に潜り込むと、うにゅほが俺の手を取った。
「ねるまで、てーつなぐ」
「ありがとう」
厚意は素直に受け取っておこう。
次に目を覚ましたのは、午後五時のことだった。
在宅仕事でよかった。

※1 2015年3月28日(土)参照
Comment:0  Trackback:0
2016
03.27

うにゅほとの生活1579

2016年3月27日(日)

パソコンチェアに腰掛けて読書をしていると、うにゅほがとてとて寄ってきた。
右手にワールドトリガーの最新巻を持っている。
「◯◯ー」
「はいはい」
自分の膝をぽんぽんと叩く。
「♪」
うにゅほが膝に腰掛けて、読書タイムの始まりだ。
そう思ったとき、
「……?」
うにゅほが不思議そうにこちらを振り返った。
「どうかした?」
「◯◯、ふともも、ちょっとかたい」
「……硬い?」
「ちょっとやせた?」
「あー」
たしかに、体重はすこし落ちてきている。
「痩せた、かも」
「そか……」
「どうして残念そうなんだよ」
「すわりごこちが」
「えー……」
せっかく頑張ったのに。
「痩せないほうがよかった?」
「ううん」
ふるふると首を横に振る。
「でも、ふともも、もちもちしてて、よかった」
「そんなに……」
いつの間にかハイエンドな椅子と化していたらしい。
「足が骨張ってきたら、もう座らない?」
「ううん」
首を振る。
「すわる」
「座るのか」
「すわる」
「座り心地よくないのに?」
「……おこった?」
「怒ってないよ」
「◯◯のひざにすわるの、すき」
「そっか」
「うん」
「なら、いくらでも座っていいぞ」
「うん」
俺も、うにゅほの椅子になるのは好きである。
座り心地をよくするために太ろうとまでは思わないけれど。
Comment:0  Trackback:0
2016
03.26

うにゅほとの生活1578

2016年3月26日(土)

「あ゙うー……」
「声、枯れてるな」
「けふ、のど、いたいー……」
「熱は──」
うにゅほの額に手を当てる。
「……うん、ないみたいだけど、寒気はする?」
「だいじょぶ……」
「鼻水は?」
「でない」
「喉風邪みたいだな。とりあえず、イソジンでうがいしとこう」
「はい……」
洗面所へ連れて行き、イソジンの原液を薄めてうにゅほに手渡す。
「ほら、がらがらぺーって」
「うん」
がらがらがら、ぺっ。
がらがらがら、ぺっ。
「おわった」
「ほら、顔こっち向けて」
「むぶ」
タオルでうにゅほの口元を拭いてやり、自室へ戻る。
「加湿はしてるし、あとはマスクつけて横になるだけかな」
「のどいだいー……」
「そんなに痛い?」
「うにうにする」
「うにうにするのか……」
ウニ。
痛そうである。
「じゃ、喉にスプレーするか?」
「すぷれー?」
「喉に直接シュッてする薬が、ある」
「ちょくせつ……」
でもこれ患部に当てるの難しいんだよな。
「やってみる?」
「やる」
「わかった」
引き出しから喉スプレーを取り出し、うにゅほに手渡す。
「あー、って言いながら、シュッてするんだぞ」
「うん」
こくりと頷き、うにゅほが口を開く。
「あー……」
シュッ!
「──んべっ! へんなあじするう……」
「××、喉は?」
「へんなあじする……」
「すーすーしない?」
「べろ、すーすーする」
「……それ、たぶん、喉に当たってない」
「えー!」
「もっかいやる?」
「……いい」
諦めた。
「……◯◯、てーにぎっててくれる?」
「甘えっ子め」
「うへえ……」
うにゅほが寝つくまで、手を握りながら新書を読んでいた。
こういうとき、片手で読書ができると、はかどる。
Comment:0  Trackback:0
2016
03.25

うにゅほとの生活1577

2016年3月25日(金)

うにゅほを膝に乗せて読書をしていたとき、不意にiPhoneが震えた。
「あ、おとうさんからメール」
「どれ」
「はい」
iPhoneを受け取り、メールを開く。
「……うわ」
「どうしたの?」
「会社の人が事故起こしたんだって」
「じこ!」
「ほら、写真」
バンパーがひしゃげた軽トラの写真を開き、うにゅほに見せる。
「わあ……」
「乗ってた人も、相手も、怪我はしてないってさ」
「よかった」
「俺も気をつけないとなあ……」
「うん……」
「わりと安全運転なほうだとは思うけど」
「そなの?」
「××と一緒のときは、特にそうだよ。制限速度も守るし、一時停止もするし」
「ひとりのとき、してないの?」
あ、余計なこと言った。
「制限速度をすこしはみ出すことなら、たまに……」
「だめだよ」
「ですよね」
「ひとりのときも、きーつけてね」
「ひとりで運転すること、あんまりないけどな」
「そだけど……」
うにゅほが物憂げに目を伏せる。
「しらないところでけがしたら、しんぱい……」
「心配症だなあ」
うにゅほの頭をうりうりと撫でる。
「俺が事故ったこと、あるか?」
「がりってやったこと、ある……」
「……あったっけ」
「ある……」
そういえば、あった気がする。※1
「えーと、大丈夫だから!」
「ほんと?」
「相手のあることだから絶対とは言えないけど、安全運転は心がけます」
「うん……」
自分ひとりの体ではない。
気をつけよう。

※1 2015年9月11日(金)参照
Comment:0  Trackback:0
2016
03.24

うにゅほとの生活1576

2016年3月24日(木)

「あー、あー、あー」
「……?」
「あー、うー、ういー、あうー」
「どうした、変な声出して」
「のど、いたい、かも」
「かもなのか」
「かも」
「症状は?」
「なんか、のど、うにうにする……」
「つば飲んだら、引っ掛かる感じする?」
「──…………」
ごくん。
「……するかも」
「風邪の初期症状かもしれないから、着替えて、横になったほうがいいな」
「うん……」
うにゅほの額に手を当て、熱を測る。
「──…………」
あるような、ないような。
「……◯◯、あれ、やりたい」
「あれ?」
「おでこ、こつんて」
「はいはい」
うにゅほの前髪を掻き上げ、額を合わせる。
「──…………」
あるような、ないような。
「ねつある?」
うにゅほの呼気が口元をくすぐる。
「わからん」
「うひ」
俺の呼気がくすぐったいらしい。
「ともかく」
「うし」
「風邪なら風邪で」
「うしし」
「いまのうちに治しておいたほうが」
「くふふ」
「いいと思う」
「くふぐったい……」
「いいと思う」
「ひひ」
額を離す。
「おわりー?」
「俺に伝染ったら困るだろ」
「そか」
「治ってから」
「なおすね」
「ああ」
風邪が治ったら、額をくっつけ合う理由はないのだが、うにゅほが楽しそうなのでまたやろうと思う。
Comment:0  Trackback:0
2016
03.23

うにゅほとの生活1575

2016年3月23日(水)

「──…………」
部屋が寒い。
だが、ストーブをつけるほどではない。
手のひらを吐息であたためていると、うにゅほがとてとて寄ってきた。
「◯◯、てーさむい?」
「寒い……」
「わたしも、てーさむい」
うへーと笑いながら、うにゅほがこちらに両手を差し出した。
「では、繋ぎましょう」
「はい」
真正面から向かい合い、両手の指を絡ませる。
「◯◯のてーつめたい」
「××は、俺よりあったかいな」
体温と体温が交じり合い、徐々に同じ温度になっていく。
「あったかくなってきた……」
「そうだな」
「◯◯、ひざさむい?」
「寒い」
「わたし、おしりさむい」
「膝に座る?」
「うん」
うにゅほが俺の膝に乗る。
「あったかい」
「あったかいなあ」
「うん」
「××、背中は寒くない?」
「さむい」
「俺は、おなかが寒いな」
「……うへー」
うにゅほがこちらに寄り掛かる。
「あったかいね」
「ああ、あったかい」
「もっかいてーつなぐ」
「はいはい」
寒いときは、くっつくのが一番である。
Comment:0  Trackback:0
2016
03.22

うにゅほとの生活1574

2016年3月22日(火)

「──…………」
チェアの背もたれに体重を預け、天井を仰ぎ見る。
「あー……」
「?」
「うー……」
「◯◯、どしたの?」
「考え事」
「なにかんがえてたの?」
「んー」
脳裏で言葉をまとめ、口にする。
「自分には何ができるんだろう、みたいなこと」
「……?」
うにゅほが小首をかしげる気配。
「俺は神様じゃないから、なんでもはできない」
「うん」
「超能力者じゃないから、心も読めない」
「うん」
「でも、ある程度はできるし、ある程度は読める。神様でも超能力者でもないけど、すこしはできる」
「うん」
「資源は有限だし、コストもかかる。すべては費やせない」
「うん」
「そういったことを、考えてた」
「うん」
す、と。
頭を抱き寄せられた。
「……××?」
「うん」
「──…………」
柔らかな胸の感触に包まれながら、目を閉じる。
「◯◯は、だいじょうぶ」
「うん……」
「だいじょうぶだよ」
「──…………」
しばらくのあいだ、何も考えず、抱かれるにまかせていた。
Comment:0  Trackback:0
back-to-top