2015
11.30

うにゅほとの生活1462

2015年11月30日(月)

今日は、愛犬の三回忌である。
愛犬の墓前にビーフジャーキーを供え、うにゅほとふたりでそっと手を合わせた。
「雪、解けてよかったな」
「うん」
「掘り出すの、大変だからな……」
いつだったか、ジョンバで雪を掘り起こしてから墓参りをした記憶がある。
「──それにしても、随分と立派になったもんだ」
苔むしかけた墓石を撫でる。
「おはか、かっこよくなったね」
「日陰だからかな」
無関係ではあるまい。
「ひ、あたんなくて、さむくないかな……」
生前の愛犬を思い返す。
「わりと、日陰から日陰へと移動する犬だった気がするけど」
「なつはそうだけど」
「立派な毛皮があるんだから、大丈夫じゃないか」
「そだね」
顔を見合わせ、苦笑する。
「……コロ、げんきかな」
「元気だと思う」
「わかるの?」
「たまに夢に出てくるからな」
「あ、わたしも、ゆめでてくる」
「元気だろ?」
「げんき」
「だから、きっと、大丈夫だ」
「……うん」
冷え切った墓石をぽんぽんと撫でて、立ち上がる。
「さて、散歩でも行きますか」
「うん!」
幽明の境を越えて愛犬が遊びに来ているだなんて、本気で思ってはいない。
死は死だし、夢は夢だ。
だけど、いつの日か、俺とうにゅほが死んだとき、二人と一匹でまた散歩をしたい。
それくらいのことは、願ったっていいだろう。
「──…………」
墓石は、なにも答えてはくれない。
だが、それでいいのだ。
俺が勝手に信じているのだから、それでいい。
「◯◯、さんぽ、いかないの?」
「……ああ、ごめん。いま行くよ」
ほんの何十年か、待っていてくれるだろうか。
待ての得意な犬だったから、きっと大丈夫だろう。
ふと、そんなことを考えたのだった。
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2015
11.29

うにゅほとの生活1461

2015年11月29日(日)

東京から帰宅した俺を待っていたのは、大量の仕事だった。
それはいい。
織り込み済みで出立したのだ。
しかし、
「うへー……」
「××」
「?」
「ひっつかれると、仕事しにくいんだけど……」
「……だめ?」
そう言われると、弱い。
うにゅほに寂しい思いをさせたのは、俺の勝手な都合である。
さっさと仕事を終わらせて存分に構ってやりたいが、こちらはこちらで尋常な量ではない。
間を取って、うにゅほを構いながら仕事をする以外にないだろう。
「ほら、膝枕してやるから」
「えー……」
「嫌か?」
「ひざまくら、したい」
「いや、俺がしてもらったら、さすがに仕事できないからな」
「しかたないなあ……」
座椅子に座った俺の膝に、うにゅほが頭を乗せてきた。
「うへー」
「快適ですか」
「かいてきです」
「××は俺に定規を渡す係な」
「はい」
「──…………」
「──……」
「定規」
「はい」
「──…………」
「──……」
「雲形定規」
「はい」
「──…………」
「……うへー」
「楽しい?」
「たのしい」
それはよかった。
「じゃあ、色ペンも持っててくれな」
「はい」
共同作業で仕事をこなした。
いつもよりすこしだけ時間が掛かったけれど、楽しかったからいいや。
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2015
11.27

うにゅほとの生活1460

2015年11月27日(金)

「タオルいれた?」
「入れた」
「パンツは?」
「入れたよ」
「はぶらし」
「ちゃんと入れた」
「パジャマ」
「作務衣入れといた」
明日から一泊二日で東京へ行く予定だ。
うにゅほには、それが、心配で心配でたまらないらしい。
「ポケットティッシュ……」
「最初から入ってた」
「さいふにおかね、いれた?」
「大丈夫」
「うと、あれ、ひこうきにのるためのやつ」
「ちゃんと印刷してあるよ」
「ほん、もった?」
「本?」
「ひまつぶしの、ほん」
「あー、まだ入れてない」
「なにもってく?」
と、うにゅほが漫画用の本棚の前に立った。
「漫画は持ってかないぞ」
「じゃあ、ほししんいち?」
「星新一に限らないけど、小説だな。何冊か適当に見繕っておくよ」
「あと、あと──」
「××」
そわそわと落ち着かないうにゅほの両肩に、ぽんと手を乗せる。
「一泊二日だから、大丈夫」
「でも」
「ちゃんと明後日には帰ってくるから」
「うん……」
うにゅほの頭をうりうり撫でる。
「だから、待っててくれな」
「──……う」
べそをかきそうな表情で、うにゅほが口を開く。
「いってらっしゃい……」
「いや、出掛けるの今日じゃないからな。明日の朝だからな」
いまからこの調子だと、出発が不安である。
心配されないのも寂しいが、され過ぎるのもけっこう大変だ。


※ 明日の「うにゅほとの生活」はお休みとなります
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2015
11.26

うにゅほとの生活1459

2015年11月26日(木)

「うう……」
左頬を押さえながら待合室へ戻ると、うにゅほが心配そうに立ち上がった。
「は、だいじょぶ?」
「いちおう、神経までは達してなかったみたい……」
「はやめにきて、よかったね」
虫歯と見るやすぐさま歯医者へ駆け込む癖がついたのは、うにゅほがいつもせっついてくれるおかげである。
「……歯磨き、おろそかにしてるつもりはないんだけどなあ」
「はみがきしたあと、たべるから……」
「食べたあとは、また歯磨きしてるぞ」
「うーん」
「飴も、最近は、あんまり舐めてないし……」
体質なのか、歯磨きが下手なのか。
ほとんど同じ生活を送っているうにゅほに虫歯が一本もないというのは、どうにも解せない。
「──…………」
ふと思った。
本当に、一本もないのか?
「いまなら他に患者もいない……」
「?」
「──先生! この子に虫歯がないか、ちょっと見てもらえませんか!」
「えー!」
いいよー、と快諾してもらえたので、うにゅほを診察室へ押し込んだ。

「見てもらえて、よかったな」
「うー……」
助手席でうにゅほが落ち込んでいる。
虫歯こそなかったものの、虫歯になりかけの歯が数本見つかったのだ。
「そのくらいなら、ブラッシングでなんとかなるって話だし」
「ドリル、されるかとおもった……」
「ちゃんと歯磨きすれば、されないよ」
「……◯◯も、ちゃんとはみがきしないと、だめだよ?」
「してるつもりなんだけどなあ……」
「わたしも……」
「歯磨きって、難しいな」
「うん……」
小学生でも知っていることを今更気づいた冬の夕刻だった。
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2015
11.25

うにゅほとの生活1458

2015年11月25日(水)

「はー……」
うにゅほが、両親の寝室から、白く染まった公園を見下ろしていた。
「飽きない?」
「うん」
飽きないらしい。
「ゆき、このままつもるかなあ」
「初雪は根雪にならないってのが、北国の常識だけどな」
「……?」
きょとんとした表情で、うにゅほがこちらを振り返る。
「はつゆきじゃないよ?」
「そうだっけ」
「まえ、ちょっとだけふった」
「……あー」
なるほど、言葉の食い違いがあるらしい。
「俺が初雪って言ってるのは、初積雪のことでな」
「はつせきせつ?」
「その冬で初めて雪が積もった日のこと」
「そなんだ」
「他にも、初冠雪なんてのもあるぞ」
「はつかんせつ……」
「山に、初めて雪が積もること」
「いろいろあるねえ」
「このへんまとめて初雪って言っちゃうから、わかりにくいんだよな」
うにゅほがうんうんと頷く。
「ねゆき、なるかなあ」
「ならないって」
「えー」
「毎年そうだろ。11月中に一度は積もるけど、すぐに解ける」
「だったかも……」
「雪なんて、必ず積もるんだ。すこし遅れてきたほうが、奥ゆかしくていいよ」
「あ、ことし、じょせつきかりるんだって」
「そんなこと言ってたな」
「ゆきかき、らくだよ」
「使い方、覚えないとな」
「うん」
文明の利器、除雪機。
どれほどの性能か、この目で確かめてやろう。
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2015
11.24

うにゅほとの生活1457

2015年11月24日(火)

「──…………」

声が聞こえた、気がした。


「……◯◯……──」

また、聞こえた。

「……ん?」
ゆっくりと目蓋を開く。
「◯◯、おきた……?」
「起きた」
自室のドアの隙間から、うにゅほが顔を覗かせていた。
「……もしかして、さっきから呼んでた?」
「うん……」
「なんでそんな遠くから?」
「おこしちゃいけないとおもって……」
「……?」
よくわからん。
上体を起こし、眼鏡を掛ける。
「◯◯、すごいよ」
「なにが?」
「そと!」
カーテンを開く。
「──……うわ」
そこに広がっていたのは、雪景色という言葉の具現。
しんしんと降り積もる牡丹雪だった。
「もしかして、これを見せたかったのか?」
「うん」
「でも、起こしちゃ悪いと思ったから、小声だったのか」
「うん……」
なるほど可愛い。
「……さぶ!」
もともと寒くはあったが、雪を見た途端にそれが際立った。
「はんてんきたほういいよ」
「そうする」
「くつしたも、はいたほういいよ」
「わかった」
「ストーブつけるね」
「ああ」
「きがえ、ストーブのまえおいとく?」
「ベルトが熱くなるから、ちょっと距離置いてな」
「はい」
「──…………」
「──……」
「××」
「うん」
「……いま、すごくテンション高い?」
「うへー……」
そうらしい。
「着替えたら、すこし外に出てみるか」
「うん!」
初雪だ。
手乗りサイズの雪だるまくらい、ひとつこしらえてみようかな。
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2015
11.23

うにゅほとの生活1456

2015年11月23日(月)

「──…………」
ぬくぬくとした布団を抜け出し、時刻を確認する。
午前八時。
「あ、おはよ」
「……おはよう」
「きょう、はやいね」
「あんまり眠れなくて」
「そかー……」
胃のあたりを撫でながら、腹具合を確認する。
「朝ごはん、ある?」
「ごはんないよ」
「……なにもない?」
「うん……」
仕方ない。
「コンビニ行ってくる」
「あ、わたしもいく」
「歩いていくか?」
「うん」
「なら、ちゃんとあったかくしないとな」
「うん」
コートを着込み、玄関を出る。
「──寒ッ!」
「さむいねー」
うにゅほが、はー、と白い息を吐く。
「ほら、水たまり凍ってる」
「ほんとだ!」
ぱり、ぱり。
俺たちの足元で、薄い氷が音を立てて割れる。
「ふゆきたねー」
「来ちゃったなあ」
「うへー……」
「××は、ほんと冬が好きだなあ」
「あきもすきだよ」
「夏は?」
「なつもすき」
「春」
「さくら、みたいねえ」
「……どの季節も好きなんだな」
「うん」
「嫌いな季節は?」
「うと……」
うにゅほが小首をかしげる。
「あめおおいのは、あんましすきじゃない」
「夏のちょっと前くらいかな」
「そうかも」
「雪は?」
「すき」
「吹雪は?」
「ふぶきは、すきじゃない……」
「吹雪が好きって人は、あんまりいないか」
「うん」
いまの季節を慈しみ、次の季節を待ち侘びる。
それはきっと、とても素敵なことだ。
そう思った。
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2015
11.22

うにゅほとの生活1455

2015年11月22日(日)

近所のスーパーで、六種のチーズアソートなるものを購入した。
それぞれのチーズについてレビューを記していく。

ゴーダチーズ
「……普通だな」
「ふつう」
「まあ、美味しいけどさ」
「くちのなか、ちょっとのこるねえ……」
「お茶が欲しいな」
「あ、わたしついでくる」
「ありがとう」

スモークプレーンチーズ
「おいしい」
「美味い」
「これ、おいしいねえ」
「やっぱ、スモークチーズはハズレないな」
「うん」
「なんのチーズをスモークしたものなのか、とんとわからないけど」
「プレーンチーズじゃないの?」
「プレーンチーズって、チーズの種類だったかな……」

パルメザンチーズ
「……臭くて、固くて、まずい」
「うん……」
「やっぱ、パルメザンは粉チーズにしないと駄目だな」
「こなチーズ、このチーズなの?」
「そうだよ」
「へえー」
「パルメザンが悪いと言うより、食べ方が合ってないんだろう」
「うん」

レッドチェダーチーズ
「あかい」
「赤、と言うか、オレンジだな」
「あじ、ふつうだね」
「特筆すべきことはないなあ」

ゴーダハーブチーズ
「さいしょのに、ハーブはいってるの?」
「そうだな」
「なんのハーブ?」
「わからん」
「ちょっといいにおい」
「味は、普通のゴーダチーズと変わらないな」

コルビージャックチーズ
「やわらかくて、おいしい」
「色も、白とオレンジが混ざり合ってて、なんか面白いな」
「スモークチーズのつぎにすき」
「パンに乗せてトースターで焼いたら美味そうじゃないか?」
「とろけるかな」
「とろけそうな感じするよな」

一緒に買ったさけるチーズ
「……やっぱ、これがいちばん美味いな」
「うん」

六種のチーズを味わうことで、さけるチーズの美味しさを再確認した初冬の午後だった。
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2015
11.21

うにゅほとの生活1454

2015年11月21日(土)

「……暇だなー」
「ひま」
「読書も飽きたな」
「どくしょのあき?」
「秋なんてとっくに終わってる気がするけど」
「ゆきつもったら、ふゆ」
「個人的な感覚だと、12月から3月までが冬だな」
「いまは、あき?」
「いまは初冬」
「しょとう」
「春、夏、秋、初冬、冬──なんかこう、しっくりこないか?」
「あー」
「本州だと、春と夏のあいだに梅雨が入るらしい」
「ほっかいどう、つゆないもんね」
「梅雨がなくて、冬も寒くなくて、雪も少なめの土地に行きたい……」
「あるかなあ」
「あ、虫がいないも追加で」
「さばくとか」
「日本がいいなあ」
「とっとりさきゅう」
「あそこ、広めの砂浜らしいぞ」
「えー」
「砂漠のイメージで行くと、がっかりするらしい」
「そなんだ……」
「まあ、引っ越すつもりなんて、毛頭ないけどさ」
「うん」
「寒いのも雪も好きじゃないけど、ないと冬って感じしないし」
「うんうん」
「年末年始、楽しみだな」
「おもち」
「ケーキも」
「◯◯のたんじょうび」
「弟の誕生日も忘れないように」
「あっ」
「まさか」
「なんちゃって」
「知ってた」
「だまされなかったかー」
「××が家族の誕生日を忘れるわけないもの」
「うん」
「コロの命日もな」
「……うん」
「ビーフジャーキー、お供えしような」
「うん」
冬は、イベントが目白押しだ。
楽しいことも、そうでないことも。
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2015
11.20

うにゅほとの生活1453

2015年11月20日(金)

「うう、眠い……」
「ひるねする?」
「いま寝ると、夜に地獄を見るからな……」
「さんじゅっぷんだけ、ねる」
「最後の手段だな」
「さいしょのしゅだんは?」
「××」
「はい」
「なんか、目の覚めることやってくれ」
「めのさめること……」
「デコピンとか、痛い系でもいいから」
「いたいの、しないよ」
だろうなあ。
「うと、じゃあ──」
うにゅほが俺の両頬に手を添えた。
「むにー」
引っ張られる。
「うにー……」
さらに引っ張られる。
「ぱ」
離す。
「どう?」
「──……あふ」
俺は、あくびを噛み殺した。
「だめかー」
「駄目だー」
「うーと」
ぺちぺち。
化粧水をつけるときのように、うにゅほが俺の頬を優しく叩く。
「……眠くなってきた」
「えー!」
「だって、なんか気持ちいいんだもの」
「きもちいの、だめ?」
「駄目じゃないけど、眠気は取れないなあ」
もっと強い刺激が欲しい。
「じゃ、あつくする」
ぎゅう。
「!」
うにゅほが俺を背中から抱き締めた。
「……ちょっと目が覚めた」
「やた」
「もう一押し」
「うと、えっと、じゃあ、おもくする」
「重く?」
「おんぶして」
「はいはい」
うにゅほを負ぶったまま立ち上がる。
「おもい?」
「軽い」
「ねむけは?」
「だいぶ覚めた」
「しばらくこのままね」
「……もしかして、おんぶしてほしいだけじゃないだろうな」
「うへー」
悪びれない。
うにゅほを負ぶったまま掃除などしていると、眠気はすっかり飛んでしまった。
運動にもなった。
これ、健康にいいのではないか。
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