2015
09.30

うにゅほとの生活1402

2015年9月30日(水)

「──…………」
闇に没した天井を、ぼやけた瞳で見つめ続ける。
「……くあ」
生あくび。
眠い。
だが、眠れない。
携帯で時刻を確認する。
午前四時二十分。
かれこれ二時間以上は布団のなかで悶々としていることになる。
「……あふ」
また、生あくび。
あくびばかりが出ていくが、目はギンギンに冴えている。
「──…………」
「……すう」
耳をそばだてると、うにゅほの寝息が聞こえてきた。
安眠である。
「はあ……」
なんとまあ、羨ましい。
上体を起こし、眼鏡を掛ける。
仕方ない、眠くなるまでネットでもしていよう。
ぎ。
俺の体重を受けたチェアが、ちいさく軋む。
「……ん」
うにゅほが声を上げた。
起こしてしまっただろうか。
「ん、んー……」
もぞもぞ。
「──……すう」
ディスプレイの脇からうにゅほの寝姿を覗くと、ちょうど寝返りを終えたところだった。
よかった。
俺の不眠にうにゅほを巻き込んでは、さすがに悪い。
「──…………」
だが、こうまで安眠の様子を見せつけられると、なんだかいたずらしたくなってくる。
しばし頭をひねったあと、携帯のアラームを六時にセットしておくことにした。
うにゅほの体内時計は強靭で、なにがあろうと午前六時前後には起床する。
実害なく、ちょっとだけ驚かせることができるだろう。
「……ふふ」
うにゅほの枕元に携帯をそっと置き、ほくそ笑む。
そして、五時過ぎにようやく就寝した俺は、午前六時を告げる携帯のアラームに叩き起こされたのだった。
馬鹿なのか。
スポンサーサイト
Comment:0  Trackback:0
2015
09.29

うにゅほとの生活1401

2015年9月29日(火)

遠雷。
「──…………」
また、遠雷。
「……かみなり、すごいねえ」
「ああ」
「さいきん、かみなり、おおいねえ」
「異常気象かな」
ぺら。
文庫本のページを繰る。
「ちゃんと隠しとかないと、雷様にへそ取られるぞ」
「へそ?」
うにゅほが両手でおなかを押さえる。
「なんか、きいたことある」
「昔からの言い伝えだな」
「へそ、とられたら、つるつるになるの?」
「……どうだろ」
「えぐられるの?」
「でべそなら、まあ、わかるけどな」
「でべそ……」
うにゅほが小首をかしげる。
「みたことない」
「俺もないなあ」
「ジャイアン、でべそ」
「でべその場合は、治るってことなのかな」
「さあー……」
「治るなら──」
そこまで口にしたときのことだった。

──カッ!

一瞬、視界が真っ白に染まり、

ドォン──……

数秒後、轟音と共に家が揺れた。

「ぴ!」
「うわ、近いな」
音は秒速340mだから、およそ1キロ先に雷が落ちた計算になる。
「なに、なに!」
うにゅほが俺の首根っこにしがみついた。
「だいじょぶ? だいじょぶ!?」
混乱している。
「だいほうふだって」
「……ほんと?」
「本当、本当」
この距離なら、たとえ火事が起きたとしても延焼はすまい。
うにゅほの頭を撫で、膝に導く。
「とにかく、落ち着きなさい」
「うん……」
膝の上のうにゅほがちいさく膝を抱える。
しばらくのあいだ、遠雷の音は鳴り止まなかった。
Comment:0  Trackback:0
2015
09.28

うにゅほとの生活1400

2015年9月28日(月)

「♪~」
「──……?」
マットレスに寄り掛かって読書をしていると、うにゅほが俺の右手で遊びはじめた。
ぱき。
ぺき。
自分の指は痛いから、俺の指を鳴らすのが楽しいらしい。
「人差し指は痛いから駄目な」
「はーい」
ぱき。
ぽき。
「ね、なによんでるの?」
「えーと、グレッグ・イーガンのディアスポラ」
「おもしろい?」
「わからん」
「わからないの?」
「面白いかどうか以前に、意味がわからん……」
「……おもしろい?」
「まあ、そこそこ」
まだ一割も読了していないけれど。
「ハードSFは、ほんと、わけわからんな」
「ふうん……」
ぺき。
「あ」
うにゅほが声を上げる。
「ひとさしゆび、つめながい!」
「どれ」
言われて右手を見ると、たしかに人差し指の爪だけが伸びていた。
「◯◯、ここだけせいちょうそくどが」
「いや、切り忘れたんじゃないかな」
「あ、そか……」
残念そうに頷き、立ち上がる。
「つめきっていい?」
「いいけど、深爪しないように頼む」
「はーい」
うにゅほに爪を切ってもらいながら読書をするという、贅沢なんだかなんなんだかわからない時間を過ごした。
左手の爪は、自分で切った。
Comment:0  Trackback:0
2015
09.27

うにゅほとの生活1399

2015年9月27日(日)

「ああ、日曜が終わっていく……」
「そだね」
「××はあんまり関係ないか」
「うん」
「蒟蒻畑食べる?」
「たべる」
「ぶどうとマスカット、どっちがいい」
「うと、ぶどう」
「ララクラッシュも美味いけど、俺は普通のほうがいいかな」
「わたしも」
「××、ずーっと口のなかで転がしてるの好きだよな」
「おいしい」
「まあ、なんか、気持ちはわかる」
「ゼリーすき」
「セブンの寒天ゼリー、買ってこないとなあ」
「みかんあじ、さいきんみないね」
「りんご味が出たせいで押し出されたんだろうけど、あれ不味いよな」
「なんか、にがい」
「ぶどう味はぶどう味で、薄いし」
「うん」
「牛乳寒天はどうしようかな」
「たべたいねえ」
「ついでに買ってこよう」
「ダイエットは?」
「あれ、ひとつ80kcalだし……」
「◯◯、あったらあるだけたべちゃうから……」
「反省してます」
「よろしい」
「ダイエットで食事制限してると、体調がいいんだよな」
「ぎゃくじゃないの?」
「いや、食べないほうが気分いいんだよ」
「おなかへらないの?」
「いや、減るんだけど、なんて言ったらいいのかな……」
「へんなの」
「普段から暴飲暴食してるってわけでもないんだけどなあ」
「でも、たべないとしぬ」
「それはそうなんだけど」
「きょくたんはだめだよ」
「……そうだな」
「なんかたべる」
「ビーフジャーキーでも買おうかな」
「びーふじゃーきー、たかい……」
「じゃあ、コストコ行ったとき買おう」
「あ、どくたーぺっぱー」
「一緒に買おうな」
「いついくの?」
「……俺、コストコの会員じゃないんだよな」
「おかあさん、かいいんだよ」
「じゃ、母さん行くときだな」
「うん」
こんな感じにだらけた一日だった。
Comment:0  Trackback:0
2015
09.26

うにゅほとの生活1398

2015年9月26日(土)

「──…………」
布団のなかからもそもそと手を伸ばし、携帯で時刻を確認する。
午後二時半。
かすかに重い頭を持て余しながら、ゆっくりと上体を起こす。
「あ、おきた」
「……おはようございます」
「おはようございます」
ぺこり。
「かぜ、だいじょぶ?」
「風邪ってほどじゃないと思うんだけど……」
事実、一昨日ほど体調は悪くない。※1
「……でも、いくらでも寝れるってことは、そういうことなのかもな」
「おだいじにしなくちゃだめだよ」
うにゅほが俺の肩を押し、再び横にさせる。
「──……あふぁ」
あくびがひとつ。
「でっかいくちだねえ」
くすくすとうにゅほが笑い声をこぼす。
「××の拳くらいなら、全部入ると思うぞ」
「おー」
「××の手、ちっちゃいからな」
「うーん」
うにゅほが握り拳を作って、言った。
「やっていい?」
「……駄目」
「えー」
「手、べっとべとになるぞ」
「うん」
「いや、うんじゃなくて……」
あ、わくわくしてる。
本気だ。
「……ほら、ばっちいし」
「てーあらってくる?」
「いや、口が、ほら、ばっちいだろ」
「そかな」
「そうそう」
「そんなのべつに──」
「ほら、あご外れたら困るし!」
「あー」
うにゅほがうんうんと頷く。
ようやっと納得してくれたようだ。
「やってみたかったなー……」
「何故そこまで」
「◯◯のくち、あったかそう」
「そんな理由で……」
うにゅほ、恐ろしい子。
風邪っぽさはいつの間にか失せていたが、油断はできない。
しばらくは気をつけて生活しよう。

※1 2015年9月24日(木)参照
Comment:0  Trackback:0
2015
09.25

うにゅほとの生活1397

2015年9月25日(金)

「◯◯、ざらめせんべいあった」
「食べる食べる」
「はい」
うにゅほからせんべいを一枚受け取り、包装を破る。
ザラメせんべいは、けっこう好きだ。
「いただきます」
「あ、わたしも」
「はいはい」
「いっせーのーで!」
うにゅほの合図に合わせ、ザラメせんべいに齧りつく。
ぱり。
「──……?」
かりかり。
「……甘くない?」
なんだか妙な風味だった。
「しょっぱい……?」
「いや、甘い。すっぱい。なんだこれ」
上半分を破り捨てた包装に目を落とす。
「梅ザラメ……」
「うめざらめ」
「甘じょっぱいものに更にすっぱいものを足しやがった!」
そりゃあ味覚も混乱するってものである。
「うと、あまじょっぱすっぱい?」
「甘じょっぱすっぱい、だな」
「はー……」
ぱり。
うにゅほがふたくちめを食べる。
「──すっぱ、あま、じょっぱい。すっぱい。うん」
うんうんと頷く。
「……美味いか?」
「おいし、く、は……ない?」
「美味しくないよなあ」
食べられないほど不味くもないが、普通のザラメせんべいを期待した舌にはそぐわない。
「……これ、コーヒーと一緒に食べたらどうなるかな」
「あま、じょっぱ、すっぱ、にがい?」
「うん」
「はー……」
うにゅほが目を白黒させる。
「まあ、コーヒーはないんだけど」
「あ、いちみとうがらし、かける?」
「甘じょっぱすっぱ辛いのか……」
それはなんか想像できるな。
「……まあ、食べものをおもちゃにするのもな」
「そだね」
あまり美味しくない梅ザラメせんべいを適当にたいらげたあと、口直しにかりんとうを食べた。
牛乳と一緒に食べるかりんとうは、美味い。
Comment:0  Trackback:0
2015
09.24

うにゅほとの生活1396

2015年9月24日(木)

「ぶー……」
鼻が詰まっている。
頭が重い。
肩が痛いし、目の奥も痛い。
「風邪っぽい……」
「……だいじょぶ?」
額にちいさな手が添えられる。
「ねつは──ある、ような、ないような……」
「……あっても微熱だろ」
そんな感じがする。
伊達に病気慣れはしていない。
「ま、季節の変わり目の軽い風邪だ。寝てれば治る」
「そか……」
うにゅほが、ほっと、表情を和らげる。
「あ、ますく」
「悪いけど、持ってきてくれるか」
「うん」
軽い風邪とはいえ、家族に伝染しては事である。
「はいこれ」
「……ありがとう」
うにゅほが持ってきてくれた使い捨てのサージカルマスクを装着し、マットレスの上で横になった。
「あいますく、いる?」
「いる……」
そこらに落ちていた愛用のアイマスクを拾い上げ、うにゅほがこちらへとにじり寄る。
「つけてあげる」
「いや──まあ、うん、好きにしてくれ」
目蓋を閉じたまま、頭をすこし持ち上げる。
ごそごそ。
「できた」
「──…………」
上下逆のような気がする。
でも、アイマスクの用途は完全に満たしているので、問題ないと言えば問題ない。
細かいことを気にしている余裕がないとも言える。
「……じゃ、寝るから」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
うにゅほが部屋を後にするのと音で確認し、アイマスクの位置をすこし直してから、ゆっくりと眠りについた。
起きたら風邪はよくなっていた。
Comment:0  Trackback:0
2015
09.23

うにゅほとの生活1395

2015年9月23日(水)

両親が旅行から帰宅した。
おみやげの小布施堂の栗鹿の子をふたりでつついていると、母親が尋ねてきた。
「留守中、変わったことなかった?」
うにゅほと顔を見合わせる。
「なかったよなあ」
「うん」
「それならいいけど……」
いくらかは心配してくれていたらしい。
「××がいたから、食事面でも困らなかったし」
「うへー……」
うにゅほが照れる。
「××も、もう、一人前ねえ」
「そうだなー」
「うへえー……」
うにゅほが、両手でほっぺたを包み、くねくねする。
とても照れているらしい。
「どこにお嫁に出しても恥ずかしくないわねー」
「──…………」
ぴた。
うにゅほの動きが止まる。
「およめ……」
そして、不安げな瞳で俺を見上げた。
「あー、いらんいらん。お嫁になんて行かなくていいぞ」
「ほんと?」
「ずっとうちにいなさい」
「はい」
こくりと頷く。
母親が、苦笑しながら言った。
「……◯◯、責任取って××を養いなさいよ」
「はいはい」
そのつもりだ。
誰が嫁になんて出すものか。
「──…………」
「──……」
うにゅほと目が合った。
「……うへー」
にへら、と笑う。
その笑顔が可愛かったので、うにゅほの頭を撫でくりまわしてやった。
Comment:0  Trackback:0
2015
09.22

うにゅほとの生活1394

2015年9月22日(火)

「──晴れた!」
「わー!」
うにゅほとハイタッチを交わす。
「よし、九時には出るぞ。準備しろ!」
「はーい!」
外出用のポシェットを肩に提げながら、うにゅほが尋ねた。
「ね、どこいくの?」
「ニセコだよ」
「にせこ」
「ニセコの牧場に、ソフトクリームを食べに行くんだ」
小樽、余市を経由し、国道5号線に沿ってひたすら南下していくと、二時間ほどで左手に富士山に似た山が見えてくる。
「ほら、あれが羊蹄山だ」
「ようていざん?」
「あー、頂上に雲かかってるな……」
「しゃしんとっていい?」
「おう、撮れ撮れ」
ウインカーを出し、停車する。
うにゅほは、友人から貰ったデジカメがお気に入りらしく、適当な被写体を見つけては事あるごとにシャッターを切っていた。
「ぼくじょう、とおいねえ」
「そろそろだと思うけど……」
ニセコの高橋牧場に辿り着いたのは、十二時ちょうどのことだった。
「うあー……」
周辺をぐるりと見渡し、うにゅほが俺の袖を引いた。
「こんでる……」
「シルバーウィークだからなあ」
混んでいるのは予想していたが、ソフトクリームを買うのに十分以上も並ぶとは思わなかった。
「うへー」
純白のソフトクリームを片手に、うにゅほが期待に満ちた笑みを浮かべる。
「いっせーのーで、ね」
「いっせーのーで?」
「いっせーのーで、で、たべる」
「はいはい」
よくわからないが、それくらいならいくらでも付き合おう。
「──いっせーのー、で!」
うにゅほの合図と共に、自分のソフトクリームにかぶりつく。
「あ、美味い」
「ほいひいねえ!」
「さすが、牧場のソフトクリームって感じだな」
「うん!」
普通のソフトクリームより甘さは控えめなのに、コクが強く、後味はさっぱりしている。
「シュークリームも食べるか」
「たべる!」
「チーズケーキも売ってるから、これはおみやげにしよう」
「そだね」
干し草のロールベールや農業機械などをパシャパシャと撮影し、高橋牧場を後にした。
帰り際、
「──あ、ようていざん!」
「おー、雲、晴れてるじゃん」
「しゃしんとっていい?」
「ああ」
道路の端に停車し、車を下りる。
ミラジーノのボンネットに寄り掛かりながら、尋ねた。
「……来てよかったか?」
パシャパシャと羊蹄山を撮影しながら、うにゅほが答えた。
「うん!」
なら、よかった。
ちなみに、うにゅほの撮影した写真は、デジカメの設定が悪かったのか、ほとんどが真っ白でなにも写っていなかった。
うにゅほががっかりしていたが、有意義な一日であったことに変わりはない。
今度は、デジカメの設定を確かめて、紅葉の綺麗な場所にでも赴くことにしよう。
Comment:0  Trackback:0
2015
09.21

うにゅほとの生活1393

2015年9月21日(月)

しとしと、しとしと。
窓の外の景色が雨に煙っている。
「あめだねえ……」
「雨だな」
「きょうにしなくて、よかったね」
「ほんとだな」
本来であれば、今日、うにゅほと一緒に小旅行へと出かける予定だった。※1
予備日を取っておいて正解だ。
「あした、たのしみだねえ」
「ああ」
「ね、ね、どこいくの?」
「どこがいい?」
「決まってないの?」
「いちおう決めてはいるけど、行きたい場所があれば、そっち優先するぞ」
「うと……」
しばし思案し、
「……おもいつかない」
うへーと笑う。
だろうと思った。
「ま、宗谷岬とか言われても困るしな」
「そうやみさき?」
「北海道──というか、日本の最北端だな」
「あ、いきたい!」
「……本当に?」
にやりと笑みを浮かべてみせる。
「う?」
うにゅほが小首をかしげた。
「去年の十一月ごろ、増毛町に行ったのは覚えてるか?」※2
「おすしと、いくらどん?」
「そうそう」
「おぼえてる」
「あそこまで、だいたい百キロくらい」
「はー……」
「片道二時間半くらいかかったよな」
「うん、つかれた」
「宗谷岬は三百キロ」
「──…………」
うにゅほが絶句する。
「……ほっかいどう、ひろすぎる」
「本当だよな……」
うんうんと頷き合う。
「ま、今回も、片道百キロくらいで考えてるから」
「そか」
「夕方には帰る腹積もり」
「たのしみ」
うへーと笑う。
明日こそは晴れてほしいものである。

※1 2015年9月5日(土)参照
※2 2014年11月12日(水)参照
Comment:0  Trackback:0
back-to-top