2015
06.30

うにゅほとの生活1310

2015年6月29日(月)
2015年6月30日(火)

「と、いうわけで、ポリープを切除して参りました」
「──…………」
「──……」
「……おなか、いたくない?」
「大丈夫」
大腸に痛覚はない。
「ん」
待合室で待っていてくれたうにゅほから入院セット一式を受け取る。
「このあと、点滴だって」
「うん」
「暇だから、話し相手になってくれな」
「……うん!」
点滴をし、夕食をとり、病室の狭いサイドテーブルでなんとか仕事を済ませたあと、母親がうにゅほを迎えに来た。
「──……暇だ」
うにゅほが帰ってからが退屈だった。
持ち込んだハードカバーに目を通したり、iPadで動画などを見るうち、ようやく消灯時間がやってきた。
しかし、午後九時に眠れるはずがない。
悶々と一夜を過ごしたあと、朝食の流動食を無理矢理に流し込み、午前九時に退院した。
「ただい──」
「おかえり!」
玄関の扉を開くと、既にうにゅほが待機していた。
「……ただいま」
自分を待っていてくれる人がいる。
その事実が、如何に心を暖かくしてくれるものか。
「弟は?」
「たぶんねてる」
あのやろう。
いや、そっちが普通か。
「……はー、休むための入院なのに、余計に疲れたよ」
「なんでにゅういんだったの?」
「経過観察だよ。焼き切るから問題はないんだけど、たまに出血する人がいるから」
「ふうん……」
「××は、どうだった?」
「?」
「寂しかった?」
「さみしかった」
「よーしよしよし!」
「うへー……」
髪の毛がぐちゃぐちゃになるまで、うにゅほの頭を撫でる。
「さて、部屋戻るかー」
「うん!」
荷物を片付け、自室へ戻る。
PCの電源を入れたとき、異常に気がついた。
「……ネットに繋がらない」
「いんたーねっと?」
「あれ、なんでだ」
原因を調べたところ、どうやらマザーボードのLANポートが認識されていないらしい。
「なんでだー!」
「つながんないの?」
「繋がらない……」
「はー」
「最悪、Wi-Fiの受信機を買ってきて──」
などと考えながら幾度目かの再起動を行うと、繋がった。
「なんでだー!」
「つながった?」
「繋がった……」
ばたんとマットレスに倒れ込む。
「……疲れた。ちょっと寝る」
「うん」
そろそろ新しいPCを買うべきなのかもしれない。
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2015
06.28

うにゅほとの生活1309

2015年6月28日(日)

「うう……」
ちいさくうめき声を上げながら、胃のあたりを撫でさする。
食事制限のおかげで空腹だった。
「……◯◯、あした、けんさ?」
「そう」
「おしりの……」
「おしりと言うか、大腸内視鏡な」
ポリープのできやすい体質である俺は、二年に一度の大腸内視鏡検査を義務づけられている。
「おしりじゃないの?」
「いや、まあ、肛門から入れるのはそうなんだけど……」
「う」
無意識にか、うにゅほが両手でおしりを隠す。
「◯◯、また、にゅういんするの?」
「ポリープが見つかったらな」
「──…………」
「でも、入院たって一泊二日だから」
「うん……」
うにゅほの寂しがりは、いつまで経っても治らない。
嬉しいような、困るような。
「それに、お見舞いに来てくれるんだろ?」
「うん」
「というか、ずっといるんだろ?」
「うん」
「じゃあ、寝るときいないだけじゃないか」
「あさもいない」
まあ、そうだけど。
「朝なんてだいたい寝てるだろ、俺」
「うん……」
「大丈夫、大丈夫」
「──…………」
「──……」
雰囲気が重い。
「……と言うか、まだ入院するって決まったわけじゃないからね」
「そだけど……」
うにゅほが再びおしりを押さえる。
「◯◯、ないしきょうだけでもたいへんなのに……」
「──…………」
ああ、そうか。
単に寂しがっているだけではなく、俺の心配をしてくれていたのか。
「大丈夫だよ、慣れてるから」
「なれてるの?」
「……変な意味じゃないぞ」
「へんないみ?」
あ、余計なこと言った。
「大腸内視鏡もこれで三回目だからな。いいかげん慣れもする」
「そか」
「だから、大丈夫」
「……うん」
うにゅほの表情が、すこしだけ明るくなった。
ポリープさえ見つからなければ、なんの問題もないのだけれど。
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2015
06.27

うにゅほとの生活1308

2015年6月27日(土)

「◯◯、りょうてだしてー」
「両手?」
うにゅほの眼前に両手を伸ばす。
「くっつけてー」
「ああ」
手のひらを合わせる。
「がちょん」
と、両手首を軽く握られた。
「てじょう」
「──…………」
しばし思案し、
「……つまり、いま、手錠をされたってこと?」
「そう」
なるほど、そういう遊びか。
「ガシャーン!」
「!」
両手を思いきり離す。
「手錠破り!」
「なし、なし」
「駄目なのか」
「だめ」
駄目らしい。
「がちょん!」
今度は後ろ手に手錠を掛けられてしまった。
「うへー」
「──…………」
「──……」
「……?」
満足そうなうにゅほを前にして、ふと疑問が湧いた。
「手錠を掛けて、なにかしたいことがあったんじゃないの?」
「ううん」
ふるふると首を横に振る。
「特にないのか……」
「うん」
ノープランにも程がある。
「やめろー! 手錠を外せー!」
「だめ」
「このままじゃトイレにも行けないだろー!」
「あ、といれいきたい?」
「いやまだ」
「じゃ、だめー」
「くそー」
楽しそうである。
「◯◯、すわって」
「はいはい」
両手を後ろに回したまま、ソファに座る。
「いっしょにほんをよみましょう」
そう言って、うにゅほが俺の膝の上に腰を下ろした。
慣れ親しんだやわらかな重み。
「なに読むんだ?」
「うーとね、サイダーのひみつ」
「サイダーってたしか、平野水っていう鉱泉──」
「ねたばれだめ」
「はい」
窘められてしまった。
やはり、学研のまんがでよくわかるシリーズは面白い。
俺ですら面白いと思うのだから、うにゅほにとってはもっと面白いはずだ。
図書館にあるぶんは、全部読んでしまおう。
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2015
06.27

[新曲] ワインカプセル/人工モノクローム

Category: 未分類

ワインカプセル powered by ピアプロ
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2015
06.26

うにゅほとの生活1307

2015年6月26日(金)

ドライアイ用の目薬が切れかけていたこともあり、新しい目薬を購入した。
「ろーと、ごーるどよんじゅう」
「そう」
「なにがよんじゅう?」
「説明書に書いてないか?」
「うーと……」
うにゅほが、取扱説明書に視線を落とす。
「かいてない」
「本当?」
「……あ、かいてた」
「だろ」
「こうおんのばしょ、かっこ、よんじゅうどいじょう、にほうちしないでください」
「それ違う」
「ちがうねえ」
結局、明記されていなかった。
有効成分の数か、対象年齢か、どちらかだと思われる。
「××、もう目はかゆくない?」
「うん」
「でも、いちおうさしとこうな」
「はい」
うにゅほが、ソファに腰を下ろしたまま、背筋を伸ばすように天井を見上げた。
さして、ということである。
うにゅほの傍に歩み寄り、そっと目蓋を押し開く。
「いくぞー」
「はい」
ぽた。
「う!」
点眼した瞬間、うにゅほが激しくまばたきを始めた。
「すーすーする!」
「あ、これすーすーするやつだったか」
「うー……」
「すまん、確認しなかった」
清涼感の少ない目薬ばかり買っていたためか、いつしかそれが当たり前になっていたらしい。
「……あ、でも、すーすーする」
「うん?」
「すごいすーすーのあと、きもちいすーすーする」
語彙が足りない。
「さしたあとは、気持ちいいのか?」
「うん」
「なら、悪くなかったかな」
「うん」
気を遣われたような気もするけど。
「あとは、自分でさせるようになればな」
「うーん……」
うにゅほが小首をかしげる。
いまのところ、そのつもりはなさそうである。
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2015
06.25

うにゅほとの生活1306

2015年6月25日(木)

「うー……」
うにゅほがくしくしと目元をこする。
「めーかゆい……」
「こすり過ぎると、痛くなるぞ」
「でも」
「でもじゃなくて」
「はい」
「ほら、見せて」
「むい」
うにゅほの顎を持ち上げて、左の目蓋を上下に開く。
「赤いなあ」
「かゆい」
「まつげ──じゃ、ないな。なんでかゆいんだろう」
「わかんない……」
「目薬さしとこうな」
「うん」
「自分でさせるか?」
「……やってほしい」
うへー、と照れくさそうに笑う。
以前はなんでも自分でやりたがっていたように思うが、最近では素直に甘えることのほうが多くなってきた。
「さすぞー」
「うん」
ぽた。
「う」
「ぱちぱちして」
「はい」
うにゅほが目をしばたたかせる。
「どうだ?」
「きもちい」
ドライアイ用の目薬だけど、大丈夫だろう。
「目を開けてると痛いんだと思うから、目ー閉じて横になってな」
「はい」
目蓋を下ろしたまま手探りで枕を探し、ソファに横になる。
「閉じても痛いなら、氷にハンカチ巻いて持ってくるけど……」
「うん、だいじょぶ」
「そっか」
なら、よかった。
「ほんと、なんでかゆかったんだ?」
「うと──」
しばし黙考し、
「……わかんない」
「わかんないか」
そんなもんだろう。
綺麗好きのうにゅほのことだから、汚い手で目元に触れたわけではあるまい。
アレルギーかもしれないし、続くようなら対処を考えなければ。
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2015
06.24

うにゅほとの生活1305

2015年6月24日(水)

「あ、あーあー、あ、え、い、う、え、お、あ、お」
「あ、え、い、う、え、お、あ、お?」
「か、け、き、く、け、こ、か、こ」
「か、け、き、く、け、こ、か、こ」
声がかすれているような気がしたので、軽い発声練習をしてみた。
「は、へ、ひ、ふ、へ、ほ、は、ほ」
「は、へ、ひ、ふ、へ、ほ、は、ほ」
「ま、め、み、む──」
「ま、め、む?」
ふと、あることを思いついた。
「まみむめも」
「まみむめも」
「××、唇を合わさずにまみむめもって言える?」
「くちびる?」
「そう」
うにゅほが怪訝そうに口を開く。
「うあ、に、う、え、の……」
「ま!」
「あ!」
「み!」
「んぃ!」
「言えてない」
「いえない!」
驚愕の表情を浮かべ、こちらを見返す。
「なんで?」
「いや、なんでかは俺もよく知らないけど」
「◯◯もしらないの?」
「知らないけど、バ行とパ行も同じだってことは知ってる」
「ば?」
「ば」
「うぁ」
「ぱ」
「んぁ」
「な?」
「いえない!」
「不思議だな」
「ふしぎ……」
うんうんと深く頷きながら、うにゅほが不思議に浸っている。
「なにぬねのはいえるのにねえ……」
「ナ行は、舌を上顎につけないと発音できないぞ」
「うわあご?」
「そう」
「あ、んに、ん、え、お、いえない!」
「不思議だな」
「ふしぎ……」
面白い。
発声練習は途中で止まってしまったが、うにゅほが楽しそうなのでよしとした。
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2015
06.23

うにゅほとの生活1304

2015年6月23日(火)

「──……ぶー」
枕に顔を突っ伏したまま、頼りない呼吸を繰り返す。
雨の日は苦手だ。
「◯◯……」
うにゅほの指が俺の寝癖をくしけずる。
「◯◯、だいじょぶ?」
「……ふーぶっふ」
「?」
「大丈夫」
枕から顔を上げ、ごろんと仰向けになる。
「仕事の時間までには、なんとか」
「うん……」
うにゅほの視線から逃げるように、そっと目を閉じた。
心配をかけてしまっている。
ここしばらくは体調がよかったから、余計だろう。
「ねる?」
「寝ようかな」
「これ、あいますく……」
「ありがとう」
手渡されたアイマスクを着けると、世界が真っ暗になった。
落ち着く。
「さむい?」
「ちょっとだけ」
「タオルケット、おなかまでかけるね」
「ああ」
「おなかこわしたらね、だめだから」
「うん」
「あ、おちゃのペットボトル、まくらもとにおいとくね」
「わかった」
ああ、俺はいま、甘やかされている。
「◯◯、ねれる?」
「うん」
「──…………」
「──……」
「あ、わたし、うるさい?」
「うるさくないよ」
「ほんと?」
「本当」
「──…………」
「──……」
ぺら。
ページを繰る音。
あたたかな気配に口元をほころばせるうち、意識が徐々に滑り落ちていった。
誰かが傍にいる。
それだけで、安心して眠ることができる。
自分は恵まれているな、と思った。
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2015
06.22

うにゅほとの生活1303

2015年6月22日(月)

ヨドバシカメラでリビング用のシーリングライトを購入し、オーディオコーナーへと立ち寄った。
「いやほんかうの?」
「いいのがあったらなー」
「あいふぉんのやつ、こわれたもんね」
「ああ……」
iPhone用のカナル型イヤホンが、片側からしか鳴らなくなってしまったのだ。
適当なイヤホンを手に取り、うにゅほが呟く。
「たくさんあるねえ」
「たくさんあっても意味ないんだけどな」
「?」
「ここにあるイヤホン、ほとんどY字型なんだよ」
「……わい?」
「右耳と左耳のケーブルが同じ長さのイヤホンのこと」
「おなじなの?」
「同じなの」
「へんなの」
うにゅほが小首をかしげる。
「ふつう、かたっぽながいのに」
「……うん」
深々と頷く。
「片方が長いのはU字型って言うんだけどさ」
「ゆう」
「実を言うと、こっちのが珍しいんだよな」
「え!」
うちにあるイヤホンはすべてU字型だから、勘違いするのも仕方ない。
「へんなの……」
「変だよなあ」
「うん」
「××みたいにロングヘアだと、首の後ろに回さないから、あんまり関係ないと思うけどさ」
「◯◯、はずしたとき、くびにひっかけてるよね」
「そうそう」
それがU字型ケーブルの最大のメリットである。
というか、それができないのが、Y字型ケーブルの最大のデメリットだと思う。
「なんでU型が淘汰されつつあるのか、それがわからない……」
音質なんて絶対に大差ないのに。
「へんだねえ」
「変なんだよ」
変だ変だと言い合いながらヨドバシカメラを後にし、帰りしなに寄ったケーズデンキでオーディオテクニカのATH-CK505Mを購入した。
オーディオテクニカが最後の砦だ。
なんとか生産し続けてほしいものである。
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2015
06.21

うにゅほとの生活1302

2015年6月21日(日)

「──かーッ、美味い!」
昼間からビールをあおる父親を前に、うにゅほと目配せを交わす。
父の日ということで、ヱビスビール1ケースを折半して贈ったのだった。
「◯◯、お前も飲むか」
「俺はいい」
「お前はほんッと、子供舌だな!」
余計なお世話である。
「ちゃめ、ちゃめ来い! ひとくち飲んでみ」※1
「わたし?」
「未成年に勧めるなって」
「舐めるくらいいいだろー!」
「いいの?」
「──…………」
よくはないが、当のうにゅほがビールの味に興味津々である。
「ノンアルコールビール、飲んだことあるだろ。あれと同じだよ」
「◯◯、わかってねーな! ぜんぜん違う!」
違うらしい。
「ほれ、飲んでみ」
「うん」
グラスに注がれたビールにそっと口をつけ、
「──ッ!」
瞬間、うにゅほが固まった。
ジブリ作品であれば、背中まであるロングヘアがぶわっと逆立ったに違いない。
「にぎゃ、が、すっぱ!」
「わはははは!」
「言わんこっちゃない……」
台所で水を汲み、うにゅほに手渡す。
慌ててコップを傾けるうにゅほを尻目に、父親が口を開いた。
「大人の味には、ちょーっと早かったな」
「けほ、けほ!」
「……大人とか関係あんのかな」
大人になると苦味に強くなるのは、味蕾の数が減っていくからだ。
しかし、ビールは苦いだけではない。
要は好みと慣れの問題であって、大人かどうかは無関係のように思う。
「……もうのまない」
「それがいい」
「はっはっは!」
とりあえず、父親が喜んでくれたことについては、よかった。
父の日なので、それ以外のことは脇に置いておこう。

※1 父親はうにゅほのことを「ちゃめ」と呼ぶ。
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