2014
09.30

うにゅほとの生活1038

2014年9月30日(火)

「──◯◯!」
「んー?」
ぼんやり動画サイトを眺めていると、うにゅほがぱたんと漫画を閉じた。
「おねがいききあいっこしよ!」
「聞きあいっこ?」
「うん」
「いま漫画で読んだから?」
「うん」
照れも悪びれもしない。
「……まあいいけど、順番じゃつまらないから、じゃんけんで買ったほうが好きに命令できるようにしようか」
「いいねー」
俺とうにゅほの間柄だから、そんなハードな命令は出てこない。
暇つぶしくらいにはなるだろう。

「「じゃーん、けーん、ほっ!」」

「勝った」
「まけたー」
「んじゃま、とりあえず肩を揉んでもらいましょうか」
「はーい」
うにゅほに背中を向ける。
親指に力の込もっていない、挟むようなマッサージ。
効かないが、なんとなく心地いい。
「そろそろいいよ」
「じゃ、つぎ!」

「「じゃーん、けーん、ほいっ!」」

「あ、勝った」
「まけたー……」
「よし、今度は儂の腕を揉むがよい」
「ははー」
腱鞘炎でもなんでもないが、とりあえず揉んでもらう。
「きもちいい?」
「なんか王様にでもなった気分だ」
「いいなー」

「「じゃーんけーん、ほい!」」

「……勝った」
「まけた」
命令を思いつかないときに限って、こうして勝ってしまう。
マーフィーの法則だろうか。
「なんか悪いな」
「まけてもたのしいよ」
「そっか」
マッサージばかり、というのもつまらない。
「じゃあ、寒いから俺の膝に座って湯たんぽになりなさい」
「はい!」
チェアを引くと、うにゅほが俺の上に腰掛けた。
あたたかい。
そろそろストーブを出すべきだろうか。
「どうですかー」
「あったかいですよー」
うにゅほの肩にあごを乗せて、くつろぐ。
お願い聞きあいっこは、そのままなんとなく終わりを迎えたのだった。
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2014
09.29

うにゅほとの生活1037

2014年9月29日(月)

近所に新しくコンビニができたので、散歩がてら行ってみることにした。
「──って、近!」
「ちかいねー」
五分ほど歩いただけで、もう着いてしまった。
近いのは知っていたのだが、思っていた以上に散歩にならない。
「あ、いりぐちふたつある!」
「本当だ」
店内が広めとは言え、出入口をふたつ設置するほどではない。
よくわからないが、あって困るものでも──
「……いや、二人組のコンビニ強盗が別々の出入口から逃げたとき、困るな」
「そだねえ」
そんな特殊な状況にまで対応しようとすれば、それこそきりがないけれど。
お菓子を何点かと今週のジャンプを購入し、
「──…………」
「──…………」
視線で示し合わせて、別々の出入口から外へ出てみた。
「……意味ないな」
「いみないいみない」
ふたりで苦笑する。
そのまま帰宅すると、やはり歩き足りない気分だった。
「近いのはいいんだけど、散歩のついでには向かないなあ」
「ぐるってまわる?」
「いや、ジャンプ買っちゃったしな。はやく読もう」
「そだね」
「あ、ワールドトリガーのアニメ、もうすぐだって」
「おー」
なんやかやと言いながらも、コンビニが近いのは悪いことではない。
ありがたく利用させてもらおう。
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2014
09.28

うにゅほとの生活1036

2014年9月28日(日)

「……ーぷ」
「んー?」
おやつのミルクレープに舌鼓を打っていると、神妙な顔でうにゅほが呟いた。
「れーぷって、なに?」
「あー……」
苦笑する。
以前は俺も、同じ勘違いをしていたものだ。
「ミルク・レープ、じゃないんだよ」
「ちがうの?」
「ミル・クレープ」
「クレープなの?」
「クレープの一種、ということになるな」
「くれーぷ……」
ぺら。
うにゅほが、フォークの先でクレープを一枚めくった。
「それ、クレープ生地らしい」
「そうなんだ……」
へえー、と頷く。
「みる、は?」
「ミルのほうは、たぶん、ミルフィーユと同じだよなあ」
あれも、パイ生地を重ねたお菓子だし。
「たぶん、重ねるとか、重ねたとか、そういう意味なんじゃないか」
推測だが、そう遠くあるまい。
「じゃあ……」
うにゅほが立ち上がり、
ぼふ、
と、俺の背中に負ぶさった。
人肌。
ほっとするあたたかさと、どきりとするやわらかさ。
「これ、みる?」
「ちょっと待って、いま携帯で調べるから──」
iPhoneで検索をかけたところ、ミルクレープのミルとは「千枚の」という意味らしかった。
「……あと998人足りないな」
「あー」
「でも、ミルクレープだって千枚ないし、いいんじゃないか?」
「みる、なに?」
「ミル……、ヒューマン? ヒューマンは英語か」
「みる、◯◯とわたし?」
「……それでいいや」
「うへー」
うにゅほの笑い声がくすぐったかった。
「ところで、残りのミルクレープはもらっていいのか?」
「だめだめー」
穏やかな秋の陽射しを感じながら、理由もなくふたりでじゃれあっていた。
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2014
09.27

うにゅほとの生活1035

2014年9月27日(土)

「……邪魔くさいな、扇風機」
九月も終わりが近づき、暑さより肌寒さを感じるようになったこの頃、扇風機の役目は終わったように思う。
「そだねー」
「今年は冷夏だったから、あまり使った記憶がない」
「だれ?」
「誰?」
「れいか」
「冷たい夏、と書いて、冷夏」
「へえー」
うにゅほが、うんうんと頷いた。
「なんかこう、片付ける前に有効活用したいよな」
「なにする?」
「いや、まったくもってノープランだけど……」
しばしふたりで考え込む。
「……うと、ラーメンさます?」
「──…………」
壁掛け時計を見上げる。
午後二時。
お昼ごはんは、とうに済んでいる。
「あれだ、ププッピドゥごっこ」
「ぷぷっぴどう?」
「有名だけど、××は知らないかな。
 マリリン・モンローって女優が、地下鉄の通気口から吹き出る風でスカートを──」
「あっ」
「知ってる?」
「うー……、と?」
「知らないか」
「スカートおさえるやつ?」
「そうそう」
世代関係なく有名なシーンである。
うにゅほも、テレビかなにかで見たことがあったのだろう。
「でもきょうスカートじゃない」
「そうなんだよな……」
「スカートはく?」
「そこまでするネタではない気がするな」
単なる思いつきだし。
「わーれーわーれーはー、は?」
「あれは、出したときにやっただろ」
「そだね」
というわけで、特になにをするでもなく、扇風機はごく普通に片付けられたのだった。
さよなら扇風機、また来年。
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2014
09.26

うにゅほとの生活1034

2014年9月26日(金)

「──なまむぎなまごめなまままも! いえた!」
「言えてない」
「えー……」
うにゅほが不満の声を漏らす。
「はい、生麦」
「なまむぎ」
「生米」
「なまごめ」
「生卵」
「なまたまご」
「生麦、生米」
「なまむぎ、なまごめ」
「生米、生卵」
「なまごめ、なまたまご」
「はい、深呼吸!」
「すー……、はー……」
幾度か深呼吸をして、
「はい、生麦生米生卵!」
「なまぐみなっ、」
「──…………」
「──…………」
「気を取り直して、生麦生米生卵!」
「なまぐみなまごめなまたまご! いえた!」
「言えてない」
「えー……」
「今度は、なまぐみループにはまり込んだみたいだな」
「なまむぎ」
「生グミって、生キャラメルみたいなものかな」
「おいしそう」
「生麦生米生卵!」
不意をついてみた。
「まっ、なまむぎなまごめなまたまご!」
「お、言えた」
「いえた!」
一瞬危なかったが、なんとか耐えた。
「やた!」
「よしよし」
「うへー……」
うにゅほの頭をぐりぐりと撫でる。
嬉しそうだ。
「つぎ!」
「はいはい」
「◯◯いえないの、ないの?」
「あるぞ」
「どれ?」
「えーと……、これ、一度も言えたことないかな」
「うらのたてだきかけたててててた」
裏の、までしか合っていない。
「裏の、竹垣、誰、竹、立てかけた」
「はやく」
「……裏のたてだきかけたててかけちゃ!」
裏の、までしか合っていなかった。
「これいえたらすごい?」
「俺はすごいと思う」
「よーし……」
そんな具合に早口言葉で遊んでいた。
ちなみに「裏の竹垣 誰 竹 立てかけた」は、練習したところ数分で言えるようになった。
うにゅほに関しては、まあ、お察しください。
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2014
09.25

うにゅほとの生活1033

2014年9月25日(木)

「──……ね……」
購入したばかりのヘッドホンで音楽を聞いていると、うにゅほが俺に話し掛けたようだった。
「ん?」
再生を止め、ヘッドホンを外す。
「おと、いい?」
「よくわからんけど、いいんじゃないかな」
「よくわからんの?」
「オーディオマニアじゃないから」
特にこだわりはない。
「でも、違いはわかるよ」
「ほー」
「密閉型だから周囲の音が気にならないし、いままで聞こえなかった音が聞こえる」
「ふうん……」
ピンと来ないらしい。
「試しに、なにか聞いてみるか?」
「うん、ききたい」
「よし」
ヘッドホンを外し、うにゅほに──
「──…………」
うにゅほに、まず、耳掛け型イヤホンを手渡した。
「?」
「聞き比べ」
「あー」
マイミュージックを開き、適当にMr.Childrenを再生する。
そのあいだに、スライダーでヘッドバンドの長さを調節することにした。
頭の大きさが違いすぎて、いっそ笑えてくる。
サビが終わるのを待ち、停止した。
「どうだ?」
「いいきょく」
それは、名もなき詩への感想だろう。
「それじゃ、次はヘッドホンな」
微調整を加えながら、うにゅほの耳にヘッドホンを装着する。
「つけ心地はどうだ?」
「ふけごち?」
「つけ心地」
「つけごこち」
どうやら大丈夫そうだ。
「再生するぞー」
「はい」
AIMPの再生ボタンを押した瞬間、
「──わ!」
うにゅほが慌ててヘッドホンを外し、声を荒らげた。
「うるさい!」
「あー、うるさいか」
音量は変わっていないはずだが、密閉型だからそう感じたのだと思う。
そもそも、うにゅほにとって音楽とは、あらゆる場面でなんとなく流れているBGM以上の存在ではないのだろう。
ジブリの曲は好きだが、それはジブリ映画ありきのものであり、好きなアーティストも特にいない。
そもそも興味が薄いのだ。
俺も、人のことは言えないけれど。
「……みみ、わるくなるよ?」
「そうだなあ」
心配されてしまった。
ヘッドホン難聴というものがあるらしいので、いちおう気をつけておこう。
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2014
09.24

うにゅほとの生活1032

2014年9月24日(水)

「なな──……、えっ?」
「現在、7.120ポイント貯まっておられますね」
「──…………」
ヤマダ電機の店員の言葉に、思わずうにゅほと顔を見合わせた。
「あ、ちょっと、ちょっと待ってください。ちょっと相談しますので」
「はあ……」
父親に頼まれたiPhone用液晶保護フィルムを手に取り、いったんレジから距離をとった。
「××、××! 7,120ポイントだって」
「ななせんえん?」
「端的に言えばな。でも、なんでそんなに貯まってるんだ……?」
ポイントカードに印字された文章を読み上げる。
「サービス強化のため、新カード発行予定。ポイントは印字されません──」
だから、ポイントが貯まっていることに気がつかなかったのだ。
「シブチンのヤマダ電機で7,000ポイントも……」
「しぶちんなの?」
「ヨドバシだと、なに買ってもだいたい10%はポイント貰えるんだぞ」
「やまだは?」
「基本的に1%」
「……しぶちん」
「だろう」
「でも、◯◯、やまだでんきすきだよね」
「近いからな」
近所にヨドバシかビックカメラがあれば、そちらへ行くに決まっている。
「……もしかして、なにかの間違いじゃなかろうか」
「まちがい?」
「だって、最近買った高いものなんて、布団乾燥機くらいしか覚えがないぞ」
「そかな……」
うにゅほが小首をかしげる。
「──よし、この機会に、欲しかったものを買ってやれ」
「なに?」
「一万円以下の、そこそこ良いヘッドホン」
「へっどほん、かみがたへんなるって」
「ずっとつけてればな。ただ、音楽関連の作業をするときは必要だと思って」
「ほー」
「そもそも、つけっぱなしだと××と話せないだろう」
「──……!」
うにゅほが、うんうんうんと力強く頷いた。

──と、いうわけで、SONYのMDR-XB600をヤマダ電機のポイントで購入したのだった。

「◯◯?」
「ん?」
「エイさん、ポイントならなかったの?」
「……あー」
そう言えば、エイさんことA3対応プリンタを先月購入したばかりだった。※1
仕事上の買い物だったので、思い出せなかったのだろう。
「あと、ファックスかった」
「……いろいろ買ってたな、俺たち」
「ストーブも──」
そりゃ、7.000ポイントも貯まるわけである。
俺たちのように、手近で済ませようという顧客がいる限り、ヤマダ電機は業界最大手のままなのかもしれない。

※1 2014年8月14日(木)参照
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2014
09.23

うにゅほとの生活1031

2014年9月23日(火)

「──あ!」
うにゅほが唐突に身をよじった。
「わ、はえ、はえだ!」
指をしおりにしたマジック・ツリーハウス5巻で、ちいさなハエをしっしっと追い払う。
「ハエなんて珍しいなあ」
呟くように言いながら、ぺら、とエッセイ集のページを繰る。
「……◯◯、はえ、だいじょぶなの?」
「えーと……、あれ?」
部屋に虫が現れたにも関わらず慌てていない自分に気がついた。
「あれ、ハエは驚かないな」
「なんで?」
うにゅほが小首をかしげた。
「××は、ハエ駄目か」
「だめー……」
となると、理由は俺のほうにあるらしい。
ハエがどこかに隠れてしまったので、キンチョール☆を構えつつ雑談をする。
「大丈夫な虫と、駄目な虫ってあるよな」
「あるかな……」
「トンボとか、バッタとかさ」
「きらい」
「嫌いかもしれないけど、蛾と比べたら?」
「──…………」
長考ののち、
「……まし?」
と疑問形で答えた。
「トンボとかバッタは、大きいけど部屋に入ってこないから」
「あ、そだね」
「でも、××、アリは大丈夫なんだよな」
「ちっちゃいもん」
「蚊は?」
「だめだめだめ」
「腫れるもんな……」
「うん」
うにゅほの好き嫌いは、純粋な大きさ、または害をなすかどうかを基準としているらしい。
「俺は、部屋に入ってこなくて、近づいてもこない虫は、あんまり気にならないかな」
「はえはー?」
「ハエだけは例外なんだよなあ」
決して好きではないが、見つけて慌てるほど驚きはしない。
顎に手を当てて記憶を探る。
「たぶん、子供のころ、夏になるたびに婆ちゃんちにハエが湧いて──」
常に数匹は飛んでいたように思う。
「……慣れた、みたいな」
「ふうん……」
じわっとした感じで会話が終わってしまった。
しばらく神経を集中していたが、リビングのほうへ行ってしまったのか、その後ハエが姿を現すことはなかった。
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2014
09.22

うにゅほとの生活1030

2014年9月22日(月)

「──◯~、◯!」
自室の扉を閉じるなり、うにゅほが機嫌よく俺の名前を呼んだ。
「どした、にこにこして」
「うへー」
うにゅほが、腰の後ろに隠していた両手を開き、
「おみやげもらった!」
と、数種類のお菓子を差し出した。
「おー!」
まず、どうしても緑色の球体に目が行く。
「懐かしいな、まりもようかんだ」
「まりもようかん?」
「針ないか?」
「はり?」
容器には付属していたのだろうが、持ってきてはいないようだった。
「まあ、刺繍針でいいや」
デスクの引き出しから刺繍針を取り出し、
「……よーく見てろよ」
「うん」
ぷつ。
ぺろん!
「──……?」
うにゅほが不思議そうな顔をしている。
「はい、剥けた」
「むけた?」
「触ってみ」
「さわ……、あ、べたべた、むけてる!」
よーく見ていても見逃す速度である。
「自分のぶんは、自分で剥いてみたらいい」
「うん!」
まりもようかんに舌鼓を打つ。
記憶にあるより、ずっとまろやかで、癖のない甘さだった。
「あ、むけた! むけた!」
「面白いだろ」
「うん!」
大興奮のうにゅほを横目に、デスクの上のおみやげに目をやった。
よくわからない個包装、おかき、青いキャラメル──
「……青いキャラメル?」
ソーダ味だろうか。
ジンギスカンキャラメルに比べればましだが、あまり美味しそうな予感はしない。
「××、これなに?」
「む」
指先をくわえていたうにゅほが、キャラメルに視線を向ける。
「あ、それ、しおばたーキャラメル」
「塩バターキャラメル?」
「うん」
「塩バターキャラメルが、なんで青いんだ?」
「わかんない」
そりゃそうである。
恐る恐る口に入れてみると、やはり、ソーダ味ではないようだった。
「塩……、バター……」
言われてみれば、そんな気もする。
「おいしい?」
「普通」
それだけは即答できる。
後から検索をかけてみたのだが、わざわざ青くした理由はよくわからなかった。
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2014
09.21

うにゅほとの生活1029

2014年9月21日(日)

「──……う」
上体を起こす。
時刻を確認するまでもなく、夕方であることは明らかだった。
午前中はずっと起きていたとは言え、いくらなんでも寝過ぎである。
「おきた?」
「ああ、うん。仔犬は?」
「かえった」
うにゅほが笑みを浮かべた。
すっきりとした笑顔だった。
今回も、感動的な展開には至らなかったようだ。
「あー……、なんでだろう。まだ眠いや」
「……ぐあいわるい?」
「いや、具合は悪くない。寝過ぎで頭がふらつくけど、それくらいかな」
「なんでだろうねえ……」
うにゅほとふたり、首をかしげた。
体調の悪化に明白な理由があるとは限らない。
しかし、ふと思い出したことがあった。
「──……ワイン」
「ワイン?」
「昨日、父さんに勧められて、ワインをひとくちだけ飲んだろう」
「うと……、あ、のんでた。のんでたね、しろワイン」
「あれのせいじゃないかな」
「まえ、ワイン、まいにちのんでたのに?」
「そうそう、いきなりアルコールが駄目になったんだよ。ワインに限らず、ぜんぶ」
「たいしつ?」
「そんな唐突に変わる──」
唐突に閃くものがあった。
iPhoneを手に取り、家計簿アプリを起動する。
「……酒代が急速に減ったのが五月、なくなったのが六月」
「うん」
「そのころ薬の処方が変わって──、そう、たぶんこの薬だったはず」
淡橙色の錠剤。
薬剤名を元に検索をかけ、
「あった」
「?」
うにゅほが、文字だらけのサイトに眉をひそめた。
「効能または効果、神経症における睡眠障害その他──」
マウスホイールをぐりぐり回す。
「併用注意、アルコール。本剤の作用が増強されることがある──、これだ!」
ぱん!
両手を打ち鳴らした。
「これだって、どれだなの?」
「つまり、眠りを深くする薬が、アルコールのせいで強力になっちゃうってことだ」
体質にもよるけれど。
「おさけとくすり、いっしょにのんだからねむいの?」
「そういうことだな」
「はー……」
うにゅほが、うんうんと頷いた。
「おさけのめないね」
「いや、どうしてもってときは、この錠剤だけを──」
そこまで口にして、止めた。
あくまで素人の推測に過ぎないし、処方された薬はきっちりと服用すべきだ。
どうしても飲酒が避けられないときにだけ、この淡橙色の錠剤を外してみることにしよう。
「……まあ、お酒は体に悪いしな」
「うん」
無理をしてまで飲むことはない。
うにゅほの顔を見ていると、そんなことを思うのだった。
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