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2014
03.21

うにゅほとの生活846

2014年3月21日(金)

我が家に犬がやってきた。
飼い始めたわけではなく、両親の友人の飼い犬を数日間預かることになったのだ。
「どんないぬかな」
「ポメラニアンとなんかのミックスだっていうから、たぶんキャンキャンうるさいぞ」
「そかー」
わくわくしながら帰宅すると、
ワン! ワンワン! ワンワン! ヒャァン! ヒャンヒャン! ヒャン!
盛大に出迎えられた。
「わああ」
俺の後ろにうにゅほが隠れる。
「こわい!」
「まあ、あれだ。まだ慣れてないだけだよ」
「そかな……」
「知らない家にいきなり連れて来られたんだから、不安なんだろうな」
「……うん、うん、そだね」
そうは問屋が卸さなかった。
部屋から出ると、
キャンキャンヒャンヒャァン! ワン! ワン!
ソファに座ると、
ヒャン! キャンキャンキャンキャン!
おやつを食べると、
──…………(オスワリ)
そんな具合で、とにかく吠えまくる。
怯えているのかと言えばそうでもなく、相手をせずに放っておけば擦り寄ってくる人懐こさもある。
ただ、こちらが動くと身構え、俊敏な動きで翻弄したのち、烈火のごとく吠え立てるのだ。
「生き急いでるなあ……」
自室に戻ると、うにゅほがもじもじしていた。
「怖いか……」
「うん……」
「噛まないぞ、甘噛みはするけど」
「ほえるもん」
「──……ああ」
一昨年死んだ飼い犬は、まったく吠えない犬だった。
だから、吠え立てられると、激怒されているような気がするのかもしれない。
「もうすこし、慣れてくれるといいんだけどな」
「うん……」
隣に腰を下ろし、うにゅほの頭を撫でた。
「──……あの、◯◯」
「どうした?」
「あのね」
「ああ」
「……といれいきたい」
うにゅほを背中にかばいながらトイレまで付き添う羽目になった。
双方共に、もうすこし慣れてもらいたいところだ。
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2014
03.20

うにゅほとの生活845

2014年3月20日(木)

今日は父親の誕生日だった。
「ううふ……」
誕生祝いに焼肉をたらふく食べて帰宅し、ソファに寝そべって腹をさすっていると、
「──…………」
うにゅほが俺の顔を覗き込んだ。
「ね」
「んー?」
「おとうさんに、プレゼントあげないの?」
「あ」
上体を起こす。
「忘れてた」
「えー」
うにゅほが半眼でこちらを睨む。
「いや、違う、そういう忘れてたじゃない」
「ちがう?」
「ネットで注文してあったんだけど、そのことを忘れてたんだ」
既に発送されているはずなのだが、思いのほか届くのが遅い。
「なんにしたの?」
「届いてから見せようと思ってたんだけど──ま、いいか。
 タンブラーだよ」
「たんぶらー?」
「細長いコップと考えて間違いない」
「へえー」
うんうんと頷く。
「でも、ただのタンブラーじゃなくて、真空断熱タンブラーなんだ」
「──……?」
小首をかしげる。
その反応は予想していた。
「ざっくり説明すると、あったかいものは冷めにくく、冷たいものはぬるくなりにくい、という」
「なんで?」
「……それを、本当に知りたいのか?」
「──…………」
しばし黙考したのち、
「ううん」
ふるふると首を横に振った。
賢明である。
「父さんはビールだのコーヒーだの好きだから、ちょうどいいかと思ってさ」
「うーん……」
うにゅほが唸る。
「ふしぎだねえ……」
「原理を説明してほしいのか?」
「ううん」
首を振る。
頑なである。
「届いたら、実験してみたいな」
「プレゼントなのに」
「大丈夫、そう思ってふたつ注文してあるから」
届くのが楽しみだ。
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2014
03.19

うにゅほとの生活844

2014年3月19日(水)

「ぐあー!」
うにゅほの布団にダイブする。
「だいじょぶ?」
「足が痛くてかなわん……」
ひらひらと爪先を動かすと、うにゅほが靴下を脱がせてくれた。
「運動不足を実感する」
「そだねえ」
「長靴で三時間も歩けば、もう運動不足とか関係ない気もするけど」
「ながぐつでいったの?」
「道路があちこち水没してるからな、仕方ない」
「あー」
路面の雪は均一に解けないので、気温の高い日は、巨大な水たまりが無数に生成されてしまうのだ。
「それだけ春が近づいてるってことだけどな」
「はる……」
うにゅほが遠い目をする。
「はる、いいねえ……」
「春がどうこうより、もう雪を見たくない」
白銀の世界は見飽きたのである。
「さんぽしたいねえ」
「今はしたくない……」
とにかく足が痛かった。
「あ、あしもむ」
「頼むー」
うつ伏せになると、ちいさな手がふくらはぎに触れた。
「ふとい」
「御挨拶だな……」
「はれてる?」
「あー、むくんでるかも」
「……むくん?」
「たぶん、足のほうに血が溜まってるんだろう」
「ほー」
もみ。
「もっと強くていいよ」
「はい」
もみもみ。
「もっと、ぎゅーっと」
「ぎゅうー」
「そうそう」
「──…………」
「──…………」
「……はー!」
十秒と保たなかった。
「うん、やっぱそこそこでいいや」
「はい」
しばらくマッサージを受けていると、血行がよくなったのか、ふくらはぎがやたらと痒くなった。
疲れは和らいだ気がする。
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2014
03.18

うにゅほとの生活843

2014年3月18日(火)

ゴム製の耳かきを見かけ、物は試しと購入した。
らせん構造で耳垢をこそげ落とし、反対側のソフトブラシで仕上げを行うらしい。
「買ったはいいけど──」
「?」
相手がうにゅほとは言え、耳かきを共用するのはすこし抵抗がある。
そう告げると、
「そかな」
うにゅほがきょとんと答えた。
気にならないらしい。
「使うのはいいとしても、使われるのって嫌じゃないか?」
「えー……?」
首をかしげる。
よくわからないらしい。
「……まあ、いいや。水洗いできるみたいだし」
「うん」
「では、俺から試してみましょう」
らせん状の先端を耳の穴に挿入する。
「きもちいい?」
「ふつう」
耳かきだな、という感じである。
「とれた?」
「まあ、そこそこ」
ティッシュで先端を拭い、今度はソフトブラシ側を差し入れる。
「きもちいい?」
「うーん……」
悪くはないが、特段によくもない。
「試してみるか?」
「うん」
「綺麗にしてからな」
「はい」
洗面所で耳かきを洗い、しっかりと水を切ったあと、うにゅほに手渡した。
「いきます」
うにゅほが耳かきを構える。
ぷるぷると震える手が不安を誘うが、見守ることにする。
「あー」
「気持ちいいか?」
「ふつう」
「ふつうだよな」
「うん」
「──……あのさ」
「うん?」
「口、開いてるぞ」
「!」
うにゅほが口を真一文字に結ぶ。
「アホっぽいなー」
「◯◯もあいてたよ?」
「……まじで?」
「まじ」
まったく気がつかなかった。
今度から注意しよう。
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2014
03.17

うにゅほとの生活842

2014年3月17日(月)

「いい天気だなー……」
「そだねー」
窓を開くと、かすかに春が香った。
「散歩にでも行くか」
「いいねー」
寝癖を帽子で隠し、外に出た。
「ぐるっと?」
「適当でいいから、目的地を決めよう」
「もくてきち……」
しばし黙考し、
「あ、そだ!」
うにゅほが、快活な瞳でこちらを見上げた。
「おさけやさんいきたい」
「酒?」
意想外の提案である。
「おとうさんのたんじょうび、もうすぐだから」
「あー……」
忘れていた。
危ないところだった。
「××はお酒にするのか」
「うん」
「まあ、他に喜びそうなものが思い浮かばないもんな……」
満たされている、と言い換えることもできるかもしれない。
「あ、なんとかさんのでぃーぶいでぃー、ほしいっていってたよ」
「誰の?」
「でぃー……──」
うにゅほの動作が停止する。
「……でぃー、なんとかさん」
情報がほとんど出てこなかった。
「まあ、それはいいや。また今度で」
ひらひらと手を振り、歩き出す。
「なんのお酒にするんだ?」
「うと、ビール?」
「徒歩でビールは勘弁してほしいな……」
まさか一缶というわけにもいくまい。
「ういすきー」
「妥当だな」
「じゃ、ういすきーにします」
「財布は持った?」
「だいじょぶ」
ポシェットを叩き、にかっと笑う。
「◯◯、どうするの?」
「どうしような」
酒ばかり贈っても仕方がない。
「まだ余裕あるし、すこし考えてみるよ」
「そか」
うにゅほは、リカーショップでしばし悩んだのち、ウイスキーではなくブランデーを購入した。
違いを尋ねられたが、答えられなかった。
当の父親も、よくわからずに飲んでいる気がする。
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2014
03.16

うにゅほとの生活841

2014年3月16日(日)

「えーと、鶏肉と、なんだっけ」
「なっとうと、しょうがと、なすと、なすと──……ちょっとまってね」
うにゅほが、コートのポケットをまさぐる。
「晩御飯はザンギかな」
そう尋ねると、
「うん、だって」
メモ用紙を手に、頷いた。
日曜日だけあって、スーパーは盛況のようだった。
幾重にも積まれた買い物カゴを掴み、野菜売り場に足を踏み入れる。
「あ、しめじだよ」
「しめじも?」
「うん」
うにゅほが、しめじのパックをカゴに入れた。
「えりんぎだ」
「エリンギ買うなんて、珍しいな」
「あ、ちがう。えりんぎちがうよ」
ふるふると首を振る。
「えりんぎって、しめじなんだよね」
「……えっ」
「しめじがそだつと、えりんぎなんだよね?」
「そうなの?」
初耳である。
「あんまり似てないけどなあ」
エリンギを手に取り、まじまじと眺める。
「テレビかなにかで見たの?」
「?」
うにゅほが小首をかしげた。
「◯◯、いってたよ?」
「──…………」
一瞬、思考が停止し、
「……あー」
思い出した。
いつだったか、冗談のつもりでそんなことを言った気がする。
どうしよう。
まあいいや。
「××ごめん、それ嘘」
「えー!」
「すまん、すまん」
「もー……」
うにゅほが呆れた顔をする。
「しんじてたのに」
「あれ、でも、おかしいな。いつもなら、すぐネタばらしすると思うんだけど」
「──……んー?」
「どうかした?」
首を捻り、うにゅほが呟くように言った。
「……なんか、じょうだんだよっていってたきーする」

結論:ふたりとも、もっと記憶力を磨きましょう。
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2014
03.15

うにゅほとの生活840

2014年3月15日(土)

「ぶー……」
うにゅほの頭がふらふらと揺れている。
「あたまいたいー……」
「寝てなさいってば」
「でも」
「寝てなさい」
「うー」
おでこを押すと、うにゅほがころんと寝転がった。
風邪だろうか。
「でも、でかけるんでしょ」
「あー……」
作業用のテーブルを買いに行くつもりだったのだ。
「べつに、明日でも構わないし」
「んー」
天井を見つめ、うにゅほが唸る。
「いってきていいよ?」
「珍しいな」
「だって、いくよていだったんでしょ」
「予定ってほどでもないけど……」
決めたの、昨日の夜だし。
「だから、いってきていいよ」
うにゅほが力なく微笑んだ。
「……そっか」
そこまで言うなら、厚意に甘えることにしよう。
「じゃあ、一時間くらいで帰ってくるから」
「うん」
「おみやげ、なにがいい?」
「うーと……」
軽く思案し、
「ドラえもんのでぃーぶいでぃー……」
はにかみながら、そう答えた。
昨日、映画館からの帰りにTSUTAYAへ寄ったのだが、ひみつ道具博物館はすべて貸出中だったのだ。
「わかった、ゲオ覗いてみるな」
「うん」
毛布を、うにゅほの肩まで引き上げる。
「じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃい……」
後ろ髪を引かれながら、自室を後にした。
ちょうどいいテーブルは買えたが、DVDはゲオでも貸出中だった。
やはり人気があるらしい。
手ぶらで帰るのも気が引けるので、あんまんとプリンを買って帰った。
ドラ焼きにしようかと悩んだのは秘密である。
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2014
03.14

うにゅほとの生活839

2014年3月14日(金)

「××、行くぞー」
「はーい」
ミラジーノに乗り込み、エンジンを掛ける。
最初の信号を過ぎたところで、
「どこいくの?」
と、うにゅほが尋ねた。
遅い。
「どこ行くと思う?」
「うーと」
思案し、
「……やまだでんき?」
「不正解」
「やまだでんきじゃないほう?」
「ケーズデンキな」
違うけど。
「今日は、映画を観に行こうと思って」
「えいが!」
うにゅほの背筋が伸びた。
「えいが、すごいね!」
「まだ観てないがな」
言葉足らずがゆえに、その興奮が強く伝わってくる。
「ま、ホワイトデーってことで」
「ほー……」
ぽす。
シートに身を預け、うにゅほが息を吐いた。
「なにが観たい?」
「えっ」
返答に窮するうにゅほを横目に、口角を上げた。
「──なんて、チケットはもう買ってあるんだけどな」
「なにみるの?」
「ドラえもん、新・のび太の大魔境」
「ドラえもん!」
うにゅほが再び前のめりになった。
いいリアクションである。
「銀の匙とかロボコップもいいかと思ったんだけど、××ならこれかと思って」
「──…………」
うん、うん、と深く頷いている。
すごいなドラえもん。
サッポロファクトリー内のシネコンに入館すると、やはりと言うべきか、親子連れの姿が目立った。
「すいてるねえ」
「平日だから、こんなもんだよ」
雑談するうちに館内の照明が落とされ、上映前にお決まりのCMが始まった。

──二時間後、

「──…………」
「──…………」
「……なんか、すごいよかったな」
「うん……」
改悪を覚悟していたのだが、文句なしの正統なリメイクだった。
「去年も観に行けばよかったかも」
「そだねー」
「……DVD、借りて帰る?」
「うん!」
ドラえもん漬けの日々が続きそうな予感がする。
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2014
03.13

うにゅほとの生活838

2014年3月13日(木)

「──…………」
鏡を覗き込みながら、無言で髪を撫でつける。
「ぴこん」
撫でつける。
「ぴこん」
「それ、寝癖が立つ音?」
「うん」
擬音にすると可愛らしいが、寝癖としては強靭だ。
「なおんないねえ」
「ただでさえ髪が硬い上に、切ったばっかだからな……」
こうなってしまうと、ドライヤーはおろかシャワーさえ無力である。
霧吹きで湿らせてヘアバンドの下に封印するより道はない。
「……ま、そこまでするほどでもないか」
前から見れば、気にならない。
「そかな」
「え、目立つ?」
「うん」
「そうか……」
後ろから見ると、激しいらしい。
「よし、今日は外出しない!」
「え、おばあちゃんのびょういん……」
「無理だった!」
頭を抱える。
「ぼうし、だめなの?」
「帽子なー……」
言葉を探しながら、訥々と答える。
「あんまり帽子に頼ってると、だんだんひどくなっていくんだ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「えーと、寝癖が立った状態で寝るのと、たぶん同じ」
「あー」
うんうんと頷く。
以前にも似たようなことを言った気がする。※1
「──あ、そうだ」
ふと、あることを思い出した。
「濡らしたタオルをレンジに入れると、蒸しタオルになるらしい」
「なんか、あぶないきーする」
「10秒ずつ様子を見ていけば、大丈夫じゃないか?」
「うーん……」
やってみた。
「あち、あちちち」
「だいじょぶ?」
「ああ、これを寝癖に当てて──」
しばし待つ。
「直った?」
「あ」
後頭部に、うにゅほの指が触れる。
「ちょっとげんきなくなってる」
寝癖の元気とはいったい。
何度か繰り返すと、いくらかましになったようだった。
この手は使えるかもしれない。

※1 2014年3月1日(土)参照
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2014
03.12

うにゅほとの生活837

2014年3月12日(水)

「──…………」
「──…………」
車内に無言が満ちる。
「◯◯、これ」
「ああ」
「どこいくの?」
「どこまで行くんだろうな……」
床屋へ行こうとして、誤って高速道路に迷い込んでしまった。
なにを言っているのかわからないと思うが、事実である。
「……住宅街から無理に出ようとしたのが、そもそもの間違いだった」
札幌新道を左折して、気づくとETCゲートをくぐっていた。
すべてが遅かった。
「どうするの?」
「そりゃ、次のインターで降りて──」
夕景が眼下に映える。
なんだか、どうでもよくなってきてしまった。
「……このまま行けるとこまで行って、温泉にでも入ろうか」
気まぐれな小旅行を行えるくらいの経済力は、ある。
たまにはいいのかもしれない。
「おー……」
わくわくと瞳を輝かせるうにゅほの姿を見て、ふと我に返った。
「いや、今のなし」
「えー」
「みんな心配するからな」
「あ、そか」
「行くなら行くで、ちゃんと予定を立てないと」
「そだねー」
「──…………」
旅行、か。
口のなかでそう呟いて、ハンドルを握り直した。
床屋の伯父に仔細を告げると、ハサミが震えるくらい笑われた。
鉄板ネタができたことを喜ぼう。
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