2014
01.31

うにゅほとの生活797

2014年1月31日(金)

「──……っ」
胸の圧迫感で目が覚めた。
側臥し、深呼吸をする。
悪い夢でも見ただろうか。
携帯電話で時間を確認すると、午後五時を過ぎていた。
「あっつ……」
布団のなかが地獄のように暑い。
熱があるのだろう。
寝床から這い出して涼を取っていると、自室の扉が開いた。
「あ!」
うにゅほだった。
「ふとんでねないとだめだよ」
「いや、暑くて……」
「だめだよ」
「はい」
のそのそと寝床に戻ると、うにゅほが布団を掛けてくれた。
「──……?」
うにゅほの髪が、ふ、と香る。
雪の匂いだと思った。
「どこか行ってたのか?」
「ん」
ふるふると首を振る。
「ゆきかきしただけだよ」
「……ひとりで?」
「おかあさんと」
「そっか」
なら、まあ、よかった。
「ごめんな、ポンコツで……」
「そんなことない」
頬に手が添えられる。
冷たくて気持ちがよかった。
「──…………」
落ち着く。
目蓋を下ろすと、再び眠気が訪れた。
眠ってばかりの一日だった。
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2014
01.30

うにゅほとの生活796

2014年1月30日(木)

「やられた……」
車の天井を指先で撫でながら、軽く溜め息をついた。
「おばあちゃん、おそいね」
後部座席のうにゅほが往来に視線を向ける。
病院の駐車場にいるのだった。
「やっぱ、一旦帰ればよかったなー」
「そだねえ」
老齢のためか、祖母は時間に対する感覚が非常に甘い。
薬を貰うだけだから待っていてくれ、と言い残し、既に三十分が経とうとしている。
いっそ遠方の病院なら諦めも覚悟もするのだが、五分で帰宅できる距離だけに虚しさばかりが募る。
「だからって、今から帰るのもな」
「うん」
「はぁ……」
再び溜め息をつく。
「ひまだねえ」
「ああ」
「しりとりする?」
「……しない」
「しない?」
「ああ」
「そか……」
残念そうにうつむくうにゅほに軽い罪悪感を覚えるが、余計に虚しくなる未来しか見えないから仕方がない。
「……ちょっと歩くか」
「いいの?」
「いいんじゃないか、べつに」
遠くに行くわけでもない。
ドアを開き、車を降りると、うにゅほも俺に倣った。
「今日はあったかいなあ」
「そだね」
氷点下だが、-10℃よりは暖かい。
「天気もいいし、雪ちょっと解けるかもな」
「みち、べしゃべしゃ?」
「べしゃべしゃになるだけならいいけど、そのまま凍るからな……」
「すべる」
「今年は転びたくない」
「あはは」
すう、と深呼吸をする。
空気が良いとは言いがたいが、新鮮ではある。
「よーし、あのセコマ行ってジュースでも買うか」
「いいの?」
「急げば問題ないだろ」
コンビニから帰ると、祖母が渋い顔をして待っていたので、ホットココアで機嫌を取っておいた。
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2014
01.29

ふぇのラテ 初雪の降った日 4-4 (了)

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以上で完結です
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2014
01.29

うにゅほとの生活795

2014年1月29日(水)

朝起きて、リビングでぼんやりしていると、
「──せなかかゆいの?」
うにゅほにそう尋ねられた。
「背中……」
言われて気づく。
無意識に、腰のあたりを掻きむしっていたようだった。
「ああ、うん、痒い」
背中だけでなく、いろんなところが痒い。
「みして」
「ああ」
うにゅほに背を向け、パジャマをまくり上げる。
「あかい」
「掻いてたからなあ」
「あと、ぷつぷつしてる」
「ぷつぷつ?」
「とりはだ?」
「鳥肌?」
首を回しても背中は見えない。
「乾燥肌──じゃ、ないよな」
体質的にも、環境的にも。
「びょうきかな……」
うにゅほが心配げに呟く。
「いや、なんだろう、すごく覚えがあるんだ」
「おぼえ?」
「毎年冬になると体が痒くなるから、ちょっと調べたことがあって──」
天井を仰ぎ、思案する。
「……そう、寒冷じんましんだ」
「じんましん」
「寒いとなるんだって」
「ひふか?」
うにゅほが病院モードに入っている。
「病院行ったほうがいいんだろうけど、きりがないしなあ」
「いったほういいよ」
だからと言って、薬漬けになるのもどうだろう。
「とりあえず様子を見よう。いつもと同じなら明日には治ってるから」
「そなの……?」
「そうなの」
「じゃ、めんたむぬっていい?」
「頼めるか」
「うん」
「──……よっ、と」
パジャマの上衣を脱ぎ捨てると、うにゅほが硬直していた。
「ぬ」
「ぬ?」
「めんたむぬる」
「ああ」
俺の上半身なんて見慣れていてもいいはずなのだが、いきなり脱ぐとびっくりするらしい。
微笑ましいものだ。
「──…………」
いや、立場を逆転して考えてみよう。
うにゅほが目の前で脱ぎ出したりしたら、俺だってびっくりするに決まっている。
脱ぐ前に一言断りを入れるくらいのデリカシーは必要かもしれない。
「かたもぬるよー」
「おー」
と、うにゅほに軟膏を塗られながら思った。
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2014
01.28

ふぇのラテ 初雪の降った日 4-3

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2014
01.28

うにゅほとの生活794

2014年1月28日(火)

「──……おはよ」
早朝に目が覚めてしまった。
「はやいねー」
うにゅほが、食器を洗いながら笑顔で返す。
俺にとっての早朝だから、家族にとってはただの朝である。
「や、また寝る」
無意識に腹部を撫でる。
空腹だった。
「なんか、食べるものある?」
「ごはんたけてるけど……」
うにゅほが口ごもる。
おかずはないらしい。
「めだまやく?」
「いや、いいよ。すぐ寝るし」
冷蔵庫を開くと、オハヨーの焼きプリンがいくつかあった。
「これでいいや」
「プリン?」
「ああ」
「それだけじゃ、えいようかたよる」
「朝ごはんなんて普段食べないんだから、偏るもなにも」
焼きプリンに舌鼓を打ったあと、のそのそと寝床へ戻っていった。
「──……おはよう」
「おはよー」
再び起きると、十一時過ぎだった。
「う」
胃を押さえる。
空腹だった。
「プリン、まだあったよな」
「え、またたべるの?」
「ああ」
「プリンだけじゃだめだよ」
「でも、おひるには早いし……」
「だめだよ!」
「はい」
怒られた。
「おなかへってるの?」
「あー、うん」
「なにたべたい?」
「──…………」
強いて言うなら、オハヨーの焼きプリンが食べたい。
でも怒られるから言わない。
「特に食べたいってのはないんだけど……」
「めだまでいい?」
「ああ」
「にこ? さんこ?」
「二個」
「チャーシューあるけど、いれる?」
「お願い」
目玉焼きが焼き上がるまでうろうろしながら待っていると、うにゅほにくすりと笑われた。
なんか恥ずかしい。
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2014
01.27

ふぇのラテ 初雪の降った日 4-2

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2014
01.27

うにゅほとの生活793

2014年1月27日(月)

「~♪」
食器棚からワイングラスを取り出し、自室へ戻る。
「ワインのむの?」
「ああ」
アルコールに対し一貫して厳しい態度を取るうにゅほだが、どうしてかワインにだけは甘い。
ワインは体にいい、という刷り込みがあるらしい。
「実際、ワイン飲むと次の日調子いいんだよな」
「そうなんだ」
気のせいかもしれないが、主観的事実ではある。
アルコールの摂取量に関わらず、ビールを飲めば吐くし、翌日まで尾を引くこともある。
合う合わないの差が激しいようだ。
安ワインの封を開くと、ぷし、とガスの抜ける音がした。
「あ、つぐ」
「ああ」
うにゅほにボトルを手渡す。
「ささ、いっこんどうぞ」
「それ絶対言うんだな」
「おっとっとは?」
「おっとっとっと……」
グラスに注がれたロゼワインを香る。
「いいにおい?」
「あー、どうだろう。嫌いじゃないけど」
「かいでいい?」
「ああ」
うにゅほの鼻先でグラスを軽く回す。
「んー……」
「どう?」
「ワインのにおい……」
うにゅほが遠慮がちに答える。
ソムリエじゃないんだから、そうなるわな。
「おいしいの?」
「このロゼはけっこう好きかな」
「どんなあじ?」
興味が湧いたようだ。
「舐めてみるか?」
「うん」
ワイングラスを渡す。
「──…………」
ぺろ。
「……すっぱ、い?」
「赤よりは渋くないだろう」
「おなじとおもう」
「はは、そっか」
グラスを受け取り、ひとくち飲んだ。
「すっぱいのに、おいしい?」
「ああ」
「すっぱいのに……」
納得が行かないらしい。
「合ってるかどうか知らないけど、飲み方があるんだよ」
「?」
「ふつうに飲むと渋味が強いから、舌の奥に流し込んで、香りを楽しみながら飲むんだ」
「ほー」
「これだと飲み込んじゃうから、××は駄目だけどな」
「うー……」
ぶーたれるうにゅほを肴にして、しばらくワインを楽しんだ。
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2014
01.26

ふぇのラテ 初雪の降った日 4-1

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2014
01.26

うにゅほとの生活792

2014年1月26日(日)

体調が悪く、ずっと横になっていた。
「──……?」
なにか冷たいものが頬に触れて、目蓋を開いた。
うにゅほの手だった。
「だいじょぶ……?」
「……うー」
大丈夫ではない。
大丈夫ではないが、
「ああ、ちょっとだるいだけ……」
そう答える以外にない。
「おちゃもってきた」
ひんやりとした冷気を放つペットボトルがそっと枕元に置かれた。
ありがたい。
口の中が乾いていたのだ。
上体を起こし、お茶を口に含む。
「はあー……」
生き返ったような気分だった。
「ありがとうな」
「うん」
うにゅほの頭に左手を乗せ、優しく撫でた。
具合が悪いときは、気が弱くなる。
ちょっとしたことで落ち込むし、ちょっとしたことでほろりとしてしまう。
「……ほんと、××には心配かけっぱなしだな」
「──…………」
ふるふると首を横に振る。
「心配じゃない?」
「しんぱい」
「心配かけっぱなしだな……」
「──…………」
ふるふると首を振る。
ちょっと楽しくなってきた。
「××、いつもありがとう」
なでなで。
「うへー」
うにゅほの頬が緩む。
ちょっと褒め殺してみよう。
「××と会えて、本当によかった」
「──…………」
「働き者だし」
「──…………」
「可愛いし」
「──…………」
「気が利くし」
「──…………」
「一緒にいるだけで落ち着く」
「──…………」
「これからもずっと、よろしくな」
「──……ぶぇ」
ぶぇ?
俯いていたうにゅほの顔を覗き込む。
「だ、ぅ……」
泣いたーっ!
しかも号泣コースだ!
「いや、そんな、泣かせるつもりじゃ」
慌てて抱き寄せる。
「ぶー……」
涙と鼻水が俺のパジャマに染み込んでいくのがわかる。
「よしよし」
「──…………」
うにゅほが泣き止むまで、しばらく髪を撫で続けた。
ありがとうは、ゆっくり伝えよう。
別れの際でもないのだから。
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