2013
12.30

うにゅほとの生活765

2013年12月30日(月)

「あー……」
背中を反らし、伸びをする。
「腰いってぇー……」
「ひさしぶり?」
「そだな、最近はずっと平気だったから」
上半身を捻ると、どこかの骨が小さく音を立てた。
「ここしばらく寝てばっかだったもんなあ……」
「ぐあいわるいの、しかたないよ」
「そうなんだけどさ……」
うにゅほの寝床に腰を下ろす。
「ふみふみする?」
「頼むう」
うにゅほは非力である。
指でマッサージをしてもらうより、足で踏んでもらったほうが、手っ取り早いし気持ちいい。
「ふみふみはいいけど、落ちないようにな」
「うん」
しゃら。
うにゅほがカーテンを掴む音が聞こえた。
強度は心もとないが、バランスを取るには十分だろう。
「きもちいい?」
「あ゙ー……」
しばし腰を踏んでもらうと、心なしか痛みが和らいだ気がした。
「さんきゅー」
「うん」
ぽす。
背中に柔らかな重み。
うにゅほが腰を下ろしたのだ。
「どした?」
「こしもむ」
「ふみふみだけでいいよ」
「いちおう、もむ」
うにゅほには何故かマッサージ師としての矜持があるようで、足踏みだけでは納得がいかないらしい。
マッサージクッションにも対抗心を持っているくらいだからなあ。
「きもちいい?」
「ああ」
「きく?」
「効く効く」
「♪」
指圧に合わせて腰が動いている。
なんとなく心地いい。
「××」
「?」
「尻はべつに揉まなくても」
「おしりもいいんだよ」
「──…………」
べつにいいけど。
そのまま南下していき、ふくらはぎを揉まれたところでマッサージが終了した。
なんだかんだで効いたかもしれない。
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2013
12.29

うにゅほとの生活764

2013年12月29日(日)

「──…………」
そわそわと落ち着かない自分を自覚する。
うにゅほの姿が見えない。
買い物に行っているとか、リビングでテレビを見ているとかではなく、なんとなくいない。
「──…………」
無言で首筋を撫でる。
出かけてはいないはずだ。
たぶん、一階にいるのだろう。
「──……さて、と」
おもむろに腰を上げる。
うにゅほの所在を確かめないと、気が散って仕方がない。
依存されているという意識はあったが、こちらもそうだとは思っていなかった。
寄り添って立つ、というのは、そういうことなのかもしれない。
「ごうん、ごうん、ごうん──」
階段を下りると、楽しげな声が耳に届いた。
一階を覗く。
「あ、◯◯」
年代物の餅つき機の前で、うにゅほが正座していた。
「あー、そうか、年の瀬だもんな」
「おもち」
「××は餅つき好きだなあ」
「うん」
去年も一昨年も、こうして餅つき機の前に座っていた気がする。
「きょうのばんごはん、おもちだよ」
「とりつけ餅だっけ」
「そんなの」
「つきたてのきなこ餅は絶品だからなあ」
「──…………」
うんうんと頷く。
「あとは、納豆と大根おろしか」
「なっとう……」
「納豆はいらないよな」
「──…………」
うんうんと強く頷く。
「大根おろしは?」
「だいこん、すこしでいい」
「うちの子たちはきなこ餅しか食べないって、母さんにまた文句言われるな」
「いわれる」
くすくすと笑い合う。
「──よいしょ、と」
うにゅほの隣に腰を下ろした。
「俺も、つきあがるまで待とう」
「うん」
ごうん、ごうん、といううにゅほの呟きを聞きながら、年の瀬らしくなくのんびりしていた。
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2013
12.28

うにゅほとの生活763

2013年12月28日(土)

「──…………」
ソファに寝転がったうにゅほが、頭上になにかを掲げながらぼんやりとしていた。
「どうかした?」
「んー……」
「なんだ、そのカードみたいの」
「ん」
差し出されたカードを受け取る。
そこに描かれていたのは、ニンジンを齧るピーターラビットだった。
「なんだ、図書カードか」
「うん」
両親からうにゅほへの誕生日プレゼントである。※1
「なにすればいいのかな」
「なにって、本を買う以外のことはできないと思うけど」
「おかねのかわりにだすの?」
「そうだよ」
「ふうん……」
図書カードを返す。
うにゅほが口元を隠し、言った。
「つかったらなくなっちゃうねえ……」
「え、あー……」
なるほど、それで躊躇っていたのか。
「ぜんぶ使っても、カードはなくならないよ」
「そなの?」
うにゅほが目をぱちくりさせる。
「えー……と、そうだな、どう説明したらいいのかな」
しばし黙考し、言葉をひねり出す。
「……そのカードは、そう、財布みたいなものなんだよ」
「さいふ?」
「カードのなかに見えないお金が入ってて、それで支払いをするわけだ。
 お金がなくなっても、財布は残るだろ」
「なくならないんだ」
「ああ」
「そっかー」
図書カードを再び掲げ、うにゅほがこくこくと頷いた。
「なにかえばいいのかな」
「そこまでは相談に乗れないなあ」
「まんが?」
「漫画でもいいけど」
「うーん……」
漫画に使ってしまってはなんとなくもったいないような気もするが、そこはうにゅほの自由である。
「ふはは、悩むがいい」
「ぶー」
良い買い物ができますように。

※1 2013年10月15日(火)参照
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2013
12.27

うにゅほとの生活762

2013年12月27日(金)

「──…………」
ソファで読書をしていると、徐々に姿勢がだらけてくるものである。
「──……♪」
うにゅほの足先が俺の膝の上でリズムを取っている。
左、右、左、右と、くにくに折れ曲がる爪先が、なんとも言えず落ち着かない。
平たく言うと読書の邪魔である。
「──…………」
ぱし。
「!」
右の爪先を掴む。
「なにー」
「いや、なんと言うこともないけど」
ぱし。
「!」
本を置き、左の爪先も掴む。
「……?」
くにくに。
うにゅほの爪先が手のひらのなかで蠢く。
くすぐったい。
よし、足ツボでも押してやろうじゃないかと足の裏に触れたとき、気がついた。
「……××の足の裏、すげえすべすべしてる」
「そかな」
「下手すりゃ手のひらよりすべすべしてるかもしれない」
すりすり。
「うひ」
くすぐったいらしい。
「これは歩いてない者の足ですな」
「うん」
「インドア派だもんな」
「◯◯のあしは?」
「カサカサってこともないけど、すべすべってこともない」
「さわりたい」
「ほら」
うにゅほの足を下ろし、自分の足を持ち上げる。
「ほんとだ、かさかさじゃないし、すべすべじゃない!」
「じゃあ、なに?」
「──…………」
しばし俺の足を撫でたあと、
「……せらせら?」
「さらさら、じゃないのか」
「さらさら──……では、ない」
「そうか……」
相変わらず独特の擬態語を作り出すなあ、と思った。
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2013
12.26

うにゅほとの生活761

2013年12月26日(木)

朝食のシリアルを頬張っていると、背後から肩を掴まれた。
「……?」
もそもそと咀嚼を続ける。
「──…………」
「どうかした?」
「……◯◯、たばこのにおいする」
「あ、バレた」
鼻のきく娘である。
「たばこすうの?」
これから吸い続けるのか、という意味だろう。
「いや、ないな」
「ないの」
「だって、一箱400円くらいするんだぞ。コミックス一冊燃やすようなもんだ」
「──…………」
うんうん、とうにゅほが頷く。
「じゃあ、なんですったの?」
「そうだなあ……」
スプーンを置き、言葉をまとめる。
「煙草を吸うきっかけって、ほとんどが学生時代のカッコつけだと思うんだよな」
「そなの?」
「実際、俺も吸ってみたことあったし。合わなかったけど」
「そうなんだ」
「だから、煙草に対してなにも思わない年齢になって、改めて吸ってみたら、冷静な意見が下せるんじゃないかと」
「くだせたの?」
「そうだなあ……」
食卓テーブルに頬杖を突く。
「まず、喫煙者が言うような、美味いとか不味いとかはよくわからない」
「あじするの?」
「煙に味なんてあるんだろうか」
「うーん?」
「でも、手持ち無沙汰なときの時間つぶしにはなるかも」
「ほー」
「あと、煙を吹くのはちょっと楽しい」
「えー……」
うにゅほが何故か不満げな顔をする。
「じゃあ、すってるとこみたかった」
「……吸ってみたかった、ではなく?」
「うん」
変な娘である。
しかし、数日前に買った煙草はすべて吸いきってしまったのだった。
「よく考えたら、隠れて吸う必要なかったな……」
成人なのだし。
「そうだよ」
うにゅほがぶーたれる。
次になにか思いついたときは、一緒に楽しもうと思った。
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2013
12.25

うにゅほとの生活760

2013年12月25日(水)

台所に銀色の包みがあった。
「なんだろ、これ」
「なにー?」
うにゅほがとてとてと傍に寄ってきた。
その右手には、冷蔵庫から出したばかりの牛乳パックがある。
飲むところだったのだろう。
「あ、これ、カステラだよ」
「ほう」
カステラとな。
包み紙を開くと、しっとりとした、それでいて妙にべたつくカステラがあった。
「××、おやつの時間だ」
「たべていいの?」
「べつにいいだろ。未開封なら考えたけど」
食器棚から小皿をふたつ取り、カステラを二切れずつ乗せる。
「──……?」
どうしてか、カステラがしとどに濡れていた。
メープルシロップでも染み込ませてあるのだろうか。
うにゅほが牛乳を注いでくれて、おやつの準備が整った。
「いただきます」
「いただきます」
行儀よく挨拶をして、カステラを口へ運ぶ。
「う」
苦い。
なんだこれ。
「うえ」
うにゅほが口を開けながら、言う。
「したぴりぴりするう……」
どうやら、染み込んでいる液体に原因があるらしい。
恐る恐る匂いを嗅いでみると、すぐにわかった。
「……ブランデーだ」
「ぶらんでー」
ああ、そうだ、思い出した。
母親の買ってきたおみやげのなかに、ブランデーケーキと書かれたものがあったのだ。
しかし──
「これ、どう見てもカステラだよな……」
茶色の焼き目に挟まれた柔らかな直方体が、3センチ幅にカットされている。
あまりにカステラすぎて、ケーキという単語と結びつかなかった。
「どうする?」
「うー……」
うにゅほが、食べかけのブランデーケーキを小皿に戻した。
苦手だったらしい。
正直なところ俺も好きではないが、歯型のついたものを戻すわけにもいかない。
うにゅほの食べかけを掴み、一気に飲み下した。
「あっ」
自分のぶんも牛乳で流し込む。
「……やっぱ、あんまり美味しくないな」
「うん……」
「なんか、口直しとかないかな」
「せんべいある」
無事な二切れを包み紙に戻し、黒胡椒せんべいをふたりで食べた。
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2013
12.24

うにゅほとの生活759

2013年12月24日(火)

クリスマスと言えば、寿司である。
我が家では祝い事があるたびなんやかやと寿司を食べる。
当然、ケーキも食べる。
和洋折衷である。
「おー、××も上手くなったなあ」
「うん!」
うにゅほの握った寿司を眺めながら、感慨に耽る。
昔は、シャリが小さめのおむすびくらいあったものだ。※1
いざ夕食という段になって、
「──あれ、シャンパンは?」
パーティの始まりを告げる号砲がないことに気がついた。
「ごめん、買い忘れた」
母親がそう答える。
「じゃあ、俺ちょっと買ってこようか」
「お願い」
よっこらと腰を上げると、うにゅほもならって立ち上がった。
言葉を交わさなくとも、当たり前のようについてきてくれる女の子がいる。
それはきっと、得がたいものなのだろう。
近所のリカーショップへと足を運び、適当なシャンパンをカゴに入れた。
「これ、おいしいかな」
「飲んじゃ駄目だぞ」
「なめる」
「舐めるだけだぞ」
味を確かめるだけなら飲酒にはならないだろう。
「あ、チューハイ買っていい?」
「えー……」
「シャンパン飲むんだし」
「じゃあ、にほんだけ」
「よしよし」
はちみつレモンサワーをカゴに入れ、会計を済ませた。
レジ袋を助手席のうにゅほに預け、車のエンジンをかけたとき、
「──……あの」
うにゅほが遠慮がちに口を開いた。
「どした?」
「……つたや」
「TSUTAYA?」
「つたや、いかないの?」
「──……あ……」
思い当たることがあった。
「そうか、そうだな。クリスマス・イヴだもんな」
「うん」
毎年、クリスマス・イヴにふたりきりで見る映画がある。
銀河鉄道の夜。
危うく忘れるところだった。
「──……まだー?」
「もうちょっと待って……」
ささやかなパーティを終え、膨れた腹を撫でながらのんびりしたのち、こうして日記を書いている。
書き終えたら一緒に見る約束なのだ。
うにゅほをこれ以上待たせても悪いので、本日の日記はここまで。

※1 2011年12月23日(金)参照
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2013
12.23

うにゅほとの生活758

2013年12月23日(月)

「そういえば──」
冬至の余りのおしるこをすすっていたとき、うにゅほがぼんやり口を開いた。
「とうじって、なに?」
「冬至は、一年でいちばん昼間が短い日だよ」
「そうなんだ」
ずず。
おしるこをすする。
「どうしてみじかいの?」
「どうして、とは」
「なんで?」
「なんで、と言われても──」
口頭で説明するのは難しい。
「どうしても知りたいなら、メモ用紙とペン持ってきて」
「はい」
うにゅほが腰を上げる。
なんとなくの質問のわりに、どうしても知りたかったらしい。
もしくは退屈だったとか。
「えー……まずは、と」
メモ帳の中心に円を描き、放射状に点を打つ。
「けむし?」
「太陽」
太陽の周囲に四つの円を描き、傾いた地軸を両極から伸ばす。
「ちきう」
「地球な」
「ちきゅう」
うにゅほは滑舌が悪い。
「太陽に面したところが昼。反対側は?」
「よる」
「そうそう」
四つの地球を昼と夜に塗り分ける。
実物とは異なるが、解説のための模式図だから構わないだろう。
「日本はどのあたりだと思う?」
「えー?」
うにゅほが戸惑っている。
「北極がここ、南極がこれだから、赤道はこうなるだろ」
「このへん……?」
「だいたいそのあたりとしよう」
地球の円周上の適当な場所に点を打ち、日本とした。
「地球は自転してるから、日本も地軸に沿って回転する」
日本から地軸に向けて垂線を引く。
「軌道はこんなかんじかな」
「はー……」
「もうすこしだ、頑張れ」
「がんばる」
垂線をペン先で示しながら、説明する。
「この線は、それぞれの季節における一日──つまるところ昼と夜の長さを表している」
「──……?」
「下の地球だと、明るいところを通ってるよな」
「うん」
「上の地球は?」
「くらいとことおってる」
「それが冬至だ」
「──…………」
うにゅほの頭上に巨大なハテナが見えた。
「えー……と、暗いところをたくさん通ってるってことは、夜が長くて昼が短いってことなんだよ」
「……うん?」
「下の地球は逆だから、昼の長い夏至になる」
「ひだりとみぎは?」
「春分と秋分」
「ふうん……」
ああ、駄目だ、伝わっていない。
しかし、これ以上簡潔な説明をする自信はないのだった。
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2013
12.22

うにゅほとの生活757

2013年12月22日(日)

「はー……」
失意と共に玄関の扉を押し開く。
「ただいまー」
「おかえり!」
ぱたぱたと足音を立ててうにゅほが俺を出迎えた。
「パソコンなおった?」
「う」
言葉に詰まる。
裏に住む兄妹からPC関連の相談を受けたのだが、
「──……駄目でした」
「だめだったの」
「十年落ちのノートパソコンと第三世代のiPod nanoで、認識すらしないんだからそりゃ無理だ……」
一時間ほど粘ったが、どうしようもなかった。
「むりならしかたない」
ぽんぽん。
うにゅほが俺の肩を優しく叩く。
「そうなんだけど……」
溜め息をつき、言葉を継ぐ。
「期待されて、それに応えられないと、なんとなくもやもやするんだ」
「そうなんだ……」
うにゅほが神妙な顔で相槌を打った。
マフラーをゆるめながら階段に足を掛けたとき、
「あ、おしるこたべる?」
「おしるこ?」
「かぼちゃのおしるこ、おばあちゃんとつくった」
「かぼちゃ──ああ、冬至のか」
「そう、とうじ」
冬至という言葉の意味を、うにゅほは知っているのだろうか。
たぶん知らない。
あとで教えればいいや。
「食べる食べる」
「じゃあ、なべもってくる」
「鍋ごとじゃなくていいんだけど」
「じゃあ、おわん」
「あずき多めで」
「はーい」
祖母とうにゅほのおしるこは、素朴な甘みがして美味しかった。
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2013
12.21

うにゅほとの生活756

2013年12月21日(土)

ローソンを見かけたので、ふらふらと立ち寄った。
「なに買おうかな」
「あまいの?」
「どの甘いのを買おうかな」
誤解なきよう記しておくが、俺はしょっぱいものも好きである。
ただ、甘いものがとても好きなだけで。
「わたし、わっふるにする」
俺につられてか、うにゅほもかなりの甘党だ。
洋菓子より和菓子を好むが、僅差なので比較する意味はあまりない。
「俺、この生クリームのコロネかな」
「おいしそう」
「ひとくちあげよう」
「うん」
「飲み物は──」
軽く見渡し、
「タピオカココナッツミルクにしよう」
「たかいやつだ」
「高いやつだから、はんぶんこな」
「うん」
レジで会計を済ませる。
「3点で、561円になります」
財布を開くと、小銭があまりなかった。
千円札と五円玉で支払うと、
「444円のお返しになります」
お、ゾロ目だ。
「!」
背後でうにゅほの驚く気配がした。
お釣りを仕舞って出入口へと足を向けたとき、
「……すごいね!」
うにゅほが声をひそめてそう言った。
「──…………」
ぽんぽん、と頭を撫でる。
「?」
かわいい。
「なんだったら、レシートいるか?」
「いいの?」
「どうせ捨てるんだし」
「やた」
うにゅほの宝物は、こうして増えていくのである。
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