2013
09.30

うにゅほとの生活674

2013年9月30日(月)

福岡の親戚から梨が送られてきた。
段ボール箱を真っ先に開封したうにゅほが、
「でか!」
と驚嘆の声を上げた。
大げさな、と思いながらうにゅほの手元を覗くと、
「でかっ」
でかかった。
直径が、普通の梨の1.5倍はある。
新高という品種で、大きいものでは重さが1kg近くにもなるらしい。
ニイタカヤマノボレとは関係ないらしい。
「たべよう」
「まあ、せっかくだしな」
台所から果物ナイフを拝借していると、
「あ、わたしむく」
ソファの背もたれから身を乗り出し、うにゅほがそう言った。
「剥けるのか?」
「むけるよ」
「ふむ……」
しばし黙考する。
包丁慣れもしているし、怪我をすることはないだろう。
それに、案外するすると途切れずに剥いてしまうかもしれないし。
「じゃ、頼む」
「はい」
うにゅほに果物ナイフの柄を差し出すと、嬉しそうに受け取った。
「──…………」
「──…………」
集中している。
剥けては、いる。
剥けてはいるが、木彫りの彫刻を見ているようだ。
ゴボウのささがきのような皮が皿の上に散乱し、見るからに危なっかしい。
「……××」
「?」
「俺が剥く」
「うん……」
俺だって梨の皮剥きが得意というわけではないが、うにゅほよりいくらかましである。
「うー……」
意気消沈しているうにゅほを横目で見ながら、なんだか俺は安堵していた。
料理全般ではもう勝てないが、なんでもかんでも俺の上を行かれては、面目が立たないというものだ。
「でーきた、と」
切り分けた梨を皿の上に盛る。
「いただきます」
「いただきます」
サクッという軽い食感と共に、糖度の高い果汁が溢れる。
「あまい」
「美味しいな、この梨」
「うん、おいしい」
「でも、一切れでいいかな……」
「?」
小首をかしげる。
「梨って、二切れ目から砂を食ってるみたいにならない?」
「え、ならない」
「そうか……」
この感覚を共有できたことは、あまりない。
急いで食うからいけないのかな。
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2013
09.29

うにゅほとの生活673

2013年9月29日(日)

「××、おやつないー?」
「んー?」
ぼりぼりと腹を掻きながら尋ねると、うにゅほがソファから腰を上げた。
「うーと……」
台所でごそごそしたあと、
「チョコボールあった」
右手をこちらに掲げて見せた。
「何味?」
「えと……え、うん?」
うにゅほが目を白黒させる。
「ぱちぱち……」
「え?」
「ぱちぱち」
「何味?」
「ぱちぱちあじ……」
何味だよ。
いまいち埒が明かない。
うにゅほの傍に歩み寄り、チョコボールの箱を受け取って確認する。
「チョコボール、パチパチ……」
パチパチ、と書いてあった。
「ね?」
「パチパチってなんだ」
「……くだもの?」
「や、たぶん、食べるとパチパチするんだと思うけど……」
「チョコで?」
「チョコで……?」
想像がつかなかった。
とにかく、食べてみないことには始まらない。
「いっせーので、ね?」
「はいはい」
「いっせーのー……、で!」
ためらいの混じったうにゅほの掛け声と共に、チョコボールを噛み砕く。
「!」
心地良い刺激が口内に響く。
「ぱちぱちする」
「パチパチするな」
「おいしい」
「美味しいけど、べつにパチパチする必要はないな」
「うん」
森永の意欲は買おう。
「チョコボールはピーナッツだな、やっぱ」
「わたし、キャラメルすき」
「キャラメルも美味しいけど、銀歯が取れる恐怖が常につきまとうからな……」
「ぎんば?」
「銀歯」
「ぎんばって?」
「××、銀歯ないのか?」
「……ぎんばって?」
本当に知らないらしい。
「ちょっと、あーんしてみて」
「?」
小首をかしげながら、うにゅほが口を開ける。
「──……ない」
上下の歯列のどこにも治療痕が見当たらない。
「××、虫歯になったことないのか?」
「ない」
「……そのままの君でいてくれ」
「?」
歯医者の恐怖など、知らないままでいられるなら、そのほうがいいに決まってる。
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2013
09.28

うにゅほとの生活672

2013年9月28日(土)

自室に安置してあった愛犬の遺骨を、庭に埋めた。
本当は命日まで待とうかと思っていたのだが、11月の末日ともなると庭土も凍りついている。
天気がよかったので、なんとなく今日にした。
「──あ、墓石どうしよう」
家族で手を合わせたあと、そんなことに思い至った。
計画性のないことである。
「おはかのいし?」
「そう」
「でっかいしかくい?」
「あんなもの置けるか。あれ、すごい高いんだぞ」
「おいくら?」
「……ひゃくまんえん、くらい」
うろ覚えである。
「ひやー……」
うにゅほが目を丸くした。
「むりだ」
「無理だ」
「どうしよう」
「どうしような……」
「あ、あれは?」
名案とばかりにうにゅほが人差し指を立てた。
「ほねガム」
「……喜ぶとは思うけど」
却下した。
「とりあえず、いい形の漬物石を探そう」
「うん」
祖母の漬物石置き場を漁っていると、
「あ、これ──……ぎぎぎ」
うにゅほが抱き上げた石塊は、上下に長く、角張っていて、手頃に思えた。
「俺が持つよ」
「ありがと」
「あとは、墓碑銘か……」
ここに眠る的なものは望むべくもないが、名前くらいはあってもいい。
「でも、彫刻刀でなんとかなるもんじゃないしなあ」
「だめなの?」
「駄目だと思う。ドリルで水晶に穴開けられなかったの、覚えてるだろ」※1
漬物石が水晶と同じ硬さとは思わないが、ドリルで文字を刻むのが難しいことはわかる。
「まさか、コロの二文字を刻むために専用の工具を買うわけにもな」
「うん……」
うにゅほが小石を拾う。
「かけるかな」
「すこしは書けるかもな」
ふたりでしばらく試行錯誤して、遺骨の上に墓石を突き立てた。
「それっぽいな」
「それっぽい」
顔を見合わせて、部屋に戻った。
浅い引っ掻き文字は、すぐに雨で流れてしまうだろう。
まあ、いいか、と思った。
覚えていればいいんだから。

※1 2013年7月15日(月)参照
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2013
09.27

うにゅほとの生活671

2013年9月27日(金)

目を開けると、午後五時だった。
眠っていたわけではない。
灼熱の布団のなかで、なかば強引にまどろんでいただけである。
それでも安静にしていたことに違いはなく、多少なりとも復調しているように思えた。
「──……ずっ」
鼻水は止まらないが。
自室の扉を開くと、リビングのソファに浅く腰掛けていたうにゅほが視線を上げた。
「おはよ、だいじょぶ?」
「昨日よりは」
「びょういんは?」
「えー……」
掛け時計を見上げる。
午後五時変わらず。
「……今日はいいや」
「いかないの?」
「行かない」
「あさ、いくって」
「言ったけど……」
診療時間には間に合うかもしれないが、面倒だった。
この年齢まで病弱を通していれば、風邪の程度は経験則でわかるし、どんな診断を下されてどんな薬を処方されるかもわかる。
それが対症療法薬であり、市販の風邪薬でも十分な効果を得られることも知っている。
「今日は様子を見て、明日──」
そう言いかけて、気がついた。
うにゅほが外出用のポシェットを提げている。
「……もしかして、ずっと待ってたのか?」
「まつ?」
「病院行くから、俺が起きるの待ってたのかって」
「うん」
さも当然のように頷いた。
「うー、あー……」
唐突な罪悪感に、頭を抱える。
いいのか。
いいのか、俺は、それで。
たかだか面倒くさい程度のことで、このいじらしい少女の気遣いを蔑ろにしていいのか。
「……行くか、病院」
「うん」
うにゅほがぴょこんと立ち上がる。
「ちょっと待ってくれ、着替えるから」
「はい」
ぽすんと座る。
その様子を微笑ましく眺め、きびすを返した。
もそもそと着替えを終え、財布をポケットに仕舞う。
「あ、診察券」
かかりつけの病院の診察券を確認し、
「──…………」
おもむろに自室の扉を開けた。
「いく?」
「診療時間、五時までだった」
「ごじ……」
掛け時計を見上げる。
午後五時五分。
「明日だな」
「うん……」
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2013
09.26

うにゅほとの生活670

2013年9月26日(木)

「──……ずず」
予感はあった。
頭は重いし、全身がだるかった。
なにより、昨日からずっと鼻水が止まらなかった。
「やっぱ、かぜ?」
「ずー」
「やっぱし……」
「ここ十年くらい、毎年この時期に風邪引いてる気がする……」
「きょねんもひいてた」
「そうだっけ」
日記を読み返したところ、引いていた。※1
「──…………」
「?」
うにゅほを手招きし、おでこに手を当てる。
もう片方で、自分の額を覆う。
「……完全に、あれだ、熱があるな」
「たいおんけい」
「いや、いい、いい。具体的な数値なんて知ったって、余計に具合が悪くなるだけだ」
「そういうもの?」
「すくなくとも、俺はそうだ」
あからさまな高熱なら、測らずともわかるのだし。
「ねたほういいよ」
「うん……」
しかし、やることは山積みである。
今週の目標をコピー用紙に印刷し、コルクボードに貼りつけているのだが、木曜日に至ってまだ二割も消化できていない。
持ち越すのは嫌だが、つらい。
「寝る……」
体調の悪さに負け、うにゅほの寝床に倒れ込んだ。
「おやすみ」
ぽふぽふと布団を叩き、うにゅほが扉を開く音が聞こえた。
「──……ぶー……」
二時間後、苦しみながら起きた。
体調を崩したときは切迫感が増すもので、普段であればのんべんだらりとしているものを、急いでこなさねばとたまらなくなる。
なかばほど眠りについた意識を引っ張り起こし、デスクに向かおうと歩き出したとき、
──どんっ
と、右肩に衝撃が走った。
本棚にぶつかったのである。
「あー……」
床を見ると、いつか百円ショップで購入したうさぎのオーナメントが割れて、粘性の液体が漏れ出していた。
指先ですくい取ると、無数の細かなフィルムが虹色にきらめいた。
「◯◯?」
破砕音を聞きつけたか、うにゅほが顔を出した。
「あ……」
「ごめん、割っちゃった……」
うにゅほが哀しげに眉をひそめる。
罪悪感が皮膚を粟立たせた。
「かたづけるから、ねてて」
「ごめん」
「ね」
優しく背中を押され、布団に戻った。
苦悶しながら起床すると、オーナメントは綺麗に片付けられていた。
ただ、拾いきれなかった虹色のフィルムが、本棚の足元にいくつか散らばっていた。

※1 2012年10月10日(水)参照
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2013
09.25

うにゅほとの生活669

2013年9月25日(水)

「ヤマダ電機行くか」
「いくー」
うにゅほはヤマダ電機が好きである。
平日昼間の閑散とした感じが特に好きらしい。
「なにかう?」
「PC用のスピーカーを買おうと思って」
「すぴーかー?」
「ああ」
「?」
小首をかしげる。
「まえ、なかった?」
「あった。あったけど、友達にあげちゃった」
「あげちゃったんだ」
「使わなかったしなあ」
「つかわないの?」
「使い道を思いついたから」
「ふうん」
実を言うと、PC用のスピーカーは幾度となく購入している。
主に特売時に衝動買いするのだが、そのたび使い道に困り、死蔵したり、売ったり、あげたり、捨てたりしてきた。
しかし、今回は違う。
明確な使用目的があるのだ。
「あけていい?」
「いいよ」
年間商品割引券を使い、1,480円で購入したELECOM製のスピーカーを、うにゅほが開封する。
「どうするの?」
人差し指を立て、口を開く。
「それはな──」
俺とうにゅほの部屋は、かつて二部屋であり、壁を撤去してひとつに繋げたものである。
上から見ると「凹」のような形状をしており、真ん中の突起部こと中央本棚によって、生活スペースと寝室スペースとに仕切られている。
生活雑貨の詰め込まれたごちゃごちゃとした生活スペースに比べ、寝室スペースは空間を持て余し気味である。
そこで、PCのある生活スペースからケーブルを引き、寝室スペースで音楽を聴くことはできまいか。
「と、考えたわけだ」
「ほおー」
「テーブルの上に飲み物を置いて、クラシカルなBGMを流しながら優雅に読書──なんてことも可能になる」
自分で言っておいてなんだが、やるかなそれ。
「まあ、なんだ、そうでなくても、イヤホンなしで音楽が聴ける環境ってのはあっていいと思うし」
「うん」
「じゃあ、セッティング手伝ってくれ」
「はい」
中央本棚は、90cm幅と60cm幅のふたつの本棚を組み合わせたものであり、そのあいだに僅かながら隙間がある。
その隙間にUSBケーブルを通し、寝室スペースまで引くのである。
「じゃあ、流すぞ」
「うん」
適当に目についたCDをセットする。
優美なチェロの調べがスピーカーから流れ出した。
「おー……」
「USB電源のわりに良い音じゃんか」
「ゆうがだ……」
「じゃあ、このまま読書だな」
「うん」
そのまま夕方までゆったりと読書に勤しんだ。
けっこういいな、これ。
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2013
09.24

うにゅほとの生活668

2013年9月24日(火)

姿見の前でニット帽をかぶり、うにゅほに声を掛けた。
「ダイソー行くけど、行く?」
「いく」
即答し、腰を上げる。
「なにかうの?」
「ボール……いや、サインペン? なにペンって言うんだ、あれ」
「?」
「ふつうのボールペンよりインクが濃くて、サインペンより細くて滲まないペン……」
「おびにみじかし?」
「それは悪い意味だろ」
つまり、図面を引くときにちょうどいい筆記用具が欲しいのである。
「ないの?」
「パッと見ないなあ」
すくなくとも普段使いの筆入れにはない。
「ひきだしは?」
「デスクの?」
「まえそうじしたとき、たくさんでてきた」※1
「あー……」
大きい筆入れにすべて突っ込んで引き出しの奥に仕舞って以来、意識に上ったことすらなかった。
「ダイソー行く前に調べてみるか」
「うん」
三番目の引き出しから、パンパンに膨れ上がった合成皮革の筆入れを取り出し、中身をカーペットにぶちまけた。
「うわ、クルトガ何本あるんだよ」
「これは?」
「このネームペン、先が折れ曲がってるんだけど……」
「あ、これいいよ」
「それは赤ペンだろ」
喧々囂々の末、三本のボールペンが手元に残った。
「使えるの、けっこうあったな」
「かわなくていいね」
「買うにしても、百均だと一種の賭けになるからな……」
文具店に行けばいいのだが。
「あ、これかけるよ」
「どれ?」
「これ」
うにゅほの右手にはペン先の折れ曲がった先ほどのネームペンがあった。
「それは駄目だろ……」
「かけるよ」
うにゅほがメモ帳にネームペンを走らせる。
「手首をそんな不自然な角度に曲げなきゃいけないなら、それは書けないってことだろ……」
先折れネームペンはゴミ箱行きとなった。

※1 2013年5月25日(土)参照
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2013
09.23

うにゅほとの生活667

2013年9月23日(月)

久しぶりに、バイクで遠出をした。
もともとは八月の下旬あたりに予定していたものだが、天候が安定しないので一ヶ月もずれ込んでしまったのだ。
「忘れ物ないか?」
「ない!」
「じゃ、行こうか」
「はい」
うにゅほが俺に抱きついたことを確認し、アクセルを回した。
国道5号線を西進し、229号線に乗り換えたのち、積丹岬を目指すルートである。
「──…………」
小樽に入ったあたりで、早くも腰が痛い。
普段乗りではあまり気にならなかったが、同乗者に抱きつかれていると、腰のあたりに余分な慣性がかかるらしい。
休憩がてらコンビニに寄り、
「……腰痛くなってきたから、シートについてるベルト掴んでくれない?」
「ベルト……?」
「これ」
シートに巻かれた革製のタンデムベルトを示す。
「こわい」
「ちゃんと掴んでれば落ちないから」
「ほんと……?」
なだめすかして発進した瞬間、背中をバンバンと叩かれた。
慌ててブレーキを踏む。
「駄目か……」
「だめだ……」
「……じゃあ、帰ったら腰ふみふみしてよ」
「ふみふみする……」
余市町で遅めの昼食をとり、積丹岬に到着したのは午後三時半だった。
「わあ──……」
狭く暗いトンネルを抜けると、遥か下に島武意海岸を望む展望台に辿り着く。
「晴れてると、もっと綺麗なんだけどな」
「あ、かいだんある」
「降りられることは降りられる、けど──」
一段が膝丈ほどもある九十九折の急坂を、数十メートルも降りて行かなければならない。
そして、一度降りれば登らなければならない。
へろへろになりながら駐車場へ戻り、腕時計を見た。
「午後四時か……」
思ったより遅くなってしまった。
神威岬にも寄る予定だったのだが、あそこは突端まで1kmも歩かなければならない。
「あんまり見れなかったけど、帰ろうか」
「うん……」
「すぐ十月になるから、神威岬は来年だな」
「ここよりすごい?」
「ここは綺麗だけど、神威岬は広いかな。地球の丸みがわかるから」
「へえー」
引き返すのも面白くないので、帰りは積丹半島を大回りし、共和町から5号線に戻る周回ルートを走ることにした。
しかし、日が沈んでからが問題だった。
「──……さぶい」
「寒い……」
ガチガチと歯の根を鳴らしながら、道の駅のキノコ汁と鼻水とをすする。
ふたりとも防寒用のライダースジャケットを着込んでいるのだが、とてもじゃないが追いつかない寒さである。
「……あ、そうだ」
「?」
うにゅほに提げてもらっているカバンに手を入れる。
「雨具だけど、上下のウインドブレーカーを持ってきてたんだ」
「もっとはやく……」
申し訳ない。
直接風を受ける俺が上を、うにゅほが下を着用し、午後八時ごろ、ようやく帰宅することができた。
「つかーれーたー……」
うにゅほが布団にダイブする。
「帰りがきつかったな……」
「うん……」
「楽しかった?」
「うーん?」
「もう行きたくない?」
「いく」
懲りたころに行きたくなるんだよな、こういうのは。
「じゃあ、ふみふみしてくれな」
「はーい」
今夜はよく眠れそうだ、と思った。
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2013
09.22

うにゅほとの生活666

2013年9月22日(日)

うららかな陽気に眠気を催したので、抗うために遅めの昼食をとることにした。
「外食にしよう」
「?」
「××、おひる食べた?」
「まだ」
「というわけで、どこ行きたい?」
「どこ?」
うにゅほが会話に追いつくのを待って、もう一度尋ねた。
「おひる食べに行くなら、どこがいい?」
「うーと……」
思案する。
「あ、あれたべたい」
「どれ」
「ミスドのやつ」
相変わらず言葉が足りないが、なんとなくわかった。
「ちっちゃいのがたくさん入ってるやつか」
「そう」
「あれなー……」
昼食というかんじではない。
「じゃ、それはおやつにして、パスタかモスにしよう」
無難な選択肢により、昼食はパスタとなった。
「──……うう」
昼食後、油分で重くなった胃袋を抱えながら、ミラジーノの運転席を開いた。
「ペペロンチーノって初めて頼んだけど、あんな油まみれとは……」
「すごかったねえ」
「どうせ油まみれなら、カルボナーラ頼めばよかった」
うにゅほは、昆布とバジルソースのパスタなる色物を注文し、見事に当てていた。
ペペロンチーノより美味しかったです。
「ミスド行く前に、本屋寄るか」
「うん」
なにか新刊でも入っていないだろうか。
そう考えて駐車場に乗り入れると、めったやたらに混んでいた。
よくわからないが、警備員までいる。
近くに寄って尋ねてみると、なんでもAKB48の握手会があるらしい。
「へえー……」
と頷いて、礼を言った。
「握手会だって」
「えーけーびー?」
「名前くらいは知ってるだろ」
「ひとのなまえはしらない」
「俺も知らない」
テレビもそれほど見るわけじゃないし。
「××、アイドルとかどうよ」
「どう?」
「アイドルになって、わーきゃー言われたいとか思う?」
「おもわない」
だろうなあ。
うにゅほの興味は閉じている。
すくなくとも今は、俺に頭のひとつも撫でられていたほうが嬉しいのだろう。
「──…………」
なでなで。
「?」
不思議そうな顔をしていた。
書籍コーナーは空いていたので、棺担ぎのクロ4巻を購入し、ミスタードーナツへと車を走らせた。
ミスドビッツはそれなりに美味しかった。
ふたりで半分ほど食べて、残りは家族に残しておいた。
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2013
09.21

うにゅほとの生活665

2013年9月21日(土)

自室の扉を開くと、うにゅほがテレビを見ていた。
「んー……」
なんだか、ほっぺたが膨らんでいる。
飴玉でも舐めているのだろうか。
隣に腰を下ろし、並んでテレビを鑑賞していると、
「ん!」
と、うにゅほが声を上げた。
「ひっふ、ひっふ!」
ティッシュを欲しがっているらしい。
慌てて二、三枚手渡すと、
「だぅ」
うにゅほが赤いものを吐き出した。
「──ッ!」
吐血!?
動転して腰を浮かしかけたが、それにしては量が少ないし、苦しそうでもない。
「え、なに、どうしたの」
「ふぉへはに」
「ぺっしなさい、ぺっ」
「ぺ」
血のついたティッシュを丸めて捨てる。
「ほっぺたのうらになんかあって、なめてたらやぶれた」
「あー……」
血豆である。
「最近、ほっぺたの裏噛まなかった?」
「かんだ」
よくしってるなあ、という顔をする。
「まあ、なんだ、なんてことなくてよかったよ」
「うん」
なんてことなかっただけに、狼狽えたことがすこし恥ずかしい。
「噛んだところにできるみたいだから、気をつけないとな」
「うん」
「でも、気をつけるって言ってもな……」
「うん……」
どう気をつけていいものか、よくわからない。
「噛み切れないものを食べないとか」
「ホルモン?」
「ガム?」
「うーん……」
「顔が浮腫んでるときに食べない、とか」
「なんで?」
「外に膨らんでるなら、中にも膨らんでるだろ、きっと」
「ふうん」
「あと、寝ボケながら食べないとか」
「たべないよ」
「俺は食べるかな……」
毎朝そうである。
「おきてからたべましょう」
うにゅほの言うとおりだと思った。
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