2013
08.31

うにゅほとの生活644

2013年8月31日(土)

ぴんぽーん
「お届けものですー!」
「──…………」
巨大な郵便物が届いた。
「なに?」
「なんだろうなあ」
中身は既にわかっているが。
「またかったの……?」
「またってなんだ」
通販なんてそんな利用してないだろ。
自室へ運ぼうと、段ボール箱を抱え上げ──
「うっ」
腰に来た。
「おもい?」
「ちょっと」
「てつだう」
「いや、階段だと逆に危ない」
重いからこそ、手伝わせられない。
えっちらおっちら階段を上がり、なんとか自室へと運び込んだ。
「ふー……」
腰を伸ばす。
「あけよう」
「ハサミ取ってきて」
「はい」
梱包用テープをハサミで裂き、開封する。
「あ!」
うにゅほが声を上げた。
「ほんだ!」
「本だな」
段ボール箱にハードカバーがぎっしり、取り出すのも億劫なくらい詰まっていた。
「かったの?」
「買ってないって……」
「どしたの?」
「ほら、お中元にメロン送った友達がいたろ」
「いた」
「お返しだってさ」
「おかえし……」
随分と嵩が増したものだ。
「でも、どこしまうの?」
「そこなんだよなあ……」
本を送る旨は事前に聞かされていたのだが、思っていたより冊数が多かった。
「詰め込めば入らないことはないけど、バラバラになるなあ」
「そだねえ」
「うーん……」
しばし思案する。
「……この量だと、本棚を増設したほうが早いか?」
「え!」
うにゅほがびっくりする。
「どこおくの?」
「部屋に入ってすぐ左側なら、なんとか置けると思う」
「すいっち……」
「電灯なんて実質リモコン操作じゃないか」
「そだけど」
自室の図書館化を懸念しているらしい。
「でも、空いてる場所は……」
「──あ、あそこ!」
うにゅほが、北東側本棚の最上段を指さした。
「あ、あーあー、なるほど」
そこは、二十年間ずっと意識の外側にあった、不要物置き場だった。
父親が飽きたラジコンや、PCエンジンの外箱などが、歴史を感じさせる佇まいで鎮座している。
「ここなら、掃除すれば、ハードカバーでも100冊くらいは入るかな」
二段にするとはみ出るが。
「ほんだな、かわなくていいね」
「そうだな」
「──…………」
「──…………」
「そうじ、しないの?」
「……今日はいい」
大掃除の予感がする。
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2013
08.30

うにゅほとの生活643

2013年8月30日(金)

家の裏手に住む兄妹に、PCの点検を依頼された。
マウスの故障を指摘し、不要なソフトウェアを削除し、アンチウィルスソフトを入れ直すと、サクサク動くようになった。
お礼のプリンケーキとシュークリームを提げ、帰宅した。
「ただいま」
「おかえり、パソコンなおった?」
「不具合はあったけど、大した原因じゃなかった」
「すごいねえ」
謙遜ではなく、本当に凄くもないのだが。
ちなみにうにゅほは家で留守番だった。
裏手に住む家族の威勢のいい気風が、どうも肌に合わないようだ。
「もらったの?」
右手のビニール袋を指す。
「ああ、もらった。一緒に食べよう」
「なに?」
「シュークリームと、プリンが、ひとつずつ」
食卓テーブルの上に、中身をとんと置いていく。
二種類あるのは、兄妹が気を遣ってくれたためだろうか。
「××、どっち食べたい?」
「うーと、◯◯は?」
「俺はどっちでもいいかな」
どっちも好きだし。
「××が選んでいいよ」
「だめ」
うにゅほがきっぱりと言う。
「◯◯のだから、◯◯がたべたいのたべないと、だめ」
「──…………」
妙にしっかりしている。
「えー、プリンケーキとシュークリームかあ……」
どうしよう、本当にどっちでもいい。
「じゃあ、じゃんけんで勝ったほうが好きなほうを選ぶというのは」
「だめ」
頑固である。
「えー……──」
ここまで来ると、適当に選ぶのも癪だ。
「よし、わかった」
「どっち?」
「××が食べたくないほうを、食べたい」
「たべたくないほう?」
「そう。
 だから、××がはやく選んでくれないと困る」
「うーと……?」
うにゅほは混乱している。
「ほらはやく、はやくほら」
「え、じゃあ、プリン」
「じゃあ俺はシュークリームな」
「──…………」
しばし思案し、
「ちがう!」
気づいた。
「交換する?」
「しないけど……」
「どうせ、ひとくち交換するんだから、いいじゃないの」
「そだけど……」
靴の上から爪先を掻くような顔で、なんだかんだ美味しそうにプリンケーキを頬張っていた。
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2013
08.29

うにゅほとの生活642

2013年8月29日(木)

人は、忘れる生き物である。
ふと脳裏をよぎった単語の羅列など、次の瞬間には意識の海に掻き消えてしまう。
しかし、まったく同じシチュエーションに遭遇したとなれば、どうだろう。
「──…………」
うにゅほとぼんやりテレビを眺めていたときのことだった。
「あふらっくって、なまえ?」
画面に映っているアフラックダックを指さし、うにゅほがそう尋ねた。
前にも同じことを訊かれた気がする。
「うーん、まあ、カッコウもカッコウって鳴くしな」
「そか」
「──……!」
思い出した。
いつだったか、やろうと思って忘れてしまっていたことを。
「××」
「?」
「こっち向いて」
「はい」
うにゅほの顔に手を伸ばす。
そして、親指と人差し指で左右の口角を挟み込んだ。
ぶに。
「はに?」
「あひるぐち」
「あひう?」
「あひるみたいなくち」
これをやろうと思ったのだ、かつての俺は。
まあ、やってみたからと言ってどうなるものでもないが。
「アフラックって言ってみて」
「はうらっく」
「素直だなあ……」
あひるぐちを解除し、うにゅほの頭を撫でた。
「?」
小首をかしげる。
「まあ、なにってわけでもないんだけど」
「うん」
「ちょっと、やってみたくなって」
「ふうん」
興味を失ったようで、うにゅほが画面に視線を戻した。
本当に鷹揚な娘である。
どこまでなら怒らないのだろう。
鼻に指を突っ込んだりしたら、さすがに怒るだろうなあ。
そんな益体もないことを考えながら、うにゅほのほっぺたをつついたりして遊んでいた。
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2013
08.28

うにゅほとの生活641

2013年8月28日(水)

「──……ふ……」
上体を起こし、生あくびを噛み殺す。
蓬髪を掻き乱しながらリビングへ向かうと、うにゅほがぽけらっとテレビを見ていた。
「あ、おはよ」
「おふぁ──……よう」
挨拶の途中にあくびが混じった。
「ねむそう?」
「脳は起きてるけど、体がついてこない」
「ねぶそくだ」
「雷様のおかげさまでな」
「かみなりさま?」
うにゅほが小首をかしげる。
「……すやすや寝てると思ってたけど、本当になにも気づかなかったのか?」
「なにー?」
不安そうな様子で、口を横に広げる。
「ああ、でも、寝てて正解だったかもなあ」
「──…………」
焦らしてみるが、可哀想なのでやめた。
「昨夜、雷が凄かったんだよ」
「かみなり……?」
うにゅほがそわそわと窓の外を見上げる。
雷が苦手なのだ。
「今は晴れてるから大丈夫だろ」
「うん」
「ただ、昨夜は本当に凄かった。
 今年は雷多いけど、そのなかでも断トツだよ」
「そんなに?」
きょとんとするうにゅほに、身振りを交えて説明する。
「雷って、どうして光ったあとに音が鳴るか知ってるか?」
首を横に振る。
「それは、音よりも光のほうがずっと速いからだ。
 だから、光と音に時間差があればあるほど、雷は遠くに落ちたってことになる」
「ふん」
「逆に言えば、光ってすぐに雷鳴があれば、それだけ近くに落ちたってことだ」
「ふんふん」
「近くに落ちれば、音だって凄い。
 雨でもなく、風でもなく、雷が落ちただけで家が揺れるんだ」
「──…………」
うにゅほの表情に不安の影が落ちる。
「それが、一分間に一度、およそ二時間も続いたんだから、起きなくてよかっただろ」
「おきなくてよかった……」
俺でさえ恐ろしかったのだから、うにゅほなんて布団をかぶってべそをかいていてもおかしくはない。
「……そういえば、近所に落ちたっぽいんだよな」
「え……?」
「雷、近所に落ちたって」
「どうして?」
「理由なんて──……」
質問の意図を取り違えていたことに気づく。
雷が落ちた理由ではなく、それを知ることができた理由が気になったのだろう。
「や、消防車のサイレンが聞こえたんだよ」
「しょうぼうしゃ?」
「落雷に火事はつきものだからな。
 ついでに豪雨だったから、大した被害ではないと思うけど」
「だいじょぶかな……」
「大丈夫だろ」
たぶん。
はらはらしているうにゅほの頭を撫でて、こらえきれずにくすりと笑った。
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2013
08.27

うにゅほとの生活640

2013年8月27日(火)

うろうろ。
ごそごそ。
「──…………」
うにゅほがなにかを探している。
なんだか深刻な様子で逆に声を掛けづらかったのだが、数分も見つからないのであれば、そうも言ってはいられまい。
「どうかしたのか?」
「!」
うにゅほがびくっとする。
「なんでもない、なんでもない……」
そう言いながら、下手な笑顔でぱたぱたと手を振ってみせる。
なんでもないことあるかい。
「──で、なにをなくしたんだ」
「!」
再び肩を震わせる。
視線をしばし右に泳がせたあと、観念したようだった。
「しおり……」
「しおり?」
「◯◯くれた、てつのしおり」
「あー」
ちょっと思い出せないくらい以前にプレゼントした、金属製のブックマーカーのことだろう。
うにゅほが愛用してくれていることは知っていた。
「見るからに失くしやすそうだもんな……」
フックのついた細長い棒のような形状をしているため、どこに滑り込んでいてもおかしくはない。
「じゃあ、一緒に探そう」
「はい……」
決まり悪そうに、うにゅほが頷いた。
「ないな……」
「ない」
布団をひっくり返してまで探したのだが、さっぱり見当たらない。
おかげで部屋が整頓されてしまった。
「××が最後に本を読んだのってどこなんだ?」
「えと──……」
本来であれば最初にすべき質問だが、ここまで見つからないとは思っていなかったのである。
「あっ」
うにゅほの頭上にエクスクラメーションマークが閃いた。
「──…………」
そして、リビングへ通じる扉をしずしずと開く。
すこし待っていると、帰ってきた。
「ごめいわくを……」
ブックマーカーを両手で掲げ、うにゅほがぺこりと一礼した。
「よかったけど、どこにあったんだ?」
「といれ……」
「あれ、××ってトイレに本とか持ってく人だっけ」
「さいきん……」
恥ずかしそうに答える。
俺の真似をしたのかもしれない。
「さっきおしっこしたとき、おとしたとおもう」
「えっ」
不思議な言葉を聞いた気がする。
「おしっこしたとき?」
「うん」
「あ、そうか、座るから……」
男性ゆえか、その発想はなかった。
「だめ?」
「いや、あんまり居座らなきゃいいと思うけど」
「そっか」
「あ、鍵の掛け忘れには気をつけて」
「はい」
忘れそうなイメージがあるので。
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2013
08.26

うにゅほとの生活639

2013年8月26日(月)

リビングには、直角に配置された二台のソファがある。
片方は三人掛け、もうひとつは二人掛けで、それぞれ奥行きの深い革張りのソファだ。
揃いで購入したものだから、座り心地に差はない。
ないはずなのだが、何故か二人掛けのソファに人気が集中している。
その理由は、恐らく「横になりやすい」からだろう。
三人掛けのソファより占有感が少ないし、肘掛けと肘掛けのあいだにすっぽり収まって心地がいいのだと思う。
二人掛けのソファで気持ちよく昼寝するうにゅほを眺めながら、そんなことを考えていた。
「──……ぅ……」
座席を背もたれにして読書をしていると、しばらくしてうにゅほが目を覚ました。
「起きた?」
「ねてた……?」
「寝てた」
「おきた」
「随分と寝心地いいんだな、そこ」
「うん」
「俺、リビングで寝ることなんて、まずないからなあ」
自室のソファを寝台にしているのだから、昼寝くらい布団の上でしたい。
「ここ、ねやすいよ」
「それはまあ、知ってる」
父親も弟もよく爆睡してるから。
「◯◯、ねたことない?」
「××、俺がここで寝てるの見たことある?」
「ない」
「そういうこと」
「じゃ、ためしてみましょう」
うにゅほがソファから下りて、俺の腕を引いた。
「ここで寝ればいいの?」
「うん」
まあ、付き合っても構わないだろう。
「本読んでていい?」
「いいよ」
ソファに腰を下ろし、そのまま仰臥する。
「……あ、なんか居心地はいいな」
「でしょ」
うまく腰が折れ、無理のない体勢が取れる。
それに、なんだか温かいし。
そのまま読書を続けるうち、
「──…………」
気がつくと、二時間が経過していた。
記憶がない。
眠っていたらしい。
なんだこれ、自室のソファと交換してくれないかな。
うにゅほの姿を探して足を下ろすと、
「ぎゅぬ」
足元で寝ていたうにゅほの背中を踏んづけてしまった。
うにゅほは、わりとどこでも寝られるらしい。
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2013
08.25

うにゅほとの生活638

2013年8月25日(日)

午前中から愚図ついた天気が続いていた。
「あ、はれた」
うにゅほが窓から空を見上げ、振り返って微笑んだ。
「晴れたかなあ……」
たしかに晴れ間は見えている。
しかし、最近の天気を鑑みるに、そう易々と事が運ぶとは思えない。
うにゅほの隣に立ち、窓の外へ視線を向けた。
「──…………」
遥か遠く、厚く黒い雲が滞留しているのが見えた。
気圧の偏差が激しいのだろうか。
激しいんだろうなあ。
「ね?」
「うん……」
嫌な予感はしていた。
しばらくして、

──ジャッ!

と、熱したフライパンに大量の水をぶちまけたような音がした。
「!」
うにゅほが、小動物のようにキョロキョロと視線を動かす。
「窓閉めて! 家中の! ぜんぶ!」
「え、え……」
「はやく!」
叫びながら、ベランダへ通じる窓を閉める。
風上だったのか、雨粒は入ってきていなかった。
「は、はい!」
家族総出で窓を閉めたが、両親の寝室は被害を免れなかった。
「ゲリラ豪雨なのか、スコールなのか、よくわからんけど──……」
水の散弾を浴びているような窓の外の惨状を見ながら、呟く。
「今日は、特にひどいな」
「そだね……」
「空の上で誰かがタライに足を引っ掛けたみたいな」
「うん……」
水に流されてしまった。
「……怖い?」
「ちょっと」
「そっか」
うにゅほの隣に腰を下ろす。
「……ことし、てんきへんだねえ」
「北海道はまだマシなほうで、本州だと都市部が洪水だって聞くからな」
「あ、テレビみた」
「怖いなあ」
「こわいねえ……」
iPhoneを取り出し、天気予報アプリを起動する。
「しばらく雨だって」
「そか……」
「でも、こないだまでよりマシだよ」
「そなの?」
「週間天気予報がすべて、初めて見るマークだったからな」
「はじめて?」
「たぶん雷のマークだと思うけど、二週間くらいずっとそうだった」
「かみなり、なってたねえ」
「鳴ってたなあ」
予報は当たっていたということだろう。
「ちゃんと晴れたら、出かけような」
「うん」
約束をして、デスクに戻った。
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2013
08.24

うにゅほとの生活637

2013年8月24日(土)

近所に、夏から秋にかけてのみ店を開く露天の八百屋がある。
農家直送なので、大きくて新鮮である。
漬物用のキュウリを仕入れるために足を運んだのだが、今年は不作らしかった。
「きゅうりないの?」
「注文すればあるけど、今はすこししかないって」
「でっかいきゅうりあるよ」
うにゅほが指さした先に、巨大なトゲのないキュウリみたいなものがあった。
「なんだこれ、冬瓜かな」
「とうがん?」
「冬の瓜って書いて──……」
冬瓜って夏野菜なのか?
冬瓜なのに?
「それぁ、ズッキーニだな」
八百屋のおじさんが、ひょいと顔を覗かせた。
「ずっきーにだって」
「冬瓜となにが違うんです?」
「味が違う」
身も蓋もないことを言われてしまった。
「とうきび茹で上がったけど、兄ちゃんたちどうだ」
「とうきび」
うにゅほが俺の顔を見上げる。
食べたいのだ。
「じゃあ、6本ください」
「あいよ」
茹でとうきびは160円だから、千円札でお釣りが来る。
「ここの茹でとうきびは絶品だからなあ」
「そなの?」
「あれ、食べたことなかったっけ」
「ない」
キュウリの注文と支払いを済ませ、帰宅した。
「とうきびたべよう」
「はいはい」
食卓テーブルにつき、茹でとうきびを2本取り出した。
「あつい、あつい」
「そうか?」
手の皮が薄いのだろうか。
なんとか持ち方に折り合いをつけて、うにゅほがとうきびに齧りついた。
「!」
目を丸くする。
「はじける」
「粒が大きいからな」
「あまくて、しょっぱくて、ぷりぷりして、うまい」
まったくその通りである。
トウモロコシ自体の新鮮さや質の良さはもちろんだが、なにより塩加減が絶妙なのだ。
瞬く間にたいらげ、俺たちの視線がビニール製に引き寄せられた。
冷めないうちに──
「……これは、家族みんなのぶんだからな」
「そうですよ?」
我慢したのだった。
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2013
08.23

うにゅほとの生活636

2013年8月23日(金)

「よ」
「おお」
起床すると、リビングに弟がいた。
退院したのである。
「三週間で済んだか」
「まね」
「はい、よかったねえ」
うにゅほが弟に駄菓子を振る舞った。
テーブルの上にあったらしい。
「……兄ちゃん結局一回しか見舞いに来てくれんかったな」
弟がじろりとこちらを一瞥する。
「週末のたびに帰ってくるやつを、なんでわざわざ見舞わなきゃならないんだよ」※1
「そうだけどさあ」
「それに、××だって同じ一回だろ」
「!」
ポテトフライをさくさく食べていたうにゅほが、引き合いに出されて目を丸くする。
「いや、××は二回来てくれたから」
「え、そうなの?」
尋ねる。
「うん」
頷く。
「母さんと一緒に来たんだよ、一回」
「へえー」
それは知らなかった。
というか気づかなかった。
「兄ちゃんたち、いつも一緒ってわけじゃないんだな」
「そりゃな」
「いっしょだよ」
うにゅほが口を挟む。
「だいたいいっしょ」
「まあ、だいたいはそうか」
「結局そうなのか。
 羨ましいような、そうでもないような……」
「最初、××をお前の部屋に住まわせるって案もあった気がするけど」
「あったことはあったけど、あれは兄ちゃんの部屋で俺が厄介になるって話だったろ。
 そんなん嫌に決まってるじゃんか」
「そうだっけ」
「結局んとこ、二部屋続きでプライバシー守れそうな兄ちゃんの部屋しかないってことになってさ」
「あー……」
そんなこともあった気がする。
「ぷらいばしー?」
「今や着替えのときくらいしか守られていないものだよ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「なんだかんだで家族になるし、兄妹にもなるもんだなあ」
弟がうにゅほの頭をぐりぐりと撫でた。
「──…………」
うにゅほは、されるがままにしていた。

※1 2013年8月9日(金)参照
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2013
08.22

うにゅほとの生活635

2013年8月22日(木)

小気味良い足音が階下から響き、自室の扉が開いた。
「◯◯、テレビとどいた」
「テレビ──ああ、そうか」
昨日、狸小路で購入したものが届いたのだろう。
「あれは、テレビじゃなくて、PC用のディスプレイだよ」
「?」
小首をかしげる。
「テレビってかいてたよ?」
「えっ」
嫌な予感がした。
慌てて玄関へ向かうと、平たいダンボール箱が引き戸に立て掛けられていた。
「21.5インチワイド液晶──……テレビ」
いや、ちょっと待て。
店頭では、たしかにディスプレイと表示されていたはずだ。
くらくらしながら表記を読み進めていくと、
「……あ、PC接続も可能なのか」
ひとまず胸を撫で下ろす。
「だいじょぶだったの?」
「ああ、大丈──……」
待て。
11,800円で購入できる21.5インチのテレビが、ディスプレイとして十全の働きをするだろうか。
周囲に機材がなくて面倒だからと画質の確認を怠った昨日の自分が恨めしい。
いや、もしかしたら、この中国製のディスプレイが価格以上の高画質高発色を発揮する可能性も、
「なかった」
接続したディスプレイの画面を見つめながら、呟く。
「可能性なんてなかった」
さて、この使えないディスプレイをどうしてくれよう。
「うる?」
「さすがに、昨日まで一万円札だったものを、ワンコインに替えるのはちょっと」
「むだづかい……」
ぐうの音も出ない。
「ああ、でも、テレビとしては使えるんだったな」
「テレビにする?」
「するとして、置けそうなのは──まあ、そのあたりかな」
俺が生まれる以前から本棚でくすぶってきた、英語教材セット全二十巻を指さした。
「これ、どうするの?」
「売るか、捨てるか、どっちにしろいい機会だと思う」
いくらしたんだろうな、これ。
母親の了解を取ってスペースを作り、テレビを設置した。
「お、テレビとしては悪くないな」
「うん」
うにゅほが目を輝かせ、ローカル番組に見入る。
「……くびいたい」
「そりゃなあ」
ソファに座った状態で、ソファの後ろにあるテレビを見れば、そうなるのは自明である。
「俺のとこから見ればいいだろ」
「そか」
得心のいった様子で、うにゅほが俺の膝の上にちょこなんと腰を下ろした。
「椅子持ってきて、俺の隣で見ればって意味だったんだけど……」
「てすと」
テストなら仕方ない。
五分ほどして、
「あつい」
という呟きを残し、うにゅほは去っていった。
なんだろうこの気持ち。
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