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2013
08.21

うにゅほとの生活634

2013年8月21日(水)

「かかる?」
「かかると思うけど──」
スタータースイッチを押すと、セルモーターの僅かな回転音と共に、エンジンが始動した。
「かかった!」
「ああ、よかった……」
バッテリー充電器を五分も回して駄目だったら、それはもうバッテリー自体が劣化しているということだ。
今年はもう、バイクにお金を費やしたくない。
「じゃ、いこ」
シートにまたがるのはまだ早い。
「どこ行くか教えたっけ」
「クレープ」
「クレープは食べるけど、そのために市街まで行くほど暇じゃないな」
「じゃ、どこ?」
「パソコンまわりをいくつか買い換えようと思って」
「ふうん……」
興味なさそうである。
ないだろうなあ。
札幌ヨドバシカメラの周囲を軽く巡り、狸小路7丁目側のコインパーキングに拠点を移した。
タイトーステーション横のマリオンクレープでうにゅほの食欲を満たし、いろいろな店を冷やかして歩いた。
「──……お」
狸小路4丁目のパソコン市場で、フルHDの21インチディスプレイを発見した。
「11,800円か……」
「みっつにするの?」
「いや、みっつにはしないけど」
「もうあるのに……」
「──…………」
今あるサブディスプレイは、発色が悪く、グレアで映り込みが激しい上、1680x1050というわけのわからん解像度で使い勝手も微妙である。
中古で5,800円だったから不満はないが、そろそろ買い換えてもよかろう。
「よし、買おう」
「かうんだ」
「買う」
「どやってもってかえるの?」
「あ」
バイクである。
しかも、タンデムである。
店員に相談すると、1,300円で郵送してくれることになった。
「クレープだけだと、半端に腹減ってきたな……」
「おひるたべてないもんね」
「なんか食べたいもの、ある?」
「んー……◯◯は?」
「そうだな──……あ、帰り道にチロリン村あるから、そこにしよう」
「おー」
ゆであげスパゲティの店チロリン村に寄り、ふたり並んでメニューとにらめっこする。
「××はなににするんだ?」
「たらこマヨかなー」
「俺は、いつもどおりカルボナーラでいいか」
「ひとくち」
「はいよ」
帰宅したあと、腹を壊した。
しばらく摂生に努めていたため、カルボナーラの過剰な油脂分にやられたらしい。
美味しいけど体に悪いな、あれは。
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2013
08.20

うにゅほとの生活633

2013年8月20日(火)

「あれ」
スタータースイッチを押しても、バイクのセルが回らない。
「きゅるきゅるしてる」
「してるな」
「してる」
最近乗っていなかったせいで、バッテリーがすっかり上がってしまったらしい。
「バイク、でんちでうごくの?」
「電池では動かないけど、電気を使ってエンジンをかけるんだよ」
「ふうん」
あまり興味もなさそうだ。
「じゃあ、のれないの?」
「バイク用のバッテリー充電器がどっかにあったと思うんだけど……」
「どっか?」
「──…………」
車庫の二階を指さす。
「──…………」
うにゅほが無言で首を横に振った。
同感である。
上がるぶんには構わないが、探しものだけはしたくない。
「可能性があるとすれば、押しがけかなあ」
「おしがけ?」
「バイクを押しながらセルを回すと、エンジンがかかることがあるらしい」
「なんで?」
「──…………」
理由はよくわからない。
「世の中には不思議なことがあるんだ」
「ふうん」
誤魔化した。
「うしろからおしたらいいの?」
「ひとりでも大丈夫だと思うけど──……まあ、やや強めに押してくれ」
「はい」
ハンドルとシートに手を置き、号令をかける。
「行くぞ!」
「はい!」
駆け出す。
「お、と、ととと!」
「にぃ──っ!」
予想以上の頑張りをうにゅほが見せたため、思っていたより速度が出てしまった。
クラッチを切り、セルを回す。
かからない。
「もういい、もういい!」
「はい!」
ゆっくり減速し、停止する。
「もうすこし弱めでもいいから」
「そか」
「じゃあ、位置について」
「はい!」
帰りも試してみたが、かからなかった。
「父さんが帰ってきたら、車から充電するしかないな……」
「どこいくんだったの?」
「ちょっと市内の電器屋を巡って──」
「うん」
「帰りに、狸小路でクレープ食べようかと思ってた」
「!」
うにゅほが愕然とする。
そんなにクレープが魅力的だったか。
予定を明日以降に延期し、自室でうだうだしていたところ、
「──……あめだ」
「雷鳴ってるな……」
「エンジン、よかったね」
「そうだな……」
怪我の功名である。
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2013
08.19

うにゅほとの生活632

2013年8月19日(月)

俺は、スイカがあまり好きではない。
そもそも果物が嫌いなので、そのなかでは比較的ましな部類ではあるものの、好んでは食べない。
「◯◯、このすいか、あまいよ」
「そっか」
「ひとくちたべる?」
「食べる」
「あまいしょ」
「甘いな」
「ひときれたべる?」
「いや、もういい」
不味くはないのだが、どうにも食指が動かない。
同様の理由でメロンも食べない。
果物特有の風味が苦手かと言えばそうではなく、「◯◯味」となると好物に数えられるものも多い。
理由は、自分でもよくわからない。
「──…………」
余ったスイカにラップを掛けて冷蔵庫に仕舞うさまを見て、
「あっ」
不意に思い出したことがあった。
「スイカ、やっぱ食べるわ」
「?」
「食べる」
「たべるの?」
仕舞いかけていたスイカの皿を、うにゅほが食卓テーブルの上に戻した。
「すいか、おいしいよ」
「美味いんだろうけど、そうじゃなくて、どうでもいいことを思い出したんだよ」
「どうでもいいこと?」
「スイカに塩をかけて食べるのを、毎年やり損ねてこの年齢になりました」
「しお……?」
うにゅほが眉根にしわを寄せる。
「あまいのに、しょっぱくするの?」
「塩をかけると、甘みが引き立つ──らしい」
自信はない。
「ともかく、そういう食べ方が昔からあるんだよ」
「ふうん……」
二信八疑くらいの視線が向けられる。
実際のところ、甘くはなっても美味くはならない気はするのだが、試してみないことには始まらない。
「じゃあ、塩かけて──と」
「わたしもかける」
「かけるのか」
「かける」
振り過ぎた塩の粒を指先で塗り広げ、
「いただきます」
「いただきます」
思い切って頬張った。
「──…………」
目を丸くした。
「美味い……」
「あまい!」
「これ、思ってたよりずっと美味いな」
うにゅほに同意を求めると、
「あまいけど、おいしくない」
意見が割れた。
「そっかー……」
すくなくとも俺は、今後スイカに塩をかけ続けることだろう。
なんでも試してみるべきである。
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2013
08.18

うにゅほとの生活631

2013年8月18日(日)

小雨がちの、とても蒸し暑い一日だった。
「あぢー……」
着替えすら放棄してフローリングの上で頬杖をついていると、
「ね、どっかいこ」
うにゅほが俺の袖を引いた。
「どこってどこ……」
「どこでもいい」
「どこでもったってなあ」
無責任ではあるまいか。
「くるまのりたい」
「車に?」
「クーラーあるから……」
「ああ……」
理解した。
「じゃ、ゲオにでも行くかあ」
のそりと立ち上がり、普段着に着替える。
ゲオのレンタル袋を確認してみると、返却日が今日になっていた。
危ないところである。
「こう、降り方も半端っていうかさ」
「うん」
「いっそ土砂降りなら気温も下がるのにさ……」
「そだね」
訥々と雑談しながらコンテカスタムを運転し、ゲオの駐車場に進入した。
「あのね」
うにゅほがぽつりと口を開いた。
「なんで、みんな、せまいとことめるの?」
うにゅほの言葉どおり、店内入口に近いほど自動車が混み合っている。
「……小雨だからじゃない?」
説明するのが面倒で、適当に答えた。
「いつもだよ」
「あー……」
無意識に自分のあごを撫でる。
「……足が悪いとか、そういう理由のない大概の人は、そのほうが近くて楽だと思ってるんだよ」
「そなの?」
「そうじゃないかなあ」
断言はできないけど。
「近いところ探してぐるぐる回るより、遠いとこにさっと停めて歩くほうが断然早いと思うけど」
「だよねえ」
「──…………」
眼前あたりに手のひらを掲げる。
「でも、今日みたいな雨の日は、近くに停めるほうがいいかな」
「こさめだよ」
「出るころには雨足が強くなってるかもしれないだろ」
「あ、そか」
バラエティのDVDをいくつか借りて外へ出ると、雨は既に上がっていた。
相変わらず、分厚い雲は墨を流したように黒かった。
涼しくなるまでドライブして、帰宅した。
入院中の弟が一時帰宅していたことを途中で思い出したが、まあいいかという結論になった。
テレビ見ながら爆睡してたし。
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2013
08.17

うにゅほとの生活630

2013年8月17日(土)

目を覚ますとうにゅほがいなかった。
母親と買い物にでも行ったのだろうと思った。
台所を漁ると、小さな氷の浮かぶボウルのなかで、伸びかけのそうめんが揺れていた。
まあ、ひとりぶんはあるだろう。
冷蔵庫を開くと、小口切りにされた万能ネギがあった。
薬味がネギだけというのも味気ないものだ。
「あー」
以前、うにゅほがそうめんに温泉卵を落としていたことを思い出した。※1
あれは美味しかった。
再現してみたいが、どうだろう。
「短めに茹でればいいのかな」
卵をひとつ鍋に入れ、5分ほどぐつぐつ煮てみる。
「半熟卵……」
やはり、勘では難しそうである。
クックパッドで「温泉卵」を検索し、なかでもシンプルなレシピを試してみる。
「沸騰したら火を止めて、10分放置──……」
卵を割ってみる。
「完ッ熟!」
嘘レシピかよ。
改めて調べてみると、沸騰後に水を入れて湯温を下げることが重要らしい。
よく考えたら、温泉って源泉でもあんまり沸騰してないもんな。
「これでどうかなー」
沸騰した湯に水道水を100cc入れ、卵を投入し11分待つ。
+1分は、一応である。
卵を割ると、白身と黄身がとろりと流れ落ちた。
「成功、か?」
しかし、よく確認してみると、カラの裏側に凝固した白身が貼り付いていた。
湯温が高すぎたらしい。
「まあ、成功は成功ですよね」
当初の目的をすっかり忘れ去り、薄めただし醤油で温泉卵をいただいていると、うにゅほと母親が帰宅した。
「あ、おんたまだ」
「おんたまだよ」
「◯◯も、おんたまつくれるんだね」
「まあね」
失敗作であるところの半熟卵も完熟卵も既に完全な証拠隠滅を果たされている。
「でも、ちょっと白身が固まっちゃったんだよな。
 ××はどうやって作ってるんだ?」
「うーと……」
うにゅほはしばし小首をかしげ、
「おかあさーん、おんたまたべるー?」
「食べるー」
「じゃあ、みっつつくりましょう。みててね」
「はい」
うにゅほ先生のお料理教室である。
「みっつだから、なべにみずをこれくらいいれます」
水道から鍋に直接水を入れる。
「具体的に、何ccくらい?」
「これくらい」
「──…………」
水が沸騰するのを待つ。
「みっつだから、これくらいみずたすでしょ」
水道から鍋に直接水を足す。
「……何ccくらい?」
「だいたいこれくらいですね」
「──…………」
うにゅほが鍋をシンクに置く。
「あとはまつだけ」
「ああ」
「テレビみよう」
「うん」
テレビを見ていると、
「あ、いまくらい」
うにゅほが前触れなく台所へ戻り、鍋の湯を捨てて流水で卵を冷やした。
卵をコンコンと打ち付け、
「おんたまできた」
つるん、とすべらかな温泉卵が、深皿の底で美味しそうに震えた。
「わかった?」
「わかった」
わからないことが、わかった。
完全に感覚派だこの娘!
まあ、いるときは作ってもらえばいいんだから、特に問題はないんだけど。
そうめんは夕食にした。
伸びていた。

※1 2013年7月17日(水)参照
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2013
08.16

うにゅほとの生活629

2013年8月16日(金)

「あー……」
「づー……」
「うぃー……」
扇風機の前に並びながら、ふたりで苦悶の声を上げていた。
間違いなく今年いちばんの暑さである。
「せっかく熱下がったのに、こんだけ気温が上がってちゃ意味ないな……」
「うん……」
「なんか、気が紛れることでもあればいいんだけど」
「ある?」
「テレビは父さんが見てるし、借りてるDVDはもう全部見たし、漫画はいつも読んでるし……」
「ないねえ」
「ない」
市民プールにでも行けば解決なのだが、病み上がりのうにゅほを連れて行くわけにもいかない。
「なんかないかなー」
と視線を巡らせ、
「あ」
ふと、見慣れない袋に目が留まった。
「あー……これ、まだ開けてなかったっけ」
「?」
「友達の彼女がいつもくれるおみやげ」
「いつもらったの?」
「たしか、三日くらい前かな」
「うぇー」
なんだその反応は。
不満なのか。
「とにかく、開けてみましょう」
「はい」
新聞紙による厳重な包装を解いていく。
「なんだこれ」
「木製のトレイ──かな」
「ちっちゃいね」
「一人用だな」
次々と開いていく。
「耐熱ガラス製のグラスと、小さい深皿……」
「スプーン?」
「あ、そういえば、ティーセットとか言ってた気がする」
うち、煮出し烏龍茶しかないけど。
「こっちのおさらは?」
「クッキーとかスコーンでも入れるのかな」
なるほど、女子力高めの女性の部屋に揃っていそうな食器である。
「あ、もうひとつあるよ」
袋の底にあった小さな包みを、うにゅほが手に取った。
「あ、それ俺用のとか言ってたやつだ」
「なにかな」
国旗のついた爪楊枝だった。
「──…………」
「……これで、オムライスの旗には一生困らないな」
友人の恋人は、俺へのおみやげでネタに走る傾向がある。
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2013
08.15

うにゅほとの生活628

2013年8月15日(木)

「──…………」
「××?」
「うん……」
うにゅほがぼんやりしているので、額に手を当ててみた。
よくわからない。
考えてみれば、この方法で発熱を感知できた記憶がない。
体温計を渡すと、37.4度だった。
うにゅほの平熱は高めだったような気がするので、たぶん微熱だろう。
墓参りの疲れが出たのかもしれない。
「とりあえず寝てな」
「ねむくない」
そりゃそうである。
いつもより早く就寝し、たっぷり睡眠を取っている上に、やたら蒸し暑くて布団などかぶっていられないのだから。
「……まあ、せめて横にだけはなっとこうか。
 場所は問わないから」
「ばしょ?」
「今から昨日のナニコレ珍百景見るけど」
「みたい」
「じゃあ、パジャマに着替えて、リビングのソファで横になってなさい」
「はい」
うにゅほにタオルケットをかけて、レコーダーのリモコンを操作する。
さて、昼食はどうしようか。
こんな日に限って両親は外出している。
しかも、友人と焼肉パーティらしい。
なんできのう焼肉食べたんだ。
「××、なに食べたい?
 リクエストなければ卵がゆにコンソメでも入れるけど」
「あれたべたいな」
「あれ?」
「スープでり」
「スープ──ああ、朝ごはん用のスープパスタか」
今朝食べたが、そこそこ美味しかった。
朝食としては物足りなかったけれど、購買層は女性なのだろうし、そういうものだと思う。
昼食を簡単に済ませ、しばらく無言でテレビを眺めていた。
「きょう、あついねえ……」
「暑い」
熱がなくとも十二分に暑い。
「蒸し暑いのだけは、本当に勘弁だなあ」
「うん……」
「ペプシ飲む? 氷いっぱい入れて」
「のむ」
「飲むときは体起こしてな」
「はい」
ナニコレ珍百景の再生が終わり、レンタルしていたゲームセンターCXのDVDを再生したころ、うにゅほが寝息を立て始めた。
ずれ落ちていたタオルケットをかけ直し、再びテレビに意識を戻す。
夏風邪は、こじれればこじれるほどにしつこいものだ。
明日には熱も下がっていればいいんだけど。
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2013
08.14

うにゅほとの生活627

2013年8月14日(水)

家族で墓参りへ行った。
とは言え、弟は入院中、祖母は足が痛いと言って留守番である。
車中が広く感じたのは、気のせいではあるまい。
ランドクルーザーで行ったので当然なのだが。
「おはか、まだ?」
車内で麦わら帽子をかぶりながら、うにゅほはやたらと元気だった。
去年さんざっぱらお見舞いされたはずなのに、不思議である。※1
喉元を過ぎて熱さを忘れたのだろうか。
「──…………」
三時間ほど経つと、静かになった。
昼食は焼肉だったが、俺とうにゅほは箸が進まず、あまり美味しくない冷麺をふたりですすっていた。
菩提寺に参ったあと、両親の友人が経営しているメロン農園へと寄り、ブドウの実と同じくらいの数のメロンを購入した。
御中元用のものであり、家では食べない。
「ねこ、いないねえ」
農業機械用の車庫のなかを、うにゅほがうろうろと歩きまわる。
「猫?」
「きょねん、ねこいた」
「あー、あのメロン食べる猫のこと?」
「そう」
そういえば、去年そんなのを撫でくりまわした記憶がある。
「あれ、野良猫じゃなかったっけ」
「のらじゃないよ」
「野良じゃないのか」
「かいねこだよ」
「じゃあ、そのへんにいるのかな」
「となりのいえの、かいねこだよ」
「隣……?」
左右を見渡す。
視界の届く限り、メロン畑が広がっていた。
「隣って、どこだろうな」
「わかんない……」
「今年は会えそうにないな」
「うん……」
とても残念そうだった。
帰宅するころには、日はとうに傾いていた。
とにかく疲れた。
うにゅほなどはさっきからソファでうとうとしているので、さっさと布団に押し込んでやろうと思う。

※1 2012年8月12日(日)参照
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2013
08.13

うにゅほとの生活626

2013年8月13日(火)

定期通院の帰り、うにゅほがスーパーマーケットに寄りたいと言った。
快諾し、帰途にあるフードDに車を停めた。
「ちょうどよかった、ペプシ補充しなきゃって思ってたんだ」
忘れるところだった、というか、忘れていた。
「ダン箱であればいいけど──……ま、ないだろうな」
「あれ、なんほんはいってるの?」
「8本かな」
「そんなに」
「みんな飲んでるだろ! 俺が一番飲んでるけど……」
夏場はどうしても消費量が増える。
「──で、××はなにが欲しかったんだ?」
「うーん……」
うにゅほが小首をかしげる。
「なにがいいのかな」
「神ならぬ身には与り知らぬわけですが」
「?」
うにゅほにわからないことを俺が知るはずもない。
しばし店内を徘徊し、
「これかなあ」
うにゅほがある商品を手に取った。
「なにそれ、カップ麺?」
「スープでり」
「でり?」
陳列棚にあった同じ商品に視線を向ける。
「ああ、スープパスタか」
いかにも女子の好きそうなあれである。
「食べたいの?」
「うん?」
うにゅほが首を横に振る。
「たべるの」
「食べる?」
「◯◯が、たべたらいいとおもって」
「……なんで?」
「だって、◯◯──……」
ここで、うにゅほによる説明を要約させていただこう。
睡眠障害の気のある俺は、早朝に目を覚ましては空腹に苛まれ、半覚醒状態のまま朝食をとってしまう悪癖がある。
問題は、寝ボケているので食べ過ぎてしまうということだ。
しかも空腹が満たされると自動的に眠りについてしまうので、太りやすい食生活にも当てはまる。
「──◯◯、おきて、いつもあーってなってるから」
「なってますね、はい……」
痛み入ります。
「ふとんないのかっとけば、それたべるから、いいんじゃないかとおもった」
「おお……」
いいアイディアかもしれない。
決まった朝食がないから胃を押さえたまま台所を探しまわるのであって、用意されていればそちらを優先するだろう。
「──……よっし!」
スープパスタの容器を、買い物カゴにざらざらと入れた。
「え、そんなにかうの?」
「××のアイディアを信じてみましょう」
うにゅほの頭にぽんと手を乗せる。
「ありがとな」
「まだわかんないけど……」
「まあ、たぶん効果あるだろ」
このスープパスタが舌に合えば、だけど。
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2013
08.12

うにゅほとの生活625

2013年8月12日(月)

市民プールの休憩室でぼんやり待っていると、
「──…………」
疲れたような足取りで、女子更衣室のほうからうにゅほが歩いてきた。
「なんか疲れてる?」
それほど長く泳がなかったはずだけど。
「ううん……」
力なく、首を左右に振る。
「きょう、プールこんでたから……」
「混んでたから」
「こういしつ、こんでて……」
「混んでて」
「……はずかしかった」
「恥ずかしかったのか……」
なんとはなしに意外である。
「××って、そういうの気にしないかと思ってた」
「するよ」
軽く睨まれる。
「や、一般的な羞恥心はそりゃあるだろうけど、相手は女性だろ?」
それも、おばさんとおばあさんのあいだを結ぶ直線上にある任意の点Pみたいな年齢の方々ばかりである。
「あ、そうだ、銭湯も入れてたじゃん」
「うん……」
脳内でなにかを組み立てるような手つきをしながら、うにゅほが口を開いた。
「きがえるのが、はずかしい……?」
「あー……」
わかるような、わからないような。
でも、全裸をジロジロ見られるのと、着替えをジロジロ見られるのだと、後者のほうが嫌な気はする。
「俺が女子更衣室に乗り込んで、××の前で仁王立ちするわけにもいかないし」
ちなみに、市民プールは交番から約10メートルの距離にある。
「すみっこで着替えるとか」
「うん、いちお」
「ぱぱっと着替えてしまうとか」
「いそぐと、こけそうになる……」
全体的にもたもたした娘である。
「あとは、そうだな──……」
解決にはならないが、ふと思い出したことがあった。
「小学生のとき、下半身を見せずに水着に着替えるテクニックが流行ったな……」
「そんなのあるの?」
「パンツの上から水着を履いて、うまいことパンツだけを脱ぎ去るという神業的テクニック。
 誰が呼んだかマジックパンツ」
「そ、それをみにつければ」
「やめたほうがいい」
「どうして?」
「子供の遊びを真面目に活用してたら、全裸より恥ずかしいから。
 というか、アレな人だと思われるから」
「うう……」
「ま、慣れるしかないって。ほら、DAKARA」
汗をかいたペットボトルをうにゅほに手渡し、ぐっと背筋を伸ばした。
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