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2013
06.20

うにゅほとの生活572

2013年6月20日(木)

「──……ん?」
デスクとPCケースの隙間に、親指ほどの大きさのなにかが落ちていた。
拾い上げると、ずしりと重い。
色合いからして、真鍮製だろうか。
「なにそれ」
興味しんしんといった様子で、うにゅほが腰を浮かす。
「キーホルダー……ってことは間違いないから、バイクのキーホルダー選んだときに落として、そのままだったんだろう」※1
「なんのキーホルダー?」
「なんだろう……」
ドラえもんのような二等身のキャラクターに見えなくはないが、経年によって溝が潰れて元がわからない。
「かして」
「はい」
キーホルダーを手渡す。
「なんか、ちゃりちゃりおとするよ」
「音?」
「ほら」
俺の耳元で、うにゅほがキーホルダーを軽く振る。
「本当だ……」
内部が空洞で、なにか入っているのか?
「あ」
「今度はなに?」
「あたまんとこ、あなあいてる」
「あ──……」
長方形の小さな穴を見て、ようやく思い出した。
「これ、おみくじキーホルダーだ」
「おみくじ?」
「頭を下にして振ると、細い板が出てきて、そこに運勢が書いてあるってやつ」
「ほんと?」
しゃかしゃかしゃか。
「でた!」
「なに吉?」
「えーと」
うにゅほがおみくじを凝視する。
「えー、と……」
目を細め、眉根にしわを寄せる。
「なにきち?」
「読めないのか?」
「うん……」
目を凝らして見ると、文字が完全に潰れていた。
「いつのキーホルダーだ、これ……」
俺の世代ですらない。
すべてのおみくじが同様の状態なのだろうか。
幾度か振って試していると、
「あ!」
「読めるのあった?」
「うん」
「なに吉?」
「ぴょんきち……?」
「──…………」
やはり、俺の世代のものではない。
その日のうちに、キーホルダーはしょうもない土産物箱へと帰っていった。
次に日の目を見るのは何十年後のことだろう。

※1 2013年6月15日(土)参照
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2013
06.19

うにゅほとの生活571

2013年6月19日(水)

注文していたシーリングライトが届いた。
NECのLIFELED'S HLDZB0809がふたつ、合計で15,000円弱の出費である。
じくじくと財布が痛むが、仕方ない。
「まずは、古いほうのライトを取り外します」
「うん」
「ビス止めしてあるから俺が外すけど、取り付けるのは簡単だから、ひとつやってみるか?」
「いいの?」
「ちゃんと俺の指示に従うならな」
「うん!」
威勢のいい返事に口角を上げながら、古いシーリングライトに手を伸ばす。
ぱらぱら。
「?」
ライトの裏から、なにかが滑り落ちた。
「なに落ちたー?」
「んー」
うにゅほが拾い上げる。
「なんだこれ」
それは、硬くて薄い、切れ端のようなものだった。
「……まあ、いいか」
ドライバーを使用し、ライトを慎重に取り外す。
そのときだった。
ざざざざざざっ!
「おわ!」
「!」
ライトの裏側から、大量のなにかが一斉に流れ落ちた。
「なんだなんだ!」
「わかんない!」
丸椅子から飛び降り、つまみ上げる。
「プラスチック……?」
雲形定規をシンプルにしたような形状である。
「あ!」
うにゅほが頭上を指さした。
「あれだ!」
天井を振り仰ぐ。
「あー……」
ようやく理解した。
天井パネルの表面に施された装飾が、蛍光灯の発する熱に二十年ものあいだ晒され続け、剥がれ落ちたのだ。
「これだったんだね」
「なにが?」
「たまにおちてたやつ」
「ああ……たぶんそうだったんだろうな」
積年の疑問が氷解した。
自室に設置されているもうひとつのライトも、同様の惨状だった。
二十年という歳月の重さを思い知らされたような気分である。
ちなみに、
「──…………」
「無理するなって」
うにゅほは丸椅子に乗っても天井に手が届かなかったので、新しいシーリングライトは両方とも俺が取り付けることになった。
これほど悔しそうなうにゅほは久しぶりに見た。
レアである。
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2013
06.18

うにゅほとの生活570

2013年6月18日(火)

病院へ行こうと身支度をしている最中、
「はー……」
うにゅほが嘆息した。
とん、と右足を下ろす。
「どうかした?」
「くつした」
「ああ」
「くつした、すごいね」
「……?」
自分の足元を見る。
なんの変哲もない、ただの黒い靴下だと思うが。
「くつした、はくのすごい」
「履く──……ああ、立ったまま靴下を履くのがってことね」
「そう」
ようやく理解できた。
「××は、立ったまま履けないのか?」
「たぶん」
「やってみたら、案外できるんじゃないか。大して難しくもないし」
「えー……」
「試すだけならタダ」
「くつしたはくのか……」
「××のその靴下嫌いはどこから来るんだ……」
とりあえず、試してみることになった。
「いきます」
うにゅほが靴下を構える。
「や!」
勢いよく左足を跳ね上げ、
「あっ」
ぽすん、とソファに座り込んだ。
「……むりだった」
「いや、どう考えてもやり方に問題があるだろ」
「そう?」
「だって、片足で立つ段階でもう倒れてるじゃん……」
「うーん?」
「ふつうのときは片足で立てるのに、靴下持つと立てなくなるのは、気負いすぎてるからだよ」
「どうすればいいの?」
「とりあえず、靴下貸して」
片足で立っている状態のうにゅほに、後から靴下を手渡すことにした。
「おっ」
ふらふらと危なげに揺れながら、爪先に靴下を引っ掛ける。
「おっ、おっ、とっ、とととっ」
「!」
ぴょんぴょんとあらぬ動きをし始めたので、うにゅほの肩を両手で支えた。
「あ、そのまま」
うにゅほが靴下を履く。
「できた!」
「おー……、お?」
これは、できたうちに入るのか?
かと言って、喜びに水を差すのも無粋だし。
「じゃ、いこ」
「あー……うん」
結局靴下を脱ぎ捨ててしまったうにゅほを連れて、玄関の扉をくぐった。
夏場はサンダルを貫くと決めているらしい。
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2013
06.17

うにゅほとの生活569

2013年6月17日(月)

「××」
「?」
「はい、これつけて」
愛用のアイマスクを手渡す。
「つけるの?」
「ちょっと面白そうな遊びを思いついたので」
「やる」
食い気味で答え、うにゅほがアイマスクを装着する。
醸し出される犯罪臭にも幾分か慣れてきた。
「なにやるの?」
わくわくした声で、うにゅほが質問する。
「俺がなにか適当なものを手渡すから、××には感触だけでそれを当てていただきます」
「おー……」
「面白そうだろ?」
「うん!」
とてもいい返事である。
「さて、と──」
第一問は既に決めてある。
あるものを手に取り、うにゅほの膝に乗せた。
「?」
「さて、なんでしょう」
「なんだこれ」
「それを当てるんだよ」
うにゅほの両手が、それを恐る恐る撫でさする。
「……?」
「あ、逆さにしないでな」
「さかさにしちゃ、だめなもの?」
「それがヒントかな」
「うー……、ん?」
うにゅほがすんすんと鼻を鳴らす。
「いいにおいする」
「お」
いいところに気がついた。
「あ、おへやのにおいのやつ!」
「正解!」
軽く拍手をして、うにゅほのアイマスクをずらす。
「答えは、お部屋の消臭元(白桃)でした」
「おー!」
「面白い?」
「いいもんだいです」
「ありがとうございます」
「つぎ、◯◯ね!」
ソファに腰を下ろし、アイマスクを装着する。
さて、なにが出てくるやら。
「それではもんだいです」
「はい」
「てをだしてください」
「はい」
ぽん、と手のひらにやわらかいものが乗せられる。
「ぬいぐるみ?」
「ぬいぐるみの、どれでしょう」
「えっ」
ぬいぐるみと言われても、けっこうあるぞ。
感触から言って、ビッグねむネコぬいぐるみをはじめとする大きなサイズのそれではない。
「毛並みがいいな……」
すべすべとなめらかである。
「しっぽがあって、ヒゲがあって──……あっ」
「わかった?」
「クリスマスに買ったトトロだ!」※1
「せーかい!」
アイマスクを外し、眼鏡を掛ける。
「これ、思ったより面白いな……」
わりとすぐわかってしまうので、物足りないと言えば物足りないが。
「つぎわたしね」
「ああ」
なんだかんだで一時間くらい潰せてしまった。
出題範囲を広げれば、もうすこし楽しめるかもしれない。

※1 2012年12月25日(火)参照
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2013
06.16

うにゅほとの生活568

2013年6月16日(日)

「いらっしゃーませー」
ケーズデンキの入り口で、うちわをもらった。
「はい」
「はい」
流れでうにゅほに手渡し、照明器具のコーナーへと足を向けた。
自室に設置されている二十年もののシーリングライトが、さすがにそろそろ限界なのである。
劣化したプラスチックが触れるだけでパリパリと崩れてしまうことを、読者諸兄は御存知だろうか。
「やっぱLEDのがいいのかなあ」
「えるいーでぃー?」
ぱたぱた。
「蛍光灯みたいに発熱しないし、電気代も安く済むんだってさ」
「いいねー」
ぱたぱた。
「にしても、たっかいなあ。ちょっとオシャレなやつだとすぐ二万とか三万とか……」
「ふたつもかえないね」
「ひとつだって予算オーバーだけどな」
ぱたぱた。
「××、なんでさっきから俺のこと扇いでるの?」
「わたしあつくない」
「俺も暑くないよ」
「そか」
ぱたぱた。
「──…………」
特に意味はないのだろう。
「あ、これうすーく和紙っぽい模様入ってる」
「ほんとだ」
「意味あるのかなこれ」
「うーん」
お金持ちが買うのだろう、という結論になった。
ケーズデンキを後にし、すぐ近くのホーマックへ立ち寄った。
「あ、いぬ」
うにゅほが指さした先に、ゴールデンレトリバーがいた。
「──…………」
ペット用と記された買い物カートの上で、切なげな瞳をこちらに向けていた。
「レジとおすのかな」
「どこにバーコードがあるんだ」
動物愛護団体が黙ってはいまい。
「ペットの持ち込みができるってことなんだろうけど……」
ドナドナじみたシュールな光景である。
「あ、ちいさいいぬもいる」
「ミニチュアダックスくらいだと、まあ自然な光景ではあるな」
「ねー」
ぱたぱた。
「うちわ、車に置いてこなかったの?」
「うん」
ぱたぱた。
いいけど。
ぱたぱた。
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2013
06.15

うにゅほとの生活567

2013年6月15日(土)

バイクのキーに付けていたキーホルダーがあまりに汚れていたので、百円ショップで適当に見繕うことにした。
しかし、
「──……ない」
「ないね……」
探してみると、案外見つからない。
「ストラップばっかだなあ」
「うん」
「あっても微妙なのばっかだし」
キーホルダーって、そういうものかもしれないが。
「あ、これは?」
うにゅほが手に取ったのは、高さが5cmほどもある巨大な「K」だった。
「誰だよ……」
夏目漱石のこゝろに登場する主人公の友人のことだとすれば、一考の余地はあるが。
Kを元の場所へ戻し、帰宅することにした。
「かわないの?」
「物置のどっかに微妙な土産物を入れとくための箱があったと思うから、そこを探してみよう」
「おー」
うにゅほが目を輝かせる。
観光地が自らのアイデンティティを保つためなかば義務感で出したような、しょうもないものばかりだと思うけど。
「──…………」
「──…………」
観光地が自らのアイデンティティを保つためなかば義務感で出したような、しょうもないものばかりが出てきた。
「なにこの、なに……」
MSゴシックみたいなフォントで「HOKKAIDO」とだけ書かれたプレートに鈴が四個並べて付けられたキーホルダーを、片手で揺らす。
「キーホルダー……」
「まあ、キーホルダーだけど……」
うにゅほの手には、胸にZという文字が刻まれた偽ばいきんまんの人形があった。
「……キーホルダーがどこに売ってるか、わかった」
「どこ?」
「土産物屋」
真理だと思う。
「あ、ましなのもあるじゃないか。
 札幌市青少年科学館来館記念──だって」
銀河を意匠したようなシンプルなメダルである。
「ぶなん」
「まあ、無難だけど……」
一言で斬り捨てられてしまった。
「じゃあ、××はどれがいいんだ?」
「この、ねこのやつ」
「無難オブ無難じゃないか」
侃々諤々というほどでもない議論の果てに、バイクのキーホルダーは青少年科学館のメダルに決定した。
途中、「幸福を呼ぶ四つ葉のクローバー」と記された東尋坊のキーホルダーにまとまりかけたが、なんとか踏みとどまった。
それにしても、縁起がいいんだか悪いんだかよくわからない代物である。
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2013
06.14

うにゅほとの生活566

2013年6月14日(金)

読み終えたワールドエンブリオを携え、弟が部屋を訪れた。
「お、メガネ」
伊達メガネを掛けたうにゅほを見て、そう口にする。
「うん、めがね」
指摘されたことが嬉しいのか、うにゅほが得意げに指を添え、答えた。
友人の恋人にプレゼントされて以来、時折掛けているのだ。
気に入ってしまったらしい。
しばらく弟と雑談していると、
「といれー」
不要な宣言をして、うにゅほが部屋を辞した。
「──……なあ、弟」
「なにさ」
無意識に声をひそめる。
「××のメガネ、どう思う?」
「どうって、なに」
「察しの悪い……」
「サイズが合ってないとか、そういうこと?」
それはまあ、たしかにそうなんだけど。
「つまり、その……似合ってると思うか?」
核心を突いた。
うにゅほに眼鏡は似合わない説を提唱し続けている俺だが、第三者の意見を仰いだことはない。
しばし思案し、弟が答えた。
「いいんじゃないの、文学少女みたいで。読んでんのみつどもえだけど」
「……そうか?」
「なんでそんなこと聞くの」
「俺は似合わないと思うんだけど……」
「あーいう眼鏡掛けてる人いるし、そのへん歩いてても違和感ないでしょ」
「まじで?」
予想していたよりも意見の食い違いが大きかった。
「なに、そんな似合わないと思ってんの?」
「まあ……」
「俺はふつうだと思うけど」
「そうかあ?」
「似合う似合わないじゃなくて、単に兄ちゃんの好みに合わないだけじゃないの?」
「──……!」
はっとした。
「兄ちゃん、メガネっ子あんま好きじゃないじゃん」
「たしかに……」
深々と頷く。
すべてが繋がった気がした。
「んじゃ、俺部屋に戻る」
そう言い残し、弟が退室する。
入れ替わりに、うにゅほがトイレから戻ってきた。
「××、ちょっと眼鏡外してみて」
「?」
素直に外す。
眼鏡のない素顔のうにゅほを、穴が空くほど見つめた。
「──……うん」
「……?」
やはり、うにゅほは眼鏡を掛けないほうがいい。
似合っているかは別として。
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2013
06.13

うにゅほとの生活565

2013年6月13日(木)

四年ほど乗っていなかったビラーゴ250をバイクショップで整備してもらい、なんとか乗れる状態にした。
試運転を兼ね、遠回りして帰宅すると、黒い人影が縁石にちょこんと腰掛けて待っていた。
「ただいま」
「おかえり……」
「暑くない?」
「あつい……」
ぶかぶかのレザージャケットを着込み、日向に座っているのだから、当然である。
準備万端に過ぎると思うが、らしいと言えばらしい。
「バイク、かっこいいねえ!」
「だろー」
気を取り直して、うにゅほがビラーゴ250を撫で回す。
「ぴかぴか」
「ワックスかけたしな」
「ふたりのり、できる?」
「できる」
「ほんとに?」
「ママチャリの荷台に座布団敷くより、ずっと乗り心地いいよ」
「おー」
「すごい速いけど」
「どれくらい?」
「そりゃまあ、普通に車くらいは」
タンデムシートにうにゅほを乗せて、スタートボタンを押す。
軽くアクセルをふかしたあと、ギアを1速に落とそうとして、
「──……◯◯」
胴回りにぎゅうとしがみつきながら、うにゅほが俺の名前を呼んだ。
「どうかした?」
「むりかもしれない」
「……え、このタイミングで?」
走り出したあとで恐慌をきたすより、ずっといいけれど。
「怖くなっちゃったか」
「たかい」
「自転車よりはなあ」
タンデムシートは、すこし高い位置にあるし。
「じゃあ、降りる?」
「──…………」
ぶんぶんと首を横に振る気配がする。
らしいと言えば、らしい。
「じゃあ、こうしよう」
「?」
「怖くなったら目を閉じて、俺の背中に顔を押し付ける」
「うん」
「それでも駄目だったら、言ってくれれば止まる。
 風が気持ちいいなーってすこしでも思ったら、すぐに慣れると思うよ」
「そかな……」
結果として、すぐに慣れた。
そのあたりをぐるりと回り、一時間ほどで帰宅した。
「きもちいねー!」
「そうだな……」
しかし、俺の背中にぐいぐいと顔を押し付ける癖がついてしまうとは、いささか想定外だった。
シャツの後ろが湿っているのは、暑さゆえだと信じたい。
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2013
06.12

うにゅほとの生活564

2013年6月12日(水)

俺とうにゅほの部屋は、用途別にふたつに区切られている。
PCデスクやソファなどを詰め込んだ生活スペースと、うにゅほの寝床や洋服ダンスの設置された寝室スペースである。
片方にタイルカーペットを敷いたのだから、もう片方にも敷くのが道理というものだ。
「うあー……」
うにゅほの寝床に倒れ込む。
疲れた。
しばらく動きたくない。
「◯◯、ねる?」
「寝ないけど、動かない……」
「じゃ、わたしもうごかないー」
うにゅほがカーペットの上に寝そべった。
「いーねー……」
満足そうなうにゅほを見て、なんだか羨ましくなってしまった。
俺だけ布団というのも心苦しい。
ここは、ふたりなかよく竣工を祝おうではないか。
「××、ちょっと左に寄って」
「?」
不思議そうな表情を浮かべながら、うにゅほが体をずらす。
「──……よっ」
ごろん。
すのこの上にあるうにゅほの布団から、のそりと転がり落ちた。
「わ」
「隣、失礼します」
大の字に四肢を伸ばす。
「いいねえ……」
「いーねー……」
カーペットを貼り替えただけなのに、なんだか気分がいい。
しばし天井を見上げていると、
ぽすん。
俺の左腕に、うにゅほの小さな頭が乗っていた。
「おみせのにおいがするねー」
「そうだなあ」
脳裏に新しさを呼び起こす、木材と薬品を混ぜ合わせたような香り。
そう、それはホームセンターのにおい。
「……なんか嫌だな」
ホームセンターの店内で大の字になっているような気がしてきた。
そのままぼんやりしていると、うにゅほがうとうとしはじめた。
起こすのも悪いかと思い、三十分ほど天井を眺めていた。
左腕はしびれた。
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2013
06.11

うにゅほとの生活563

2013年6月11日(火)

「あー……」
自室のカーペットに、髪の毛が絡みついていた。
拾い上げると、ずるうりと長い。
不織布状のパンチカーペットなので、毛髪が絡みやすいのである。
「××の髪の毛だから、見てわかるけど──……」
このカーペットは、かつてこの部屋が弟のものだったころから敷いてある、言わば十年ものだ。
どこのどんな毛がどれほどの量カーペットと一体化しているかわかったものではない。
「──よし!」
「?」
意を決して、カーペットを交換することにした。
「××、ホーマック行くけど行く?」
「いく」
理由も聞かず立ち上がる。
コンベックスでカーペットの寸法を測り、ホーマックへと赴いた。
「××は、どんなのがいい?」
「うーと……」
しばし思案し、
「ふかふかのがいいな」
「ふかふかねえ……」
高級そうなイメージが拭えない。
それに、
「これからもっと暑くなるけど……」
「あー」
駄目ではないが、すこし嫌だ。
しばし店内を回った結果、タイルカーペットがいいのではないかという結論になった。
「せっかくだから、市松模様にしよう」
「いちまつ?」
「チェス盤みたいなやつ」
「おー」
「50cm×50cmだから、8枚かな」
「よんまいずつ?」
「いや、8枚ずつで計16枚」
茶色と灰色のタイルカーペットを重ね、一気に持ち上げる。
「──……おもっ」
超重い。
持てないほどではないが、米袋どころの騒ぎではない。
裏地がゴム製の上にやたら分厚いので、そのためだろう。
「わたしもつ」
「無理全部は無理だから絶対」
受け取ろうとするうにゅほを制し、16枚のカーペットを床に下ろす。
「……××、何枚持てる?」
「ぜんぶ」
「全部は無理だから」
試した結果、5枚持てた。
「じゃあ、4枚頼むな」
「ごまい……」
5枚でぷるぷるしていたので、落としどころとしては妥当だろう。
帰宅後に計測してみると、1枚につき1.5kgもあった。
重いはずである。
「──……できたーっ!」
「わー!」
一時間の作業を経て、自室がすこしオシャレなかんじになった。
「いぇー」
「いぇー」
こつんとこぶしを合わせ、ふたりでキンキンに冷えたペプシネックスを飲んだ。
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