2013
03.31

うにゅほとの生活492

2013年3月31日(日)

昼食にピザを頼もうか、という話になった。
数日前に考えていたピザパーティは、とりあえず無期延期ということにする。※1
「××ー」
うにゅほの名前を呼び、自室の扉を開く。
「うー」
テトラポッドのぬいぐるみをギュウギュウに絞め上げながら、うにゅほがうめいた。
「ピザ食う?」
「くう」
食欲はあるのだ、なぜか。
「どんなピザがいい?」
「たくさんあるの?」
「たくさんあるぞ」
「かってきたの?」
「いや、今日は宅配だ」
「たくはい?」
「ピザハット」
「きいたことある」
「ほら、香取慎吾がCMやってたやつだよ」
「あー」
三匹の黒豚が豚肉を食べろと言っているCMは、ちょっとどうかと思ったが。
「おっきいピザ」
「大きい──まあ、大きいか」
サイズによるけど。
「チーズ、のってるやつがいいな」
「だいたい乗ってるかな」
「えと、じゃあ」
「チラシ持ってこようか?」
「ううん」
うにゅほが首を振る。
「わかんないから、いい」
「じゃあ、美味しそうなの頼んどくよ」
「うん」
携帯ラジオをつけて、部屋を出た。
家族との相談の結果、クォーターピザを注文することになった。
最後に頼んだときも、同じものを食べた気がする。
三十分ほどして、ピザが届いた。
「わあー……」
テトラポッドのぬいぐるみを膝に乗せたうにゅほが、感嘆の息を漏らした。
「おいしそう」
「だろだろ」
「でも、そんなおっきくないね」
Lサイズである。
「ふつうのピザより、ちょっとおっきい」
「参考までに、どれくらいだと思ってたんだ?」
うにゅほが両腕で円を作る。
「これくらい」
でけえ。
「ほら、冷めるぞ」
父親の言葉を合図にして、昼食が始まった。
「美味いか?」
「うまい!」
満足そうである。
ラーメンとカップラーメンの関係とは異なり、ほぼ完全に上位互換だからなあ。
三百円ピザじゃ物足りなくなったりして。
「──……ありえる」
そう呟き、チーズをすすった。

※1 2013年3月25日(月)参照
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2013
03.30

うにゅほとの生活491

2013年3月30日(土)

白ワインをもらった。
ボトルとグラスを前に、ためらいがちに口を開く。
「……えー、本当にいいの?」
「?」
うにゅほは飲酒反対派である。
いつだったか、マッコリを飲んでリバースして以来、アルコールの摂取に対し厳しい態度をとっていた。
「ワインって、お酒だけど……」
「うん」
「いいの?」
「?」
そこで首をかしげる意味がわからない。
「ワイン、からだにいいって」
「誰が?」
「テレビで」
すべてがすっきりと繋がった気がした。
うにゅほにとって、ワインとは「体にいいお酒」に他ならないのである。
「ちがうの?」
「いや、なんか聞いたことはある」
ポリフェノールがどうとか。
「ためしに、ちょっと調べてみるか?」
ディスプレイをあごで指した。
「──……えー、つまりだ」
カチカチとマウスを鳴らしながら、表示されたテキストを要約する。
「赤ワインは動脈硬化を予防できて、白ワインは食中毒を防止するらしい」
「しょくちゅうどく?」
「なんか、おなかの調子を整えるらしい」
「からだにいいの?」
「いいらしい」
思っていたよりも、しっかりと根拠があるようで、すこし驚いた。
「でも、飲み過ぎは駄目だってさ」
「それはそうだよ」
「グラス2杯が適量だって」
「じゃ、にはいね」
ボトルを手に取り、うにゅほが言った。
「ささ、いっこんどうぞ」
日本酒?
「おっとっと、は?」
「え? あ、うん、おっとっとっと」
三分の二くらいしか注がれてないけど。
「じゃあ、いただこうかな」
「どうぞ」
グラスの縁に口をつけ、わずかに含む。
「おいしい?」
「ああ、美味しい」
安ワインだが、俺の舌には十分過ぎる。
「ひとくち」
「舐めるだけなら、いいよ」
うにゅほにグラスを手渡す。
「おっとっとっと」
タイミングそこじゃないだろ。
うにゅほがグラスを傾け、
「──……うええ」
渋い顔をした。
「すっぱい」
「ワインはすっぱいよ」
「した、びりびりする」
「白ワインって、そんなかんじだよな」
「これ、おいしい?」
「飲み慣れると、渋みも楽しめるようになる」
「ふうん……」
興味を失い、うにゅほはソファに腰を下ろした。
そういうわけで、今日の日記はほろ酔いのまま書き記している。
文章に不備があるかもしれないので、あらかじめお詫びしておこう。
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2013
03.29

うにゅほとの生活490

2013年3月29日(金)

友人の恋人から、うにゅほ宛てに贈り物を頂いた。
友人が帰省するたびなにかしら手渡されているような気がする。
いずれなんらかのお返しをしなければなるまい。
「あけていい?」
「いいよ」
「わー」
うにゅほが、紺色のビニール袋の封を解く。
「なんだこれ」
「毛糸の──毛糸の、なんだろう」
手のひらくらいの大きさの、袋状の物体である。
「てぶくろ?」
「あー」
たしかに、子供用のミトンに見えなくもない。
「ひもがある」
うにゅほがピンク色の紐を引くと、袋の口がすっと閉じた。
「ああ、これ巾着袋だ」
「おでん?」
「おでんじゃないほうの、まあ、物を入れておくための袋だよ」
毛糸の巾着袋なんて初めて見たので、一瞬わからなかった。
「なんかはいってる」
「どれ?」
「なんだこれ、パンダ?」
小さな箱のなかで、二頭のパンダが荒ぶる鷹のポーズを取っている。
本格的に、なんだこれ。
うにゅほから箱を受け取り、上下左右から観察する。
「──……イヤホン?」
箱の表面に「HAPPY EARPHONE」と書かれていた。
「イヤホンって、みみにいれるやつ?」
「そう」
「これ、みみにはいらないよ?」
「いや、パンダの裏側に、耳に入れる部分があるみたい」
わかりやすく表現するならば、カナル型イヤホンの背中にパンダの人形がくっついているのだ。
「──…………」
あまり実用に耐えうる品ではなさそうである。
というか、どこに売ってるんだ。
「◯◯、つけて?」
「え、自分で着けないのか」
「だって、こういうのつけたことない」
俺だってないが。
「……まあ、いいけど」
箱から取り出したイヤホンを、恐る恐る装着する。
「──…………」
あからさまに邪魔そうなパンダだが、思っていたほど障りはない。
「どうだ?」
うにゅほに視線を向ける。
「──…………」
「?」
へんなかおをしていた。
「──……ばふう!」
「!」
「ふへ、あはっ、ははっははは! みみにパンダ! みみにパンダ!」
爆笑である。
それも、見たこともないくらいの大爆笑である。
「ほう」
こういうのがツボなのか。
やおらに立ち上がり、モデルを模してスタイリッシュに歩いてみた。
「──…………ぁ、っ」
過呼吸を起こすくらい笑っていた。
さすがにまずい。
慌ててイヤホンを外し、うにゅほを介抱した。
このパンダは封印しよう。
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2013
03.28

うにゅほとの生活489

2013年3月28日(木)

友人とコストコへ行ってきた。
「──なんじゃこりゃあ!」
超広かった。
「ひろいね、ひろいね!」
「倉庫みたいだな!」
「そうこみたいだね!」
コストコは、大型の倉庫をそのまま店舗として使用しているのだと、友人が教えてくれた。
「──…………」
「──…………」
なんだか気恥ずかしくなってしまった。
「なんでも置いてるなあ」
「うん」
「なんでもでかいな」
「ね、これなに?」
うにゅほが指し示す先に、なんだろう、なにかがあった。
「なんだこれ」
陶器製の容器である。
小さめのポリバケツくらいのサイズで、ソフトクリームのような装飾が施されていた。
「……傘立て?」
「クリームなのに?」
「説明は──……英語だ」
「なんだろう……」
よくわからなかった。
「これおいしそう」
「あー、ティラミスか」
一辺が30センチメートルくらいあるけど。
「ティラミスってなに?」
「なんか、こう、ケーキだよ」
具体的な説明を即座にあきらめた。
「……ケーキ?」
「ああ」
「これ、ケーキ?」
「うん」
「はー……」
うにゅほが深く溜め息をついた。
「だれがたべるんだろ……」
「食べたことあるけど、けっこう美味いぞ」
「え!」
「なんで驚く」
「えー……」
そこはかとなく察しがついた。
「……これ、一人用じゃないからな」
「あ」
やはり。
家族に頼まれていたものを購入し、小腹の隙間を埋めようとフードコートへ寄った。
俺はプルコギベイク、うにゅほはホットドッグを注文した。
「──…………」
「──…………」
でかい。
ホットドッグもかなりのものだが、プルコギベイクに至っては短めのフランスパンくらいある。
そして、重い。
「──…………」
食べる。
「美味い……」
アツアツのプルコギに絡むチーズがたまらない。
「こっちもおいしい」
「ひとくち」
「いいよ」
ホットドッグも美味かった。
しかし、量が量である。
「……もう、むり」
ホットドッグを三分の二ほど食べ進めたところで、うにゅほがギブアップした。
当然ながら、残りは俺が処理した。
今日はもうなにも食べたくない。
ちなみに友人は、プルコギベイク2本とホットドッグ1本をぺろりとたいらげていた。
そんなんだから太るんだよ。
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2013
03.27

うにゅほとの生活488

2013年3月27日(水)

「♪」
「なんか、ごきげんだね」
「そうか?」
靴が変わると、世界が変わった気がする。
街を歩くだけで、なんだか爽やかな気持ちになれる。
「まえのかわぐつは?」
「あれ、靴ずれするんだもん」
「くつずれ?」
「なったことないか?」
「うん」
幸福なことである。
「なんて言ったらいいかな……」
言葉を選びながら、赤信号で立ち止まった。
「靴のサイズが合ってないと、すれて水ぶくれになることがあるんだよ」
「ちいさいのかな」
「いや、大きいほうがなるみたいだよ」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「小さい靴なら、しばらく履いてればだんだん伸びてくるだろ」
「うん」
「でも、大きい靴は小さくならない」
「おー……」
納得していただけたようだ。
「きついと、こすれはしないしな。足は痛いけどさ」
「うん」
「靴が大きいと、歩くたびに動くから、こすれるわけだ」
「ふんふん」
片足を上げて、軽く動かしてみせた。
「あとはまあ、靴の形が合ってないとかかな」
「あ、あれみたいなくつ」
「どれ?」
「ブックオフにあった、さきっちょがとがったくつみたいの?」
「先っちょ──ああ、悪い妖精が履いてそうな靴か」
「そう」
大学時代、荷物運びのアルバイトに履いてきた阿呆がいたので、あまり印象はよろしくない。
「爪先の細い人が履くんじゃないか?」
「ほそい──……」
うにゅほの眉間にシワが寄る。
ああ、なに考えてるかわかってしまった。
「……靴の先までギュウギュウに詰まってるわけじゃないからな」
「!」
「途中まで、途中まで」
「そなの?」
「××の靴だって、爪先の向こうに隙間があるだろ」
「たしかに……」
「それが、もっと先まで伸びてるだけだと思う」
「なんか、ふつう」
「がっかりするなよ、ギュウギュウだったら怖いだろ」
「こわいけど……」
「……まあ、百人に一人くらいはそうなんだけど」
「えっ」
「お、青信号だ」
おもむろに歩き出す。
「それほんと?」
「さあ」
適当にはぐらかしながら、市街を散歩した。
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2013
03.26

うにゅほとの生活487

2013年3月26日(火)

今まで使っていた垢すりタオルがくたくたになってしまったので、ダイソーで新しいものを購入した。
車内に戻ると、うにゅほが不思議そうに尋ねた。
「これ、なんにつかうの?」
「え、いや、体洗うときとかに」
「これで?」
「うん」
「かたいよ? ざらざらだよ?」
「それはまあ、わざわざ硬いのを選んだわけだし」
泡立ちもいいし。
「……けがしない?」
「しないって」
苦笑しながら答えた。
ふと、疑問が脳裏をよぎる。
「じゃあ、××はなにで体洗ってんの?」
「?」
「俺、うちはみんな垢すりタオル使ってるんだと思ってたけど」
「わたし、タオルだよ」
「普通の?」
「うん」
「なんか汚れ落ちてない気がしない?」
「そんなことないけど」
「感覚的なものかな……」
よく考えると、ハンドソープを泡立てるだけで手の汚れとかちゃんと落ちるもんな。
「これ、ぜったいいたいよ……」
垢すりタオルを揉みほぐしながら、うにゅほがそう呟いた。
「××は使わないほうがいいかもなあ」
「そう?」
「慣れてないと、絶対にヒリヒリするから」
「わあ……」
「引くなよ」
これだけ密接に暮らしていても、知らないことは案外あるものだ。
さすがに風呂なんて一緒に入ったことないからなあ。
そう考えると、なにやらむくむくと興味が湧いてきた。
これはもう間違いなく知的探究心である。
「うーん……」
しばらく考え込み、質問をひねり出す。
「風呂入ったとき、どこから洗う?」
なにその合コン相手に確実に引かれそうな質問。
「うー、と」
うにゅほはしばし思案すると、
「みぎあしかなあ」
と、答えた。
俺は、これを知ってなにがしたかったのだろう。
「◯◯は?」
「俺は頭かなあ」
「あたまかー」
なんだか知らないが深く頷かれてしまった。
「頭と体は別勘定だから、すぐ終わるほうから手早く洗っちゃいたいかんじ」
「わたしは、かみあらうの、まいにちじゃないから」
「そうなの──いや、そういえばそうか」
入浴後でも髪が濡れていないことが、たしかにあった。
あまり気にしたことはなかったけれど。
なかなか興味深い会話をしながら、家路についた。
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2013
03.25

うにゅほとの生活486

2013年3月25日(月)

「ピザだ」
「ピザだな」
昼食はピザだった。
「ピザおいしいよね」
「……ああ、ピザは美味しいとも」
正確に述べるなら、スーパーの特売で198円のピザにとろけるチーズを乗せてオーブンで加熱したもの、である。
「マルゲリータがすき」
「マルゲリータは美味いよな」
「こないだの、なんだっけ」
「照り焼きチキン?」
「それ、ふつうだったね」
「とろけるチーズをたっぷり乗せればだいたい同じような味だと思うけど」
「そかな」
うにゅほは知っているのだろうか。
CMなどでよく見かける宅配ピザは、目の前にあるものより十倍以上も高価であることを。
というか普通ピザって言ったらだいたいそっちだということを。
「おいしい」
しかし、すぐ隣で幸せそうにピザを頬張るうにゅほを見ていると、とてもじゃないけどそんなことは言えない。
こちらのピザも美味しいことは間違いないのだし。
「そういえば、さ」
「?」
「新道沿いに、窯焼きピザ食べ放題の店があってさ」
「たべほうだい」
「今度行こうか?」
「おいしい?」
「焼きたてだし、かなり美味しいと思う」
「うーん……」
しばし思案を巡らせて、
「どうしようかな」
「気が乗らない?」
「だって、そんなたべられない……」
「あー」
うにゅほはさほど小食でもないが、健啖家というわけでもない。
薄い生地のピザと言えど、一枚食べきれるか怪しいところだろう。
「うーん……」
うにゅほにもっといいピザを食べさせてあげたい。
でも、宅配ピザは高すぎる。
べつに一度くらいいいのだが、どうせ同じ金額を支払うならふたりで回転寿司とか行きたいし。
「たべないの?」
「食べる食べる」
とろけるチーズをすすりながら思索にふける。
いっそ手作りしてしまおうか。
しかし、生地から作るのはさすがに手間だ。
「──そうか、このピザを豪華にすればいいのか」
「ごうか?」
「もっとサラミ乗せるなり、マッシュルーム添えるなり、オリーブオイルをかけるなり、やりようはいろいろある」
「おー」
「今度ピザ焼くときは、ちょっと準備してからにしよう」
「おいしそうだねえ」
方向性は定まった。
機を見てピザパーティみたいなことをやるのもいいかと思った。
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2013
03.24

うにゅほとの生活485

2013年3月24日(日)

春の甘さが鼻腔をくすぐりはじめた。
大きめの道路を覆っていた雪がようやく姿を消し、圧雪によって傷んだアスファルトを露出させている。
ボロボロになるまで着古した六年もののコートも、そろそろ役割を終えるころだ。
春物のジャケットを求め、古着屋を巡ることにした。
「これいいよ」
ほんわかと春めいた色のカーディガンを手にし、鼻息荒くうにゅほが言った。
「うーん……」
とりあえず、試着してみる。
悪くはないが、サイズが大きめで、致命的なまでに生地が薄い。
「いいんだけど、まだ寒いと思う」
「そっかー……」
服を選ぶにあたり、うにゅほのセンスは新鮮で面白い。
暗く無難な色合いを好む俺に、ぎょっとするような新しい選択肢を提示してくれる。
「これかわいいよ」
袖口や襟元をハートのラインが飾っている白地のジャケットを手にし、鼻息荒くうにゅほが言った。
「これを着ろと……」
「うん」
「またしても薄手なんだけど」
「うん」
とりあえず試着した。
油断すると、うにゅほは俺を可愛いほう可愛いほうへ寄せていこうとする。
その先に待っているものは絶望だけだというのに。
「なんか、これって感じのがないなあ」
「うーん……」
悪くないものはいくつかあったが、予算と実用とがちょうど釣り合うものは見つけられなかったのだ。
「ね、◯◯」
「ん?」
「これ、だめなの?」
「どれ?」
「これ」
うにゅほが触れていたのは、俺が着ているジャケットだった。
「あー、これなあ……」
襟元を緩めながら、答える。
「生地が硬くて、すこしきついんだよ」
「ふうん?」
「ウエストのわりに胸囲がある変な逆三角形だから、普通の型紙じゃしっくりこないときがあってさ」
「うーん……」
首をかしげながら、たどたどしくうにゅほが言う。
「ちゃっく、あけたら、きつくないんじゃ?」
「それはそうだろうけど……」
ためしに開けてみる。
「……きつくない」
「うん」
「なんか、思ってたよりしっくりくる」
「おー」
前を開けたら寒いかと思っていたのだが、よく考えたら寒いときだけ閉めればいいのだ。
幸せの青い鳥は、いつだって自分のそばにいたのである。
などと耳障りのいい言葉で締めたところで自分の間抜けさまでは誤魔化せない。
久しぶりの外出らしい外出に、うにゅほがはしゃいでいたことだけは、紛れもない収獲だと思うけれど。
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2013
03.23

うにゅほとの生活484

2013年3月23日(土)

うにゅほの髪は長い。
一ヶ月ほど前にばっさり切るまでは、もっと長かった。
乾かすのも一苦労に見えるので、気が向いたときは手伝うことにしている。
とは言え、女性の髪の手入れに差し出がましいことをするつもりもない。
ドライヤー係に徹し、髪の毛には手を触れないのが常である。
「乾いた?」
「うん、かわいた」
「じゃあ、ドライヤー終わりな」
「ありがと」
ドライヤーのコードを抜き、まとめて結ぶ。
「あとはブラッシングか」
「うん」
ちょっとやりたいけど、今は我慢する。
半端に手を出すと、かえって迷惑になる。
しっかりブラッシングしたあと、遊びで梳くならいいだろう。
「その櫛、ちょっと目が粗いよな」
「め?」
プラスチック製の櫛を手にしたうにゅほが、おもむろに手を止めた。
「あー、隙間が広いなって」
「そかな」
「××の髪、細い気がするから、もっと隙間が狭いほうがいいんじゃないか?」
「うーん」
櫛を、蛍光灯に翳す。
「そうかも」
「なんか、和風の櫛とかっていいよな」
「きのやつ?」
「そう。漆塗りとか、つげの櫛とか」
「いいかも……」
「なんか、色っぽい気もするし」
「そなの?」
「たぶん。あとでちょいと検索してみる?」
「うん」
髪を梳きながら、そっと呟く。
「……かみは、たいせつ」
「ああ、知ってる」
「──…………」
虚空を見つめ、うにゅほが頷いてみせた。
俺は、たまらなくなった。
「……俺、あんまり手入れしてないけどな」
「だめだよ」
「ブラッシングくらいしとこうかな」
「うん」
「そういえば、××って髪になんか塗ったりしないの?」
「なに?」
「なんか──……油とか?」
ざっくりとした説明になってしまった。
「べたべたするよ?」
「髪にいいって……」
「べたべたなのに?」
「べたべたにならないくらい塗るのかな……」
自信がなくなってきた。
「あ、塗るって言っても、サラダ油を頭からかぶるとかじゃないからな」
「えっ」
意外そうな顔するなよ。
そんなふうに、訥々と髪のことを話したりした。
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2013
03.22

うにゅほとの生活483

2013年3月22日(金)

昨夜はなかなか寝付くことができず、眠気が日中まで押し出されてしまった。
雑用を済ませて昼過ぎに布団に入り、途切れ途切れに仮眠をとった。
以下、夢の内容を一部記す。
毛布を一枚しか掛けなかったためか、途中で寒くなり、全身を丸めるように眠っていた。
足元の毛布を引き上げようと必死で伸ばしたのだが、一向に届かない。
なにを伸ばしたのかはわからない。
「どしたの?」
と、聞き覚えのある声がした。
恐らくうにゅほである。
返答をした記憶はあるが、内容は覚えていない。
「──…………」
「──…………」
幾度か言葉を交わし、うにゅほが毛布に潜り込んできた。
あたたかいことはあたたかいが、なんだかとてもまずいような気になり、上体を起こそうとした。
しかし、起き上がることができない。
もがいているうちになんだか暖かくなってきて、しめたとばかりに逃げ出した。
最終的に、なにかうすぼんやりとした概念のようなものに追われているところで目が覚めた。
本日の日記は、昼寝をしているとうにゅほが布団に入ってきた──という内容である。
読者諸兄は、そう考えていることだろう。
俺もそう思っていた。
「……おはよう」
「おはよ」
「なんかすごい肩凝った」
「もむ?」
「あとで頼むよ……」
チェアに腰を下ろす。
「あー、そうだ。寝てるとき、布団に入ってきたろ」
「?」
うにゅほが疑問符を浮かべる。
「え、入ってきたよな?」
「ううん」
首を振る。
「えー……?」
記憶と現実とが食い違っている。
「じゃ、じゃあ、寝てるときちょっと話はしたよね」
「うん」
ああ、そこは夢じゃないのか。
「どんな会話だっけ」
「◯◯、さむいっていってた」
「うん」
「だから、もうふかけたよ」
「あ、うん……ありがとう」
「どういたしまして」
「布団には、入ってない?」
「はいってない」
「──…………」
がしがしと髪を掻きむしり、頭を垂れる。
うにゅほは嘘をつけないし、仮についてもすぐわかる。
と、いうことは、
「願望じゃねーか!」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
なんだか異様に恥ずかしくなって、慌ててトイレに逃げ込んだ。
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