2012
07.31

うにゅほとの生活250

2012年7月31日(火)

四週間に一度の通院日だった。
うにゅほも一緒に来たがったが、昨日の今日である。
静養するように言って、家を出た。
帰宅すると、うにゅほがリビングのソファに腰を下ろしながらテレビを見ていた。
「おかえり」
「ただいま」
顔色も、声の張りも悪くない。
すこし元気になったのかもしれない。
母親が外出していたので、昼食はカップラーメンで済ませることにした。
火を使う料理など、暑くてやっていられないという事情もある。
「ほら」
スープまで平らげたうにゅほに、昨日処方されたビタミン剤を渡す。
うにゅほは渋い顔をして、
「……もうなおったよ?」
と言った。
喉元過ぎれば熱さを忘れる。
すこし元気になったと思ったら、すぐこれである。
「ちゃんと飲まないと駄目だ」
「だって、のどにひっかかるんだもん」
なるほど、喉元をなかなか過ぎてくれないのか。
錠剤を飲めない人がいるらしい、という話は聞いたことがあった。
共感はできないが、理解はできる。
単純に慣れの問題なのだろう。
さて、どうすべきかと黙考したところ、テーブルの上の紙袋が目についた。
四週間分の薬である。
寝る前に飲む薬であるため、うにゅほには見せたことがなかった。
ずらりと繋がれた小袋を千切り、うにゅほに手渡す。
「くすり……?」
「俺の薬。十二錠で一回分」
「えっ」
「比べることじゃないけど、俺はこれだけ飲んでるよ」
そう言って、俺は部屋に戻った。
しばらくしてうにゅほの薬袋を検めると、ビタミン剤が減っていた。
不健康自慢ほど痛々しいものはない。
しかし、それでうにゅほが薬を飲んでくれたなら、恥を忍んだ甲斐があったというものである。
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2012
07.30

うにゅほとの生活249

2012年7月30日(月)

悪い予感が当たるのは、希望が混じらないからである。
午前中から、顔色が悪いとは感じていた。
昼食のそうめんを半分以上残したあたりで、ようやく確信が持てた。
「◯◯。具合、悪いんだな?」
語気を強めて言った。
「……うん」
俺たちは家族である。
引け目を感じて体調不良を訴えなかったうにゅほにも、遠慮をさせてしまった自分たちにも、等しく腹が立つ。
午後一番で、かかりつけの内科へ連れて行った。
医療費は母親と折半した。
「夏バテですね」
医師がそう診断を下したとき、緊張の糸がぶつりと切れた。
よかった。
いやよくはないけど、大きな病気でなくて安心した。
「滋養をとって、ゆっくり休んでください。
 心配であれば、ビタミン剤を出しておきましょうか」
二週間分のビタミン剤を処方してもらい、帰宅した。
「すこし眠ったほうがいいと思うよ」
「うん」
自分の寝床へ向かうかと思いきや、うにゅほは自室のソファに腰を下ろした。
このソファは、俺の寝床でもある。
そのままごろんと横になったので、タオルケットを掛けてあげた。
「……ありがと」
「ここで寝るの?」
「うん」
PCチェアに腰掛ける。
チェアとソファの位置は程近く、2メートルと離れていない。
人恋しいのかもしれないと思った。
適当にネットサーフィンをしながら、時折うにゅほの様子を窺っていると、
「ふふっ……」
よくわからないが、笑われてしまった。
心外である。
数十分もそうしているうちに、ようやく寝ついたようだった。
「おやすみ」
口の中でそう呟いた。
具合がよくなったら、プールにでも行こうか。
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2012
07.29

うにゅほとの生活248

2012年7月29日(日)

友人と旅行へ行くことになった。
日帰りであるため、うにゅほも一緒である。
道の駅をはしごし、きのこ汁をすすったり名物を試食したりと、食い道楽じみた旅路となった。
旅には目的が必要だ。
たとえ有名無実と化そうが構わない。
目的があるというだけで気持ちが引き締まるものである。
今回の場合、それは室蘭名物カレーラーメンだった。
俺はカツカレーラーメンを注文したのだが、控えめに言っても失敗だった。
不味いわけではない。
むしろ美味い。
とろみのあるカレースープが麺と絡み合い、名物の名に恥じぬ味と言える。
しかし、重いのだ。
胃にずしりとくる重さは、カツへの後悔を抱かせるに十分だった。
「……うぷ」
隣席のうにゅほが口元を押さえた。
麺は半分ほど残っているが、うにゅほはそもそも辛いものが苦手なのだ。
よく頑張ったほうである。
うにゅほの食べ残しを処理していると、間もなく胃袋の限界がやってきた。
仕方がないので、俺の食べ残しを友人の前にそっと移動させた。
三段逆スライド方式である。
持つべきものは、大食いの友人かもしれない。
室蘭の道の駅では、うにゅほが物欲しそうに眺めていたイルカのストラップを買った。
これで携帯を持ち歩くようになってくれればいいのだが。
地球岬で絶景を写真に収めたあと、夕日に見送られて家路についた。
帰りの車内、うにゅほは後部座席でずっとうつらうつらしていた。
午後八時過ぎに帰宅したあとも、いつもより早くに就寝してしまった。
エアコンの冷風に当てられたのかもしれない。
十時間以上も車内にいたのだから、無理もない話である。
体調を崩していなければいいのだけれど。
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2012
07.28

うにゅほとの生活247

2012年7月28日(土)

スーパーへ寄った際、200mlパックのココアを購入した。
車内で飲もうとストローを外し、
「あっ」
誤って取り落としてしまった。
運転席と助手席とのあいだに入り込んでしまったようで、手を挿し入れても一向に見つからない。
喉が乾いていたのだが、仕方ない。
「のむ?」
うにゅほが缶コーラを半分くれたので、喉を潤すことはできた。
帰宅して台所の引き出しを探すが、見つかったのは太いストローばかりだった。
「どうしよう……」
ストロー付きの製品をもうひとつ買ってくるしかないのだろうか。
しかし、そこまでして飲みたいわけでもない。
ココアを前にして頭を抱えていると、うにゅほが助け舟を出してくれた。
「そのままのめないの?」
「……そのままって?」
「あなあけて、ちゅーって」
なるほど。
いささか無理が過ぎる感はあるが、他に方法はなさそうである。
俺は小指の爪で銀紙に穴を開けると、そのまま紙パックに吸い付いた。
「──…………」
飲みにくいが、飲めないことはない。
悪戦苦闘する様子を楽しそうと判断したのか、うにゅほが「ひとくち」と手を差し出した。
缶コーラを半分もらっているので、恩を返さないわけにはいかない。
「はい」
ココアを渡す。
躊躇なく紙パックに吸い付いたうにゅほを見て、思わず背筋が伸びた。
間接キスにはもう慣れたが、さすがにこれは恥ずかしい。
「……美味しい?」
「うん」
「じゃあ、全部飲んでいいよ」
「うん?」
不思議そうな表情を浮かべたうにゅほに、苦笑を返すことしかできなかった。
二度とストローは無くすまい。
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2012
07.27

うにゅほとの生活246

2012年7月27日(金)

起床してリビングへ行くと、うにゅほが夏服の襟元を両手で押さえていた。
「おはよう」
「うー……」
唸られた。
「どうかしたのか?」
「かゆいー」
うにゅほが手を退ける。
首元から襟の下にかけて、赤く腫れ上がっていた。
「虫に刺されたのか……」
見ただけで痒そうだ。
蚊にしては腫れが大きいように思えたが、体質の問題もある。
「薬は? 塗った?」
「ううん」
俺は戸棚からウナコーワクールを取り出し、うにゅほに差し出した。
しかし、うにゅほは受け取らなかった。
涙目でこちらを見上げながら、
「……やって?」
ときたものだ。
断れる道理があるはずもない。
うにゅほの名誉のために一言添えるならば、恐らく甘えて言ったわけではない。
ウナコーワクールの使い方がよくわからなかったのだと思う。
ただ、天然悪女の素質があることは否定しない。
うにゅほの胸元にできた痛々しい歪な腫れにウナコーワクールを塗布し、ほっと溜め息ひとつ。
ふと、俺も蚊に刺されていたことを思い出した。
うにゅほの隣に腰を下ろし、右足の甲にウナコーワを塗りたくる。
「? なんで◯◯もぬったの?」
「いや、刺されたから……」
「どこ?」
「ここ」
と、針の先ほどの赤いぽっちを指さした。
「かゆいの?」
「いや、そんなに」
そもそも俺は、蚊に刺されてもそれほど腫れないし、痒くもならない。
父方の遺伝であるらしい。
そう説明すると、
「ずるい!」
と激昂されてしまった。
代われるものなら代わってあげてもいいが、体質ばかりはどうにもならない。
うにゅほをなだめながら、並んでカップアイスを食べた。
機嫌はすぐに直った。
うにゅほは食べ物にも弱い。
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2012
07.26

うにゅほとの生活245

2012年7月26日(木)

洞窟物語3Dとスーパーダンガンロンパ2の発売日だったので、近所のゲームショップで購入した。
帰宅するなり、入れ替わりで母親が外出した。
うにゅほの手を引いて。
なんだかよくわからないが、まあいい。
自室のソファで横になりながら3DSをプレイしていると、
「◯◯ー」
部屋の扉が開かれた。
視線を上げると、水着姿のうにゅほがいた。
「うお!」
水着を買いに行っていたのか。
自室に水着を着た少女がいるという非現実感に、思わず声が上ずってしまった。
「にあう?」
尋ねられたのだから、答えなければならない。
答えるためには、観賞しなければならない。
心中で言い訳を呟きながら、視線を上下に動かした。
トップスがワンピース状に広がった、露出度控えめの水着である。
カラフルなパステルボーダーが夏らしくてよい。
「ああ、似合ってる」
人生のイベントCGが一枚埋まった。
余は満足である。
しかし、
「ゲームやってたの?」
と言いながら、うつ伏せで寝転がっていた俺の背中に乗るのはやめなさい。
はしたないですよ。
くぐもった声で
「……似合ってるから、着替えてきなさい」
と、言うのが精一杯だった。
水着を買ったからには、海かプールにでも連れていかなきゃならないな。
夏は刺激的な季節である。
この夏を、うにゅほに楽しんでもらいたいと思った。
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2012
07.25

うにゅほとの生活244

2012年7月25日(水)

歯医者で銀歯を入れたあと、整骨院へ行った。
整骨院は混んでいた。
時間帯が悪かったらしい。
幸いにも漫画が揃っているので、待ち時間も苦ではない。
うにゅほが手に取ったのは「弁護士のくず」だった。
それ結構精神的にエグいけど大丈夫なのか?
せっかくである。
俺も、普段は買わないような漫画を、あえて読んでみようと思った。
指先を迷わせ、抜き出したのは、「岳」の1巻だった。
山岳救助の漫画らしい。
しばらく読み進めるうち、ふと思い出したことがあった。
「◯◯。この漫画、読んだことある?」
隣席のうにゅほにそう尋ねてみる。
「うん」
「これ、どんな漫画?」
「なんか、そうなんした人を、たすけるやつ」
なるほど。
「……もしかして、スキーに行くときに一悶着あったのは、これのせい?」
もう五ヶ月ほども前の話になる。
スキーと雪山遭難とを脳内で直結させてしまったうにゅほが、スキー場へ行こうとする俺を激しく引き止めたことがあったのだ。※1
「?」
本人はいまいち思い出せていないようだけれど。
単に、ピンときていないだけかもしれない。
積年の疑問が氷解して、なんだかすっきりとした気分である。
「来年こそは、スキー行こうか」
「うん!」
などと気の早い会話をしながら、待ち時間は過ぎていった。

※1 2012年2月21日(火)参照
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2012
07.24

うにゅほとの生活243

2012年7月24日(火)

具合が悪く、正午過ぎに起きた。
部屋を出ると、足元に得体の知れない物体があった。
よく観察してみると、カエルの潰れたような体勢で床にうつ伏せているうにゅほだった。
時折切なげな声音で、
「うー」
と呻いている。
仕方がないので跨いで通り、牛乳をコップに注いで飲み干したあと、ソファに腰掛けてテレビをつけた。
「うー!」
呻きが激しくなったので、声を掛けることにした。
「なにやってんの?」
「こしいたいー」
腰痛は俺の専売特許である。
「なんか、心当たりはあるの?」
「……草むしり」
なるほど、祖母の手伝いか。
それは、是が非でもねぎらってあげねばなるまい。
ガニ股状態で開かれているうにゅほの足を整え、挟むようにして膝頭を床につけた。
そして、両手の親指を腰のあたりに押し込む。
「どう? このあたり?」
「そ、こ、じゃ、な、いー」
「もっと上? 下?」
「した」
そんな問答を数度繰り返したあと、俺は手を止めた。
これより下がると、臀部である。
わかりやすく言えば、おしりである。
腰痛なのかそれは。
でも、草むしりで腰から尻にかけてを痛めるのは、なんとなくわかる気がする。
俺は立ち上がり、自室へ戻った。
さすがにおしりは揉めません。
しかし、素人の俺が按摩をするより、ずっと良い手段がある。
箪笥より取り出したるものは、
「マーサー子ーちゃーん~!」※1
「……?」
ドラえもんの物真似には相変わらず気付かれなかったが、まあいい。
マサ子氏は、四つの揉み玉とヒーターを備えた高性能マッサージクッションである。
俺はマサ子氏をうにゅほの臀部に押し当て、スイッチを入れた。
「お、お、おおおー!」
一瞬、うにゅほの上体が仰け反った。
「どうよ!」
「いいわー……」
おっさんみたいな返事だな。
そのまま五分ほど押し当てていたら、腰痛も引いたようだった。
恐るべしマサ子氏。

※1 2012年1月20日(金)参照
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2012
07.23

うにゅほとの生活242

2012年7月23日(月)

知人に「太った?」と尋ねられた。
痛いところを突く。
まさしく太ったのである。
そうは言っても肋骨は変わらず浮いているし、「太っている」かと問われればそうではない。
そもそも俺は、脂肪がつくとガタイがよくなる体質なのだ。
胴回りには、あまりつかない。
ダイエットを志して約半年、一時は理想体重に迫ったこともあった。※1
しかし、ダイエットとはバネのようなものである。
痩せれば痩せるほど痩せにくくなるし、同時に太りやすくなっていく。
太りやすい時期に外食でも続こうものなら、あっという間にこの有り様である。
「痩せよう……」
決意を口に出し、天を見上げた。
青雲の志である。
「──あひゃ!」
不意に横っ腹をつままれて、妙な声が出てしまった。
「やめい!」
うにゅほの手を振り払う。
「おなか、やわいね」
頭部をフライパンの底で殴られたような衝撃が走った。
そうなんですやわいんです!
腹に脂肪がつきにくいとは言え、つかないわけじゃないんです!
知人に同じことを言われたときの数倍は傷ついた。
「痩せる! 痩せてやる!」
今は遠き理想体重へと辿り着いてやる!
夕食は天ぷらだった。
さつまいもの天ぷらは、うにゅほにあげた。

※1 2012年1月13日(金)参照
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2012
07.22

うにゅほとの生活241

2012年7月22日(日)

午前一時頃、シャワーを浴びて戻ってくると、うにゅほがソファで横になっていた。
意図的に眠ったわけでないことは、そのけったいな寝姿でわかる。
27時間のうち6時間でKOだった。
俺は苦笑を浮かべると、うにゅほの体に俺の布団を掛けた。
深夜帯に入ってからが本番なのに。
教育に悪いからいいけど。
俺は午前四時まで朝更かしをしたあと、うにゅほを起こさないよう床に就いた。
寝床を奪われたのはむしろありがたい。
うにゅほの布団は落ち着くし、寝返りができるので深く眠れる。
ソファで眠るのも、随分と慣れてしまったけれど。
起床すると、午前十一時だった。
両親はおらず、うにゅほだけがリビングでテレビを見ていた。
「27時間テレビはいいの?」
うにゅほが見ていたのは、何故か将棋だった。
「……うん。ねちゃったから」
妙なところで完璧主義である。
眠ってしまったことに罪悪感を覚えているらしい。
「こういうのは、無理に付き合う必要はないんだよ」
俺はリモコンを手に取り、チャンネルをフジテレビに変えた。
見たいときに見て、気が向いたら出かけて、帰ってきたらまたテレビをつける。
その程度のゆるさでいいのだ。
「今年は結構面白いから、俺は見たいかな。◯◯はどう?」
「うん……みたい」
「じゃ、見よう」
俺はうにゅほの隣に腰を下ろし、犬の散歩まで一緒にテレビを眺めていた。
午後七時からは劇的ビフォーアフタースペシャルを見た。
珍しくテレビ漬けの一日だった。
「あ、来月は24時間テレビがあるぞ」
「また!?」
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