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2012
07.21

うにゅほとの生活240

2012年7月21日(土)

昼食は家族で蕎麦を食べに行った。
きのこよりたけのこ、うどんより蕎麦である。
ああ、きのこ派と香川県に喧嘩を売ってしまった。
俺は天ざる、うにゅほはとろろ蕎麦を注文した。
「あ、美味い」
てんぷらがやたらに美味い。
蕎麦はふつう。
とろろ蕎麦はどんなものかと一口もらったところ、
「……うま」
すげえ美味い。
濃厚なうずらの黄身がとろろと絡み合い、得も言われぬ妙味を醸し出している。
何故とろろ蕎麦を頼まなかったのかと過去の自分を責め立てていたところ、
「たべすぎ!」
「はッ!」
気付くと一口では済まなくなっていた。
食べたものは戻らないので、えび天半分で手打ちにしてもらった。
犬の散歩を終えて帰宅すると、リビングで27時間テレビを放映していた。
「なにこれ」
「27時間テレビだよ」
「ほんとにそんなにやるの?」
「やる」
「◯◯はみる?」
「今年はどうかなあ。何年か前、最初から最後まで見たことあったけど」
面白ければ、見るにやぶさかでない。
「そっかー……」
うにゅほが沈思黙考する。
興味はありそうだ。
「◯◯が見てみたいなら、俺も付き合うけど」
「ほんと?」
「本当。まあ、面白くなければやめたらいいよ」
「じゃ、みてみる」
サブディスプレイをソファへ向け、対映画用の環境を整えた。
午後十一時半現在、うにゅほはまだまだ行けそうである。
さて、何時まで起きていられることやら。
どんなに頑張ったところで、毎度のごとく朝方に放送されるF1には勝てないと思うけど。
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2012
07.20

うにゅほとの生活239

2012年7月20日(金)

左奥、上の歯がしみる。
歯医者へ行くと、虫歯ではないと言われた。
歯の一部が欠けているのだそうである。
しっかりと磨いているのに、おかしいと思ったのだ。
しかし、痛いことにも治療をすることにも変わりはない。
「じゃあ、麻酔打ちますから」
待て。
何故麻酔を打つ。
その理由はすぐにわかった。
患部は銀歯の隣にある。
その銀歯をペンチのようなもので力任せに剥がされれば、それはもう虫歯とか関係なく痛い。
思わず、
「ぎゃア!」
と叫び声が飛び出たくらいである。
治療室と待合室とは距離も扉もない。
パーティションで区切られているだけである。
うにゅほに叫び声を聞かれていないか心配だった。
恥ずかしいからではない。
治療を終えて待合室へ戻ると、うにゅほが軽く怯えていた。
ああ、懸念した通りだ。
歯医者に対する恐怖を植え付けてしまった。
「あの声は、痛いというかびっくりしてだな──」
などと恐怖を和らげるべく熱弁していると、
「くち、なんかヘンなにおいする」
歯の被せ物に使った薬品の匂いだよ!
その言い方やめて!
夕食後、洗面所で十分くらい歯を磨くうにゅほの姿を見た。
歯を磨きすぎるとエナメル質が削れて知覚過敏になりやすいらしいと告げたところ、
「どうすべきなの!」
と、人類の存亡でも賭けていそうな口調で怒られた。
必死である。
要するに、短い時間で的確に磨けばいいのだ。
具体的にどうすべきかは知らないけれど。
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2012
07.19

うにゅほとの生活238

2012年7月19日(木)

左手の付け根にしこりができた。
整形外科へ行くと、ガングリオンという九十年代アニメのような病名を下された。
良性腫瘍であり、放っておいても特に心配はないとのことである。
ああ、持病がまたひとつ。
「位置が悪いから、どうしても気になるようなら手術しかないですね」
医師があっさりそう告げると、
「し、しじちゅ──」
うにゅほが世界の終わりのような表情でそう呟いた。
言えてないけど。
手術という単語に過敏なのは、以前ブラック・ジャックを読ませたせいだろうか。
「手術といっても一泊二日の入院なので、彼女さんの心配するようなことはないですよ」
医師が苦笑しながら言った。
兄妹はそう珍しくないが、恋人同士に見られたことは初めてである。
外見のちぐはぐさから醸し出される得も言われぬ犯罪臭は気にならないと申すか。
やるな、医師。
家庭の事情を説明するのが面倒なので、否定せずに診察を終えた。
放心しているうにゅほの手を取り、車へ戻る。
「……しゅじちゅ、するの?」
言えてない。
「しないって」
「ほんと?」
あー。
正直に言ったほうがいいか。
「このしこりが、うんと大きくなったら、手術することになると思う」
ガングリオン自体に害はないが、神経や血管を圧迫することがある。
そうなれば手術は避けられまい。
「そっか……」
うにゅほはそう呟き、俺の左手を取った。
「ちいさくなれっ!」
語気の強さに反し、やわらかな仕種で手首のしこりを撫でる。
うにゅほの体温が心地良い。
でも、このままでは車が出せません。
うにゅほの気が済むまで、されるがままにしておいた。
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2012
07.18

うにゅほとの生活237

2012年7月18日(水)

パークゴルフ場からの帰り道、スーパーでコンビーフを購入した。
好物、というほどでもない。
ごくたまに前触れなく食べたくなるたぐいのものである。
「これなにー?」
天井に掲げたコンビーフ缶を仰ぎ見ながら、うにゅほが興味深げに問い掛けた。
「コンビーフだよ」
「コンビーフって?」
「牛肉の塩漬け、だったかな」
調べてみたことはない。
「たべもの?」
「そうそう」
「おいしい?」
「食べてみるか?」
「うん」
「じゃ、開けてみな」
すこしいじわるをしてみる。
左手にコンビーフ缶、右手にコンビーフの鍵を持ったうにゅほが、小首をかしげながら存在しない鍵穴を探す。
これが漫画なら、頭上に大きなクエスチョンマークが浮かび上がっていることだろう。
手のひらで口元を隠しながらその姿を堪能し、
「ほら、貸してみな」
そう言って途中まで開けてみせた。
「おー!」
コンビーフ缶を返すと、ぎこちない手つきで鍵を回しはじめた。
実に楽しそうだ。
俺も、コンビーフ自体より、開けるのが楽しくて買っている節がある。
鍵を回し切り、うにゅほが缶の底をぱかっと開く。
「──…………」
なんだか渋い顔でこちらを窺っている。
「……なんか、犬のごはんのにおいする」
あー。
似てるかもしれない。
小皿に盛って食べさせてみると、
「ふつう」
とのことだった。
まったくもって同感である。
俺が三分の二ほどを平らげて、おやつの時間は終了となった。
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2012
07.17

うにゅほとの生活236

2012年7月17日(火)

ELECOM製のPCスピーカーが安かったので、思わず衝動買いしてしまった。
「安さのELECOM、安さのBUFFALO」と呼ばれるほどの信頼性だが、安くなければ勢いで購入はしない。
いろいろと寄り道をして帰宅した。
「? なに、それ」
スピーカーの箱を掲げ。高らかに口を開く。
「スぴーかぁ~!」
「……?」
不思議そうな顔をされた。
俺のドラえもんの物真似は、そんなに似ていないか。
思い切りが足りなかったかもしれない。
まあいい。
「これがあれば、イヤホンをしなくてもパソコンの音が聞けるんだよ」
「ほー」
興味があるような、ないような。
けっこう便利だと思うんだけどなあ。
早速設置し、適当な動画を再生してみる。
「?」
音が出ない。
PCの音量をいじると、音楽が流れ出した。
しかし、いまいち音が小さい。
スピーカー側の音量つまみを最大にすると、谷山浩子の歌声に嫌というほどノイズが混じった。
「なんか、ぱっとしないねえ」
「そうだな……」
サウンドカードで濾過した水に、改めて塩素を混ぜたような音質だ。
安物買いの銭失いである。
こんなことなら、たけのこの里のひとつやふたつ、うにゅほに買ってあげたほうがよかったかもしれない。
光を失った電源ランプを見つめながら、俺はひっそりと溜め息をついた。
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2012
07.16

うにゅほとの生活235

2012年7月16日(月)

月曜祝日のため、少年ジャンプが前倒しで発売されていたことを知ったのは、今日になってからだった。
半端に知ってしまったため、なんだか損をした気分である。
うにゅほにはその事実を教えず、コンビニへ向かった。
嫌な予感はしていたと思う。
数台の大型トラックのあいだを縫うようにして駐車したときから、鈍くではあるけれど。
さっさと用事を済ませてしまおうと、ジャンプを片手にレジへ向かった。
「今、俺が並んどったろうが」
振り返ると、三十代半ばほどのツナギを着た男性が、俺を睨みつけていた。
「いや、お前のが遅いから」
連れらしき男性が、ツナギの男性を諌めた。
俺は連れの男性に軽く頭を下げると、前を向いて財布を取り出した。
「いい年こいて漫画か!」
揶揄するような声に、うにゅほが俺の腕を掴んだ。
怖いか。
俺も怖いよ。
他人に悪意を向けられるのは、怖い。
会計を済ませ、足早にその場を後にしようと──
どん!
臀部に衝撃が走った。
蹴られたのだと理解したときには、もう止められなかった。
「わああああッ!」
ツナギの男性を、うにゅほが思い切り突き飛ばしたのだ。
男性はホットドリンクの棚に寄りかかり、一瞬だけ呆然とした表情を浮かべた。
そして、瞬時に激昂する。
口を開く前に、二人は動いた。
連れの男性は、ツナギの男性を前から押さえ込んだ。
俺は、うにゅほの手を引いて駆け出した。
慌てて自動車に乗り込み、エンジンを掛けて発進する。
幾度かバックミラーを確認し、ほうっと重い息を吐いた。
よかった。
大事にならなくて、本当によかった。
しゃくり上げるような声に、助手席へと視線を向ける。
うにゅほは泣いていた。
驚いたのかもしれない。
悔しかったのかもしれない。
年齢を重ね、自分のために怒ることは少なくなった。
俺の代わりに怒ってくれたうにゅほを、泣いてくれているうにゅほを、素直に愛おしいと思った。
「──…………」
家に着く直前、わざと帰途を逸れた。
うにゅほが泣き止むまで、そのままドライブを続けることにした。
懸念がひとつ。
あのコンビニ、しばらく行けないな……。
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2012
07.16

うにゅほとの生活234

2012年7月15日(日)

昨夜の夜更かしが祟り、起床したのは正午近くだった。
壁掛け時計を見て慌てかけたが、約束にはまだ間に合う時刻だ。
急いで身支度を整えると、うにゅほに「おはよう行ってきます」という忙しない挨拶をして家を出た。
数年ぶりに会った大学時代の友人たちは、変わったようでいて変わっていなかった。
しかし、無職が多いのはどうだろう。
人のことを言えた義理ではないのだけれど。
帰宅したのは、午後九時をすこし回ったころだった。
扉をゆっくりと押し開けて、口を開く。
「……ただいまー」
返事はなかった。
探すまでもなく、うにゅほはソファにいた。
体を横たえ、半開きの口から寝息を漏らしている。
俺は苦笑し、うにゅほの傍らに屈み込んだ。
ほっぺたが肘掛けでうにゅっとされて、いささか間抜けな顔である。
「──……んぅ」
額に貼り付いた前髪を払ってやると、うにゅほの目がおもむろに開かれた。
「ただいま」
「……おかえり」
うにゅほが体を起こし、ソファをぽんぽんと叩く。
意図は伝わった。
一日放っておいたのだから、これくらいは構わない。
ソファに腰を下ろす。
俺の太腿に、頭が乗せられた。
うにゅほが満足気に目を閉じる。
それにしても、随分と甘え上手になったものだ。
以前はもうすこし遠慮がちだったように思う。
俺が受け止められるくらいのわがままなら、いくら言ってくれても構わないけどさ。
その後、うにゅほは本格的に寝入ってしまい、二時間ほど動けなかった。
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2012
07.14

うにゅほとの生活233

2012年7月14日(土)

ひどい腹痛と眠気に襲われて、日中は床に伏していた。
以前急性腸炎を患ったときとはまた違う症状である。※1
弟も似たような症状でリビングのソファをひとつ占有していたので、もしかしたら悪いものでも食べたのかもしれない。
両親とうにゅほの消化器が強靭なのか、俺と弟が貧弱なのか、あるいはその両方か。
浅い眠りと覚醒とを繰り返すなかで、うにゅほがずっと傍にいたことをかすかに覚えている。
そして、その両手で開いている書籍がVOW5だったことも覚えている。
いかん、それは教育によろしくない本だ。
夢見は異常に悪かった。
夕刻には眠気も治まり、腹痛も気にならない程度に和らいでいた。
凝り固まった背筋を伸ばしながら、
「ちょっと早いけど、犬の散歩行くか」
そう言うと、腕を取られた。
そのまま部屋まで手を引かれ、うにゅほが寝床をぽんぽんと叩く。
「さんぽ、ひとりでもだいじょぶだよ」
なるほど、まだ寝ていろということか。
俺が病弱なせいで、いつも心配を掛けている。
俺は、うにゅほの気遣いをありがたく受けることにした。
「──…………」
再び横になり、目を閉じる。
こっそりと薄目を開けて、うにゅほが部屋から出て行くのを確認する。
気遣いは嬉しいが、ひとつ問題がある。
もう眠くないのだ。
なにしろ今日は総計で十二時間も睡眠をとっている。
この僅かな時間を利用してネットサーフィンでも楽しもうかと、立ち上がって眼鏡を掛けたとき、
「──…………」
じっ、と。
扉の隙間から覗く瞳と目が合った。
眼鏡を外していたせいで気がつかなかったのだ。
扉を開き、うにゅほが言う。
「おやすみ」
「……はい」
俺は、
まったく、
眠くないんだァ──ッ!
起きたら夕食だった。

※1 2011年12月15日(木)参照
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2012
07.13

うにゅほとの生活232

2012年7月13日(金)

母親と弟と連れ立って、近所にあるパークゴルフ場へ行ってきた。
俺もうにゅほも初めての経験だ。
パターゴルフを想像していたため、コースの長さと手入れの悪さに目を見張った。
まさにミニチュアのゴルフ場と言える。
しかし、クラブまで短いのはなんとかならないだろうか。
がに股で膝を曲げながら振らなければ当たらないため、なかなかに恥ずかしい。
1ホール目の1打目を見事にOBし、うにゅほにクラブを渡す。
うにゅほはゴルフが得意である。
過たずに表現するなら、ゴルフの打ちっぱなしが得意である。※1
狭いコース内では「いかに手加減するか」が肝要だ。
だからこそ、予想はしていた。
──ぱかん!
「あーっ!!」
素晴らしい打球音を残し、オレンジ色のボールが遥か遠く深い茂みのなかへと消えていった。
「あーあ……」
と溜め息をついたのは弟である。
ボールがひとつ足りなくなってしまった。
平謝りするうにゅほをなだめ、チーム分けをすることにした。
俺・うにゅほチーム VS 母親・弟チーム。
結果は記すまでもない。
PAR4のコースを8打で通過したり、
当たりどころが良すぎて次のコースまで飛ばしてしまったり、
カップには入りやしないのに相手チームのボールをやたらと弾き飛ばしたりしたが、なかなか面白かった。
それはうにゅほも同じである。
「また来ようか」
そう問うと、両の手を握りしめて何度も頷いた。
やはり、体を使う遊びのほうが性に合っているのかもしれない。
自転車の乗り方でも教えようかなあ。

※1 2012年5月2日(水)参照
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2012
07.12

うにゅほとの生活231

2012年7月12日(木)

部屋のエントロピーが増大してきたので、掃除をすることにした。
うにゅほが定期的にしているのだが、彼女は整理整頓が苦手である。
順序など気にせず空いているところに漫画を突っ込むし、邪魔なものはとりあえず部屋の隅に寄せておく。
寝る前に布団のなかで漫画を読むのが日課なので、枕元にうず高く塔が築き上げられている。
対して俺は、掃除こそ嫌いであるものの、整理整頓は得意なほうだ。
破れ鍋に綴じ蓋。
二人の力を合わせれば、やってやれないことはない。
うにゅほがダスキンでホコリを落とし、俺がそこに整理した漫画を差し入れる。
そのあいだに、落としたホコリをうにゅほが掃除機で吸い込み、掃除は完了である。
「ほー……」
すっきりと生まれ変わった部屋に、うにゅほが驚嘆の声を漏らす。
予想以上に手間が掛かったものの、こうして結果が出ると掃除も悪くないと思える。
汗ばんだ肌に風を浴びていると、うにゅほが悪気ない様子で言った。
「いつもてつだってくれたら、いっつもきれいなのに」
かちん。
何故かちんときたか。
図星だったからである。
「ちゃんと本を片付けてくれたら、いっつもきれいなのに」
「ぬ」
「む」
お互い睨み合って、すぐに破顔した。
二人で汚した部屋を、二人で綺麗にしただけのことだ。
「なるべく、このままにしておこうな」
「うん」
そんな会話を交わしながら、思った。
掃除は、ちゃんと毎回手伝おう。
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