2012
03.31

うにゅほとの生活128

2012年3月31日(土)

優しいお兄さんであることに、嫌気が差すときだって、ある。
衝動に身をまかせてしまいたくなることだって、ある。
今日の俺はチョイ悪だ。
死語とかそういうのはいい、うにゅほにイタズラをしてやる!
それも、小指の爪の先くらいえっちなやつをな!
そんなことを考えながら、うにゅほを観察した。
いやらしアイがターゲッティングするのは、やはり胸である。
豊満とは言えないが、年相応の大きさだ。
「もういっそ正面からわしっと掴めばいいんじゃね」と強硬派が囁くが、それはいけない。
俺の想像力が、その選択の先にある未来を垣間見せる。
うにゅほは不思議そうな表情で、掴まれた胸をじっと見つめるだろう。
その場は何事も無く過ぎ去るだろう。
そして、夕食の際、うにゅほが悪意なく昼間の出来事を話題に挙げるのだ。
俺は、家庭的に、死ぬ。
そもそも女の子の胸をどうにかするなんていけません。
度が過ぎています。
腕を組み、天井を見上げた。
くすぐるのは、このあいだやったばかりだ。
膝枕も、イタズラとは言いがたい。
ふといいことを思いつき、うにゅほを図書館へと誘った。
玄関でわざとゆっくりブーツを履き、うにゅほを先行させる。
今だ。
背後からうにゅほの胴に腕を回し、持ち上げる。
その勢いを利用し、左腕でうにゅほの足をすくい上げた。
強制お姫様抱っこである。
身を縮こませながら激しくまばたきをしているうにゅほに、言った。
「びっくりした?」
「……びっくしした」
自動車が来ていないことを確認し、その場でぐるぐると回ってみせると、うにゅほは楽しげに声を上げた。
うむ、イタズラ成功である。
えっちじゃないけど、満足したからいい。
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2012
03.30

うにゅほとの生活127

2012年3月30日(金)

昼間、掃除をした。
PC本体の上に飾ってあったくまの雛人形をずらし、ホコリを落とした。
掃除機を片付けて部屋へ帰ると、すこし遠ざかっていたお内裏様とお雛様が、いつの間にか寄り添っていた。
うにゅほが位置を直したらしい。
当の本人は素知らぬ顔で、さけるチーズを食べていた。
手を洗ったか確認して、すこし分けてもらった。
夜、カリオストロの城を一緒に見た。
先週に続き、ルパン三世づいている。
カリオストロの城はいかにもヒロイックな作品で、うにゅほのツボにはまったようである。
有名なラストシーンのあと、面白かったかと尋ねてみた。
うにゅほは既にCMへと切り替わった画面を見つめながら、何度も頷いた。
「でも、なんでクラリスをつれてかなかったの?」
ああ、それは──
そこまで口にして、思い止まった。
俺にとっては、当然のことだ。
ルパンは他の作品でも活躍しなければならない。
クラリスは単発のヒロインであり、ルパン一味に彼女の席は存在しないのだ。
しかし、そんな約束事なんて、うにゅほには関係がない。
「二人で幸せに暮らしました」では、どうしていけないのかと、真剣に問うている。
俺は答えられなかった。
代わりにうにゅほの頭を撫でて、言った。
「俺も、そんな結末を見てみたいな」
寄り添ったくまの雛人形のように、仲良く泥棒稼業に明け暮れる二人の姿が、かすかに見えた気がした。
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2012
03.29

うにゅほとの生活126

2012年3月29日(木)

今日は作詞依頼をこなしていた。
音源を聞きながら譜割りを数字に起こし、言葉を当てはめていく作業だ。
全体の構成さえまとまってしまえば、一、二時間で終わる。
右手の指を折りながら、フンフンと鼻歌を鼻ずさんでいたのが気になったのか、うにゅほがディスプレイを覗き込んだ。
「……?」
小首をかしげて、俺を見た。
わけがわからない、という様子だ。
そういえば、うにゅほが起きている時間帯に作業をするのは、初めてだったっけ。
わからないのも、当然と言えば当然かもしれない。
ディスプレイが映しているのは、謎の数列が書かれたメモ帳である。
「作詞をしてるんだよ」
「さくし?」
「音楽に、言葉を入れてるんだ」
「……ふうん?」
あまりわかってなさそうだ。
うにゅほにイヤホンを片方渡し、ボーカルラインだけを抽出した音源を開く。
「この音に合わせて、言葉を入れる」
半分ほど完成した詞を見せると、うにゅほが言った。
「◯◯、歌って!」
う、歌うんですか?
たしかに、頭のなかでメロディと歌詞を合わせるのは、すこし聞きこんでからでないと難しい。
まあ、歌ったさ。
おまけにうにゅほの反応は芳しくなかったさ。
べつにいいけどね!
そこそこ納得の行くものが書けたから、俺は泣いてない。
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2012
03.28

うにゅほとの生活125

2012年3月28日(水)

弟がテレビの前で、うつ伏せに寝転がっていた。
馬乗りになって足の裏をくすぐってやると、弟の笑い声を聞きつけたのか、うにゅほが部屋から顔を出した。
「……ずるい」
うにゅほが不満顔で呟いた言葉に、軽く混乱する。
な、なにがずるいんだ。
うにゅほも弟をくすぐりたいのかと思い、席を譲ろうと立ち上がる。
しかし、うにゅほは弟の上に座ろうとはしなかった。
弟の隣で、うつ伏せに体を横たえた。
急かすように、足がぴこぴこと動いている。
そっちか!
うにゅほの思考は、時折想像の斜め上を行く。
まあ、しろと言うならば、やぶさかでもない。
体重をかけるのも忍びなかったので、うにゅほの腰の上にかがみ、左足を取る。
黒とピンクのボーダー柄の靴下は、新しいものなのでさほど汚れていない。
く、くすぐるぞ……。
許可を取ってそうするのは、何故だか妙に緊張する。
すれ違いざまに脇腹をくすぐったりとか、けっこうしているのに。
意を決して足の裏に指を這わせると、うにゅほは身をよじりながら笑い転げた。
笑い転げたあとで、もう片足もと催促するのだから、よくわからない。
最終的に俺は、復讐に燃えた弟と善意のうにゅほの手によって脇腹を死ぬほどくすぐられ、半死半生に陥った。
目尻に涙を滲ませ、ひゅうひゅうと細い呼吸音を鳴らしながら、思った。
ここまではやってないじゃん……。
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2012
03.27

うにゅほとの生活124

2012年3月27日(火)

犬が、元気である。
それはまあ、元気であるに越したことはないのだが、十五歳の老犬らしからぬバイタリティに戸惑うほどだ。
ゼンマイ式のおもちゃのように、そのうちパタリと倒れてしまいそうで怖い。
ケージの扉を開けるや否や飛び出して、俺とうにゅほのあいだを八の字に二回転ほどする。
そして玄関への道を一旦間違い、踏ん張りのきかないフローリングの廊下で滑りながら、外へ出る。※1
そうなれば、独壇場である。
リードを持つうにゅほをぐいぐいと引っ張り、散歩コースをひた走る。
うにゅほも押しに弱いものだから、引かれるがまま徐々に加速してしまうらしい。
初春を迎え、アスファルトが露出したため、滑って転ぶことはないにしろ、運動不足の身にはいささかきつい。
駆け足、駆け足、駆け足、深呼吸、駆け足、駆け足、糞を拾い、また駆け足。
うにゅほも似たような生活をしているくせに、息すらほとんど切らさない。
これが若さかと遠い目をしかけたが、よく考えると俺は、十代のころから既に体力がない。
人によりけりである。
帰宅して、犬のごはんを作る。
缶詰とカリカリを混ぜ合わせるだけの簡単なものだが、犬の反応は凄い。
尻尾を千切れんばかりに振り回し、両目をまんまるに見開きながら、鼻先をエサ皿に近づける。
食べはしないのだが、一応うにゅほが胴を押さえている。
スプーンを舐めさせたあと、ケージのなかにエサ皿を置く。
犬がエサをがっつくのを二人で眺め、軽く撫でてから部屋へ戻る。
あと何年生きるかはわからないが、今元気であることを喜ぼう。
なんて、口に出しては言わないけれど。

※1 何故か、絶対に間違う。
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2012
03.26

うにゅほとの生活123

2012年3月26日(月)

ジャンプを買いにセブンイレブンへ寄ったら、ふとおでんが食べたくなった。
うにゅほにどれがいいか尋ねると、
「……どれがいいの?」
困惑した表情で、オウム返しにそう答えた。
そういえば、うにゅほと一緒におでんを買うのは初めてである。
どれが「いい」のかはわからないが、後ろに並んでいる人にも悪いので、俺が五種類ほど選んだ。
ベーシックな種がいいかと思い、
大根
ゆで卵
はんぺん
あらびきソーセージ
あたりを、適当に。
四種類しかないのは、あとひとつが思い出せないからであり、ソーセージは単に俺の好物だからである。
薬味に柚子胡椒をひとつ取り、車内で食べた。
うにゅほははんぺんが気に入ったようである。
白くて、ふわふわしていて、すごく美味しいと、身振り手振りを交えながら感動を伝えてくれた。
原料が魚であると教えたら、数秒ほど固まっていた。
混乱したらしい。
俺があらびきソーセージに柚子胡椒をつけているのを見て、食べてみたいと言ったので、うにゅほの口まで箸を運んだ。
咀嚼しながら、なんだか微妙な顔をしていた。
俺は好きなんだけどなあ、柚子胡椒。
ここだけの話、柚子胡椒は胡椒じゃないらしいですよ。
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2012
03.25

うにゅほとの生活122

2012年3月25日(日)

たまにはドライブもよかろうと思い、小樽まで足を伸ばしてみた。
国道5号線を通ると、途中で海が見える。
さほど風光明媚でもないが、うにゅほからすれば馴染みのない光景のはずだ。
「ほら、向こう」
運転席側の窓を指す。
初春の海は、漢の世界っぽい色をしていた。
「おー!」
「もしかして、初めてか?」
「ううん」
どこで見たのかと尋ねてみると、
「映画のとき」
あー。
そういえば、小樽のシネマコンプレックスへ行ったことがあったっけ。
あれ、なんで覚えてないんだ?
このときは思い出すことができなかったが、道中寝こけていたからだ。※1
ウイングベイ小樽は、巨大なショッピングモールである。
小樽はあまり、ここ以外に行くところがない。
地下駐車場から二階へ上がり、適当に見て回った。
うにゅほを着せ替えしようとして案の定失敗したり、
ヴィレッジヴァンガードのなかで軽く迷子になったり、
並んでクレープを食べたりした。
俺にはひとつ、アイディアがあった。
車内からも見えていた、虹色の観覧車。
あれに二人で乗ってみようと思ったのだ。
絶対喜ぶ。
うにゅほの手を取りながら、さりげなく観覧車乗り場を探した。
途中で寄り道をしつつも、外へ出ることができた。
ショボいと思っていた観覧車も、下から見るとなかなか大きい。
しかし、なんだか様子がおかしかった。
乗り場が封鎖されている。
貼り紙には、「運転停止のお知らせ」と書いてあった。
や、やはり冬か!
雪のせいか!
肩を落としていると、うにゅほに慰められてしまった。
逆じゃなかろうか。
観覧車だけなら、札幌市街にもあるのだが、ちゃんと海を見せたかったんだよなあ。
まあ、またそのうち来よう。

※1 2012年2月29日(水)参照
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2012
03.24

うにゅほとの生活121

2012年3月24日(土)

父親の会社は飲み会が多い。
単に年度末だからかもしれないが、多いことは事実である。
最寄りの駅まで送迎を頼まれることもまた、多い。
俺を一人にさせないことに並々ならぬ情熱を傾けるうにゅほだが、何故か父親の送迎にはあまりついてこない。
少なくとも行きは二人だからかもしれないし、単に父親が苦手だからかもしれない。
しかし、今日はついてきた。
助手席に父親、後部座席にうにゅほを乗せ、ギアを一速に入れる。
父親とは普段あまり会話をしないぶん、こういうときにはよく話す。
駅までは、ほんの十五分ほどだ。
父親を下ろし、代わりにうにゅほが助手席へと乗り込んだ。
なんとなく、うにゅほが父親の送迎を避けていた理由が、わかった気がした。
うにゅほは往路の最中、ずっと押し黙っていた。
会話に入れなかったのだろう。
父親の声が大きいせいかもしれない。
もしかすると、邪魔をしないように無言を貫いていたのかもしれない。
さすがに、そこまで気を使っているということは、ないか。
確認するのも無粋である。
行きとは打って変わって口が軽くなったうにゅほと談笑しながら、来た道を戻った。
途中、ローソンでからあげクンを購入し、二人で分けて食べた。
信号待ちの最中にひとつ食べさせてもらったのだが、後ろの自動車にクラクションを鳴らされてしまった。
まだ赤である。
なるほど、シルエットですね。
気持ちはちょっとわかるけど、うにゅほがびっくりしていたので許さない。
父親を迎えに行くのは、深夜になる。
うにゅほはもう就寝している時間なので、一人だ。
起こさないように気をつけて出かけることにする。
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2012
03.23

うにゅほとの生活120

2012年3月23日(金)

妙に肩が張るなあ、と思っていたら、大きなめんちょができていた。
めんちょとは関西地方の方言で、おできのことである。
語感が可愛らしいため好んで使っていたが、調べてみると島根県では女性器を指す方言らしい。
以降できものとする。
襟を肩口まで広げ、指先でおっかなびっくりつついていると、
「わ」
と、うにゅほが東方三月精3巻を取り落とした。
そ、そんなにひどいのか?
たしかに熱を持っているし、膿もたっぷり孕んでいそうだ。
うにゅほは皮膚に炎症を起こしにくい体質なのか、ニキビのひとつもできたことがない。
見える部分には、と但し書きがつくけれど。
遺伝もあるのかもしれないが、規則正しい生活をしているし、思い思われ振り振られ、なんてものとも縁遠い。
できものを見慣れていなくとも不思議はない。
でも、そんなに驚かなくても。
「あの」
うにゅほが本を拾い上げた姿勢のまま、俯き加減で口を開いた。
「あんまり、さわんないほうが」
わかっている。
もういっそ搾り出してしまうならまだしも、いたずらに触れて悪化させては事だ。
わかっているのだが、ついいじってしまう。
つ、潰すか?
殺ってしまうか?
でも、肩だから両手が使えない。
うにゅほに頼もうかと思ったが、いつの間にかリビングへと姿を消してしまった。
むう。
そのまま放っておいたら、いつの間にか忘れていた。
こうして日記を書いている今はもう、うにゅほは夢のなかである。
ルパン三世VS名探偵コナンは、そこそこお気に召したようだった。
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2012
03.22

うにゅほとの生活119

2012年3月22日(木)

うにゅほと母親が食卓に並び、なにか作業をしていた。
夕食の準備であることは明らかだが、メニューがなんなのか気にかかる。
近寄ると、ステンレス製のボウルに、ボイルされた甘エビが山積みにされていた。
なるほど、甘エビの殻を剥いていたのか。
冷蔵庫から牛乳を取り出しながら、二人の様子を伺う。
うにゅほと母親は、仲が良い。
たぶん、俺の次に懐いている。
女性同士ということもあるし、うにゅほが母性を必要としているということもあるのだろう。
うにゅほにやたら名探偵コナンを勧めることを除けば、良い母親である。
俺はコップの中身を飲み干すと、うにゅほの前に置かれた皿から、剥いた甘エビの尻尾をつまみ上げた。
「あー!」
うにゅほが非難の声を上げる。
しかし、もうエビは俺の口のなかだ。
ふむ、コクのあるみそが舌に触れ、サイズのわりに確かな満足感が──
などと思いながら咀嚼したところで、違和感を覚えた。
甘エビならぬサクラエビのようなものが、いくつも口内を刺激しているのだ。
吐き出してみると、甘エビの足だった。
ちゃんと剥けてない。
つまみ食いをしておきながら文句をつけるのも不遜の極みなので、殻剥きを手伝うことにした。
うにゅほに手本を見せようと思ったのだが、これがまた面倒くさい。
いいや、べつに毒じゃないし。
結局、綺麗に剥けているのは、母親の担当したエビだけになってしまった。
俺はこのまま、不器用を抱えて生きていくよ。
でも、うにゅほ。
お前はまだ、間に合うから。
きっと間に合うから……。
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