2012
02.29

うにゅほとの生活97

2012年2月29日(水)

家族で映画を観に行った。
朝一の上映だったため、八時過ぎには家を出た。
後部座席でうつらうつらしていると、うにゅほが鼻息荒く、自分のまったく太くないももを叩いてみせた。
うにゅほを膝枕することはままあるが、逆は初めてである。
細身のジーンズを履いていたこともあり、思ったよりも固い感触だったが、枕としては十二分だ。
浅い睡眠を経て目を覚ますと、すこし薄暗かった。
うにゅほも居眠りをしていたらしく、運転席に×××××××××、×××××××××××××××××××。※1
小樽のシネマ・コンプレックスは、時間帯のせいもあり、ひどく空いていた。
独特の雰囲気に、うにゅほは「おー!」と感嘆の声を上げながら、きょろきょろと周囲を見渡していた。
前に映画館まで足を運んだのは、「コクリコ坂から」の上映期間中であり、たしか夏の出来事だ。
そのころはまだ、うにゅほと出会ってすらいない。
そんな時期があったということ自体が、なんだか不思議に思えた。
今日の目当ては、劇場版「逆転裁判」である。
俺や弟、母親は、原作をプレイしているので、たとえ超展開でも筋は理解できる。
未プレイのうにゅほはどうか、と不安に思っていたのだが、杞憂に終わった。
原作を上手く、かつ面白くまとめてあり、良作と評しても構うまい。
殺人シーンに差し掛かっても平気な素振りでいたのが意外だったものの、よく考えれば俺が日頃から見ているサイコ映画のほうがよほどグロい。
慣れたのが、いいことなのか、悪いことなのか。
上映後、うにゅほに面白かったかと尋ねると、深い頷きをもって返された。
「でも、なんでみんなヘンなかっこしてるの?」
と尋ね返され、
「み、未来だから?」
と、なんの工夫もない返答しかできなかったことが、心残りと言えば心残りである。

※1 自主規制
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2012
02.28

うにゅほとの生活96

2012年2月28日(火)

十年近く、数枚のパジャマを着回している。
そのなかにひとつ、ボタンホールがゆるくなり、すぐに外れてしまうものがある。
今朝布団から這い出したとき、すべてのボタンが外れており、パジャマの上着を羽織っているだけの状態となっていた。
どうせ脱ぐのだし、大して気に留めず、顔を洗うため部屋を出た。
「おはよう」
と、うにゅほに声を掛けるが、どうにも様子がおかしい。
挨拶も小声だし、こちらを見ようとしない。
同じ部屋で過ごしていれば、互いにあられもない姿を見ることもある。
まあそれとは特に関係なく、俺は風呂からパンツ一丁で部屋まで戻るため、半裸には慣れているはずだ。
うむ、あれか。
俺は全裸より、乱れた着衣のほうが興奮するのだが、そういうことか。
女性の心理はよくわからないが、同じ人間である以上、重なる部分はあるはずである。
確認のため、ほれほれと上着をはためかせながらうにゅほに迫ってみようかと考えたが、どう見ても変態です本当に以下略なので思いとどまった。
さっさと顔を洗い、部屋に帰って着替えると、うにゅほの態度も普段通りに戻っていた。
頬が赤らんでいたかくらい、確認しておけばよかった。
だからなんだ、というわけでもないけれど。
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2012
02.27

うにゅほとの生活95

2012年2月27日(月)

ふと、一人になりたくなった。
朝から続く「いっせーのーで!」攻勢に辟易したこともあるが、ここしばらく一人になっていないことに気がついたのだ。
インプリンティングされた雛のように、うにゅほは俺の後ろをついて回る。
決して不快ではない。
むしろ、得意ですらある。
それでも、孤独への希求は、ひどく抑えがたいものだった。
俺は嘘を好まないが、つくと決めれば抵抗はない。
うにゅほの知らない友人から誘いがあったと携帯を掲げ、一人で外へ出た。
ゲームセンターで思うさまjubeatをプレイした。
スーパーで切らしていた味覇とクレイジーソルトを買い足した。
地下鉄に乗って、札幌市内まで繰り出した。
イヤホンから流れる声が、ひどく懐かしく感じた。
一人は、落ち着く。
一人は、気楽である。
横断歩道を渡ったあと、無意識に振り返った。
気を遣う必要はないのだと、自嘲的に笑みを浮かべた。
コンビニで、ジャンプとコアラのマーチを買った。
帰宅して、うにゅほと並んで食べた。
「いっせーのーで!」の掛け声が耳に響いて、眠れなくなりそうだと思いながら、しばらく付き合った。
そのうちまた、一人になりたくなることもあるだろう。
それでも、二人でいることの心地よさが、すぐに恋しくなるだろう。
ふらふらしながら、生きていこう。
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2012
02.26

うにゅほとの生活94

2012年2月26日(日)

図書館をひと通り物色したが、目ぼしい本は見当たらなかった。
いたずらに往復するのも芸がないので、大回りしてゲームセンターへ寄った。
俺がもっぱらプレイするのは、jubeatという音楽ゲームである。
100円で10分ほども遊ぶことのできるコストパフォーマンスの良い機体だが、それだけに待たせているうにゅほのことが気にかかる。
日記には書いていないが、うにゅほを音ゲーに染めようと画策したことが、一度だけあった。
ゲームセンターでの実機プレイには抵抗があるようなので、iPhoneアプリならどうかと考えたのだ。
画面が小さく、プレイしにくいiPhone版jubeatであるが、楽しさを教えるという目的には十分と言える。
さて、我々は何故、ゲームに愉悦を覚えるのだろう。
それは、ある程度難しいことを達成したという、充足感に端を発する。
つまり、達成できないゲームには、なんの面白みもないのだ。
音ゲーどころかゲーム自体の初心者であるうにゅほには、最低レベルの譜面でも難しすぎた。
よって、俺は今でも、一日1PLAYの誓いを破らずにいるのである。
俺の目論見はもろくも崩れ去ったわけだが、うにゅほに新しい楽しみを教えること自体は、そう悪い発想でもない。
熟練度によって勝敗の分かれない、ごく単純なゲームを導入とするのはどうか。
まず最初に思いついたのはジャンケンだったが、そこまで行くと三歳児レベルである。
次に脳裏をかすめたのは、正式名称はわからないが「いっせーのーで!」と呼ばれていた手遊びだ。
軽く握った両手を合わせ、掛け声と共に任意の親指を立てる。
このとき「いっせーのーで3!」等、掛け声と共に数字を言い、場に立てられた親指の数と一致していた場合、片手を下ろすことができる。
これを順番に行い、両手を下ろせた者の勝利となる。
うにゅほにこの手遊びを教えたところ、見事にハマってしまわれた。
三十分ほどの連続プレイで疲弊しきった俺を尻目に、うにゅほは新たな対戦相手を求めてリビングへと旅立っていった。
ゲームの素養自体は、ある。
徐々にレベルを上げて行きたいが、今はとにかく「いっせーのーで!」ブームが早く終わることを祈る。
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2012
02.25

うにゅほとの生活93

2012年2月25日(土)

祖母を病院へ迎えに行き、帰宅した。
我が家の駐車スペースには、僅かばかり角度がついている。
平素は気にさえ留めないその傾斜であるが、凍結するやいなや隠していた牙を剥く。
ひどいときは、たかだか数メートル先の玄関まで、本当に辿り着けないのである。
歩くために杖を必要とする祖母が尻餅をついたのは、ごく自然な成り行きと言えるかもしれない。
転び方が良かったためか、幸いにして尻以外を痛めなかった祖母を負ぶい、玄関の扉を開いた。
「どしたの!?」
帰宅を察して階段を下りてきたうにゅほが、驚きと心配の入り混じった声音で、そう尋ねた。
事情を説明し、祖母の達者なさまを見て、ようやく胸を撫で下ろした。
部屋へ戻ろうと階段に足を掛けたとき、フードを引っ張るものがあった。
「おんぶ」
耳を疑った。
「おんぶ」
ほっとした途端、祖母が羨ましくなったらしい。
俺はアンビバレンツな感情を胸に抱きながら、うにゅほを数段上がらせて、背を向けた。
段差を利用することで、腰に負担をかけまいとしたのである。
さて、ここで残念なお知らせをしなければならない。
俺が意識的に思慮外へと放逐し、なかば成功したくだんの感触についてである。
かの感触について尽くすべき言葉はあるが、俺は描写を放棄する。
それは陳腐への恐れであり、自らの文章力に対する一種の諦念である。
よって、あえて詳細な描写を避け、読者諸兄の想像力に任せることとしたい。
ひとつだけ言えることは、ちょっとどきどきした。
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2012
02.24

うにゅほとの生活92

2012年2月24日(金)

俺のデスクの上には、必ず飲み物が置いてある。
それは炭酸飲料であったり、ミルクティーであったり、ペットボトルに汲んだ水道水であったりする。
喉が渇きやすい体質であるため、必要不可欠なのだ。
ペットボトルを倒したときに被害を最小限に抑えるため、いつもしっかりとキャップを閉めている。
うにゅほも時折、500mlペットに汲んで冷やしてある水道水を持ってきて、読書のお供にしている。
ソファに腰を掛けながら、ペットボトルを太もものあいだに挟んでいる姿をよく見るのだが、冷たくはないのだろうか。
あと、すぐにぬるくなると思うのだが。
今日、このペットボトルに関して、不可解なことがあった。
うにゅほがキャップを開けようとして、それを勢いよく飛ばしてしまったのである。
飛んだのはキャップだけであったため、特に被害らしい被害はない。
しかし、だ。
ふつう、飛ぶか?
どんな開け方をすれば、そうなるのだ。
そう尋ねたところ、意外な答えが返ってきた。
「◯◯とおなじ開けかた、したかった」
俺と同じ?
そんな特殊な開け方、していただろうか。
自分がいつも、どうキャップを開けていたか、ぼんやりと思い出しながらペットボトルに手を触れた。
まず、左手の中指と親指でキャップを緩める。
中指でキャップを勢いよく回転させ、軽く浮かび上がったところを掴みとる。
手のひらにキャップを収めたままペットボトルを持ち上げ、口をつける。
水道水を飲み下しながら、思った。
確かに、ちょっとだけ曲芸じみているかもしれない。
両手を使うのが面倒だっただけなのだが、無意識とは恐ろしいものだ。
うにゅほは、キャップを両手で緩めたあと、中指で回転させる段階で吹き飛ばしてしまったらしい。
まあ、キャップの開け方くらい自由にすればいいのだが、その場所で水をこぼされると、PC本体に甚大な被害が及んでしまう。
それだけは勘弁してくれと哀願し、キャップを閉めた。
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2012
02.23

うにゅほとの生活91

2012年2月23日(木)

まだ完調とは言いがたいが、外出しなければならなくなった。
DVDの返却期限が今日であることに気づいたためである。
夜の帳に呼応するように凍結した路面は、慣れた者にも傾注を強いるほど、滑った。
二度ほどコントロールを失ったのだが、うにゅほはそれが楽しいらしい。
修理費用のことを考えなければならない俺は、とても笑っていられない。
ともあれ、うにゅほは絶叫マシンと相性が良さそうだ、と思った。
ゲオに着き、返却ボックスに手提げ袋を放り込んで、新刊コーナーへ向かった。
イカ娘11巻があった。
新刊コーナーで見かけるたび、何巻まで持っていたか確証が持てず、買い逃してきた11巻である。
本棚には、10巻までしかなかった気がする。
気がする、のだが。
どうにも自分の記憶に信用が置けず、うにゅほに尋ねた。
「イカ娘って、何巻まで持ってたっけ」
うにゅほは渋い表情を浮かべながら小首をかしげ、
「10巻……?」
と答えた。
まあ、二人ともそう記憶しているなら、そうなのだろう。
イカ娘11巻を購入し、DVDをいくつか見繕って、帰宅した。
俺は漫画を購入しても、すぐには読む気にならず、しばらく置いておく。
うにゅほはその逆だ。
袋から上機嫌でイカ娘を取り出すうにゅほを尻目に、本棚を確認した。
イカ娘は、10巻までしかなかった。
記憶通りであることに満足してチェアに腰を下ろしたとき、うにゅほの様子が不審なことに気づいた。
とても精読しているとは思えない速度でページをぱらぱらとめくり、顔色もひどく悪い。
もしかして、と思い、うにゅほから11巻を取り上げた。
開く。
読んだ記憶がある。
「ごめ……ごめんなさい……」
と、取り返しのつかないことをしてしまったレベルの謝罪をするうにゅほの頭を撫でながら、考えた。
本棚に11巻はなかった。
なら、どこに?
他にありそうな場所と言えば、うにゅほが枕元に積んである、読みさしの漫画のなかである。
探すと、あった。
やっぱりうにゅほのせいだったので、ほっぺたをつまんでうにゅんとしてやった。
値の下がらないうちに、古本屋で売ってしまおう。
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2012
02.22

うにゅほとの生活90

2012年2月22日(水)

引きはじめにスキーへ行ったことで、風邪が半端に悪化してしまった。
半端に、というのが実に厄介なところである。
寝込むほどに体調が悪ければ、布団から出ようなんて気は起こらないし、朦朧として時間が経つのも早い。
結果として、風邪も早く治る。
半端に悪いと、床に就いても目が冴えたまま、ただただ苦痛である。
結果、気晴らしに家のなかをあてどもなくうろつき回り、風邪も長引いてしまう。
昼間はうにゅほの無言の圧力により、トイレと布団との往復以外を禁じられていた俺だが、日没を迎え、いよいよもって耐え難くなった。
どてらに靴下、マスクという、隙の生じぬ完全防備と引き換えに、ようやく自由を得ることができた。
することは家内徘徊だが、気は楽である。
夕飯の手伝いか、ピーラーを使って芋の皮を剥くうにゅほをぼんやり見ていると、母親の携帯が鳴った。
用事ができたらしく、うにゅほの監督を任された。
包丁を扱う許可が、まだ出ていないらしい。
ピーラーで指の皮まで剥いてしまいそうな手さばきを見るに、当然の判断と言える。
ただ見ているのも忍びなく、手伝おうとしたところ、
「病気のひとは、だめ!」
とにべなく一蹴されてしまった。
体調が悪いときは、うにゅほがやたらと強い。
自主性が云々とか、責任感がどうこうとか、とりとめもなく考えているうちに、母親が帰ってきた。
夕飯は肉じゃがだった。
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2012
02.21

うにゅほとの生活89

2012年2月21日(火)

本州から来た友人とスキーへ行った。
ここは北海道、雪国である。
知人を頼れば、サイズの合うスキーセット一式くらいはなんとか揃えられる。
不安なのはブーツだが、それもスキー場でレンタル可能だ。
うにゅほはただ、頷くだけでいい。
しかし、かねてよりの説得にも関わらず、うにゅほは同行しなかった。
人見知り、とは違うらしい。
なんだか怯えているような素振りさえ散見されて、いささか気にはなっていた。
待ち合わせの時刻が近づき、「行ってきます」と家を出ようとした瞬間、うにゅほが背中に抱きついた。
「いかないで!」
と、言われても。
引き剥がすこともできずに困っていると、母親が二階から下りてきて、宥めてくれた。
時間も押していたので、その隙に出発した。
たっぷり六時間ほど滑り、友人と別れて帰宅すると、うにゅほが安心したような笑顔で出迎えてくれた。
嬉しいのだが、よくわからない。
困惑していると、母親が事情を説明してくれた。
どうやら、なにかで雪山遭難のシーンを見たらしく、それとスキーが直結してしまっていたようだ。
話によると漫画らしいのだが、そういったシーンが描かれているものは、本棚のラインナップにはない。
俺の覚えている限り、と但し書きはつくけれど。
なにで読んだのか、肝心なところを覚えていないのは、実にうにゅほらしい。
母親がyoutubeでスキーの動画を見せたことと、俺が無事に帰ってきたことで、ある程度は不安を払拭できたようだ。
できれば今シーズン中に一度、うにゅほを連れて近場のスキー場へ行きたいと思っている。
「女の子にスキーを教える」という行為は、道民にとって叶えがたい憧れと言える。
北海道で生まれ育った女性は、高確率で経験者だからである。
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2012
02.20

うにゅほとの生活88

2012年2月20日(月)

夜半から感じ始めた悪寒が、朝になっても続いていた。
これは問題だ。
うにゅほを含めた家族に風邪をうつすわけにはいかない、というのもそうだが、明日はスキーへ行く予定なのだ。
新型インフルエンザ騒動の際に大量購入したマスクを装着して、昼間は横になっていた。
夢と現の境で、なにかを悟ったような気がしたが、起きると覚えていなかった。
「だいじょぶ?」
感染症かもしれないということで、部屋の外に出ていてもらったはずのうにゅほが、いつの間にか隣にいた。
ちゃんとマスクをしている辺り、彼女なりに考えたようなので、なにも言わなかった。
体を起こすと、完調とは言いがたいが、床に臥すにはいささか元気すぎる程度だった。
予定をキャンセルせずに済みそうである。
どてらを着込み、マスクを取り替え、靴下を履いて、ストーブをつけた。
これで冷えピタを額に貼りつけたら、布団に戻れと言われること請け合いの病人ルックであるが、幸いにしてそこまで体調は悪くない。
かと言って、ジャンプを買いに外へ出るほど迂闊でもない。
どう暇を潰そうかと考えていると、昨日の日記で「アポロ13でも見ようか」と書いたことを思い出した。
アポロ13号の爆発事故を元にした映画である。
うにゅほには退屈かもしれない、と思っていたら、案の定寝落ちした。
まあ、ちょっと長いしな、この映画。
俺の座るチェアの肘掛けに突っ伏した、うにゅほの頭に手を置きながら、二日前にも見たアポロ13を、一人黙々と観賞していた。
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