2012
01.31

うにゅほとの生活68

2012年1月31日(火)

くつしたキノコを御存知だろうか。
スウェーデンに自生するマツタケの学名を和訳すると「靴下キノコ」になるそうだが、それとは無関係だ。
ゴムの部分からロール状に靴下を脱いでいくことで完成する、扁平型のキノコのことである。
ふと小学生時代を思い出して反射的に作ってしまったが、どうしよう。
うにゅほに見せようかと思ったが、それでは芸がない。
そこで、うにゅほの布団のなかにそっと入れておくことにした。
ここまでが昨日のことである。
そんなトラップを仕掛けたことすら忘れ去って、いつものようにのんべんだらりと過ごしていた。
トイレから帰ってきてチェアに腰掛けると、尻のあたりに違和感がある。
尻と円座クッションのあいだに手を挿し入れると、なにか柔らかいものに触れた。
くつしたキノコの収穫である。
にやりと笑みを浮かべてうにゅほを見ると、ばのてん2巻で口元を隠すところだった。
上目遣いでこちらを見るうにゅほに向けて、くつしたキノコを下手で投げた。
靴下を投げ合う最悪の遊びが始まったことは、言うまでもない。
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2012
01.30

うにゅほとの生活67

2012年1月30日(月)

油断とは、慣れたときに生じるものだ。
運転免許を取ったばかりの初心者のことを考えてみればいい。
初めて市街を走行するときより、すこし経験を積んだあとのほうが、事故を起こしやすいではないか。
うにゅほを連れて出歩くのはいつものことだが、なかでも飛び抜けて行く回数の多い場所は、間違いなくゲオである。
五日に一度はDVDの返却とレンタルのために出向くのだから、両手の指では足りないはずだ。
いつも通り、うにゅほとアニメコーナーで別れ、洋画コーナーへと足を向けた。
四本ほどを適当に選び、うにゅほのところへと戻った。
しかし、うにゅほの姿が見当たらない。
入れ違いになったかときびすを返したが、いない。
近所のゲオは、わりと広い。
CD売り場、ゲーム売り場、書籍売り場と、ぐるっと回ってみたが、見つからない。
そこで、一箇所だけ覗いていないところがあることに気がついた。
洋画コーナーの奥にある、十八歳未満が立ち入ることを禁じられた場所である。
うにゅほは引っ込み思案のくせに、好奇心旺盛だ。
入れ違いになったあと、立入禁止マークの描かれた暖簾に興味をそそられた可能性はある。
軽く咳払いをして暖簾をくぐるが、またいない。
さすがに焦燥感に駆られて洋画コーナーに戻ると、いた。
どこにいたのか問うと、ゲオに併設されているリサイクルショップが気になって、ふらふらと迷い込んでいたらしい。
「頼むから、心配させないでくれ。お前がいなくなったら──」
と、そこまで言って、視線を感じた。
遠くから男性が、見るともなくこちらを見ている。
十八禁コーナーの入り口で話し込んでいれば、当然だろう。
決まりの悪さに、慌ててうにゅほの手を取った。
いなくなったら、困るのだ。
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2012
01.29

うにゅほとの生活66

2012年1月29日(日)

眠りが浅い、というのも、そう悪いことばかりではない。
中途覚醒を何度か繰り返すので、その時点でうにゅほが起床していた場合、ソファから布団へと移ることができる。
まだうにゅほの体温が残っていることもざらで、なんだか得をした気分にもなれる。
冬は、睡眠時間が伸びる。
さして珍しくもない金縛りを力技で破り、枕元の携帯を睨みつけると、既に十二時を回っていた。
リビングへと移動するが、誰もいない。
買い物にでも行ったのだろうか。
腹を掻きながらそう考えていると、両親の寝室から物音がした。
そっと覗き込むと、うにゅほが窓から外を見ていた。
なにかを咀嚼している。
はっ! と振り向いたうにゅほの手にあったのは、とろろこんぶの袋だった。
隠れて食うな、台所で食え。
話を聞いてみると、とろろこんぶが好きらしい。
もうすこし詳しく聞いてみると、とろろこんぶが美味しくて手が止まらないので、なんだか食べ過ぎで怒られそうな気がしたらしい。
とろろこんぶは、べつに高くない。
自分の小遣いで買って、なんら後ろ暗いところなく、堂々と食べなさい。
そう伝えると、うにゅほは目を丸くしていた。
その発想はなかったらしい。
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2012
01.28

うにゅほとの生活65

2012年1月28日(土)

年に一度くらいしか会わないが、頻繁にメールをする友人がいる。
どちらかが返信を忘れるまでやり取りが続くので、日をまたぐこともざらだ。
今回は久々に長く、もう二週間ほども会話のキャッチボールが続いている。
俺が携帯をいじるのは珍しくないが、それがメールのやり取りであることに、うにゅほがようやく気づいたらしい。
携帯、ぶーぶー震えてんのに。
友達のいないうにゅほは、携帯などうにゅ箱※1に仕舞いっぱなしだし、メールという発想に至らなくてもおかしくはない。
たぶん、おかしくない。
俺の携帯が唸りを上げるたび、うにゅほがこちらをちらちらと覗き見る。
相手が気になるのか、内容が気になるのか。
トイレから帰ってきて携帯を確認すると、メールが二通来ていた。
くだんの友人と、うにゅほからだった。
なるほど、そういう遊びか。
自然に上がる口角を手のひらで隠しながら、返信した。
そのままなんとなく互いに視線を合わせないまま、互いの携帯だけが幾度も震え続けていた。
メールの内容は他愛無いものだが、この場に転載はしない。
秘密である。

※1 うにゅ箱
うにゅほの私物が収められた二つの衣装ケース。
俺が心のなかでそう呼んでいるだけで、口に出したことはない。
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2012
01.27

うにゅほとの生活64

2012年1月27日(金)

俺とうにゅほの部屋は、場所によって清潔度が違う。
俺は元々「散らかさない代わりに掃除もしない」タイプであり、定期的にホコリを払う必要があった。
逆に、うにゅほは「散らかすが頻繁に片付ける」タイプであり、頻度は数日に一度くらいだ。
よって部屋は基本的に清潔と言えるのだが、一箇所だけ例外がある。
パソコンデスクの周囲だ。
うにゅほが掃除機を両手に右往左往しているときも、俺はパソコンチェアでのんべんだらりとしている。
最初は手伝っていたのだが、分担するほど広い部屋でなし、そもそも掃除をする習慣があまりないので、いつの間にか任せきりになってしまった。
デスクは部屋の隅にあるため、掃除機をかけるにはチェアを大きくずらさなければならない。
それが面倒だったのと、なにより頻繁に掃除をする必要性を感じていなかったため、うにゅほに
「ここはまだいいよ」
と何度か断っていた。
今日の午後、すこし用事があったので、外出することにした。
当然うにゅほもついてくるとばかり思っていたのだが、いってらっしゃいと手を振られてしまった。
珍しいこともあるものだ。
帰宅すると、デスクの周囲がすこし綺麗になっていた。
確認しようと一歩下がり、ソファに腰を下ろしたとき、気がついた。
これは、うにゅほの視点だ。
ここからだと、チェアの足元がよく見える。
何度も経験があるのでわかるのだが、ここには綿ボコリがよく溜まる。
気になって仕方なかったんだな……。
謝罪の気持ちを込めて、うにゅほの頭を優しく撫でた。
うにゅほは褒められたとばかりに嬉しそうにしていた。
なんでもめんどくさがるのはよくない、うん。
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2012
01.26

うにゅほとの生活63

2012年1月26日(木)

家族にはそれぞれの役割があり、誰かがなにかを担っている。
などと大仰に表現してみたところで、言わんとしていることの規模は変わらない。
乾いた洗濯物の仕分けは、うにゅほの仕事である。
まず一階の祖母が自分と弟の洗濯物を取り分け、残りを階段に置く。
家族の誰かが通りがかりにそれを回収し、二階へと運ぶ。
最後に、うにゅほがそれを分類し、規定の場所に置いておく。
当然ながら、うにゅほはどの衣服が誰のものであるのか、熟知していることになる。
今日、洗濯物を二階へと運んだのは俺だった。
わざわざうにゅほに手間を掛けさせるのもどうかと思ったので、自分の洗濯物だけを回収しておくことにした。
下着を手に取ろうとして、困った。
はて、この赤いチェック柄のトランクスは、俺のパンツであったか、父親のパンツであったか。
俺と父親は、模様の傾向によって、下着の誤認を避けている。
しかし、たまにかぶる。
紳士用下着を手に取りながらうんうん唸っていると、うにゅほが部屋から出てきた。
「それ、◯◯のパンツだよ」
一発で見分けよった。
「チェックがね、◯◯のは、ちょっとこまかい」
赤いチェック柄のトランクスは、二枚あったのか!
必殺仕分人と呼ぶことにしよう。
しかし、よく考えてみると、このトランクスはうにゅほが家に来る前から履いていたものだ。
最初はこちらが父親のものだった、という可能性は……いや、よそう。
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2012
01.25

うにゅほとの生活62

2012年1月25日(水)

うにゅほに起こされる、というシチュエーションは、ありそうでなかった。
理由はいくつかある。
まず、俺の眠りが浅いことがひとつ。
俺とうにゅほの部屋には、元々二部屋に分かれていたものを、壁をぶち抜いて繋げたという経緯がある。
うにゅほの寝床は手前の部屋、俺の寝床であるソファは奥の部屋にあり、俺が起きるまでは奥側に立ち入らないという暗黙の了解がある。
奥の部屋に立ち入った時点で、俺が目を覚ましてしまうからだ。
よって、ほとんどの場合、起こされるまでもなく起きてしまう。
それに関連して、うにゅほが俺の眠りを妨げることを嫌っているらしい、ということがひとつ。
はっきりとうにゅほの口から聞いたことはないが、普段の行動からそう感じる。
さて、今朝の話に移ろう。
今日は祖母を病院へ連れて行く約束になっていたのだが、寝坊してしまった。
珍しく眠りが深かったらしい。
そこで痺れを切らした祖母が、うにゅほに俺を叩き起こすよう頼んだそうだ。
うにゅほはたぶん、葛藤した。
俺を起こさなければならない、けれど、こんなにもよく眠っているのに。
ああ、こんなに深く、ぽかんと口を開けて。
口を開けて。
舌になにかが触れる感覚に、俺は目を覚ました。
うにゅほの指が口に突っ込まれていた。
うにゅほが引きつった笑顔を浮かべながら
「……おはようございます」
と言ったので、軽く噛んでやった。
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2012
01.25

うにゅほとの生活61

2012年1月24日(火)

犬は人を見る。
以前にもすこし触れたが、うちの犬は少々、それが顕著であるように思う。
許してくれる相手と行為とを見極め、的確にそこを突いてくる。
例外は、完全に格下と認識している弟くらいのものだ。
犬の散歩は俺の役目なのだが、最近はうにゅほの付き添いと化している。
ケージから犬を出し入れするのもうにゅほだし、リードを持つのもうにゅほだし、フンの回収もうにゅほがしている。
比喩ではなく、コートのポケットから手を出すことなく、散歩が済んでしまうのだ。
さすがにそれもどうかと思うので、犬のエサは俺が用意している。
缶詰とドライフードをスプーンで混ぜあわせるだけの、誰にでもできる簡単な仕事である。
スプーンでラバーペンシルイリュージョンを行いながら廊下を歩いていると、うにゅほがエサを作ってみたいと言った。
おお、うにゅほよ。
唯一の仕事まで俺から奪おうと言うのか。
まあ別にいいので、うにゅほに缶詰とスプーンを渡した。
ただ、ひとつだけ懸念があった。
俺はいつも、犬の眼前でエサを作っている。
犬は鼻先をフンフンと鳴らしながら、しかし作りかけのエサにがっつくことはない。
食べれば俺に叱られるとわかっているからだ。
しかし、相手がうにゅほとなれば、どうか。
単に犬の届かないところでエサを作ればいいのだが、どうなるのかすこし興味があったので、黙っていた。
結果から言うと、うにゅほは犬に顔面をべろんべろんと舐められていた。
エサよりいい匂いが、うにゅほの口からしたらしい。
鮭トバをもりもり食べていたせいに違いない。
うにゅほの顔は、洗ったあともすこし犬臭かった。
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2012
01.23

うにゅほとの生活60

2012年1月23日(月)

今日はいささか体調が悪く、うにゅほの布団で床についていた。
以前の腸炎のときとは異なり、ただぼんやりとつらい。※1
病人とはわがままなもので、放っておかれるのは嫌なくせに、あれこれと心配されるのも鬱陶しい。
ただそこにいてくれれば、それで満足なのだ。
呼吸音。
衣擦れ。
咳払い。
ページをめくる音。
なりそこないの鼻歌。
うにゅほがそこにいることを聴覚だけで感じていると、いつの間にか眠っていた。
目を覚ますと、うにゅほがバランスボールに上半身を預けながら、ジャンプを読んでいた。
「……だいじょぶ?」
遠慮がちに言う。
俺がこうなるのは、今に始まったことではない。
うにゅほにこうして欲しいと、希望を言ったこともない。
うにゅほは言葉でなく、相手の雰囲気から真意を読むすべに長けている気がする。
それとも、単に俺がわかりやすいのか?
この空気感を、しばらくは独占していたいと思った。
病人とはわがままなものだ。

※1 2011年12月15日(木)参照
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2012
01.22

うにゅほとの生活59

2012年1月22日(日)

目を覚ますと、いつもとは違う景色が見えた。
ソファではなく、主人のいない両親のベッドで眠ったことを思い出した。
「おはよー」
眼鏡を掛けるまでもない。
うにゅほが隣に寝そべりながら、学園天国パラドキシアを読んでいた。
朝っぱらから教育に悪そうな漫画を。
脱ぎ捨ててあった袢纏を着込み、リビングへと移動した。
うにゅほもまだ朝食を食べていないと言うので、なにか軽いものでも作ろうかと思っていると、
「わたしがやるよ」
そう言って、冷蔵庫から卵を取り出した。
うにゅほが母親の手伝いをしているところは、何度も見たことがあった。
一人で料理を作ったことがあるかまでは知らないが、、卵料理なら最悪でも焦がす程度だろうと、まかせてみることにした。
完成した目玉焼きは、半熟と完熟の中間くらいで、完璧な出来と言えた。
食べながら話を聞いてみると、火加減から時間まで、教えられたことを忠実に再現したのだという。
マニュアル的で、臨機応変な対応は望むべくもないが、失敗は少ないタイプだ。
うにゅほの性格通りである。
案外、料理はうにゅほの肌に合うのかもしれない。
不器用なので、包丁を持たせることにいささか不安があるけれど。
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