2011
12.31

うにゅほとの生活36

2011年12月30日(金)

犬がすこし持ち直した。
後ろ足がよたついてはいるが、自力で歩くこともできる。
うにゅほが犬を抱っこしようとして、甘く噛まれていた。
どっちもやめたげて。
大晦日はゆっくり過ごしたいということで、今日は部屋の大掃除をした。
とは言え、俺の部屋はさほど汚れていない。
元々整理されているし、うにゅほが定期的にホコリを落としてくれるので、することはあまりなかった。
毎週積み重なっていくジャンプの始末だけしようと、スズランテープを物置から探して戻ると、うにゅほがバックナンバーを読み始めていた。
うにゅほよ、それは大掃除の罠だ。
そう思いつつも流されて、うにゅほの隣に座った。
大掃除は二時間ほどで終了した。
実働時間がどの程度だったかは、想像におまかせする。
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2011
12.30

うにゅほとの生活35

2011年12月29日(木)

今日は友人たちと忘年会を開いた。
忘年会とは言っても名ばかりのもので、その内実はカラオケボックスで五時間ほど歌いまくるだけの集まりだ。
アルコールが絡まないため、未成年のうにゅほでも安心して参加できるが、「できる」と「する」は違う。
人見知りのうにゅほが、そのような集まりに参加したがるはずもない。
案の定首をぶんぶんと振られて、一人で家を出た。
カラオケボックスに入って数時間したころ、うにゅほからメールが届いた。
「いつかえつてくる(ピースサインの絵文字)」
絵文字の使い方より先に、覚えることがあるだろう。
「遅くなるかもしれないから、先に寝ていてくれ」
そう返信した。
カラオケボックスを出て、友人たちを家に送り届けると、十一時も半ばを回っていた。
うにゅほは寝ている時間だ。
そのはずだが、なんとなく展開が予測できたので、コンビニで温かい缶ポタージュを買った。
帰宅すると、うにゅほはソファで丸くなっていた。
冷え切った部屋で、袢纏にくるまって。
ストーブくらい、つければいいのに。
俺はうにゅほを揺すり起こして、すこしぬるくなった缶ポタージュを渡した。
初めて知ったのだが、うにゅほは粒の入った飲み物が駄目らしい。
うにゅほの頭に軽く手刀を入れて、缶ポタージュは俺が飲んだ。
次からはココアにする。
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2011
12.28

うにゅほとの生活34

2011年12月28日(水)

恋人たちが映画館へ行くのは、会話がなくても気まずくないからだ。
うにゅほと並んでホームアローンを見ながら、俺はそのことを実感していた。
俺とうにゅほは恋人でもなんでもないけれど、映画鑑賞という無言を強制される状況は、今の俺にはありがたかった。
なんとなく、気まずい。
そう思っているのは、恐らく俺だけだと思う。
犬の寿命が見えてからずっと、うにゅほを腫れ物のように感じている。
まるで、うにゅほと出会った二ヶ月前のようだ。
うにゅほはソファに座ったまま、ずっと蛍光灯を見上げていて、俺は俺でただひたすらにキーボードを叩いていた。
張り詰めたような無言を、快く感じ始めたのは、いつからだったろう。
「おもしろかったね!」
ディスプレイに食い入るようにホームアローンを見ていたうにゅほが、久しぶりに笑顔を見せた。
一階に降りて、犬におやつをあげた。
すこしだけ、食べた。
うにゅほは喜んでいたが、その一口で、いったいどのくらい長らえるだろう。
俺はなにも言えなかった。
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2011
12.27

うにゅほとの生活33

2011年12月27日(火)

祖母を病院に連れていく際、うにゅほがついてきた。
眼科の駐車場に車を駐めて、シートを倒した。
後部座席のうにゅほが、ブーツを脱いで体育座りをしていた。
なるべく、楽しいことを話した。
正月は毎年、母方の実家に挨拶に行くから覚悟しておけ、とか。
ますむらひろしは銀河鉄道の夜の他にも宮沢賢治作品を描いているから、古本屋で探してみよう、とか。
二十分ほどで祖母が戻ってきて、買い物をしたいと言ったので、スーパーへ寄った。
年末だけあってスーパーは混んでいた。
祖母の買い物のついでに、うにゅほとふたりで食べようと、お菓子を買ってもらった。
玄関まで来たとき、うにゅほがいないことに気がついた。
祖母を待たせ、スーパーを歩きまわり、うにゅほを探した。
俺が見つけたとき、うにゅほはスーパーのなかに併設されたペット用品店から出てくるところだった。
急にいなくなるな、と言おうとして、その手にぶら下げられたビニール袋に気がついた。
「なにを買ったんだ?」
そう言うと、うにゅほは無言でビニール袋の中身を取り出した。
「……これなら、食べるかも」
犬用のビーフジャーキーだった。
自分の小遣いで初めて買ったものが、それか。
俺は「頼むから、心配させないでくれよ」と言って、うにゅほの手を取った。
帰宅して、ぐったりしている犬におやつをあげた。
犬は、食べなかった。
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2011
12.26

うにゅほとの生活32

2011年12月26日(月)

十五年飼った愛犬が、そろそろ寿命らしい。
後ろ足が弱ってしまって、もう自力では立てないし、食も細い。
今は一階にあるペチカの前で、ぐったりと横になっている。
うにゅほと愛犬との付き合いは、たった二ヶ月だ。
だからと言ってつらくないはずがないし、比較すべきものでもない。
ソファで落ち着かなげに本を開きながら、十分に一度は様子を見に行っている。
一緒に一階へ降りて、愛犬の頭を撫でたとき、うにゅほが言った。
「……◯◯は、さみしくないの?」
責める口調ではない。
俺があまりに平気なそぶりでいたから、ただ不思議に思っただけだろう。
感情にも慣性がある。
俺はたぶん、愛犬に死が近づいていることを、うまく実感できていないのだろう。
いなくなってしまったあと、ゆっくりと理解していくのだと思う。
そういったことを上手に説明できる気がしなくて、俺は右手を愛犬から、うにゅほの頭に乗せかえた。
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2011
12.25

うにゅほとの生活31

2011年12月25日(日)

クリスマスプレゼントとして、うにゅほに服を買う約束をしていた。
うにゅほの年齢からして、しまむらあたりでも可愛い服を見つけられるだろうと高をくくっていたのだが、そうは問屋が卸さない。
最初はうにゅほに好きなものを選ばせていたのだが、十分ほどで音を上げた。
なにがよくてなにが駄目で、なにが可愛くてなにがそうでないか、どんどんわからなくなっていくらしい。
全権を俺に託され、思い至ったことがあった。
うにゅほは俺がどんな服を選んでも、喜んでそれを着るだろう。
ならば、俺がうにゅほにどんな服を着てもらいたいか、ということではなかろうか。
車で行ける範囲の服屋を数軒はしごし、上から
・白のセーター
・灰色のTシャツ
・チェック柄のプリーツスカート
・黒のタイツ
・ショートブーツ
を購入し、数枚の紙幣が飛んでいった。
帰宅したあと早速着てもらったが、俺の好みで選んだだけあって、とてもよく似合っていた。
どちらに対するクリスマスプレゼントかよくわからなくなってきたが、うにゅほがお返しをしたいと言ったので、とりあえずその恰好で腰を揉んでもらった。
満足である。
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2011
12.24

うにゅほとの生活30

2011年12月24日(土)

うにゅほと並んで台所に立ち、エプロンを着けた。
俺は料理をするときエプロンをしないので、母親のものを借りた。
うにゅほはマイエプロンである。
とは言え、作るものはシンプルなシフォンケーキだ。
ハンドミキサーもあるし、材料と焼き時間さえ間違わなければ、失敗することはない。
型に入れた生地をオーブンに入れたあと、生クリームを泡立てることにした。
生クリームにほんのすこしだけ牛乳を入れると、ふんわりと仕上がる。
「ほんのすこーしでいいからな」
とうにゅほに告げた。
うにゅほは緊張して震える手で、ボウルに牛乳を「だばぁ」した。
ハンドミキサーで掻き混ぜたが、投入した牛乳の量が多すぎて、生クリームはとろみのある液体以上のものにはならなかった。
シフォンケーキがこれ以上なく綺麗に焼き上がったことは、実に皮肉と言える。
結局、液状の生クリームにアラザンとカラースプレーを入れて、シフォンケーキをひたして食べるという形式にした。
甘さ控えめのクリームが功を奏し、味だけで言えば、かなりの出来である。
両親に見せるため、切る前のシフォンケーキを写真に収めようとしたが、うにゅほに止められた。
「つぎはちゃんとできるから!」
また作る気満々である。
俺の誕生日が一月の中旬に迫っているので、そこを狙う気だろう。
もしものときのために買っておいたスポンジケーキは、丸いカステラとして処理することにする。
弟を交えた食事のあと、ふたりで映画版の銀河鉄道の夜を見た。
うにゅほがジョバンニの先生を指さして、
「スミレ博士だ!」
と弾んだ声で言った。
太っていて糸目の猫は、すべてアタゴオルのヒデヨシに見える。
エンドロールが終わったあと、うにゅほは俺の瞳をまっすぐに見つめて、言った。
「……◯◯はカムパネルラじゃないよね?」
俺は苦笑して、うにゅほの頭を撫でた。
「あんなに出来はよくないよ」
俺はカムパネルラではない。
けれど、ジョバンニでもないことを祈ろう。
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2011
12.23

うにゅほとの生活29

2011年12月23日(金)

急遽両親に予定が入ったということで、クリスマスパーティを今日に繰り上げた。
パーティと言ってみても、単にいつもより豪勢な食事をするくらいのものだけれど。
台所が空かなかったので、クリスマスケーキ作成は明日に回された。
我が家では御馳走と言えば寿司であり、たとえクリスマスでも変わることはない。
皿に載せられた寿司のなかに、他に比べてシャリの量が二倍くらいのものが混じっていた。
そして、うにゅほが俺の皿に取り分けてくれた料理が、軒並みその巨大寿司だった。
おまけに俺が寿司を口に入れる瞬間を、隣でガン見するのだから、なんともわかりやすい。
「美味いよ」
と告げると、うにゅほは安心したように笑みを浮かべた。
ふたくちで食べればシャリの量も気にならないし。
父親がうにゅほに飲ませようとしたシャンパンを奪い取り、二度ほど一気飲みしたせいで、料理がなくなるころにはほろ酔い状態になっていた。
昼間のうちに完成させていたイラストをpixivに投稿して、うにゅほと一緒にすべらない話を見た。
「もう、いそがしいのおわり?」
CMのあいだに発されたうにゅほの言葉に、はっとさせられた。
俺は一度なにかを始めると、下手をすれば数ヶ月単位で集中してしまう。
うにゅほは俺がイラストを仕上げるのを、この十日間ずっと待っていたのだと。
ごめんな、と心のなかで言って、うにゅほの頭を撫でた。
うにゅほは目を閉じて、心地よさそうにしていた。
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2011
12.22

うにゅほとの生活28

2011年12月22日(木)

うにゅほを連れて、クリスマスケーキの材料を買いに行った。
とは言え作るのはシフォンケーキなので、必要なのは薄力粉と卵、デコレーション用の生クリーム程度のものだ。
失敗したときのために、スポンジケーキもカゴに入れた。
これなら生クリームを塗るだけで、手軽に手作り感が楽しめる。
生クリームの上から振りかけるカラースプレーとアラザンを手に取ったとき、うにゅほの瞳が期待にきらめいていたのが印象的だった。
ケーキを作る、という行為には、男性にはわからない特別なものがあるのかもしれない。
チリパウダーを母親に頼まれていたので、うにゅほに
「チリペッパーじゃないぞ、チリパウダーだぞ」
と言って香辛料のコーナーに行かせたところ、どうだという顔でチリペッパーを持ってきた。
わざわざ間違いやすい商品名を口にした俺が悪かったのだろうか。
帰宅したあと、うにゅほは卵を綺麗に割る特訓に入った。
おかげで一品増えた夕食に、カラが入っていなかったのは僥倖と言えるだろう。
楽しそうにしているうにゅほを見ていると、嬉しくなる。
いいクリスマスになりそうだ、と思った。
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2011
12.21

うにゅほとの生活27

2011年12月21日(水)

うにゅほは買い物袋を開けるのが好きである。
食料品などはちゃんと分類して冷蔵庫に入れてくれるので、むしろ助かっている。
午後三時過ぎ、弟が帰ってきた。
うにゅほがソファの上に放置されたビニール袋を探ると、中からONE PIECE柄のパジャマが出てきた。
自分で着るのだとすればどうかと思うし、うにゅほに買ってきたのだとすれば、もっとどうかと思う。
パジャマを広げて
「チョッパーいる!」
と目を輝かせるうにゅほを尻目に、弟がトイレから出てきた。
すこし気恥ずかしそうに、うにゅほからパジャマを回収する。
うにゅほが弟をじっと見つめた。
口には出さないが、意味するところはひとつだ。
起きてから寝るまでパジャマのまま過ごすことも厭わない男だから、さほど抵抗もなく奥の部屋で着替え、うにゅほの前で軽くポーズを取ってみせた。
そして、うにゅほの拍手に手を挙げて応え、一階の自分の部屋へと去っていった。
やはりONE PIECE柄のパジャマはどうかと思う。
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