2017
06.27

うにゅほとの生活2034

2017年6月27日(火)

「ありがとうございましたー」
挨拶に背を押されるように、セイコーマートを後にする。
「また買ってしまった……」
「かってしまったねえ」
車内に戻り、袋を開く。
「セイコーマートの、バタークロワッサン」
「かけるに」
「それと、豆乳」
「かけるに」
「いま食べる?」
「たべる!」
バタークロワッサンと豆乳をひとつずつ、うにゅほに手渡す。
「いただきます」
「いただきます」
クロワッサンを開封し、端っこにかぶりつく。
口内から鼻腔までを、バターの香りが満たしていく。
「……美味いんだよなあ」
「うん、おいしい」
普段の俺なら生クリームでも欲しがるところだが、このバタークロワッサンには何も足したくない。
それくらい、完成された美味しさなのである。
「──…………」
もぐもぐ。
バターの風味を豆乳で押し流し、豆乳の後味をバターで塗り替えていく。
それを幾度か繰り返すと、バタークロワッサンは、あっと言う間になくなってしまった。
「ごちそうさま」
「◯◯、たべるのはやい」
むぐむぐ。
助手席を見ると、うにゅほはまだ、三分の一ほどしか食べ終えていなかった。
「はんぶん、たべる?」
「いや、悪いよ」
「そか……」
「──…………」
「──……」
「やっぱひとくちだけ」
「あーん」
「あー」
ぱく。
やはり、セイコーマートのバタークロワッサンは美味である。

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2017
06.26

うにゅほとの生活2033

2017年6月26日(月)

昼食後、自室へ戻ろうとしたときのことである。
「……?」
階段の下から三段目──右に折れ曲がる段の端に、消火器が立っていた。
「なんだこれ」
「しょうかきだよ」
「それはわかる」
「うん」
「──…………」
「──……」
会話が終わってしまった。
「いや、そうじゃなくて」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「なんでこんなところに消火器があるのかなって」
「ないと、かじのとき、あぶないよ?」
「まあ、うん」
「──…………」
「──……」
会話が終わってしまった。
「いや、そうでもなくて」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「さっきまでなかっただろ、消火器なんて!」
「え」
うにゅほが絶句する。
「しょうかき、ずっとあったよ……?」
「えっ」
今度は俺が絶句する番だった。
「……ずっとって、どのくらい?」
一ヶ月くらい前からだろうか。
「りふぉーむしてから、ずっと」
「マジかよ……」
「まじ」
この一年間、一升瓶より大きな消火器の存在に一切気付かず過ごしてきたというのだろうか。
「──いや、違う、消火器があるのは知ってた」
「うん……」
「もし火事が起こったら、真っ先に階段に向かってたと思う」
「うん」
「……認識はしてたけど、意識にはのぼってなかったってことなのかな」
「◯◯、だいじょぶ……?」
心配されてしまった。
「大丈夫、たぶん」
「たぶん……」
「大丈夫です」
盲点には、人が思っている以上に大きなものが入るらしい。

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2017
06.25

うにゅほとの生活2032

2017年6月25日(日)

しゅるるるる。
背後から、ハンドスピナーの回転音が聞こえてくる。
「──…………」
「──……」
るるる──
回転速度が落ちたのか、やがて音が止む。
「──…………」
「──……」
しゅるるるる。
再び、回転音が始まる。
このサイクルが、淀みなく繰り返され続けている。
「××さん」
「?」
しゅるるるる。
「それ、やり過ぎ」
「そかな」
「どのくらいやってるか、自覚ある?」
「じっぷんくらい……」
「──…………」
無言で壁掛け時計を指し示す。
「……いちじかんたってる!」
「気づいたか」
「きづいた……」
「ずっとやっちゃうのはわかるけど、ハンドスピナーだけいじってるのは大いなる時間の無駄だと思うぞ」
「うん……」
「せめてこう、本読みながらとか」
「わたし、かたてでほんめくれない」
手、小さいからなあ。
「……一緒に映画でも観る?」
「みる!」
うにゅほを膝に乗せて、Amazonのプライムビデオを開く。
レンタルする必要すらないとは、すごい時代になったものである。
「──…………」
「──……」
しゅるるるる。
大長編ドラえもんを観賞しながら、うにゅほがハンドスピナーを回す。
ハマるのはいいが、やり過ぎはよろしくない。
気にかけておこうと思った。

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2017
06.24

うにゅほとの生活2031

2017年6月24日(土)

たまたま近くを通り掛かったので、いつものゲームセンターへと立ち寄ることにした。
五百円玉一枚でチョコボールを荒稼ぎし、店内をぐるりと回る。
「……?」
すると、うにゅほがある筐体の前で立ち止まった。
「なんだこれ」
視線の先にあったものは、
「──ああ、ハンドスピナーか」
「はんどすぴなー?」
うにゅほが小首をかしげる。
「なんか流行ってるらしいけど、知らない?」
「しらない……」
「××はネットしないしなあ」
「うん」
最新のデジタルギアでSNSを使いこなすうにゅほ──なんて、とてもじゃないが想像できない。
「ともあれ、そういうのが流行ってるんだってさ」
「なにするもの?」
「中心にベアリングが組み込まれてて──」
「べありんぐ?」
そこからか。
「まあ、とにかく、めっちゃ滑らかに回転するらしい」
「……なにするもの?」
「だから、回して遊ぶもの」
「おもちゃ?」
「そうそう」
「はー……」
うにゅほが筐体を覗き込む。
いささかの興味はありそうだ。
「取ろうか?」
「おいくらでとれますか」
「この形式なら、千円あれば」
「おねがいします」
ぺこり。
「お願いされました」
財布を取り出し、両替機で千円札を崩す。
結果、宣言通り九百円でハンドスピナーを入手することができた。
「はー……」
帰途の車中、助手席のうにゅほが、指で挟んだハンドスピナーをくるくると回し続けていた。
「それ、面白いの?」
「わかんない」
「わからないのか」
「でも、なんかやっちゃう……」
しゅるるるる。
静かな回転音が耳朶を打つ。
「……帰ったら、ちょっとやらせてな」
「うん」
面白いような、そうでもないような。
不思議な感じである。

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2017
06.23

うにゅほとの生活2030

2017年6月23日(金)

「××、小指大丈夫か?」
「こゆび?」
うにゅほが小首をかしげる。
「左足の小首、昨日打ったろ」
「あー」
「……その様子なら、大丈夫そうだな」
喉元過ぎれば熱さ忘れる。
痛くないのは良いことである。
「いちおう見せてみて」
「はい」
チェアを譲り、うにゅほの前で膝をつく。
「赤みはない、かな」
「うん」
「痛みは?」
「いたくないよ」
「動かしてみて」
「うーと……」
ぴく、ぴく。
ピンと伸ばした左足の指すべてが、わずかに屈曲する。
「動きが悪いな」
「もともとうごかない……」
「そうだっけ」
「◯◯、あしのゆび、すごいうごくよね」
「ああ」
爪先を浮かせ、足の指をすべて開いてみせる。
「パー」
「おー」
ぱちぱち。
続いて、爪先をぎゅっと丸めてみせる。
「グー」
「すごい……」
「チョキはさすがに無理だけどな」
「やってみて」
「無理だと思うけど……」
いちおう試してみる。
「えーと、人差し指と中指を残して──あ、無理無理」
すべて曲がってしまう。
「むりかー……」
「チョキだけ難易度高すぎる」
「あしでじゃんけん、できないね」
「手ですればいいんだよ、そんなもん」
「ざんねん」
残念がられてしまった。
とは言え、無理なものは無理である。
ひとりでこっそり練習してみたけれど、やはり無理だった。
できる人、いるのだろうか。

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