2018
02.22

うにゅほとの生活2271

2018年2月22日(木)

ふとディスプレイの右下を見ると、2がみっつ並んでいた。
「2月22日か」
「ねこのひ」
「猫の日だな」
「にゃん、にゃん、にゃん」
あざとい。
でも、嫌いじゃない。
「猫飼いたいなあ」
「ねー」
「弟が猫アレルギーでさえなければなあ……」
「うん」
こればかりは仕方ない。
「でも、子供のとき、一週間だけ猫飼ったことあるんだぜ」
「いっしゅうかんだけ?」
「捨て猫でさ。拾ったときには、もうだいぶ弱ってて」
「……しんじゃった?」
「──…………」
無言で肯定する。
「なまえ、ききたいな」
「……名前か」
「おぼえてない?」
「いや、覚えてる。覚えてるけど……」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「……笑わないように」
「わらわないよ」
しばし天井を見上げたのち、答える。
「──……にゃあ」
「にゃあ……」
「小学生のネーミングセンスなので……」
「かわいい」
どちらのことを言っているのだろう。
まあいいか。
「結局、衰弱して死んじゃって、庭にお墓を作ったのを覚えてる」
「……そか」
「たぶん、いまでも庭土の下に──」
ふと気づく。
「……お墓を作った庭って、いまガレージ……」
「あ」
切ないオチがついてしまった。
生まれ変わって愛されていることを祈ろう。

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2018
02.21

うにゅほとの生活2270

2018年2月21日(水)

「◯◯、◯◯」
「んー?」
振り返ると、プラスチック製の櫛と寝癖直しスプレーを装備したうにゅほが立っていた。
「──…………」
両手で髪型を確かめる。
寝癖なら、ちゃんと直したはずだ。
「まだどっか跳ねてる?」
「はねてないよ」
「そっか」
では、何故そんなものを手にしているのだろう。
不思議に思っていると、うにゅほが口を開いた。
「かみいじっていい?」
「いいけど……」
「やた!」
「いじるって、どういじるんだ?」
「うーと──」
しばし思案し、答える。
「まんなかのけーをね、ひだりにもってくの」
「分け目を変えるってこと?」
「そう」
「ふうん……」
「かみきったらね、できないから」
短髪だと、分け目もクソもないからなあ。
「しゅーってするね」
「はいはい」
シュッ、シュッ。
前髪が濡れて、雫が額を伝う。
「わ」
「自分で拭くから大丈夫」
「ごめんね」
目を閉じ、身を任せる。
うにゅほの手つきは、臆病なほどに優しく、心地よい。
「──できた!」
「似合う?」
「うん、にあう」
卓上鏡を覗き込む。
真ん中分けの男が右分けの男になっただけだが、口にするのも野暮だろう。
「かみきるまで、このままね」
「はいはい」
うにゅほが満足そうだから、なんだっていいや。

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2018
02.20

うにゅほとの生活2269

2018年2月19日(月)
2018年2月20日(火)

葬儀は滞りなく行われた。
伯父の人徳か、家族葬であるにも関わらず、弔問客が後を絶たなかった。
「なんか、夢でも見てる感じ」
「うん……」
伯父は、急死だ。
祖父母が亡くなったときとは異なり、心の準備をする暇がなかった。
苦しむ間すらなかった伯父の死をどう扱っていいか、この日記を書いている今もわからない。
家族葬用の会館が狭かったため、俺とうにゅほは伯父の家に泊まることになった。
伯父の家には、伯父の気配があった。
霊的なものではない。
芸術の素養があった伯父の油絵であるとか、
遊びに来るたびに淹れてくれたコーヒーメーカーであるとか、
伯父の好きだった三国志の本であるとか、
つまりはそういったものだ。
「──…………」
ああ、これはいけない。
この家には、伯父の形の穴がある。
うにゅほの手を強く握り、泊まる予定の和室に引きこもる。
「……さっさと寝ちゃおう。明日もあるし」
「うん」
喪服から作務衣に着替え、トイレへ向かう。
トイレの扉には、手作りらしきカレンダーが飾られており、今月と来月の予定が途切れ途切れに書き込まれていた。
「──…………」
伯父は、今日を生きるつもりだった。
明日を、明後日を、来月を、来年を、生きるつもりだったのだ。
伯父の人生は、ぶつ切りにされた。
やるせない。
怒りを向ける相手もいない。
身内が亡くなるたび、同じことを思う。
何故、もっと言葉を交わさなかったのか、と。
いつか両親が死んだときも、きっと同じ後悔をするのだろう。
「……いつか、なら、いいけどな」
「?」
「なんでもない」
うにゅほを抱きすくめたまま、眠くなるまでテレビを見ていた。
何故、もっと抱き締めなかったのか。
そんなことを思わないように。

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2018
02.18

うにゅほとの生活2268

2018年2月18日(日)

早朝のことである。
「──…………」
つんつん。
「──…………」
つんつん。
「……んー」
ほっぺたをつつかれている。
「◯◯ぃ……」
「どした」
「いきてる?」
「生きてる、生きてる……」
「そか」
簡単な受け答えをして、再び眠りの淵へと落ちていく。
しばしして、
「──…………」
つんつん。
「──…………」
つんつん。
「……どした」
「◯◯、いきてる?」
「生きてる、生きてる……」
「そか……」
伯父の急死が余程ショックだったのだろう。
すこし寝息が静かだと、俺が生きていることを確認せずにはいられないらしい。
このままでは睡眠不足まっしぐらである。
「──…………」
つんつん。
「──…………」
つんつん。
「……××さん」
「はい」
羽毛布団をめくり、うにゅほを引きずり込む。
「わ」
「一緒に寝りゃ、確認せずに済むだろ……」
「……うん」
「寝るの遅かったから、昼まで起こさないように」
「はい」
湯たんぽ代わりにうにゅほを抱き締めて、目を閉じた。
暑くて逆に寝苦しかった。

※ 明日の「うにゅほとの生活」はお休みとなります

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2018
02.17

うにゅほとの生活2267

2018年2月17日(土)

「──◯◯、◯◯」
「ん……」
目を覚ますと、布団が揺さぶられていた。
空気の冷たさが、まだ早朝であることを教えてくれる。
「……どした」
嫌な予感があった。
こんな時間にうにゅほが俺を起こすことなど、そうはない。
うにゅほが、躊躇いがちに口を開く。
「あのね」
「うん」
「おじさん、しんだ……」
「──…………」
呼吸を整え、尋ねる。
「どの、おじさん?」
「おかあさんとこの、おじさん……」
「……急に?」
俺の知る限り、母方の伯父は、病気らしい病気を患っていなかったはずだ。
「のういっけつ、だって」
「脳溢血か……」
急死だ。
苦しむ間もなく逝ったのだろう。
それは、あるいは幸福なことなのかもしれない。
「──…………」
不安げな表情を浮かべたうにゅほが、俺の手を取り頬擦りする。
俺には、うにゅほの気持ちがわかる。
怖いのだ。
人は死ぬ。
ある日突然、死ぬ。
その事実を、眼前に突きつけられたのだから。
「……××」
「──…………」
「腹減ったな。朝ごはん、なんかある?」
「きのうのカレーある……」
「××は、食べた?」
「まだ」
「一緒に食べるか」
「……うん」
通夜は、月曜日の夜になった。
一泊してくるので、月曜日の日記はお休みとなります。
あしからず。

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