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2018
12.11

うにゅほとの生活2561

2018年12月11日(火)

「──…………」
ぱたん。
ディーノ・ブッツァーティの短編集を閉じる。※1
高校のころ国語の教科書に載っていた記憶のある"急行列車"という短編だけ、何度も何度も読み返している。
「どこか山月記と似たものを感じる」
「さんげつき?」
「虎になった男の話」
「へえー」
「××は、この"急行列車"を読んで、どう思った?」
「へんなはなしとおもった」
「変なのは、喩えだからだな」
パソコンチェアを回転させ、うにゅほに向き直る。
「主人公は列車に乗る。五番目の駅が終点で、目的地だ。だが、列車はどんどん遅れていく」
「うん」
「主人公はいろんなものを失っていく。仕事も、友人も、恋人も──」
「うん……」
「それでも降りない。降りることはできない」
「──…………」
「"もしかすると明日は到着できるかも知れないのだから"」
最後の一文からの引用だ。
「俺は、この小説の作者──というか、この小説を教科書に載せた誰かの、願いと呪いを感じるよ」
「ねがいと、のろい?」
「この小説が言いたいのは、たぶん、夢や目標を目指し続けることの難しさだ」
「あ、そか。たとえだ」
「よくある美辞麗句、"信じ続ければ必ず夢は叶う"。この小説は、そんなおためごかしを言ってはくれない」
「うん」
「つらいぞ。苦しいぞ。いろんなものを失うぞ。それでも辿り着けるかわからないぞ。覚悟しろ、と言っている」
「そだね……」
「裏返せば、目指さなければ失わずに済んだかもしれない。心安らかに暮らせるかもしれない。諦めろ、とも言っている」
「うん」
「決めるのは自分だ。決断の責任は、自分の人生が負うんだ。それを高校生に読ませてるんだから、強烈なメッセージだよ」
「うん……」
「……まあ、俺と同じように、ほとんどの高校生は理解できずに読み捨てるんだろうけどな」
それでも、十数年越しにひとりの人間に突き刺さったのだから、まさに名著である。
他の短編も、ちゃんと読んでみようと思った。

※1 2018年12月4日(火)参照

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2018
12.10

うにゅほとの生活2560

2018年12月10日(月)

冬靴を購入した帰りに立ち寄ったゲームセンターで、面白いものを見つけてしまった。
「PC専用のワンセグチューナーか……」
なんでもあるなあ。
「わんせぐ?」
「画質は悪いけど手軽に見れるテレビ──みたいな」
「へや、テレビあるのに?」
「あるけど、アンテナ端子の場所が悪い。寝室側に行かないとテレビ見れないじゃん」
「たしかに……」
「おもちゃみたいなもんだと思うけど、取れたら取ってみよう」
「……あんましおかねつかったら、だめだよ?」
「とりあえず、財布の小銭ぶんだけ」
「ならいいけど……」

三百円で取れた。

帰宅し、チューナーの入った箱を開ける。
「あ、そこそこ分厚い取扱説明書とか入ってる」
「ほんとだ」
「期待してなかったけど、意外と使えるのかも」
同梱のCD-ROMでドライバと視聴ソフトをインストールし、起動する。
「……あれ、普通に見れる」
受信感度が悪くてほとんど見れないオチを予想していたにも関わらず、普通に使えそうだった。
「××、これ使えるよ」
「そなんだ」
「感動が少なくありませんか?」
「だって、まえ、ぱそこんでふつうにテレビみれた……」
言われてみれば、以前はフルセグチューナーを使ってPCでテレビを見ていたのだった。
「あのチューナーどこやったっけ……」
「しらない」
うにゅほが首を横に振る。
そりゃそうか。
「……××、PCで綺麗にテレビ見たい?」
「みたいけど……」
現状、自室のテレビがほとんど機能してないものな。
すこし考えてみよう。

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2018
12.09

うにゅほとの生活2559

2018年12月9日(日)

母親が新車のキャストを購入したため、傷みの激しかったミラジーノはあえなく廃車と相成った。
「ミラさん……」
「下回りが随分錆びてたからな。仕方ないよ」
「うん……」
しゅんとするうにゅほの頭を撫でてやりながら、愛車とのこれまでを思い出す。
「ミラジーノも、けっこう長く乗ったなあ。五年くらいか」
「そのくらいとおもう」
うにゅほがうちに来て、七年ちょっと。
思い入れが深くなるのも当然だ。
廃車の話が出たときも、それとなく反対していたし。
「あれで、いろんな場所に行ったな」
「うん、いった……」
「ちょっと加速は遅いけど、愛嬌のあるいい車だった」
「うん……」
幾つもの思い出が去来する。
だが、まあ、それはそれとして、
「母さんの新しい車、見た?」
「みた」
「乗った?」
「うん、のせてもらった」
「そっか、俺まだ乗ってないんだよな。どうだった?」
「あたらしいにおいがした」
「……それだけ?」
「だって、キャストのこと、まだよくしらないし……」
思春期の中学生みたいなことを言いおる。
「あれ、今回は呼び捨てなんだな」
「?」
「ミラジーノは、ミラさん。コンテはコンテさん。ライフはライフくん」
「ほんとだ……」
無意識だったのか。
もしかすると、ミラジーノの代わりに来たキャストのことを、うにゅほはまだ家族と認めていないのかもしれない。
頑張れキャスト。
どう頑張るのかは知らないけれど。

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2018
12.09

うにゅほとの生活2558

2018年12月8日(土)

今日は、職場の忘年会である。
「……二次会に連れて行かれる気配がぷんぷんしてるから、今日は先に寝てていいからな」
「うん」
うにゅほが頷く。
「寝てていいからな……?」
「うん、ねてる」
本当かなあ。
怪しみながら、タクシーで会場へ向かう。
居酒屋だのスナックだのいろいろ連れ回されて、帰宅したのは午前一時半のことだった。
「ただいまー……」
自室の扉を静かに開くと、案の定明かりがついていた。
やはり。
そんな気はしていたのだ。
「──…………」
冷え切った部屋のなか、うにゅほはパソコンチェアの上で丸くなっていた。
「××」
「!」
うにゅほが目を開く。
「……あ、おはえりなさい……」
「寝てていいって言ったろ」
「ねてた……」
「そういう意味じゃなくてさ」
「うん……」
わかっている。
俺も、うにゅほも、わかっているのだ。
だが、この行為こそが、うにゅほのささやかな抵抗なのだろう。
「……ずるいよ、××は」
「?」
うにゅほが小首をかしげる。
「なんでもない」
「そか」
「ココアとコーンポタージュ、どっちがいい?」
「コーンポタージュがいい」
「じゃあ、こっちな」
「はい」
帰り際にコンビニで購入したコーンポタージュを手渡し、うにゅほを抱きすくめる。
「わ」
「……冷たい」
「そかな」
「頼むから、ストーブはつけといてくれ」
「うん」
飲み会は、今回だけではない。
素直に言うことを聞いてくれればいいのだが。

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2018
12.07

うにゅほとの生活2557

2018年12月7日(金)

「──行くか」
「うん!」
吹雪舞うなか、玄関先へと躍り出る。
「思ったほどは積もってない──かな?」
「でも、べたゆき」
「そこなんだよなあ」
気温が半端に高いせいか、雪が水気を含んでいる。
解けかけた雪は、氷に近くなる。
きめの細かいかき氷と、氷の塊、どちらが重いかは言うまでもない。
「よッ、と!」
雪の下にジョンバを挿し込み、跳ね上げる。
予想通り、重い。
「……これは苦労するぞ」
「うん!」
今冬初の雪かきとあって、うにゅほの鼻息が荒い。
やる気に満ち満ちている。
だが、
「んー……ッ!」
やる気と筋力とは比例しないのだった。
「××、一気に運ぼうとしないで、すこしずつ小分けにして集めよう」
「はーい」
敷地内の雪を掻き集め、スノーダンプで公園に打ち捨てること小一時間。
「終わったー……!」
「おわった!」
「いえー」
「いえー」
うにゅほとハイタッチを交わし、除雪用具を片付ける。
「久しぶりの雪かきはどうだった?」
「ぽかぽかする」
「たしかに」
少々汗ばむほどだ。
「たのしかったけど、ゆき、おもかった……」
「それな」
「もっとさむくならないかなあ」
「……それはちょっと複雑かな」
寒くなれば雪かきは楽になるが、寒さゆえの弊害も多い。
あちらを立てればこちらが立たず、である。
「まあ、今年も、嫌ってほど雪かきする羽目になるさ……」
「うん!」
"好き"はひとつの才能である。
俺も、うにゅほのように、雪かきを楽しめればいいのだが。

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