2017
11.22

うにゅほとの生活2181

2017年11月22日(水)

「ぶえ」
さけるチーズを食べながら、思わず小さく舌を出す。
「どしたの」
「舌がいはい」
「いたいの……?」
うにゅほが、俺の舌を覗き込む。
「そこじゃなくて、奥のほうが痛い」
「おく?」
「舌の付け根なんだけど、そこ噛んじゃってさ」
「みして」
「……えーと、めっちゃ奥なんだけど」
「うん」
見せないと納得してくれなそうだ。
「──んべ」
舌を、思いきり前に出す。
「んー……」
うにゅほが小首をかしげる。
「どこ?」
「いひ」
「みぎ?」
こくりと頷いてみせる。
「みぎの、つけね……」
「!」
うにゅほが躊躇いなく俺の舌をつまみ、左へ寄せる。
「あ、あった」
「あっは?」
「しろくなってる」
「てほほは、ほーはいへんになってるっぽいは」
「こうないえん、いたそう……」
「びはいんはいあるはら、ほりはえず、ほれほんどく」
「こうないえんは、ビタミンびーつーだもんね」
「ほうほう」
俺の言ってること、よくわかるなあ。
うにゅほが俺の舌を離したので、ティッシュをドローして差し出す。
「指、拭きな」
「ありがと」
しばらくのあいだ、ものを食べるたび痛みに苛まれそうである。

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2017
11.21

うにゅほとの生活2180

2017年11月21日(火)

足を怪我した母親に、買い物を頼まれた。
「──コーヒー確保。モカだっけ?」
「うん、もか」
「キリマンジャロとは味が違うのかな」
「たぶん……」
「いちご味とかチョコ味とかなら、違いがわかりやすいのにな」
「そだねえ」
うにゅほが苦笑する。
「次は?」
「うーと、ふりかけ」
「味道楽?」
「◯◯、あじどうらく、すきだねえ」
「××は?」
「すきやきのふりかけ、すき」
「俺も好き」
「すきやき、おいしいよね」
「最悪、ごはんとふりかけがあれば、おかずがなくてもいい」
「おかず、つくるよ」
「おかずがあれば、そのほうがいい」
「きょう、なにしようかなあ……」
「決まってないの?」
「うん」
「いまならリクエストし放題というわけだ」
「にく?」
「何故わかった」
「◯◯、にく、すきだもん」
見透かされている。
「からあげは、おとといやったから、ちがうのにしましょう」
「そうだな」
「ピーマンのにくづめ……」
「──…………」
「は、やめて」
「うん」
「にくやさいいため、かなあ」
「いいと思う」
「ぶたにくと、たまねぎと、キャベツと、もやしもいれましょう」
「関係ないけど、さけるチーズ買っていい?」
「いいよ」
乳製品コーナーへ赴き、さけるチーズ全種を買い物カゴに入れる。
「たくさんだ」
「せっかくなので……」
人の財布で買い物をすると、心が軽い。
プリンも買ってしまったが、これくらいならば母親も許してくれるだろう。

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2017
11.20

うにゅほとの生活2179

2017年11月20日(月)

慌ただしい物音で目を覚まし、階下へ赴くと、母親が松葉杖をついていた。
「どうしたの」
「やっちゃった……」
母親が、自嘲気味に笑みを浮かべる。
「おかあさん、すべって、ころんじゃったんだって……」
「またか……」
「またっていわないの」
「あ、ごめん」
今年の夏頃にも、脚立から落ちて怪我をしていたものだから。※1
「骨は?」
「膝のお皿に、ヒビがちょっとね」
「あちゃー……」
「全治一ヶ月だって」
母親が、大きく溜め息をつく。
「……まあ、でも、××がいてよかった。また頼むね」
「うん!」
うにゅほが背筋をピンと伸ばし、口元を引き結ぶ。
やる気満々だ。
「とりあえず、お昼を──」
母親がそう言い掛けたとき、車庫のほうから異音がした。
「?」
「なんだろ」
うにゅほと顔を見合わせる。
しばしして、
「やっちまった……」
玄関から、表情を曇らせた父親が姿を現した。
「どうしたの」
「いや、シャッター半開きのままバックしちまってよ」
「ガリッ、て?」
「ベコッ、と」
「あー……」
間違いない。
今日は、我が家にとっての厄日だ。
「……××、今日は大人しくしてような」
「うん……」
巡り合わせが悪い日というものは、まれにあるものだ。
階段の昇り降りにすら気をつける一日だった。

※1 2017年7月11日(火)参照

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2017
11.19

うにゅほとの生活2178

2017年11月19日(日)

ふと、目を覚ます。
起きた理由は探すまでもない。
「さむ……」
落ちかけていた羽毛布団を肩まで引き上げたとき、ふと視線を感じた。
「──…………」
「──……」
眼鏡を掛ける。
うにゅほが物陰からこちらを覗き込んでいた。
「えーと……」
「◯◯、おきた?」
「起きたけど」
「おはようございます」
「……おはようございます」
ちょいちょい。
うにゅほが俺を手招きする。
「?」
ベッドから下りる。
床が、やけに冷たい。
「こっち!」
手を引かれるままに両親の寝室を訪れると、
「──……うわ」
窓から覗く公園が、一面、白い絵の具で塗り潰されていた。
積雪は見るからに厚く、一晩で季節を跨ぎ越したかのようだ。
「寒いはずだ……」
「ね」
「××、足冷たくない?」
「くつしたはいた」
「……本当だ」
靴下嫌いのうにゅほが自主的に靴下を履くのだから、どれほど寒いかおわかりだろう。
「こりゃ、根雪になるかもなあ」
「なるかな」
「初雪は根雪にならないのが常だけど、ここまで降ると……」
「なるかも!」
「嬉しそうだな」
「うへー……」
「ともあれ、朝飯食べたら雪かきだ」
「うん!」
「雪かき終わったら、俺は寝る」
「まだはちじだもんね」
「あと二時間は寝たい……」
暖かい格好をして、外へ繰り出す。
初雪は、水を吸って重く、今がまだ11月であることを思い知らせてくれた。
うにゅほは、終始楽しそうだった。
うにゅほが楽しいと俺も楽しいので、ふたりでする雪かきは嫌いじゃない。
さすがに好きとまでは言い切れないけれど。

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2017
11.18

うにゅほとの生活2177

2017年11月18日(土)

──ケン、ケン。
目を覚まし、上体を起こした途端、空咳が俺の喉を震わせた。
「!」
ひょこ。
その咳を聞きつけてか、うにゅほが顔を覗かせる。
「いま、やなせきした」
「おはよう」
「おはよ」
「聞こえましたか」
「きこえました」
「風邪ってほどではないんだけど……」
「ほんと?」
ぽす。
うにゅほが俺の胸元に顔をうずめ、すんすんと鼻を鳴らす。
「風邪の匂い、する?」
「んー」
すんすん。
「しない?」
「んー……」
すんすん。
「◯◯のにおいする」
「風邪の匂いは?」
「わかんない」
「わからないってことは、しないのかな」
「……んー?」
すんすん。
「やっぱし、わかんない……」
「そっか」
しないのなら、しないと言うだろう。
言葉では言い表せない程度の微妙な差異があるのだろうか。
「わかんないけど、ねたほういいとおもう」
「起きたばっかりなんですが」
「ねれない?」
「──…………」
ゆっくりと目蓋を閉じる。
目蓋の重さで、眠気がわかる。
「……眠れる、かな」
「ねよ」
「わかった」
俺の健康に対し、うにゅほは妥協を許さない。
この六年で、体が弱いところを散々見せてしまったからなあ。
ありがたいやら、申し訳ないやらである。

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