2018
04.23

うにゅほとの生活2331

2018年4月23日(月)

「──ふっふっふっふー、ふふふふふふふふー♪」
見るからに機嫌の良いうにゅほが、鼻歌まじりに本棚を掃除していく。
聞くともなく聞き入っていたところ、その曲名に思い至った。
「……さそり座の女?」
何故。
「さそりざのおんな?」
うにゅほが小首をかしげる。
「その曲。美川憲一の、さそり座の女」
「そなんだ」
「なんでそんな古い曲知ってるんだ」
「なんか、テレビだとおもう」
まあ、他に聞く機会もないよなあ。
「──…………」
「?」
しばし何かを考え込んだのち、うにゅほが口を開いた。
「わたし、なにざのおんなかなあ……」
「あー」
考えたこともなかった。
「◯◯、なにざ?」
「山羊座」
「わたし……」
「ちょい待ち」
キーボードを叩き、十二星座の早見表を開く。
うにゅほの誕生日は10月15日だ。
本当のところはどうか知らないが、そういうことになっている。
「えーと、××は天秤座だな」
「てんびんざのおんな……」
いいえ、私は天秤座の女。
「語呂はよくないな」
「うん」
「◯◯、やぎざのおとこ」
いいえ、私は山羊座の男。
「……語呂はよくないな」
「おそろい」
「母さんは双子座みたい」
「ふたござのおんな」
「語呂いいな」
「いいね」
そんな他愛ない会話を交わす月曜日の午後なのだった。

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2018
04.22

うにゅほとの生活2330

2018年4月22日(日)

「──…………」
「──……」
うにゅほとふたり、目を皿にして、花壇の隅々までを点検する。
春の花を愛でているわけではない。
「××、いたか」
真剣な表情を浮かべ、うにゅほが首を横に振る。
「ひとまず、行動範囲はまだ広がってないみたいだな」
「うん」
事は十分前に遡る。
「──◯◯! ◯◯!」
「んが」
休日の開放感と陽気に負けて昼寝していると、うにゅほに叩き起こされた。
「かだん、ありいた!」
「!」
一瞬で目が冴える。
玄関先の花壇には、吸蜜性のアリの巣がある。
それだけなら構わないのだが、そのアリどもが、毎年毎年家屋内に道を作るのだ。
去年など、何十匹のアリを指先で潰したかわからない。
花壇の調査の結果、
「──縁石付近に数匹か。まだコロニーは小さいみたいだな」
縁石と言えば、去年アリの巣があった場所である。
巣の位置は変わっていないらしい。
「どうしよう……」
「──…………」
しばし思案し、決断する。
「早い段階で叩こう」
「はやいだんかいで……」
「後手後手だと、また家の中に入ってくるかもしれない。それは避けたい」
「うん」
「増えてから潰すより、増える前に潰す」
「なるほど……」
去年、家屋内でアリが見つかったのは、五月の末のことだ。※1
だが、それ以前から縁の下や壁の裏を通り道にしていたことは明白である。
悠長にしている暇はない。
「今年こそ、アリに勝つぞ!」
「おー!」
俺たちの戦いが、今年も始まる。

※1 2017年5月31日(水)参照

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2018
04.21

うにゅほとの生活2329

2018年4月21日(土)

「──…………」
「──……」
暑い。
うだるように暑い。
うにゅほが俺の膝から自主的に下りるくらい、暑い。
「……窓、開いてる?」
「あいてる……」
「だよなあ」
先程、この手で開けたのだ。
開いていなければ、おかしい。
それでも、つい確認したくなるほどの室温なのだった。
「……聞くのが怖いけど、いま何度?」
「うーと」
うにゅほが、本棚最下段の温湿度計を覗き込む。
「……わー」
なにそのリアクション。
「うとね、にじゅうはってんななど……」
「──…………」
28.7℃
窓を全開にして、この室温である。
「夏かな」
「なつ、はやい……」
「春どこ行った」
「かえった?」
「……どこへ?」
「わかんない」
なるほど、面白い捉え方だ。
どこかから来たからには、帰る場所があるに違いない。
誰も知らないところに季節たちの家があって、順繰りにこちらを訪れたり、忘れ物を取りに戻ってきたりする。
そんなメルヘンなことをうだる頭で考えていると、
「◯◯、アイスたべる?」
「あるの?」
「ゆきみだいふく、あるよ」
「食べる、食べます」
「とってくるね」
暑い部屋で食べる雪見だいふくは、また格別である。
ないとは思うが、この暑さが続くようであれば、ガリガリ君を常備しなければなるまい。

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2018
04.21

うにゅほとの生活2328

2018年4月20日(金)

「ただーいまー……」
時刻は午前三時。
友人と飲みに行き、たったいま帰宅したのだった。
しんと静まり返った屋内で、自室の扉のみが薄明かりを漏らしている。
やはりか。
まあ、そうだよなあ。
飲みに行くたび先に寝ていてほしいと伝えるのだが、素直に床に就いていた試しがないもの。
「──…………」
物音を立てないように、ゆっくりと扉を開く。
すると、
「……ふすー……」
寝間着姿のうにゅほが、掛け布団の上で眠りこけていた。
実にあられもない寝相だ。
具体的には、がに股でうつ伏せである。
春先とは言え、深夜は冷える。
下敷きになっている布団の代わりに半纏を掛けてやると、
「──は、ふ」
呼吸の乱れと共に、うにゅほが目を覚ました。
「……おはようございます」
「おあよう……」
しばし眠そうに目をしばたたかせたのち、うにゅほが口を開く。
「◯◯、おかえり」
「ただいま」
「いまなんじ?」
「秘密」
「?」
うにゅほが壁掛け時計を見やる。
「……さんじ!」
「はい……」
「◯◯、じゅうにじくらいにかえるっていった……」
「言いました」
「なんじ?」
「三時です……」
「のみすぎ、だめだよ」
「すみません」
「もー……」
溜め息ひとつ。
「はやくねよ」
「いや、日記を書かないと……」
「──…………」
「──……」
「にっきかくまでまってるから、ねよ」
「急いで書きます」
そんな会話を交わしてから、およそ三十分。
うにゅほは再び夢の世界へと旅立っていった。
さっさと仕上げて、俺も寝よう。

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2018
04.19

うにゅほとの生活2327

2018年4月19日(木)

「暇だな……」
「ひまなの?」
「実を言うと、20日までにしなければいけないことが、あった」
「あった」
「もうない」
「なくなったの?」
「いや、もう終わったの」
「はやい」
「早くもないけどな」
むしろ、ギリギリだ。
「エアロバイクでも漕ごうかな……」
「ひさしぶり」
「一週間くらい漕いでなかった気がする」
「うん」
「毎日──は、無理でも、二日に一度──は、目標として、三日に一度はなんとか……」
「そう……」
苦笑されてしまった。
廊下の片隅にあるエアロバイクを運び込み、デスクの前にセットする。
「さー漕ぐぞ!」
「がんばってね」
表示パネルの走行距離をリセットし、いざ漕ぎ始める。
「──あれ?」
一分ほど漕ぎ進めたあたりで、表示画面がおかしくなった。
漕ぐたびに点滅し、走行距離がゼロに戻ってしまう。
「どしたの?」
「電池、切れたかも」
「えあろばいく、かっていちねんくらい?」
「一年ちょっとかな」
「じゃあ、でんちかも」
「換えてみるか」
「たんさん? たんよん?」
エアロバイクを降り、表示パネルの裏側を調べる。
「単四」
「たんよん、たしか、ひきだしのここに──あった!」
「さんきゅー」
うにゅほから単四電池を二本受け取り、交換する。
「お」
「なおった?」
「液晶の数字の色が、めっちゃ濃くなった」
俺が気づかなかっただけで、電池切れの傾向は以前からあったらしい。
「えあろばいく、がんばってね」
「頑張ります」
時速20kmで、一時間。
気が向けば明日も頑張りたい。

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