2017
04.30

うにゅほとの生活1977

2017年4月30日(日)

両親が旅行から帰宅した。
おみやげは、何故か竹製のしおりだった。
鹿のイラストが印刷されている。
「かわいい」
「甘いものがよかった……」
「しおり、だめ?」
「竹は甘くない」
「あまくても、たべちゃだめだよ」
「食べないけどさあ」
「しおり、べんりだよ」
「まあ……」
しおりを受け取り、シーリングライトに翳す。
竹の繊維が美しい。
「しおり、けっこう持ってたと思うんだけど……」
「うん」
「どこやったっけ」
「うーん……」
たぶん、読みさしの本に挟まりまくっているのだろうけど。
面倒なので、探さない。
「わたしの、ちゃんとあるよ」
うにゅほが自慢げに取り出したのは、金属製のブックマーカーだった。
いつだったか俺がプレゼントしたものだ。
「××、物持ちいいよなあ……」
「そかな」
「それ、たしか、出会ったころにあげたやつじゃん。誕生日でもなんでもなく」
「うん」
「俺がそのまま使ってたら、今頃なくしてたな……」
「えー」
うにゅほがブックマーカーを背中に隠す。
「隠さんでも」
「うへー」
冗談だったらしい。
「××、竹のしおり使う?」
「わたし、これあるから、いいよ」
「そっか」
なら、遠慮せずに使わせてもらおう。
読みさしの本に挟んだまま本棚に仕舞う未来が見えるけれど。

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2017
04.29

うにゅほとの生活1976

2017年4月29日(土)

「きょうは、シチューをつくりますね」
「豚肉たくさん買ってあるしな」
「うん」
一昨日の生姜焼きのあまりである。
「暇だし、なんか手伝おうか」
「んー」
うにゅほが小首をかしげる。
「でも、あんましすることない……」
「材料切るとか」
「きって、いためて、ルーいれて、にるだけだから」
「簡単」
「かんたん」
「俺は豚肉切るから、××は野菜を切ってくれ」
「はーい」
ふたり並んで台所に立つ。
「◯◯、にくきれる?」
「馬鹿にしてはいけない」
「してないけど、にく、きるのむずかしいから……」
「まあ見てな」
スッ。
薄切り肉を重ね、包丁を入れる。
「はい」
「おー」
うにゅほが小さく拍手する。
「包丁を、弧を描くように動かすのがコツだ」
「うん」
「まあ、知ってるか」
「しってる」
「というわけで、心配無用。××は野菜を切るのだ」
「はい」
切って、炒めて、ルーを入れて、煮る。
時間は掛かるが、工程は少ない。
「あと、しばらくにこんで、おしまい!」
「お疲れさまでした」
「おつかれでした」
ふたりで作ったクリームシチューは、とても美味しかった。
まあ、俺は肉しか切ってないけど。

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2017
04.28

うにゅほとの生活1975

2017年4月28日(金)

二度目の起床後、空腹を抱えて階下へ向かったときのことである。
「……?」
リビングに何か違和感を覚えた。
ぼんやりした頭でしばらく考えて、ようやく原因に思い至る。
ロボットクリーナーが所定の位置になかったのだ。
「どこ行ったんだろ……」
和室、ではない。
台所、でもない。
廊下、にもない。
おかしいなあと首をひねって脱衣所を覗くと、あった。
脱衣所と浴室のあいだの段差に腹で引っ掛かり、進退窮まって動作を停止したらしい。
「──…………」
すこし切ない。
どうすればいいか判断がつかなかったので、自室からうにゅほを呼んできた。
「ひっかかっちゃったんだ……」
「そうらしい」
「おふろば、こんどから、とーしめないとだめだね」
「気をつけないとな」
ロボットクリーナーを段差から救出し、操作パネルを開く。
「このボタンおしたら、じゅうでんのばしょもどる」
「ほうほう」
「ぴ」
うにゅほが、ホームと書かれたボタンを押す。
ういーん。
高らかな駆動音と共に掃除を再開したロボットクリーナーが、
「あ」
「あー……」
再び浴室に特攻し、段差に引っ掛かり、動作を停止した。
「……まっすぐ充電のとこ戻るわけじゃないんだな」
「とーしめないと……」
浴室の扉をちゃんと閉めて、再々起動。
ごつんごつんと頭をぶつけながら所定の位置に戻っていくロボットクリーナーを見て、
「……ちょっと可愛いな」
と思ってしまった。
「でしょ」
何故うにゅほが胸を張るのかは、よくわからないが。

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2017
04.27

うにゅほとの生活1974

2017年4月27日(木)

「ね、ね、ね」
うにゅほが俺の袖を引く。
「んー?」
「きょう、なにたべたい?」
「夜か」
「うん」
両親が旅行に行ってしまったため、弟を含めた三人で食事を賄わなければならない。
家事万能のうにゅほがいるので不安は一切ないけれど。
「食べたいものなあ」
「ない?」
「強いて言うならプリンが食べたい」
「プリンつくったことない……」
「まあ、それはコンビニで買うとしてだ」
「うん」
「材料はあるの?」
「れいぞうこ?」
「そう」
「あんましない」
「じゃあ、何を作るにせよ買い物に行かないとな」
「おかねあるよ」
「ああ、いくらか置いてってくれたんだ」
「いちまんえん」
「……奮発したなあ」
「たべにいってもいいよって」
「よし、三人で焼肉だ!」
「なくなっちゃう……」
「冗談」
「◯◯、にくたべたいの?」
「食べたい」
「なににく?」
「豚肉」
「じゃあ、しょうがやきにしましょう」
「お願いします」
「ぶたにく、かいにいかないとね」
「生姜は?」
「チューブのやつあるよ」
「スーパー行くなら、明日以降のぶんも買いだめしておきたいな」
「あした、なにたべたい?」
「買い物しながら考えよう」
「はーい」
うにゅほの作った生姜焼きは、母親と同じ味がした。
キャベツの千切りは、ほんのすこしだけ太かったけれど。

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2017
04.26

うにゅほとの生活1973

2017年4月26日(水)

「父さん母さん旅行行くのって、明日からだっけ」
「うん、そだよ」
どこへ行くかはよく知らないが、とにかく旅行に行くらしい。
「いつ帰ってくるって言ってた?」
「さんじゅうにちだって」
「んで、またすぐ出掛けるとか」
「ふつかに、また、べつのとこいくの」
「慌ただしいなあ」
「そだねえ」
ゴールデンウィークを限界まで満喫しきるつもりのようだ。
「××、一緒に行かなくてよかったのか?」
「うん」
「旅行なんて、滅多に──」
そこまで言って、ふと気づく。
「そもそも、××って、うち来てから泊まりがけで旅行したことあったっけ」
「ちとせ?」
「抜きで」
母方の実家に一泊するのを旅行とは言うまい。
「うーと、ない、かも……」
「ないよな」
「ひがえりはある」
「日帰りは何度かあるな」
「うん」
「……ほんと、一緒に行かなくてよかったのか?」
「◯◯、おとうさんとおかあさん、どこいくかしらないの?」
「聞いたと思うけど、覚えてない」
「こうやさんに、おきょうもらいにいくんだって」
「……あー」
思い出した。
「あんましたのしくないとおもうから、いえにいたほういいよって、おかあさんいってたの」
「なるほど……」
賢明である。
「2日からの方は?」
「うーとね、ともだち、いっしょなんだって」
「……それは、ちょっと嫌だな」
「うん」
両親だけならともかく、見も知らぬその友人が一緒となれば、俺だって遠慮したい。
「今度、家族だけで旅行しようか」
「それならいきたいな」
いつになるかはわからないが、いつか実現させたいものである。

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